日本における合理的経営の追求
西尾久美子「京都花街の経営学」、東洋経済新報社(2007)
お薦め度:★★★
経営学者である著者が、5年にわたるフィールドワークを経て、京都の花街のビジネスシステムを分析し、まとめた一冊。内容は非常に面白いし、置屋のシステムを中心にして全体を分析しているのも納得できる。ただし、フィールドワークが中心で、現在のシステムについての分析が中心であるためか、置屋の話も読み物レベルで、本質がえぐりだされていないのではないかという感想を持った。
それはそうとして、花街のビジネスシステムをうまく、ベストプラクティスとして切り出しているので、ベストプラクティスとしては参考になる点が多い。置屋というと日本的なものだと思われているかもしれないが、実態は違う。最も大きな違いはリスクマネジメントである。
高いレベルの顧客満足を実現しようとした場合に、いろいろな面でリスクを取る必要がある。取引もそうだし、人材育成もそうである。花街のビジネスシステムは、リスクを取ることを前提にして、リスク管理を徹底する点に特徴がある。これは、欧米のマネジメントの考え方に近い。
それを日本の人間関係の中でいかに行うかに置屋システムの秘密があることまでは、よくわかる本である。
シニアマネジャー、経営者、プロジェクトスポンサーなどのお薦めしたい一冊である。
目次
第1章 京都花街とは--業界の特徴と規模
第2章 芸舞妓さんとお茶屋と置屋--高度技能専門職の女性たち
第3章 一見さんお断り--350年続く会員制ビジネス
第4章 舞妓さんの一生--徹底したOJTによるキャリア形成
第5章 お財布はいりまへん--分業制度と取引システム
第6章 花街の評価システム--成果主義と360度評価
第7章 女紅場--働きながら学ぶしくみ
第8章 京都花街の経営学--超長期競争優位性の事業システム
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