「プロジェクトマネジメントに携わる人に読んでほしい本」2010年版
1月13日の毎年の恒例になっているビジネス書の杜のアワードを発表しました。ジェームズ・クーゼスの「リーダーシップ・チャレンジ」です。
ジェームズ・クーゼス、バリー・ポズナー(金井壽宏監訳、伊東奈美子訳)
「リーダーシップ・チャレンジ」、海と月社(2010)
リーダーシップの本としては定番のテキストで、数多くの事例から、どのような状況でのリーダーシップにも必要なところを抽出したLSBOK(LeaderShip Body Of Knowledge)とでも呼びたくなるような本です。もちろん、ガイドブックではなく読み物ですので、PMOBKのような読みにくさはありません。
昨年一年間に出版された本を振り返ってみて、この本以外にもプロジェクトマネジメントに関わる人に読んでほしい本を数冊ピックアップしてみました。
まず、最初は、QCD、特に品質に対する高いコミットメントが求められるプロジェクトマネジャーや、PMOのスタッフの方に読んでみてほしい本です。
遠藤功「「日本品質」で世界を制す! 」、日本経済新聞社(2010)
遠藤先生は現場力革命で著名な先生ですが、品質について、もう一度一から考え直し、今、求められている品質マネジメントとはどのようなものかを書かれています。特に、知覚品質(情緒的品質)の取り扱いについて踏み込んだ提案をされています。
2冊目は、一昨年あたりから盛んに「人間力」がいわれるようになってきています。悪いことではないのですが、かつてのリーダーシップがそうだったように、なんでもかんでもうまく行かないものは人間力だというのは危険ですし、無意味です。その中で、では人間力の本質は何かというと「インテグリティ」だと思います。
昨年、プラネットの中嶋さんの訳で、ヘンリー・クラウドのIntegrityが出版されました。必読です。
ヘンリー・クラウド(中嶋 秀隆訳)「リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質」、日本能率協会マネジメントセンター(2010)
それから、対人スキルの名著の翻訳もでました。ヒューマンスキルに悩む方は必読ですね。これを3冊目とします。
ロバート・ボルトン(米谷 敬一訳)「ピープル・スキル 人と“うまくやる”3つの技術」、宝島社(2010)
4冊目は、イノベーションを求められる人に。イノベーションの本質はどこにあるかと考えたときに、「デザイン思考」というのがもっとも現実的な答えではないかと思います。ここでいうデザインは工業デザインや意匠の意味ではなく、もっと広い意味で、「知識の編集」のような意味です。
イタリアでは、もともと、プロジェクトという言葉はありませんでした。同じニュアンスで使っていた言葉はデザインで、そこから、プロジェット(突き抜ける)という言葉が生まれてきました。
イタリアのプロダクトデザインを見ると感じることは、そこに内包しているものがあることです。例えば、普段使いする道具であれば、そこにライフスタイルが内包されています。単に、奇抜だとか、斬新だとかといったコンセプトでデザインをされているわけではありません。車や鞄、家具のような耐久材だと文化が内包されていると感じることがよくあります。
そのような意味で、これからグローバルなイノベーションを起こして行くには、デザイン思考がキーになるのは間違いないと思われます。
野中先生と一緒に知識創造の仕事をされている紺野さんが、デザイン思考の本を出されました。
紺野 登「ビジネスのためのデザイン思考」、東洋経済新報社(2010)
とくにプロジェティスタを目指す人には、この本はお薦めです。
それから、昨年は久しぶりに読むに値するプロジェクトマネジメントの本が出てきました。それも2冊です。
1冊は、P2Mの本です。といっても、P2Mそのものがそんなにカチッとしたフレームワークではありませんので、一般的なプログラム・プロジェクトマネジメントの本だと考えてよいと思います。
清水 基夫「実践プロジェクト&プログラムマネジメント」、日本能率協会マネジメントセンター(2010)
もう1冊。こちらは新書でコンパクトな本ですが、今、プロジェクトマネジャーに求められる視座からプロジェクトマネジメントを解説したとてもよい本です。これからプロジェクトマネジャーになっていく人が最初にこの本を読めば世の中が変わっていくような期待を持たせる本です。もちろん、ベテランのプロジェクトマネジャーの方にも役立つと思います。
関 哲朗「すぐわかるプロジェクトマネジメント」、日本規格協会(2010)
以上が5冊目と6冊目です。
話は変わりますが、弊社の研修に、プロジェクトマネジャーのあるべき姿を描いて貰うプログラムがありますが、最近の傾向として、ポジティブさを上げる人が増えてきています。日本人の思考回路は
ポジティブ=危機感がない、ネガティブ=危機感がある
という方程式が長年支配してきましたが、さすがにここにきて、これが間違いだと気付く人が増えてきました。
その結果、危機感を孕んだポジティブというのが求められるようになってきています。ところがこれは非常に難しい。頭で考えるだけではまず、できません。そこで、トレーニングが必要になります。そのトレーニングに最適な本がでました。これが7冊目です。
タル・ベン・シャハー(成瀬 まゆみ訳)「ハーバードの人生を変える授業」、大和書房(2010)
以上、アワードも含めて8冊を昨年出版された本から、プロジェクトマネジメント関係者の方にお薦めしたいと思います。
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