「仕事を任せる」ための本
トーマス・L・ブラウン(森理宇子監訳、柴田さとみ上坂 伸一訳)「 「権限委譲」で、抱え込んでる仕事を部下に任せる」、ファーストプレス(2008)
お薦め度:★★★★1/2
権限委譲は、リーダーシップやマネジメントの本では必ず出てくるが、本1冊権限委譲というのは珍しい。それも権限委譲による組織の活性化だとか、人材育成だとかそういう話ではなくて、100ページの親書に純粋に権限委譲のテクニカルスキルがまとめられている極めて実践的な本。
トーマス・L・ブラウン(森理宇子監訳、柴田さとみ上坂 伸一訳)「 「権限委譲」で、抱え込んでる仕事を部下に任せる」、ファーストプレス(2008)
お薦め度:★★★★1/2
権限委譲は、リーダーシップやマネジメントの本では必ず出てくるが、本1冊権限委譲というのは珍しい。それも権限委譲による組織の活性化だとか、人材育成だとかそういう話ではなくて、100ページの親書に純粋に権限委譲のテクニカルスキルがまとめられている極めて実践的な本。
野田 稔+ミドルマネジメント研究会「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」、ダイヤモンド社(2008)
お薦め度:★★★★★
日本の高度成長を支えてきたミドルマネジメントが崩壊しつつある現状を丁寧に分析し、再生のための提言をした一冊。
中嶋秀隆、津曲公二「 [改訂版]実践! プロジェクト・マネジメント」、PHP研究所(2008)
お薦め度:★★★★
著者の中嶋秀隆さんが代表を務めるプラネット株式会社が展開するプロジェクトマネジメントの10ステップを簡潔に解説し、各ステップの勘どころと、10ステップを成功させるために必要なポイントについて解説した1冊。
佐藤通規、金澤透「ハイリターン・マネジャー」、東洋経済新報社(2008)
お薦め度:★★★★★
課長本にぶつけてきたわけでもないのだろうが、プロジェクトを中心に業務を遂行している組織の中間管理職は何をすべきか、どのようなスキルを持つべきかを具体的に示したマネジャー本。
久手堅 憲之「日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由」、技術評論社(2008)
お薦め度:★★★1/2
現場の視点から、日本のソフトウェア産業の問題を指摘した一冊。7人の男(賢者?)が対談をし、その内容を著者がうまくまとめている。7人はいずれも、業界では著名な識者で、
西田雅昭さん(自営、カリスマプログラマ)
田倉達夫さん(技術コンサルティング)
中野雅之さん(アクセンチュア調達統括)
庄司敏浩さん(フリーのITコーディネータ)
相楽賢哉さん(ITコンサルティングの会社経営)
三笠大和さん(流通システム開発コンサルティング、プロマネ)
手久堅憲之(ITコンサルタント)
の7人。文中の指摘を見ても、いずれもたいへん高い見識を持つことがうかがえる。
ベナム・タブリージ(新井宏征訳)「90日変革モデル 企業変革を加速させる3つのフェーズ」、翔泳社(2008)
お薦め度:★★★★
原題:Rapid Transformation:A 90-day Plan for Fast Effective Change
最初に手前ミソな話になって恐縮だが、われわれが提唱しているスキームの中で、90日間がキーワードになっているものが2つある。ひとつは、「プログラムマネジメント」のスキームであり、そして2つ目はそのプログラムマネジメントのスキームを応用したプロジェクトマネジメントの導入・定着化スキームである。いずれも、変革のマネジメントであるが、90日間に拘っているところに経験的な意味がある。それは、変革に巻き込む人のモチベーションを最初の掛け声だけで維持できる限界が90日くらいだと思われるからだ。その意味で90日で何らかの成果を出すということがきわめて重要なことだ。この成果がなくては、求心力が弱くなり、変革は絵に描いた餅になる可能性が高くなる。
さて、この本だが、この90日の間に、クロスファンクショナルチームを作り、
フェーズ1:診断(30日)
フェーズ2:未来を描く(30日)
フェーズ3:準備をする(30日)
という3つのフェーズを実行することによって、
・参加型の変革
・包括的かつ統合的な変革
・迅速な変革
を実現しようというものである。ここで述べられているフェーズは、変革の期間ではなく、そのシナリオを計画と描く期間である。その後、変革実行を6~12か月で行うとされている。
このモデルの近い事例として、3M、ベリサイン、ベイネットワーク、アップル、ACIなど56ケースの事例から、その有効性を説いている。
本書では、まず、最初に変革の準備として何をすべきかを述べた上で、変革の取り組み体制であるクロスファンクショナルチームについて、なぜ、クロスファンクショナルチームがよいのか、そして、どのようにクロスファンクショナルチームを結成して、変革に取り組んでいくかを解説している。
次に各フェーズについてその詳細を解説するとともに、上の事例で、各フェーズにおいて、何をやったかをプラクティスとして紹介している。そして、90日間で、変革の実行をするにあたって、どのような点に留意すればよいかを説明している。
訳者があとがきに書いているように、ここで展開されているモデルは、変革手法として一般的に述べらているものとそんなに大きな違いがあるわけではない。ただ、非常に評価できるのは90日間というスケジュールの設定をしている点も含めて、非常に具体的である点だ。どのような会議を開くか、その会議でどのようなアジェンダを議論するかまで含めて説明されている。その点で、非常に実践的な本である。
特に冒頭にも述べたように、90日を如何に合理的、かつ、効果的に活動するかは極めて重要であり、そこにこれだけ具体的な方法論を提供してくれる点で素晴らしい本だと思う。
志波浩太郎、克元亮「プロジェクトのリスクに勝つ! SEのためのトラブルシューティング」、日本評論社(2008)
お薦め度:★★★★
ITプロジェクトで起こるトラブルについて、予防と消火の両面から対処していく方法をPMBOKのプロジェクトマネジメント体系を意識しながらまとめた1冊。
本書で議論しているリスクは、
(1)計画リスク
(2)実行リスク
(3)技術リスク
(4)ステークホルダのリスク
の4つ。計画リスクでは、
・あいまいなプロジェクト目標
・開発範囲や見積もりのミス
・無理なスケジュール
の3つに起因するリスクを取り上げ、どのようなトラブルが発生するか、そして、どのように予防し、どのように対処すればよいかを事例をあげながら解説している。
実行リスクでは、
・進捗遅れ
・品質悪化
・コスト超過
の3つについて同様の解説をしている。また、技術リスクでは、
・ユーザ要件の把握ができない
・設計書の品質が悪い
・製品技術が未成熟
の3つについて論じている。さらに、ステークホルダのリスクでは、
・契約形態
・体制と役割
・コミュニケーションの問題
について議論している。
さらに、このような一般的な議論に加えて、大規模なプロジェクト特有の問題をはじめとするプロジェクトの属性に依存するリスクの取扱いについても解説している。
リスクマネジメントはSI業界においては最重要事項として認識されており、研究、実践とも相当進んでいる企業が多い。本書の個々の指摘事項や対処へのアドバイスはよく言われているものが多く、その意味でベテランのプロジェクトマネジャーが読んでもあまり新しい発見はないかもしれない。
しかし、この本は非常にうまくまとめている。ひとつは編集上の工夫により、読み物にもなるし、ある程度、ガイドブック的にも使えるようになっている。これからプロジェクトマネジメントをする人や、ある程度経験してきたことを整理したい人には適した一冊である。
もう一つは、リスクマネジメントということでひとくくりにせずに、予防と消火という2つの視点から対処をまとめているのは非常に有用だと思われる。ベテランマネジャーもこういうマインドセットを持つべきだと思うし、この点ではベテランのプロジェクトマネジャーにもぜひ、読んでいただきたい一冊である。
村中 剛志「 「先読み力」で人を動かす~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント」、日本実業出版社(2008)
お薦め度:★★★★
プロアクティブという概念はプロジェクトマネジメントで真っ先に出てくる概念である。にもかかわらず、説明に苦労する。日本語では、この本でつかわれている「先読み」とか、「先手必勝」とか「用意周到」とかそんな言葉を当てている人が多いが、ピンとこないという人が多い。
この本は、それを見事に、(一般的な)リーダー向けの行動レベルで書き切っている。特に、個人レベルの話もさることながら、チームマネジメントの方法を述べた第3章は非常に参考になる。プロアクティブとは何かという以前に、この本に書いてあるようにやることがプロアクティブだと言えるようなレベルまで落とし込んであるのは素晴らしい!
本書では、まず、最初にプロアクティブ(先読み)するというのはどういうことかを業務効率やコストなど、いろいろな視点から説明している。
第2章以降は、たいへん、具体的だし、著者の持つノウハウを惜しみなく出してあり、分かりやすい。第2章は個人レベルのタイムマネジメントを具体的なツールとともに、示している。基本は段取り変えを如何になくすかにある。それを著者の独特のノウハウとツールで説明するとともに、実行する際にポイントになるところを丁寧に解説している。
第3章は冒頭にも書いたチーム編である。ここでは、3週間スケジュールとTOP5というツールを使い、チームでの情報共有によって、プロアクティブな段取りのコントロールを行う方法を説明している。さらに、原理を示すだけではなく、実践編として、実際にチームとしてそのような活動に取り組んでいく際の普及ステップまで示されており、たいへん、実践的である。
4章はミーティングマネジメントを如何にプロアクティブにしていくかについて、これまた、さまざまな工夫が紹介されている。基本的にはアジェンダ管理をプロアクティブに行うような仕組みになっている。
第5章はステークホルダマネジメントをプロアクティブに行う際の留意点。内容的には相手に求められる前に対応することが基本。レポートマネジメント、事前相談などについて述べられている。こちらは2~4章と比べると若干、Tips的である。
第6章ではリーダーのこころということで、「リードする」、「援助する」、「感謝する」という3つのこころがプロアクティブな行動を可能にするという著者の信念のようなものを書いている。
最後のまとめとして、村中さんはプロアクティブとは、思考法でも、マインドでも、リスク回避でもない。考え方、心構え、スタイル、姿勢であると書いている。結局、プロアクティブとは、個別の行動や思考、思考にたいして、これはプロアクティブ、これはリアクティブという風に考えていくものなのだろう。そういう意味で、プロアクティブとは何かという根本的なもやもやは消えないかもしれないが、すっきりするのではないかと思う。
最後に一つ、よけいなことを書いておく。この本で、プロアクティブの必要性として例に使っている例え話を僕もよく使う。野球で守備位置をバッターによって変え、常に真正面で捕球する野手と、常に横っとびで派手に捕球する野手はどちらがファインプレイをしているかという話だ。セミナーなどのつかみでこの話をすると、必ず、出てくる意見は「評価されるのは後者」とおうものだ。
もちろん、おかしいのだが、プロフェッショナルでない多くの日本組織では、この話は個人とかチームだけで切り離しできる話ではないのだ。組織もプロアクティブという「価値観」を持ち、顧客もまた同じ価値観を持っていないと、ジレンマが起こりかねない。非常に実践的な本なので、すぐにやってみる人もいると思うので、あえてその点をコメントしておきたい。特にチームマネジメントの中で実践する際には要注意だ。もちろん、その覚悟を持って実践してほしいという意味である。
林 衛「情のプロジェクト力学」、日本実業出版社(2008)
お薦め度:★★★★
プロジェクトマネジメントというのはマネジメントであり、経験的なアプローチや体系的なアプローチではだめで、そこに人がリーダーシップとコミュニケーションをうまく作用させる必要があることを読み物的に書いた一冊。
こういう話というのは誰も感じていないわけではなく、プロジェクトマネジャーが何人か集まれば、必ずといってよいくらいそんな話になる。井戸端会議的なアジェンダ設定で議論するのは楽しいテーマなのだが、これまで本がなかったのは体系的に整理することが難しいからだと思う。それを見事にやってのけた林衛さんに拍手したい一冊だ!
林さんの考えは、この問題の本質は人であり、人が作る組織である。したがって、如何に人が成長し、それによって組織が成長するかか、プロジェクト成功のカギになるというもの。この体系の中で、プロジェクトの本質を考え抜けとか、丁寧に訊けとか、技術センスを身につけろなどといったさまざまな要素を実にうまく整理している。
その際に、「情」が必要だと言っているところが林さんの真骨頂ではないかと思う。
「これからのビジネスパーソンは、論理を身につけた上で、情の大切さを知り、柔軟な思考で行動することが大切だ」
と言っている。そして、日本人は元来、論理と情をうまく使い分けできるのではないかと言っている。そして、システムが複雑になってくると論理だけではうまくいかなくなると言っている。
頭の中ではこの話は分かる。要するに大規模、複雑化してくると、論理的な整合性を保つのが難しくなるからだ。この下りを読んでいてふと、思ったことがある。それは問題が複雑になってくると、論理と情というマネジメントスキームそのものより、アーキテクチャー(制度、戦略)の問題の方が重要になってくるのではないかということ。
それを痛感するのが今、世の中をにぎわしている道路の問題とか、高齢者医療の問題など。かつてこの種の問題は、官僚が論理を担当し、政治家が情を担当することで全体としてうまくバランスが取れてきた。また、国民もその落とし処に理解を示してきた。ところがうまくいかなくなっている。
たとえば、地方の交通量の少ないところに道路をつくるかどうかという議論はまさにこの典型だ。論理的にいえば、「使われない道路をつくるのは税金の無駄遣いだ」、「今まで税金をプライオリティをつけて使ってきたのだからこれからも粛々とつくるのが正しい」の2つの論理が衝突している。
マネジメントとはこういった対立の解消をしていく仕事である。そこで、政治家が情をばらまく。道路ばかり作っていて病気の人や勉強したい人が困ってもよいのか」、「今までじっと黙って待っていた地域住民の思うがわからないのか」などなど。よけい話がややこしくなる。このような本質的な矛盾はマネジメントでは解決できない。
なぜ、こうなるんだろうと考えてみると、思い当たるのが制度設計(戦略)のまずさである。上のような本質的な論理的な矛盾が起るのは、時間の経緯とか、環境変化によるものではない。道路特定財源制度というのができたときから発生が予想できた問題である。つまり、このコンフリクトの解消はマネジメントではできない話で、制度設計として考えるべき話なのだ。
もう一度、本の話に戻るが、林さんはこの本の第2章で設計センスの話をしている。つまり、マネジメントというのはマネジメントする対象のアーキテクチャー(林さんの本ではシステム、道路の場合は道路特定財源制度)がセンスよく作られていることを前提にして述べているのではないかと思い至った。大賛成である。
であれば、論理と情を使い分けるというのは相当、高度なマネジメントだと言える。特に、相当、質の高い情を持つ必要がある。リーダーはこういうことができるようになりたいものだなと思うが、この本にはそのためのヒントが満載である。
特に、この本のタイトルにある「力学」を使って、「情」のレベルアップをしようという林さんの提案は素晴らしい!ぜひ、読んでみてほしい。
それから、著者へのお願いは、最後にドラッカーのマネジメント論との関係に触れているが、ぜひ、これを一冊の本にしてほしい!
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