そのときエンジニアは何をすべきか
Alastair S Gunn/P Aarne Vesilind(藤本 温、松尾 秀樹訳)「そのとき、エンジニアは何をするべきなのか - 物語で読む技術者の倫理と社会的責任」、森北出版(2007)
お薦め度:★★★★1/2
(原題:The Engineer's Responsibility to Society)
アメリカとニュージーランドで流通している技術倫理の教科書の邦訳。建築士によるマンションの安全偽装問題以来、技術倫理への関心が高まってきているが、学習するのにあまり適切な本がない。この本も、教科書として作られているので、基本は先生が教材として使うものだが、
・基幹部分が小説になっている
・その中で、ポイントになるところが、囲みコラムで分かりやすく書いてある
・議論すべきポイントを課題としてかなり具体的に提示してある
の3つの特徴があるので、独学のテキストとしても十分に使える内容である。
=====
エンジニアとして順調にキャリアをのばすクリス。クライアントからの贈り物、東南アジアでのリゾート開発、海外で仕事をするうえでの職業文化の違い、ヘッドハンティングなど、さまざまな経験を積んでいた。充実した日々を送り、確実に業績を上げていたかにみえたある日、構造的な欠陥の疑いを、クリスがその完成前に指摘していたホテルが、重大な問題を引き起こすことに…。岐路に立たされたエンジニア、そのとき彼は何を優先するのか。
=====
日本の企業に勤務する人が読むのであれば、エンジニアが遭遇する問題というよりも、プロジェクトマネジャー(特に、プレイングマネジャー、リーダー)がよく遭遇する問題が多い。その意味で、エンジニアはもちろんだが、プロジェクトリーダーの人、あるいはすべてのプロフェッショナルに読んでほしいと思う。
プロジェクトマネジャーに関していえば、PMIでもプロフェッショナルの倫理規定を定めている。この内容を見て、なぜ、そのような規定があるのか理解できない人は、この本を読んでみることをお勧めする。
目次
正しいことをする
エンジニアリング・プロフェッション
福利厚生を高める
最優先する
公衆の安全
プロフェッショナルとしての能力開発
謝礼を求める、あるいは受け取る
自画自賛の言葉
仕事を確保するための貢献
他のメンバーのプロフェッショナルとしての能力開発
海外での仕事
名誉と威厳を保つ
律儀なエージェント
利害の相反を避ける
客観的で誠実なやり方
コメント