プロダクトマネジメント Feed

2007年7月25日 (水)

女子高生の目からみた会社経営

483341855x 甲斐莊正晃「女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!? 」、プレジデント社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

TBSの日曜日のドラマで「パパとムスメの7日間」というのをやっている。父とムスメが電車事故で幽体離脱して入れ替わって、それぞれの立場で会社に行ったり、学校にいったりするというコメディドラマ。究極の世代間コミュニケーションだ。この中で、ムスメがパパとして仕事をして、常識にとらわれない発想をし、活躍する様子はなかなか興味深い。

知らないことの強さのようなものもあるが、どうも、余計なことを考えすぎている部分も少なくない。シンプルに考えると別の世界が見えてくるわけだ。問題に遭遇したときに、もし、自分が常識も組織に関する情報もまったく持っていなかったとすればどう判断するか?

これが求められるような時代になったきたように思う。

このビジネスノベルは17歳の女子高生が、父親の急死で、突然社長に―。主人公ちえにとっては、知らないことばかり、「これが、カイシャ!?」と、つぶやく「発見」の毎日といったストーリー。

この本は単に経営の入門書というだけではなく、商品開発、営業、工場での生産などを、女子高生という素人の目から見て、どう見えるかを示しているのがミソ。たいへん、わかりやすいので、入門書としてもよいが、ある程度、経験がある人も新たな発見があるのではないかと思う。

なかでも、日本組織の特徴である人間関係に関する部分が面白い。日本人は何にこだわっているのかという思いになるのではないかと思う。

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2007年6月29日 (金)

顧客起点のマーケティング

4492555838 平井孝志「顧客力を高める、売れる仕組みをどうつくるか」、東京経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★

この本もまた、「組織力を高める」の著者の一人が書いたマーケティング論。顧客中心型のマーケティングと、その具体的な実現方法、仕組み作りについて述べている。

顧客力とはあまり耳にしない言葉だが、著者のいう顧客力は

 顧客起点で売れるモノやサービスを継続的に生み出す能力

であり、これは

 マーケティング脳:顧客と共鳴できるユニークで柔軟な発想力

 場の構築力:顧客のまわりに業務連鎖を設計・構築する能力

の2つの掛け算で生まれるというのが、この本の考えである。

そして、この本では、マーケティング脳の作り方、および、場の構築プロセスを具体的に解説している。デル、スターバックス、トヨタなどを例にとりながら説明されているので、納得性がある。

最後に、顧客力を組織力に高める方法について述べている。前著の組織力を高めるとの関連がここにあるようだ。

その方法とは、マーケティングの専門部隊を置き、それを組織のマーケティング脳にしていく。そして、その部隊を中心に

・場の見える化

・標準化の推進

・現場での適応化

の3つを行うことだという。この部分はさらなる検討がほしいところだが、方向性としては共感できる。

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2007年6月 6日 (水)

イノベーションの実態

4569690661 片山修「イノベーション企業の研究 日本型成長モデルは現場がつくる」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★

日本のイノベーション書籍は学術研究的なものが多い。理論的な仮説を持ち、その仮説を検証する形で書かれている本が多い。そのような中で、研究者というよりはジャーナリストの目から見て、イノベーションによる成長企業に何が起っているかをまとめたこの本は、イノベーションのヒントを得る上で、非常に貴重な一冊だと思う。取り扱っている視点もユニークである。企業は、何かとよく取材される企業が多いが、

・キヤノンを支える本社力
・JR東日本の事業創造力
・ホンダのモノづくり基礎力
・トヨタのブランド創造力
・日本精工の部品力
・全日空の構造改革力

という風に独自の視点で取材をし、分析をしている。というか、実はこのテーマは、外部からこれらの企業をみたときに、真っ先に見える顔というのはこの当たりではないかと思う。その意味で、ジャーナリズム本であるし、読んでいて楽しい。

この中で、著者が着目しているのは、トップとのコミュニケーションに裏打ちされた現場力である。例えば、キャノンの本社力であれば、

・トップが現場にいけば、現場は刺激をうけ、張り合いを倍加させる

・全体最適がただのお題目ではなく、会社全体がひとつになって動くような仕組み作りをしなくてはならない

・経営のスピードはコミュニケーションの伝達の速さと深さによる

といったポイントをあげている。

プロジェクトX的な本はあるが、組織の取り組みをこのような視点で取り上げた本は珍しく、ありそうでなかった本。

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2007年4月 2日 (月)

あなたのプロジェクトにペルソナを作ろう!

4478000417_01__aa240_sclzzzzzzz_v2435867 ジョン・プルーイット、タマラ・アドリン(秋本芳伸)「ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ペルソナとは、「仮想ユーザ」のこと。ソフトウエア開発の分野では、比較的、その存在を知られているが、マネジメントの分野ではあまり耳にしない概念である。この本は、「Persona Lifesycle」というタイトルで出版されたペルソナのバイブル的な本で、製品開発を顧客指向にすることを目的に、ペルソナを活用したマーケティング、デザインなどの進め方を書いた本である。

ひと言でいえば、顧客視点でものごとを見るという話なのだが、概念的に思考するにはあまりにも難しい。そこで、実際のデータに基づいて、仮想的なユーザ像を創り上げ、それを使ってシミュレーションを行うことにより、顧客理解をし、顧客満足を得られる商品の製品の骨格作りをする。

アジャイル開発で顧客を現場に取り込むというプラクティス(オンサイトの顧客)があるが、実際には顧客は人間であり、不安定だし、理不尽な面があり、困難を引き起こすことが多い。その点、ペルソナという考え方は、あくまでも仮想として顧客を現場に取り込むため、オンサイトの顧客で狙ったような効果を得ることができる。

この本では、ペルソナライフサイクルを

フェーズ1:「準備と計画」期

フェーズ2:「受胎と妊娠」期

フェーズ3:「誕生と成長」期

フェーズ4:「成人」期

フェーズ5:「功績、再使用、引退」期

で定義して、順番にどのように進めていくかを解説するというスタイルをとっている。

そして、この中で、特に、ペルソナを作っていくフェーズ2を受胎期3ステップ、妊娠期3ステップに分けて非常に具体的に、また、さまざまなノウハウを満載して書かれている。この部分は非常に有益である。また、使い方についても、いろいろな状況を想定して、ペルソナを使って意思決定をしていくかを具体的に説明してあり、この本、1冊あれば、ペルソナを使った製品開発ができるのではないかと思うような本である。

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2007年3月23日 (金)

サービスという活動を見直す

4903241424_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254523 ジェームス・トゥボール(小山 順子、有賀 裕子訳)「サービス・ストラテジー」、ファーストプレス(2007)有賀 裕子

お奨め度:★★★★1/2

サービスマネジメントの専門家であるジェームス・トゥボール博士が、サービスとは何かという問題をきちんと定義し、今後へのソリューションを示した本。

この本に述べられているように、ものづくりとサービスの関係というのはこの20年くらい、ずっともやもやとしてきた問題である。特に、BTOが常識になり、マーケットインが当たり前のように行われるようになって以来、サービスとものづくりの境界が消え、サービス行も製造業も何らかの形での変革を迫られてる。

ところがあまり変わっていない。双方とも、自分の領域だけでビジネスをしようとしている。この現状に対して、この本は、

サービスミックス

サービストライアングル

サービスインテンシティマトリクス

価値創造サイクル

クオリティギャップ

などのツールを提示し、サービスマネジメントとして、サービスとものづくりの融合の方法を提案している。

この本に目を通して、真っ先に進めたいと思ったのはSI企業のマネジャーやシニアマネジャーである。非常に学ぶところの多い本だと思うので、ぜひ、読んでみていただきたい

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2007年3月21日 (水)

トヨタの秘密

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ジェームズ・モーガン (著), ジェフリー・ライカー(稲垣公夫訳)「トヨタ製品開発システム」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタウエイの著者 ジェフリー・ライカーによるトヨタの製品開発システムのエスノグラフィ。日米の研究開発拠点12箇所で40人の開発担当者から延べ1000時間に及ぶ聞き取り調査を実施して書き上げた本。

トヨタウエイについてはこちらの記事を参照。

トヨタウエイの実践

トヨタといえば現場とよい意味で泥臭い改善活動の印象がつよい。しかし、マネジメントの研究者のレベルでは、むしろ、製品開発システムに関心が高かった。東京大学の藤本先生、神戸大学の延岡先生をはじめとし、多くの経営学の研究者がトヨタのシステムを研究し、論文を書いている。実際のところ、初代イプサムに代表されるリードタイムの大幅な短縮など、興味深い点は多い。

それらの本と比べるとこのライカーの本は実務者にとって参考になる。あまり、大きな仮説を設定せずに、エスノグラフィーとして淡々と調査、観察したことが書かれており、本当のところの実態がよくわかる。

チーフエンジニア制度、セットベースのコンカレント・エンジニアリング、平準化プロセスなど、トヨタ独自のシステムが丁寧に解説されているので、読んでいて、上記の論文ではわからないことがわかる部分がずいぶんある。特に興味深いのはこれらの制度の背景にあるルールを以下のような原則としてまとめていることである。

 プロセスのサブシステム:リーン製品開発システム原則の1~4
   原則1 付加価値とムダを分離できるように、顧客定義価値を設定する
   原則2 選択肢を十分に検討するため、製品開発プロセスを設計上の自由度が一番高い初期段階にフロントローディングする
   原則3 平準化された製品開発プロセスの流れをつくる
   原則4 厳格な標準化を使ってばらつきを減らし、フレキシビリティーと予測通りの結果を生む

 人のサブシステム:リーン製品開発原則の5~10
   原則5 開発を最初から最後までまとめるチーフエンジニア制度をつくる
   原則6 機能別専門能力と機能間統合をバランスさせる組織を採用する
   原則7 すべての技術者が突出した技術能力を持つようにする
   原則8 部品メーカーを完全に製品開発システムに組み込む
   原則9 学習と継続的改善を組み込む
   原則10 卓越性とあくなき改善を支援するカルチャーを醸成する

 ツールと技術のサブシステム:リーン製品開発システム原則の11~13
   原則11 技術を人やプロセスに適合させる
   原則12 組織全体の意識をシンプルで視覚的なコミュニケーションで合わせる
   原則13 標準化と組織的学習に強力なツールを使う

ただし、このようなトヨタ方式が有効かどうかを判断するのは読者である。これが有効であるという証拠、論拠はない。唯一あるのは、もうすぐ、世界一の自動車メーカになるだろうということだけだ。

逆にいえば、別の業界の人(たとえば、製薬)がベストプラクティスとして読んでも訳に立つ内容ではないかと思う。

それから、いくつかの開発ケースが採録されている。これらは読み物としても面白い。

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2007年1月12日 (金)

マーケティングにおけるギャップに悩む人必読

4820118455_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983141 石川昭、辻本 篤編「新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント」、生産性出版(2006)

お奨め度:★★★★

編著であるが、研究開発から製品開発、事業開発までバランスよくまとめられており、初心者が読むにも適した製品開発、事業開発のテキスト。

第2章では、戦略実行のための研究開発のあり方について解説されている。特に、マーケティングのさまざまな活動と研究開発活動をどのように関係付けていくかを丁寧に解説している。

第3章では、研究開発における意思決定について解説されている。テーマの選定および、継続中止などの評価と判断をどのように行うかを解説している。

第4章では、マーケティングにおける情報活動について解説している。

第5章では、研究開発活動における情報活動について解説している。

6章以下は、これらの解説を事例によって解説している。「からだ巡礼(TM)」、Webリコメンデーションシステム「教えて!家電」、ロボットの開発などの特徴のある事例を取り上げて解説しているので、とても面白い。

最後に9章では最近注目されている、クレームベースの製品開発について解説している。

経営戦略と研究開発、研究開発と製品開発のギャップに悩んでいる人にはとても参考になる一冊である。

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2007年1月10日 (水)

ERP、CRM、SCMと並ぶEMM

4901234919_01__aa240_sclzzzzzzz_v3496859デイブ・サットン、トム・クライン(高宮治、千葉尚志、博報堂ブランドソリューションマーケティングセンター訳)「利益を創出する統合マーケティング・マネジメント」、英治出版(2006) 

お奨め度:★★★★1/2

マーケティングという概念は分かりにくい部分があるが、それは、製品を企画し、開発し、販売するまでの一連の活動すべてであるにも関わらず、それらを体系的に取り扱う手法がないためである。

このため、ステージ間の連携においては、ヒューリスティック頼りの側面が強く、これがマーケティングはアートとサイエンスが混在しているといわれる一因になっている。

この本で提案されているEMM(エンタープライズ・マーケティング・マネジメント)は、これらの活動を統合的に扱うために考えられた手法である。統合的に使おうとするために、マーケティングのさまざまなステージにおける活動はすべて必然性と論理性が求められるようになり、これにより、マーケティングはサイエンスになる。

コトラーはこの本で紹介されているサットンとクラインの仕事を、「ERP、CRM、SCMと並ぶ効果効率の高い収益力のある事業運営のプラットホーム構成要素のひとつ」だと称している。

製品開発に関わる人は必読の一冊である。

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2006年12月 4日 (月)

待望のプロダクトマネジメントハンドブック

4798111929_01__aa240_sclzzzzzzz_v3663775 Linda Gorchels(新井宏征訳)「プロダクトマネジャーの教科書」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

欧米では定番のプロダクトマネジメント本の一冊。プロダクトマネジメントの仕事を「プロダクトマネジャーのハンドブック」という切り口で整理している。

プロダクトマネジメントは、日本ではあまり、なじみのない概念であるが、製品カテゴリーの展開に責任を持ち、また、同時に個別の製品開発プロジェクトにプロジェクトスポンサーとして関わるマネジャーである。製品カテゴリーをプログラムだと捉えれば、プログラムマネジャーである。

この範囲で必要な知識は極めて膨大である。この本はそれを網羅しているので、さしむき、「ポーフォリオ」的な意味合いの強い一冊である。

第1部は戦略計画について述べている。第1章の戦略立案フレームワークから始まり、市場調査、競合分析、ブランド戦略、コスト戦略などについて書かれている。第2部は製品計画と戦略実行で、戦略的成長、新製品開発プロジェクト、市場投入戦略、製品管理、顧客管理について書かれている(詳細は目次参照)

第3部は多少趣が変わり、プロダクトマネジャーのリーダーシップについて書かれている。

本の構成として、すべての項目について簡単なチェックリストでプロダクトマネジャーとしての仕事がチェックできるようなつくりになっている。また、章末に14人のプロダクトマネジャーへのインタビューが採録されている。このインタビューを読むことによって、スキルポートフォリオのイメージが明確になるだろう。その意味でとても重要な要素になっている。いずれにしてもハンドブックとしてはよくできているし、プロダクトマネジメントが何かを知らない人が読んでイメージを作る、あるいは、プロダクトマネジメントの実務に関わっている人が自分の行っている仕事を体系的に整理するにはもってこいの一冊である。

一方で、あくまでもハンドブックであるので、この本1冊でプロダクトマネジメントに必要な知識のすべてが身につくと考えるのは早計。この本に書かれている活動をしようと思えば、多くのスキルを必要とする。戦略理論、マーケティング、プロジェクトマネジメント、ブランドマネジメントなどだ。ちょうどプロジェクトマネジメントのPMBOKのようなイメージで読むのがよいだろう。

実際にこの本の書かれているような仕事のやり方を手っ取り早く身に付けたいという方には、同じ著者の

0071410597_01__bo2204203200_pisitbdp500aThe Product Manager's Field Guide: Practical Tools, Exercises, and Resources for Improved Product Management

がお奨めだ。ただし、英語。この本も翻訳してほしいなあ~。

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2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

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