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2007年8月

2007年8月31日 (金)

なぜ、あなたは、自ら「重責」を負うのか

4569692311 田坂 広志「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか 人間の出会いが生み出す「最高のアート」」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★1/2

すべてのマネジャーに呼んでほしい素晴らしい本。田坂ワールドの集大成ともいえる一冊。

僕はビジネス書を読むときに、感情移入せずに読むように心がけているが、この本は、はやり、知識や意見として参考になるだけではなく、やはり、共感を覚える部分が極めて多い。

内容もさることながら、まずはタイトルが素晴らしい。田坂先生は自身著書で言霊のことを書かれていることからもわかるように、言葉をとても大切にされている方だ。

4492554718 田坂 広志「経営者が語るべき「言霊」とは何か」、東洋経済新報社(2003)

この本のタイトルは、田坂流のマネジメントへの賛美だろう。むかし、細腕繁盛記という連続ドラマがあった。このドラマのオープニングのナレーションは「銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」というナレーション。これも商売というものに対する賛美だと思うが、この田坂先生の言葉も同じようなニュアンスを感じる。

さて、この本では、「マネジメントの道を歩む方々へ」として、まず、以下のような問いかけから始まる。

「なぜ、あなたは、自ら「重責」を負うのか」

という問いかけから始まる。田坂先生の言われる重責とは「部下や社員の人生」であり、「部下の成長を支える覚悟」である。こんな苦しいのに、どうして、人はマネジメントの道を歩むかという問題提起で、マネジメントの素晴らしさを伝えようとしている一冊だ。

内容については先入観なくじっくり読んでほしいので、あまり書かない。一言でいえば、自分のキャリアを明確に意識し、キャリア発達を実現するためのマネジャーの道を歩む。そして、それは、コミュニケーションを通じて、部下の自立を促すことにより実現できるものだ。

非常によい言葉がちりばめられた本であるので、隙間時間で読むのではなく、まとまった時間をとって、噛みしめながら読んでほしい本だ。

この本を読んで、思い出した本がある。このブログでも紹介したことがあるが、ジョセフ・バダラッコの「決定的瞬間の思考法」だ。

4492531793 ジョセフ・バダラッコ(金井寿宏、福嶋俊造訳)「「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために」、東洋経済新報社(2004)

この本も、マネジャーが重責を担う中で、キャリアを変えかねない瞬間にどのような意思決定をすべきかをかいた本。この本も併せて読まれることをお奨めしたい。

2007年8月29日 (水)

ヒューマンスキルの基本としての人間関係づくりをマスターしよう

4760830251 星野欣生「人間関係づくりトレーニング」、金子書房(2002)

お奨め度:★★★★

人間関係作りのポイントを取り上げ、エクスサイズを通じて、気付きを得ながらポイントを掴んでいくスタイルのトレーニングブック。

ポイントとしてあげているのは

・つきあい
・好き、嫌い
・思い込み
・わかちあう、こたえる
・話す、きく
・みる
・感じる
・わかる
・トラブル
・ひらく

の10個。それぞれについて、含蓄のある簡単な講義、エクスサイズ、エクスサイズの振り返りのプロセスシートという構成になっている。

これらに対して、アプローチの視点として

つきあい―人が持っている「枠組み」
好き、嫌い―価値観とは
思い込み―日常生活は「思い込み」でいっぱい
わかちあう、こたえる―コミュニケーションって何だろう
話す、きく―コミュニケーションの実際
みる―サインとしてのからだ
感じる―感情表出のさまざまな形
わかる―人が人を理解すること
トラブル―葛藤とのつきあい方
ひらく―自己開示とフィードバック

の視点を持ち込み、気付きを与えている。

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2007年8月27日 (月)

楽しくないプロジェクトは成功しない

4584130078 米光一成「仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本」、KKベストセラーズ(2007)

お奨め度:★★★1/2

「ぷよぷよ」のクリエーターが書いたプロジェクト論。どうすれば、クリエーターの仕事が楽しくできるかをロールプレイゲーム風に書いている。

内容的には、トム・ピーターズの「セクシープロジェクト」に近い。

4484003120 トム・ピーターズ(仁平和夫訳)「セクシープロジェクトで差をつけろ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 <2>) 」、阪急コミュニケーションズ(2000)

クリエーター向けだが、書いてあることは全てのプロジェクトに共通することではないかと思う。

・チーム編成の考え方と運用

・ミーティングを使ったパフォーマンスの向上

・アイディアの引き出し方と、マネジメント

・リーダーシップのあり方

など、特に、チームマネジメント分野の話が多いが、非常に参考になることが多い。

トム・ピーターズの本を読んでも同じことを感じるのだが、プロジェクトというのは仕事である。仕事を楽しくやるということを考えないで、動機を高めるといったプロジェクトマネジメントの考え方はナンセンスだろう。

そんなことを改めて考えさせてくれる一冊である。プロジェクトリーダーに限らず、楽しく仕事をしたいと思っている人はぜひ読んでみてほしい。

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2007年8月24日 (金)

組織学習の全てがわかる!

4478001561_2 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編訳「組織能力の経営論~学び続ける企業のベスト・プラクティス」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★★

30年前にアージリスが学習する組織を提唱し、その後、さまざまな研究が行われてきた。そして、90年代になり、ピーター・センゲが「学習する組織」の概念を体系化したのをきっかけに、学習する組織がマネジメントの中心課題の一つになってきた。

この本はこの問題に対して、さまざまな角度から出てきた理論をまとめた本である。ダブル・ループ学習、ディープ・スマート、T型マネジャー、知識創造企業、場などの誰でも知っている理論のオリジナルの著作がずらっと並んでいる。興味のある人は一度は読んでおくとよいだろう。

また、ピーター・センゲの「最強組織の法則」を読んでいない人は、併せて読むと、それぞれの位置づけが明確になってよいと思う。ぜひ、併読をお奨めしたい。

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2007年8月22日 (水)

アイディアを実行に移す思考法

4887595751_2 ポール・スローン(ディスカバー・クリエイティブ訳)「イノベーション・シンキング」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★1/2

著者のポール・スローンは日本では水平思考のゲーム学習書「ウミガメのスープシリーズで著名なコンサルタントだ。

4767803322 ポール・スローン、デス・マクヘール(クリストファー・ルイス訳)「ポール・スローンのウミガメのスープ―水平思考推理ゲーム」、エクスナレッジ(2004)

4767804647 ポール・スローン、デス・マクヘール(大須賀典子訳)「ウミガメのスープ(2)~腕を送る男」、エクスナレッジ(2005)

4767805112 ポール・スローン、デス・マクヘール(大須賀典子訳)「ウミガメのスープ(3)~札束を燃やす強盗」、エクスナレッジ(2006)

4767805708 ポール・スローン、デス・マクヘール(西尾 香猫訳)「ウミガメのスープ(4)~借金を踏み倒せ」、エクスナレッジ(2007)

水平思考は論理的な段階を踏むことにより、問題に対する新しい見方を発見することで、日本語でいえば、視野が広いといわれる人が身に付けているような思考方法だ。ポール・スローンのウミガメのスープはこれをドリル形式で身につけようとするシリーズで、自分に必要だと思う人はぜひ取り組んで見られるとよい。

さて、そのポール・スローンが新機軸として提唱しているのが、イノベーション・シンキングである。単純にいえば、水平思考を活用することによって、新しいアイディアを採用し、実行に移していく方法がイノベーションシンキングである。

この本では、まず、パート1で、イノベーションシンキングのために必要な水平思考のスキルを10個に整理している。以下の10個だ。そして、それぞれについて、そのようなスキルを養うためのゲームを示している。

スキル1 前提を疑う
スキル2 探り出す質問をする
スキル3 見方を変える
スキル4 奇抜な組み合わせをしてみる
スキル5 アイデアを採用し、応用し、さらに改良する
スキル6 ルールを変える
スキル7 アイデアの量を増やす
スキル8 試してみて、評価する
スキル9 失敗を歓迎する
スキル10 チームを活用する

次にパート2では、イノベーションシンキングを行うことのできるチーム構築のためにビジョンを描き、伝える方法を具体的に述べている。また、その仮定でありがちな誤ちについて指摘し、その解消方法を示している。

1冊よめば、イノベーション・シンキングのトレーニングができるような構成になっているので、イノベーションの必要性を感じている人にはお奨めした一冊だ。

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2007年8月20日 (月)

厳しいスケジューリングで使えるノウハウ満載!

4062810999_2 野村正樹「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」、講談社+α文庫(2007)

お奨め度:★★★★1/2

あまり知られていないが、昨年、発表されたPMIの標準に

1930699840 Project Management Institute「Practice Standard for Scheduling」、Project Management Institute(2007)

がある。内容的にはPMBOKのスケジューリングマネジメントをベースにして、スケジューリングのさまざまな工夫(プラクティス)を体系的に整理してあるので、スケジュールを作る際にも便利だし、また、暇なときに目を通しておくと、PMコンピテンシーの向上にもなるお奨めの一冊である。

で、実はこの記事のお奨め本はこの本ではない。野村正樹さんが書いた「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」。この本はそのタイトルのとおり、鉄道ダイヤで使われているプラクティスを説明し、ビジネスやプロジェクトのスケジューリング(タイムマネジメント)に応用しようというもの。これがなかなか、よい。例えば、多忙に対応するプラクティスとして

・同じ種類の仕事を集める(2分間隔で電車が走れる秘密)

・メンバーの力を同じレベルに揃える(「のぞみ」と「こだま」)

・パターン化で時間を短縮(浜松・遠州鉄道の秘策)

・事前チェックとクッション時間を忘れない(不便な東京地下鉄の乗換駅)

といったテーマで、鉄道のダイヤスケジューリングのノウハウがいろいろと書いてあるのだ。

さらに、スケジュールに関するリスクについても書かれている。

・東京駅ホーム先端のなぞ

・秋葉原駅の不思議な線路

など。個々をとれば、いわゆるタイムマネジメントハウツー本に書いてあるような内容が並んでいるのだが、この本を読むメリットは、鉄道での原理の説明があるので、理屈がわかり、応用が利くこと。また、鉄道が好きでなくても頭の体操的に楽しく読める。

で、冒頭のPMIに話に戻る。この本を引き合いに出したのは、PMIのスタンダードに書かれているプラクティスのかなりの部分が、この本には書かれているのだ。

日本の鉄道は、世界に誇るタイムマネジメントをしているといわれるが、まさに、それを証明した格好の一冊である。

スケジュールがきついときに、無理に余裕をとろうとするのは落とし穴だ。合理的な工夫をすることによって、厳しいスケジュールでやるほうが楽。日本の鉄道の時間密度は世界一で、その意味で、厳しいスケジューリングのノウハウの塊である。

厳しいスケジュールのプロジェクトを担当し、時間に悩むプロジェクトマネジャー必読!

2007年8月17日 (金)

ホワイトカラーの生産性マネジメントの切り札

4382055717 坂本裕司「ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント―HPTの実践マニュアル」、産業能率大学出版部(2007)

お奨め度:★★★★

経営コンサルタントである著者が、MBA時代の経験、コンサルティングの経験、諸先輩から学んだ経験を集大成し、独自に纏め上げたマネジメント技術HPT(Human Performance Technology)を開示した一冊。

IEのホワイトカラー版というイメージだと言っているが、プロジェクトマネジメントを業務に適用するとこんな感じになるという意味で興味深い。もちろん、ツールは著者のオリジナリティにあふれるものだ。

HPTの中核概念は、PND(Performance Next Door)という概念にあるが、この概念は、現状のパフォーマンスレベルで達成可能なレベルを超える目標を掲げ、ビジョンを明確にし、目標達成のために戦略を練り、組織機能を明確にし、プロセスを改善することによりその目標を達成しようとする考え方。そのために考案されたさまざまなツールが紹介されている。

特徴的であるのは、IEを意識しているだけあり、非常にツールが現場的であること。すぐにでも使えるようなレベルのツールである。非常に体系的に整理されている。

フレームワークとしては少し複雑すぎるきらいがある。加えて本の書き方が簡潔であるため、実践のパートはIEだとか、プロジェクトマネジメントのバックグランドがない人が読むと理解に苦労する部分があるのではないかとも思う。

むしろ、本として読まずに、ツールを中心に追いかけていくとよいかもしれない。

また、HTPの実践を行うに当たってトップとメンバーの役割についても明確にし、必要なスキルを解説している。この点も含めて実践的であるので、ホワイトカラーの方にはぜひお奨めしたい一冊である。

2007年8月15日 (水)

成功事例で学ぶ顧客視点に立った成長

4903241580 江口一海、矢野英二、木島研二、郷好文「顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点」、ファーストプレス(2007)

お奨め度:★★★★1/2

顧客中心型経営手法を3つのコンセプトと事例を中心にしてまとめた一冊。

3つの活動コンセプトとは

・顧客価値の本質を実現する、顧客との接点を再編する活動
・顧客価値の本質にマッチする商品とサービスを提供する活動
・売り方と商品が実現する価値を顧客網上に構築する活動

の3つであり、序章では、この3つを、iPod、日亜LED発光ダイオード、キーエンス、デル、スターバックス、ユニクロ、アサヒビール、などのよく知られたベストプラクティスから導きだしている。

その後、第1部では、事例研究編として、コエンザイムQ10サプリメント、新幹線インバーター装置開発の2つのケーススタディでこの3つの活動コンセプトを分析している。

第2部は実践編ということで、この3つの活動コンセプトを実現するための事業モデル、成長シナリオについて提案している。

読みモノとしても面白いし、顧客価値の本質がどこにあるのか、自社のコンピタンスをその本質にあわせこんでいくにはどうすればよいのかについて多くの気付きを与えてくれるよい本である。

また、新幹線のインバーターの開発の事例はプロジェクトマネジメントの視点からも、顧客視点にたった場合に、トレードオフのマネジメントをどうするかといった重要な問題に対するたいへんよい答えになっているので、事業マネジャーだけではなく、プロジェクトマネジャーにとっても得るところの多い一冊である。

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2007年8月13日 (月)

日本のプロジェクトマネジメントオフィス

4883732460_2 仲村薫編著「PMO構築事例・実践法―プロジェクト・マネジメント・オフィス」、ソフトリサーチセンター(2007)

お奨め度:★★★★

日本では初のプロジェクトマネジメントオフィスに関する実践的な解説書。

アルテミスの仲村薫さんの編著で、仲村さんがまず、PMOの基本事項の解説をし、事例を各事例企業の人が書くというスタイルをとっている。取り上げられている事例は

・オムロン パスネットプロジェクト
・日立製作所 情報通信グループ
・三菱電機インフォメーションシステムズ
・NEC
・A社(失敗事例)
・自動車メーカ(マルチプロジェクトマネジメント)
・医薬品企業(開発管理)
・日本IBM研究開発部門

である。

次に、PMOの重点活動ということで

・プロジェクトマネジャーの育成
・ポートフォリオマネジメント

の2項目について、詳細な解説を事例を交えて行っている。解説はわかりやすく、また、事例が入っているので明確なイメージができる。

やっと日本人の書いたPMOの本が出てきた。それも、日本らしく、事例という形。

これまで、訳本では、仲村さんの翻訳された

4820117408_2 トーマス・ブロック、デビッドソン・フレーム(仲村 薫訳)「プロジェクトマネジメントオフィス―すべてのプロジェクトを成功に導く司令塔プロジェクトオフィスの機能と役割」、生産性出版(2002)

や、PMI東京の永谷事務局長がプロジェクトマネジャーを勤める翻訳チームが翻訳した

4885387086 ジョリオン・ハローズ(PMI東京訳)「プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット」、テクノ(2005)

などの良書があったが、やはり、日本の組織に米国のPMOの流儀をそのまま持ち込むことは難しい。

その意味で、この仲村さんのまとめられた本は特別な意味があるのではないかと思う。

半年くらい前に、米国で出版事業をやっている知人から、プロジェクトマネジメントに関する出版点数に対してPMOの本がないのはどういうことだと聞かれたことがある。異様に感じるといっていた。ちなみに、米国ではプロジェクトマネジメントの本が500冊、PMOの本が50冊程度出版されており、このくらいの割合が普通ではないかといっていた。

これを契機に、日本でもPMOの本がどんどん、出てくることが望まれる。

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2007年8月10日 (金)

本物のリーダーを目指す人必読

4820118684 ビル・ジョージ、ピーター・シムズ(梅津祐良訳)「リーダーへの旅路―本当の自分、キャリア、価値観の探求」、社会経済生産性本部(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ハーバード・ビジネススクール教授が125人のリーダーたちに行った詳細な面接調査をした結果から、キャリア、ライフ・ストーリーから、自分の価値観、プライオリティという視点から、リーダーシップとは何かを考えている。

リーダーシップに対しては、ステレオタイプの議論より、フィールドワークによるあぶり出しから、いろいろなことがわかることを改めて実感させてくれる。追求しているのは、本物のリーダシップとは何かという問題。そして、それをどのように探求していくかという問題。

これらの問題に対して、125人のインタービュー結果が非常に多くのことを雄弁に語ってくれる。どれを読んでも、トレーニングだけでリーダーシップが身につくという幻想を打ち破ってくれる。文字通り、リーダーシップの開発は旅であることを痛感させられる。

ちょっと高い本ですが、本物のリーダーになりたいと願う人、ぜひ、読んでください!値段以上に多くのものが得られるでしょう。

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