ジェネレーションギャップを埋める旅
サンダー・フローム、ジョナサン・フローム、ミシェル・フローム(島田聖子訳)「父と息子の歩いて語るリーダーシップ」、講談社(2008)
お薦め度:★★★★★
サンダー・フロームとジョナサン・フロームの親子が半年間かけて、各地を旅をし、リーダーシップについて語りあった内容を紹介した本。
ちなみに、父と息子は以下のようなプロフィールである。
サンダー・A・フローム(父) 65歳
ニューヨークを拠点とするコンサルタント会社フローム・パートナーズ創設者。
フォーダム大学大学院経営学部の非常勤講師であり、オハイオ州立大学のフィッシャー・カレッジ・オブ・ビジネス、バイアシス・ヘルスケア他で要職にある。国際的な広告会社ロバート・A・ベッカー、ユーロ RSCGの会長兼CEOを経て現職に。マーケティング、マネージメント、リーダーシップに関する多数の著作があり、講演も行っている。
ジョナサン・フローム(息子) 36歳
ノースカロライナ州アシュヴィルのコンサルティング会社ライトマインド・コミュニケーションズCEO。同社のクリエイティブ・ディレクターの他、ルイジアナ州立大学神経科学中核研究センターで編集顧問として、プレゼンテーションや記事執筆などにも携わる。
父のサンダーは典型的なリーダーシップ観を持っている。そして、息子は従来とは異なり、一言でいえば東洋的なリーダーシップ観を持っている。そして、その親子が旅をしながら、リーダーシップにおける
人材・目的・情熱・実行・忍耐・展望・妄想・信条・修業
について語る。
本のベースは父親サンダーの意見があり、それに対して、ジョナサンの意見がイッシューに対するコメントとして挟まれる。あるいは、数ページのまとまった意見として述べられ、それに対して、父サンダーのコメントが挟まれる。そのような手法で、今までのリーダーシップとこれからのリーダーシップは何が同じで、何が異なるのかを明確にしている。
仏教や禅、スピリチャルといったものが次の世代のリーダーシップとして語られるというのは大変面白い。これまで欧米で気付かれてきたリーダーシップは会社や事業を成功させるためのものであった。ところが、そこに、「個人の幸福」という古くて新しいディメンジョンが入ってきた。個人の幸福が実現できて、初めて、企業が社会に訴求でき、かつ、貢献する商品ができるような世の中になってきた。その背景にあるのは多様性である。
この流れの中でパラダイムが変わっている。その変化は、対立から統合へという形で表れている。たとえば、今まで仕事か生活かであったのが、ライフワークバランスとして仕事と生活の統合へ関心が高まっている。競争から協調へ、議論から対話へなど、さまざまな形でこの新たしパダライムが浸透しつつある。
この新しいパラダイムに対する新しいリーダーシップとはどのようなものか?まだ、旧世代のリーダーシップのようにステレオタイプなものはまだ見つかっていない。候補はいくつかある。たとえば、シンクロニシティ。
ジョセフ・ジャウォースキー(金井壽宏監修、野津智子訳)「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」、英治出版(2007)
この本も含めて、「旅」がリーダーシップのキーワードである。その意味で、この本の切り口は大変、面白く、一緒に旅をしながら考えることができる。リーダーシップの旅だ。
リーダーシップのジェネレーションギャップは多くの企業で問題視されている。この問題は、どちらがよいという議論をしていても、解決しない。それぞれに言い分もあれば、価値観もあるからだ。ジェネレーションギャップを埋めるために必要なのは「旅」なのだ。
年配の人は父の気持に、若い人は息子の気持ちで、フローム親子と一緒に旅をしてみよう!きっとジェネレーションギャップの解消のヒントが見つかるだろう!
【目次】
序文 リーダーシップの謎 ジョン・グレン
プロローグ 岩だらけの道を歩く
第一章 PEOPLE(人材) 発想に人はついてくる
第二章 PURPOSE(目的) 航海に出るときはまず方角を知れ
第三章 PASSION(情熱)人を温める炎
第四章 PERFORMANCE(実行)結果は嘘をつかない
第五章 PERSISTENCE(忍耐) 「ノー」は今日しか通じない
第六章 PERSPECTIVE(展望) 一見は行動にしかず
第七章 PARANOIA(妄想) ボールから目を離すな
第八章 PRINCIPLES(信条) リーダーの礎
第九章 PRACTICE(修行) 果てしない道
第一〇章 PROVIDENCE(摂理) 一〇番目のP
エピローグ いまなら理解できること
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