« ジェネレーションギャップを埋める旅 | メイン | あいまいさを排除したプロジェクトマネジメントの教科書 »

2008年7月23日 (水)

本書こそが、今、日本で最も読まれるべき本である

4492556141_2 佐藤通規、金澤透「ハイリターン・マネジャー」、東洋経済新報社(2008)

お薦め度:★★★★★

課長本にぶつけてきたわけでもないのだろうが、プロジェクトを中心に業務を遂行している組織の中間管理職は何をすべきか、どのようなスキルを持つべきかを具体的に示したマネジャー本。

たいへん、興味深いのは、この半年くらいに出てきた課長本が、ラインを基本とした組織の課長の本であるのに対して、この本は著者がコンサルティングファーム所属のためか、プロジェクト業務を基本にした組織の課長を前提して書かれていること。

マトリクス型組織は企業によってラインとプロジェクトの濃淡が異なるが、最近の傾向としてはIT企業に代表されるようにプロジェクト側が濃いケースが多い。課長が複数のプロジェクトを抱え、プロジェクトスポンサーとしてその成功にコミットするような形をとっているケースだ。

今、ちょっとした課長本のブームだが、実はラインとしての課長の仕事の本というのはこれまでにも結構あった。ところが、プロジェクト側の色彩が濃い組織で、ミドルマネジャーがどう振る舞えばよいかはまったく手がかりがなかった。その意味で、画期的な本だと思う。

この本では、プロジェクトではなくチームをマネジメント単位として設定し、チームをどうリーディング(管理+リード)していくかという視点で、高いリーディング能力を持つマネジャーをハイリターン・マネジャーと呼び、ハイリターンマネジャーのフレームワークを示している。

まず、短期、中期、長期レベルでリターンとは何かを定義している。それぞれ、

短期レベル:仕事の達成感
中期レベル:QOL
長期レベル:市場価値の向上

であり、これは

 基本能力×チーミングレベル×実現レベル

で決まるとしている。その上で、基本能力は短期には変わらないので、チーミングレベルと実現レベルを向上させるためのフレームワークを提案している。

 チーミングレベル:ベクトル、コミュニケーション、確実性
 実現レベル:モチベーション、効率性

そして、これらを向上させるためのドライバーになるスキルとして

 ベクトル:構想力
 コミュニケーション:コミュニケーション力
 確実性:実行管理力
 モチベーション:モチベーション力
 効率性:時間管理力

があるとし、1章ずつ割いて、これらのスキルの解説をしている。このスキルの内容は、基本的には「プログラムマネジメント」であり、それを著者たちの提案する5つのスキルの視点から体系化したものである。

課長ブームの火付け役になった酒井穣氏の「課長の教科書」は、アルファブロガーの小飼弾氏が

『一読して感じた。本書こそが、今、日本で最も読まれるべき本であると。』

という名コピーをつけ、ネットを起点としてブレークしたようだが、今後、業務がプロジェクト型に変わりつつある今、「最も」読まれるべき本はこちらだと言えるだろう。

【目次】

第1章 ハイリターン・マネジャーになろう!
 ミドルマネジメントは飛躍のチャンス
 ミドルマネジメントに求められる役割の変化
 ミドルマネジメントの要件

第2章 ハイリターンを呼びこむフレームワーク
 ハイリターンは意図的なチームワークから生まれる
 リターン=基本能力×チーミングレベル×実現レベル
 基本能力は短期間では変化しない
 チーミングレベルを向上させるドライバー
 実現レベルを向上させるドライバー
 ハイリターン・マネジャーになるための5つのスキル

第3章 チームのベクトルを合わせる構想力
 構想力とは何か
 ゴールと道のりを共有する
 大局観を持つ
 結果を確実に形にする

第4章 チーム力を高めるコミュニケーション力
 コミュニケーション力とは何か
 関係者を分析する
 周囲を巻き込む
 成果をアピールする

第5章 チーム活動を確実にやりとげる実行管理力
 実行管理力とは何か
 実現可能な計画を立てる
 活動を仕切る
 活動を見える化し評価する

第6章 チームのやる気を高めるモチベーション力
 モチベーション力とは何か
 チーム環境を認識し目標を設定する
 モチベーションをセルフ・コントロールする
 パフォーマンスの達成度を確認する

第7章 仕事の効率を高める時間管理力
 時間管理力とは何か
 仕事ストーリーを持つ
 時間効率を上げる
 ストーリー実現度を評価する

第8章 タイプ診断とタイプ別ハイリターン・マネジャーへの道
 マネジャータイプを簡易診断する
 政治家タイプ
 学者タイプ
 コミュニケータータイプ
 実務家タイプ
 やらされタイプ

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/605869/31150281

本書こそが、今、日本で最も読まれるべき本であるを参照しているブログ:

コメント

BJさん、ありがとうございます(笑)

はじめまして。
BJと申します。

タイトルにやられました(^_^)
本書早速Checkしてみようと思います。

ありがとうございました!

コメントを投稿

PMstyle 2024年5月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google