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2009年10月15日 (木)

プロジェクト型経営の実践を勉強するならこの本

4891006730 浦 正樹「プロジェクトを成功に導く組織モデル チームの「やる気」はなぜ結果に結びつかないのか」、日経BPソフトプレス(2009)

お奨め度:★★★★1/2

日本で屈指のプロジェクトマネジメントのコンサルタントによる、プロジェクト型経営(マネジメントバイプロジェクト)の教科書。多くのケースを踏まえて得られた知見がベストプラクティスとして集約されており、プロジェクト型経営のイメージを把握するには最適な一冊である。

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2009年5月16日 (土)

ルールかモラルか

448006477x 岡本 薫『世間さまが許さない!―「日本的モラリズム」対「自由と民主主義」』、筑摩書房(2009)

お奨め度:★★★★1/2

僕はマネジメントのコンサルタントの仕事をはじめてほぼ15年になる。その前は、5年ほど技術コンサルタントをしていた。この両者の間には歴然とした差があると感じている。

技術コンサルタントとして、たとえば設計方式(ルール)を決めたときにクライアントがそれを無視して設計するという経験はあまりしたことが無かった。逆に、マネジメントのコンサルタントとして何かルールを決めても、それを全員がやるということもあまり経験がない。極論すれば、ルールを決めることではなく、ルールを守らせることの方がコンサルタントとしての価値のある仕事のような気すらしている(儲かるのは、ルールを決める仕事だが、、、)。

このギャップについてそれなりに経験からくるもやもやとした思いがあったが、この本を読んで霧がぱっと晴れた。日本的モラリズムと著者が呼ぶ現象がそれを引き起こしている。平たくいえば、この本のタイトルのとおり、「世間さまが許さない」という話。

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2008年9月30日 (火)

上司との微妙な関係

4062138670_2 ジーニ・グレアム・スコット(神田 由布子訳)「ダメ上司につけるクスリ」、講談社(2008)

お薦め度:★★★1/2

ジーニ・グレアム・スコットは米国では50冊以上の本を出している評判の文筆家であり、影響を持つコンサルタントでもある。本書はジーニ・グレアム・スコットの初の邦訳。

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2008年7月14日 (月)

現場マネジャーが読むべき財務マネジメントの本

4492601740 デイビッド・メッキン(國貞 克則訳)「財務マネジメントの基本と原則」、東洋経済新報社(2008)

お薦め度:★★★★★

現場マネジャーにも財務の知識は不可欠である。ただ、財務マネジメントには財務諸表で閉じた独特の世界があり、分かりにくく、近寄りがたい部分がある。その一因になっているのは、マネジメントや経営的な意思決定との関係が見えにくいということがあるように思う。

このため、専門家以外に役立つ本というのはなかなか見当たらない。そんな中で、非常に良い本が出た。

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2008年5月 8日 (木)

部長の仕事を再考する

4480064214 吉村典久「部長の経営学」、筑摩書房(2008)

お薦め度:★★★

3か月ほど前に出版された「課長の教科書」という本がずいぶん話題になった。「課長の教科書」のオビに、「本書こそが、今、日本で最も読まれるべき本である」というキャッチが掲載されていたが、必ず読まれるべき本というのであれば、この本ではないかと思う。

大学の先生が書いた本であるので、わかりにくいが、指摘している内容は極めて重要で、ミドルが経営(企業統治)にどのようにかかわっていけばよいかという問題の基本的な考え方を述べた本である。

日本の組織は欧米に比べると現場が強い。その源泉はミドルマネジャーである。ただ、この図式が通じなくなってきた。この本でも指摘されているとおり、従来はよいものを作れば売れた。したがって、戦略(のダイナミックス)が現場の活動に大きな影響を与えることはなかった。幸之助哲学に代表されるように、(品質の)よいものを作れば売れる。よいものを売ることによって世の中に貢献し、また、収益を上げることもできるという普遍性のある「経営戦略」があったともいえる。

このような状況では、何を作ればよいかは現場が決めることができる。

ところが、求めるものが「よいもの」から、「好きなもの」に変わってきた。こうなってくると厄介である。好きなものはどんどん変わるからだ。今日まで売れていたものが、明日も売れるという保証などないのだ。

こうなってくると、現場だけでは何を作ればよいかを決めることができない。また、売れそうなものが作れたとしても従来のようにその存在が分かれば売れるほど単純でもなくなってきた。売れそうなものを売るための仕組み作りが必要になってきた。こうなると、現場だけではどうしようもない。ここで過剰反応が起こり、トップダウンの戦略経営に一挙に舵を切った。

誤解を恐れずにいえば、ある意味で、これまではミドルは現場を見て仕事をしてきた。だから、現場が強かった。下意上達の役割をはたしてきたのだ。ところが、これからは上に述べた経営環境の変化により、本当の意味で経営と現場の結節点になってきた。結節点とは、上意下達でも、下意上達でもない。自分のポジションに情報を集めて、自身の判断で上と下を動かしていくような働きが必要である。この本はこのような役割を果たすミドルを「モノを言うミドル」と呼び、モノを言うミドルがどのようなスタンスでモノを言い、また、仕組みを作っていかなくてはならないかを経営全般について説明している。まさに、部長の仕事を書いた一冊である。課長にはちょっと荷が重いと思うが、部長になっていく課長には必読の一冊だろう。

ただし、大学の先生の本であるので、やたらと理屈っぽいし、決して読みやすい本ではない。また、ガバナンス論や現在の企業統治のやり方への批判にページを割きすぎている感もある。まあ、この辺が経営論ではなく、経営学というタイトルのゆえんだろう。

ただ、ミドルの仕事の出発点は企業統治であることを考えると、こういった本を考えながら統治について真剣に考えてみることも必要だろうと思う。その意味で、読むに値する一冊である。

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2008年4月28日 (月)

クソッタレ本?!

4062141361 ロバート・サットン(矢口誠訳)「あなたの職場のイヤな奴」、講談社(2008)

お薦め度:★★★★1/2
原題:No Asshole Rule

この10年間で僕が影響を受けた本の1冊は、ロバート・サットンの「The Knowledge Doing Gap」である。この本は、組織における成員の知識と行動のギャップについて問題指摘をし、解決方法を提案したものである。日本では、この本は2000年に一度、「変われる会社、変われない会社―知識と行動が矛盾する経営」として流通科学大学出版より出版され、2005年に講談社から「実行力不全」のタイトルで復刊されている。

言行一致の組織を作る

専門は組織行動論、組織管理論、イノベーション理論などを専門とするサットン教授が、心理的な側面から描いた組織論である。

そのサットンの新作がこの本。実行力不全よりももう少しミクロな視点で、個人の行動と人間関係に注目してどのように対処するかを通じて、組織をどのように運営していけばよいかを語っている。

たとえば、こんなひとがでてくる。

・人の神経を逆なでするひと
・いるだけでまわりにダメージを与えるひと
・自分より弱い相手をいじめる
・ときには取引先にも被害をおよぼす

誰もが、自分のことも含めて、心当たりがあることばかりではないかと思う。その意味で、平社員は自身の行動マニュアルとして読むことができ、管理職は組織運営マニュアルとして読める本である。

組織行動論には、ステファン・ロビンスの

4478430144 ステファン・ロビンス(高木晴夫、永井 裕久、福沢 英弘、横田 絵理、渡辺 直登訳)「組織行動のマネジメント―入門から実践へ」、ダイヤモンド社(1997)

という名著がある。この本はマクロアプローチもミクロアプローチの両方について解説しているし、実務家にも研究者やコンサルタントにも支持されている本だ。

サットンの本はもちろん、単独で読んでも役立つが、余裕があればステファン・ロビンスの本を読んでみて、ミクロアプローチのヒントとしてサットンの本を読んでみると一段とサットンの本の価値が上がるように思う。

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2008年3月31日 (月)

WBSを極める

4820118889 大川 清人「WBS構築―プロアクティブなプロジェクトマネジメントを支える技術」、社会経済生産性本部(2008)

お薦め度:★★★★

プロアクティブなプロジェクトマネジメントの実現方法を、WBSというツールに注目して、解説した一冊。

前半は、WBSの基本についてかなり丁寧に解説されれいる。多くの人が断片的に知っているということを、体系的に解説しているので、一度読んで、自分の持っている整理をしておくことをお勧めしたい。

後半は、プロジェクトマネジメントに対する考え方を、作り方と、使い方というところでノウハウの形に落としている。解説が若干難しいような気がするが、非常に参考になる内容である。

最終章は、著者のオーソリティであるEVMSを有効に活用するためには、WBSをどのように作り、どのように使っていけばよいかを解説している。

WBSは非常に奥の深いものだ。プロジェクトマネジメントの研修を一度受ければそれなりに作れる一方で、何度作ってみても本当に満足するものを毎回つくるのは難しい。その理由もこの本を読んでみればよく分かる。一言でいえば、WBSは自身のマネジメントの流儀があって、プロジェクト観、あるいは、段階的詳細化まで含めて考えればマネジメント観を表現するものだからだ。この本は、その部分にEVMSを活用したプロアクティブプロジェクトマネジメントを置き、実践的にまとめられている。この流儀に共感できる人には、相当、参考になる本だと言える。

この本を読んだだけで、著者のレベルのWBS使いになることは難しいと思うが、WBSの深さを知り、WBSを中心にしたプロジェクトマネジメントに取り組んでいくには、必読の一冊だといえよう。

なお、WBSについては、定番本

Gregory T. Haugan(伊藤衡)「実務で役立つWBS入門」、翔泳社(2005)

がある。併せて読まれることをお勧めしたい。

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2008年3月27日 (木)

下士官にみる現場リーダーのベストプラクティス

4569654029 日下公人「現場指揮官の教訓―強い現場リーダーとは何か」、PHP研究所(2007)4569654029

お薦め度:★★★★1/2

軍事や宇宙開発において膨大な国家予算を費やして開発された技術が、やがてビジネスにおいて活用され、競争優位源泉になっているものは多い。意外と目立っていないのだが、戦争の背骨になる戦略と組織(マネジメント)に対しても膨大な投資が行われており、それもビジネスの世界で活用されているものも多い。

ところが日本の軍隊は敗戦を契機に、よくないマネジメントの引き合いに出されることがあっても、よいマネジメントの引き合いに出されることはない。

この本は、多くのエピソードに基づき、日本組織の特徴を下士官に注目してまとめた本である。

この本を読んでみると、戦争というと上意下達、指揮命令系とがビシッとしている軍隊が最適だと思ってしまうが、実際にはそうではなく、下士官という「現場リーダー」がいるからこそ、「現場が動く」という現実があり、また、現場が独自の判断で行った行動に対して上官は見て見ぬふりをするという組織が意外と強いというのがよく分かる。

確かに、戦隊をどう展開するかといった戦略は現場ではどうしようもないのだろうが、現場の見えていない組織(上官)が、戦略ありきで決めたオペレーションをその通りにやるとどうなるかは大体予想できるというものだ。

欧米の軍隊だと、にもかかわらず、そこまできちんと意思決定をすることが求められ、多くの兵士の死と引き換えに上官は地位を失うのに対して、日本は現場がオペレーションの中で現場が調整をしていく。上司は日常はあまり仕事をしていないが、失敗したら責任をとる。このような組織で勝ってきた戦局が多くあることを指摘し、今、組織が機能しなくなってきたのは、下士官の存在がなくなったからだという。

下士官をビジネス組織でいえば、係長、主任、プロジェクトリーダーといったあたりの役回りである。どのような役回りか。この本の中で、米国の研究を紹介した適切な説明がある。

米国のビジネスパースンは1マス、つまり、自分の職務という「縦のライン」で、かつ、1等級分の仕事しかしていない。日本のビジネスマンは自分の職務に隣接する多種類の仕事をしているばかりか、自分の所属等級を含めて上下に三マス分の仕事をしている。つまり、九マス分の仕事をしていることになる。

隣接の仕事はさておき、上下三マスということろがミソである。少なくとも自分の領域では、自分の上と自分の下の役割も兼ねる。多能工ならぬ、多層工である。

これが日本型マネジメントの本質である。もちろん、これは「ホンネ」の部分の話であって、この本の著者も指摘しているように「タテマエ」では上のマスは上司がやっていることになっていなければならないことは言うまでもない。このあたりのヒューマンスキルをどのように軍隊の中で作り上げていたかも紹介している。

その意味で、日本型組織のベストプラクティスを紹介した非常に貴重な1冊だといえる。係長、課長クラスのマネジャーにぜひ読んでいただきたい。

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2007年11月26日 (月)

そのときエンジニアは何をすべきか

4627973217 Alastair S Gunn/P Aarne Vesilind(藤本 温、松尾 秀樹訳)「そのとき、エンジニアは何をするべきなのか - 物語で読む技術者の倫理と社会的責任」、森北出版(2007)

お薦め度:★★★★1/2

(原題:The Engineer's Responsibility to Society)

アメリカとニュージーランドで流通している技術倫理の教科書の邦訳。建築士によるマンションの安全偽装問題以来、技術倫理への関心が高まってきているが、学習するのにあまり適切な本がない。この本も、教科書として作られているので、基本は先生が教材として使うものだが、
・基幹部分が小説になっている
・その中で、ポイントになるところが、囲みコラムで分かりやすく書いてある
・議論すべきポイントを課題としてかなり具体的に提示してある
の3つの特徴があるので、独学のテキストとしても十分に使える内容である。

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エンジニアとして順調にキャリアをのばすクリス。クライアントからの贈り物、東南アジアでのリゾート開発、海外で仕事をするうえでの職業文化の違い、ヘッドハンティングなど、さまざまな経験を積んでいた。充実した日々を送り、確実に業績を上げていたかにみえたある日、構造的な欠陥の疑いを、クリスがその完成前に指摘していたホテルが、重大な問題を引き起こすことに…。岐路に立たされたエンジニア、そのとき彼は何を優先するのか。

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日本の企業に勤務する人が読むのであれば、エンジニアが遭遇する問題というよりも、プロジェクトマネジャー(特に、プレイングマネジャー、リーダー)がよく遭遇する問題が多い。その意味で、エンジニアはもちろんだが、プロジェクトリーダーの人、あるいはすべてのプロフェッショナルに読んでほしいと思う。

プロジェクトマネジャーに関していえば、PMIでもプロフェッショナルの倫理規定を定めている。この内容を見て、なぜ、そのような規定があるのか理解できない人は、この本を読んでみることをお勧めする。

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2007年11月16日 (金)

日本における合理的経営の追求

4492501762 西尾久美子「京都花街の経営学」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★

経営学者である著者が、5年にわたるフィールドワークを経て、京都の花街のビジネスシステムを分析し、まとめた一冊。内容は非常に面白いし、置屋のシステムを中心にして全体を分析しているのも納得できる。ただし、フィールドワークが中心で、現在のシステムについての分析が中心であるためか、置屋の話も読み物レベルで、本質がえぐりだされていないのではないかという感想を持った。

それはそうとして、花街のビジネスシステムをうまく、ベストプラクティスとして切り出しているので、ベストプラクティスとしては参考になる点が多い。置屋というと日本的なものだと思われているかもしれないが、実態は違う。最も大きな違いはリスクマネジメントである。

高いレベルの顧客満足を実現しようとした場合に、いろいろな面でリスクを取る必要がある。取引もそうだし、人材育成もそうである。花街のビジネスシステムは、リスクを取ることを前提にして、リスク管理を徹底する点に特徴がある。これは、欧米のマネジメントの考え方に近い。

それを日本の人間関係の中でいかに行うかに置屋システムの秘密があることまでは、よくわかる本である。

シニアマネジャー、経営者、プロジェクトスポンサーなどのお薦めしたい一冊である。

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