ゆるみながら人生を考える
阪本 啓一「ゆるみ力」、日本経済新聞社(日経プレミアシリーズ)(2008)
お薦め度:★★★★★
「今に生きる」をテーマに「ゆるんでがんばる」方法を書いた人生読本。久しぶりに出会った書評が似合わない本でもある。
ゆるみ力とは、心身のどこにも力が入っていない状態で、臍下の一点に心をしずめ、統一する状態で発揮される力。これを、桶にてぬぐいというなんとも素敵な表紙と、7つの湯という洒落た構成で解説してくれる。
本はエクスサイズから始まる。阪本氏がニューヨークで起業して間もない頃、阪本氏のストレスの解消とメンバーの親睦を兼ねてマイアミに休暇旅行に出かけた。そういう目的なので、旅行中は情報を遮断して過ごすというルールで行った。はたして、ニューヨークに帰ろうという日になって、空港まで行き、搭乗予定だった飛行機会社が倒産していることがわかった。これからどういう教訓を得るかというエクスサイズ。
レッスンズラーンドでもやろうものなら、プロアクティブだのなんだの、山ほど、教訓が出てくるだろう。現に、坂本氏も当時は情報の大切さとか、いろいろと考えたそうだが、今は、よかったと思えるそうだ。仮に情報収集をする手段をもっていようものなら、事前に何らかの対策を講じようとし、休暇が台無しになった可能性があるが、なかったので休暇を思いっきり満喫できたというのがその理由。
この本というか、「ゆるみ」というスタンスがこのエクスサイズにある。すべてを受け入れる。肯定である。このスタンスの成分や効能が
一の湯 人間関係に効く!
二の湯 トラブルに効く!
三の湯 プロジェクトに効く!
四の湯 リーダーに効く!
五の湯 キャリアに効く!
六の湯 お金に効く!
七の湯 健康に効く!
という7つのテーマで書かれている。
僕は阪本氏のファンで、少なくとも、著作はすべて読んでいる。今までに書かれた本の中でこの本がもっとも好きだ。書いてあることを月並みなことばでいえば、ライフワークバランスということになると思うが、この7つのテーマについて、どうすればよいかを具体的に書ける人というのは彼しかいないのではないかと思う。
たとえば、僕はこの中でいえばプロジェクト、リーダー、キャリアを専門としているが、僕が読んで学ぶことがいっぱいある。おそらく、他の分野も同じレベルなのだろうと思う。これはすごいことだ!
また、肯定というテーマを日本人に納得できるように書くのは難しいのだろうと思う。肯定的な考え方をするということでは、
マーティン・セリグマン「オプティミストはなぜ成功するのか」、講談社(1995)
が最高の本だと思っているが、この本の内容は受け入れない人も少なくない。日本人は否定への反発をエンジンに動く人が多く、徹底的な肯定主義は不安になるのだと思う。それを、阪本さん独特の軽い表現ですっと相手が飲み込めるように書いているのは素晴らしいと思う。
まさに、ゆるみながら、読むのに最適な本である。
【目次】
かけ湯 今に生きる ナウ・アンド・ヒア
一の湯 人間関係に効く!
二の湯 トラブルに効く!
三の湯 プロジェクトに効く!
四の湯 リーダーに効く!
五の湯 キャリアに効く!
六の湯 お金に効く!
七の湯 健康に効く!
mohさん、コメントありがとうございます。「力」本への抵抗が取れたところで、ついでに、退屈力も読んでみてください。
http://people.weblogs.jp/books/2008/07/post-a236.html
根底に流れているものは一緒です。
投稿: 家主 | 2008年7月24日 (木) 00:16
いわゆる「なんとか力」の本ってのは、即効性を求める人の本だと思い敬遠していたのですが、これは久々にヒットでした。
新書なのでボリュームは少なく結果的にエッセンスの記述となっていて、これでよいと思います。
投稿: moh | 2008年7月18日 (金) 12:13