コンピテンシーマネジメント Feed

2008年1月14日 (月)

途方もない問題に対処する思考法

4492555986 細谷功「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★★

「マンホールのふたはなぜ丸いのか」「鏡が上下でなく左右を逆転させるのはなぜか」「ビル・ゲイツの浴室を設計するとしたらどうするか」

これらの質問に答えられますか?これらの問題(クイズ)は

4791760468_2 ウィリアム パウンドストーン(松浦俊輔訳)「ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?」、青土社(2003)

に掲載されているもので、マイクロソフトが入社の際の面接で実際に使っている問題だそうだ。

では、次の問題はどうだろうか?

日本全国に電柱は何本あるか?

このように途方もない問題に対して有効だとされる思考方法が「フェルミ推定」である。この本は、フェルミ推定について解説した本である。この本では、まず、この問題を例にとりながら、フェルミ推定の方法について説明している。本書で説明している方法は以下の通り。
(1)アプローチ設定
まず、この問題に対するアプローチを決定する。たとえば、
「単位面積当たりの本数を市街地と郊外に分けて総本数を算出する」
ことにする。
(2)モデル分解
対象をモデル化して単純な要素に分解する。この例ではポイントは市街地と郊外では電柱の密度が違うことである。そこで、それぞれのエリアの「単位面積当たりの本数」とそれぞれの「総面積」からそれらの積で総本数が算出するというモデルにする
(3)計算実行
実際に計算を実行する。ここで、まず、市街地を「50平方メートルに1本」、郊外を「200平方メートルに1本」としてモデル化する(この設定はセンス)。これで、もし、日本の面積が38万平方キロメートルだと知っていれば使える。もし、知らなければ、また、別のフェルミ推定を行う。そして、市街地と郊外の面積比については日本の国土の四分の三が山間部と言われているので、20%を市街地とする。
(4)現実性検証
もし、部分的にデータが取れれば、そこで検証する
本書では、フェルミ推定がうまくできるのが地頭が強いとし、フェルミ推定の「結論から考える」、「全体から考える」、「単純に考える」の3つを合わせた思考プロセスを強化する方法を述べている。

この種の思考能力が必要だという人とそうではないという人がいると思う。マイクロソフトが試験に使っていることからも分かるように、創造的な仕事、構成的な仕事をしようとすると必ず必要になってくる能力である。たとえば、コンサルタントには必ず必要な能力だとよく言われる。

ということで、必要だと思う人には大変よい本である。ぜひ、読んでみてほしい。

ちなみに、巻末には、「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」、「世界中で1日に食べられるピザは何枚か」、「琵琶湖の水は「何滴」あるか」の3つの問題について解答付きで掲載してある。同時に、10個以上の練習問題が掲載されている。クイズとしてチャレンジするのもよいかもしれないが、クイズとしての興味なら、ビル・ゲイツの面接試験の方がよいかもしれない。

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2008年1月 7日 (月)

本物のプロフェッショナルとは

4901491687 松本 整「勝負に強い人がやっていること―ここぞという時に結果を出す考え方・行動の仕方」、ナナ・コーポレート・コミュニケーション(2007)

お薦め度:★★★★1/2

著者の松本整氏は競輪の世界で最年長のG1タイトル取得の記録を持つ競輪の名選手でありながら、現役時代から自分のトレーニングジムを開設し、独自のメソッドによるアスリートのトレーニングを行っているという変わったキャリアの持ち主。その松本氏が、自身のメソッドをまとめた本。

いくつもはっとするところが多い。

この本では最初にプロフェッショナルの定義から始まる。プロフェッショナルの定義はビジネスの世界ではいくつもあるし、わかったような概念になっているが、松本氏の定義はいたってシンプル。プロとは

 「常に勝ち続けることのできる人」

だという。この定義は「が~ん」という感じだ。人材育成の仕事をしていながら、なんとなくプロフェッショナルの定義はよくわからないという思いを持ち続けてきたが、これで納得。この定義は単純なようで、極めて深い。

おそらく、僕が知っているすべてのプロフェッショナルの条件はこれで片付く。

プロフェッショナルの条件でおそらくもっとも多くの人が納得しているのはドラッカー博士の定義だと思う。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか

での定義は

「成果をあげる」という絶対目標を持ち、自らの行動に「責任」を持つ人材

である。この本の定義はイメージしにくい。何がイメージしにくいかというと、ドラッカー博士のいうところの「成長」というキーワードだ。成長するというのはどういうことか?

たぶん、ここに松本氏のいう「続ける」というキーワードがくっついていることに気付かされた。

松本氏のメッセージは、スキルだけでいえばアマチュアの方が強い場合もある。プロフェッショナルとはその職業としてトップランナーとして継続的に食っていける人だという明確なメッセージ。特に、成果を上げることができるようになってからの継続が難しい。

一つの仕事で成果を上げることもそんなに簡単なことではない。しかし、継続するのはその何十倍も難しい。だから、(特に日本人は)長くやっていることを評価する。

ビジネスでいえば、マーケティングのプロフェッショナルといえばどんな状況で売れる商品を企画できる人。プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルというとどんなプロジェクトでもそのプロジェクトに収益をもたらすことができる人のことだ。この状況では、売れなくても仕方ないとか、プロジェクトが成功しなくても仕方ないといっている間はアマチュアっていうことだ。

この本は、このプロフェッショナルにどのようになっていくかを「一般論」として論じている。たとえば話に自身の競輪の経験を使っているケースが多いが、スポーツ一般に通じる話だと思うし、僕の読む限りではビジネスにも通じる話だ。

前半は比較的ロジカルにかかれており、後半は読者に発破をかけるような記述が多い。これも意図したものだと思われる。本物のプロフェッショナルを目指す人、元気になりたい人にお勧めしたい一冊。

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2007年12月27日 (木)

リーダーとしての真価は困難に直面したときにこそ証明される

4270002875 ジェフリー・ソネンフェルド、アンドリュー・ウォード(久野郁子訳)「逆境を乗り越える者 リーダーたちは失意のどん底からいかにして立ち直ったか」、ランダムハウス講談社(2007)

今年読んだ本の中でもっとも感動した本。

経営や専門家として上りつめた人々が何らかの事情でその名声を失うような苦境に立つ。そのときに、苦境を乗り越える人、そのまま消えてしまう人の差は何かを調査している。調査の人数は100名以上。論理的な主張を、この100人以上のエピソードをちりばめて固めている。

ひとつひとつのエピソードは短いが、その一つひとつのエピソードに教訓が凝縮されている。読んでいると感動を覚えるものが多い。

分析は結構、難解。行動科学や心理学の知識がないと本当のところは理解できないのではないかと思う。ただ、それを乗り越えて、訴えてくるエピソードが面白く、引き込まれてしまう。その意味で、理屈はよくわからない部分もあるが、言っていることへの納得性は高い。

また、これらのエピソードを読むだけで、この本が言おうとしている

リーダーとしての真価は困難に直面したときにこそ証明される

という主張は十分に理解できる。

論理的な分析の中では、キャリアシステムを4種類(野球チーム、アカデミー、要塞、クラブ)に分けて、それぞれの場合に、復活の要件を分析しているのは興味深い。日本で考えてみた場合に、挫折したものが復活する際のポイントというのはここにあるのではないかと思うからだ。

挫折したときに冷静に読める本ではないと思うので、挫折など無縁だと思っている人こそ、ぜひ、読んでみてほしい。

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2007年12月14日 (金)

あなたはマネジャーに向いているか!?

4534043236 津田 陽一「あなたはマネジャーに向いていない」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★1/2

経営コンサルタントである著者が、だめなマネジャーを10タイプに類型化して、その症状を説明し、さらに、タイプごとにだめマネジャー脱出方法を示唆した一冊。

とにかく面白い。10タイプというのは以下の10タイプだ。ネーミングを見ても笑えるし、特徴の中でも特に「よく口にするセリフ」というのを読んでいると、いるいるという感じ。

参考までに5タイプはよく口にするセリフを抜粋しておく。残りが、もっと詳細な特徴、あるいは、脱出策を知りたい人は本を読もう!

ちなみに、面白かったので、本屋で立ち読みでほぼ読み終わってしまった(その後で書評を書くのに買ってきたけど)。そのくらい面白い!

【以下、一部抜粋】

得意技はモグラ叩き「発生主義型」トラブルシューター
「まったく、俺がいないと現場は回らないだからな!困ったもんだよ。世話がかかるなぁ。おちおと休暇もそれやしない。まぁ、しかたないか、俺じゃないと解決できないんだからな!」

机上の空論芸術家「理想主義型」プランナー
「どうだ、このプラン凄いだろう!美しいだろう!問題はすべてカバーしているし、この通りに関係者が動けばすべてうまくいくはず。俺ってやっぱり頭イイだろう!」

能力賞味期限切れ「悲劇の主人公型」ナルシスト
「俺の黄金時代は凄かったんだぞ!あの頃はよかった。俺は運河ないんだ。あのことさえなかったら、あいつさえいなかったら、今頃は・・・。本当は俺は、こんなくだらないところにいる人材じゃない!このままでは俺があまりにもかわいそうだ・・・」

いつも一過性「熱烈感動型」ドリーマー
「面白い! いやぁ、感動した! すごいね。夢があるね。熱いね! ワクワクしてきたよ!彼のためなら、この企画のためなら、あの会社のためなら、オレも役に立ちたいね!」
段取りベタすぎ「抱え込み型」カーペンター
「部下に振っても、どうせ手直しが発生する。経験がなかったり、使えないやつに教える
もの面倒だ。どうせ言ってもわからないし、できないだろう。だったら自分がやるほうが
早い!これは俺の責任だ!休日出勤でも徹夜でもすれば何とかなる!とにかく私が何とか
する!」

流血勝負師「完全主義型」デザイナー
人間不信「性悪説型」レギュレーター
永遠の傍観者「予言者型」コメンテーター
横道愛好会主宰「果てしない物語型」エクスプローラー
適当こそ美徳「やり過ごし型」サバイバー

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2007年12月10日 (月)

権威を使わずに人を動かす原理―レシプロシティ

4419050500 アラン・コーエン、デビッド・ブラッドフォード(高嶋薫、高嶋成豪訳)「影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル」、税務経理協会(2007)

お薦め度:★★★★★

原題:Influnence without Autohrity

原書はいろいろな本や論文で取り上げられてるコミュニケーションの名著である。僕も買って読もうとしたが、組織論やマネジメントの本では見かけない単語が並んでいて、諦めた経緯がある。

この本では「reciprocity」が影響力の源泉であるというのが基本コンセプトになっている。安部前首相が首相になってすぐに中国を訪問し、その際に「戦略的互恵関係」の構築をうたってきた。米国的な言い方をすれば、ギブアンドテイクだとこの本にも書いている。ただし、単なるギブアンドテイクではなく、良好な人間関係に立脚したギブアンドテイクである。このようなギブアンドテイクを「影響力の法則 コーエン&ブレッドフォードモデル」としてフレームワーク化している。

これは影響力を及ぼすための6つの法則から構成されるフレームワークだ。

法則1:味方になると考える
法則2:目標を明確にする
法則3:相手の世界を理解する
法則4:カレンシーを見つける
法則5:関係に配慮する
法則6:目的を見失わない

この本では、この6つの法則について、具体的な実現方法を体系的に示すとともに、ケースを多用して、その意味を直感的にわかるようにしている。体系的な説明のところでは、例が非常に多く、有用である。たとえば、カレンシー(通貨:価値交換の道具)だと
・気持ちの高揚や意欲を喚起するカレンシー
・仕事そのものに役立つカレンシー
・立場に対するカレンシー
・人間関係に関するカレンシー
・個人的なカレンシー
という分類をし、たとえば、最初の気持ちの高揚や意欲を喚起するカレンシーであれば、
・ビジョン
・卓越性
・道徳的/倫理的な正しさ
というのを上げている。このようにひとつひとつの例に非常に深い意味と、気付きをこめて作られた本である。

また、最後の2章は、それぞれに、「影響力の法則 コーエン&ブレッドフォードモデル」を使って、上司と部下にどのように影響を与えるかという説明になっていて、この部分は極めて実践的である。

この手の本は決して少なくない。しかし、ハウツーものはほとんど役に立たないと思う。ハウツーにできるような単純な問題ではないからだ。自分の行動を内省しながら、考えながら読まないと、行動に移せない。一方で、ハウツーものを欲しがる人も多い。

この本はそのような読者に対しても、一定の満足を与えながら、はやり、基本は考えさせることに置いているように思う。つまり、かなり、具体的な行動イメージが持てるまで、「例示」をし、そこでとどめてある。そこからは自分で考えましょうという書き方になっている。その点でも非常に参考になったし、よくできている。

組織で働くすべての人に一度は読んでほしい本だ。

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2007年12月 7日 (金)

機能不全に陥った上司・部下関係を救う

4492532374 豊田 義博「「上司」不要論。」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★★

良い上司になるには、上司を使うには、といった「上司・部下」本は八重洲ブックセンターにいけば100冊はくだらないだろう。本屋にこの本が平積みされているのを発見したときに、東洋経済新報もついにこの種の本に出したかと、意外感を持って、手に取った。

手にとって、納得。僕は初めての著者の名前のときには、中身ではなく、奥付にある著者のプロフィールをまず見る。この本の著者の豊田義博さんは日本でも有数の人材マネジメントのシンクタンク「リクルートワークス研究所」の主任研究員なのだ。ご本人もまえがきで書かれているが、主任研究員なので、当然部下はいる。

このあたりで、俄然、興味が高まり、とりあえず、買ってホテルに戻り、一気に読んだ。

面白い!

というより、痛く共感。

リクルート ワークス研究所による職場意識調査の成果をもとに、今までの「上司・部下」本では触れられてこなかった視点から、今日の上司・部下問題を書き起こした一冊。この本に書かれていることを簡単にいえば、職業意識が変わっている中で、当然、上司と部下の心理的な関係も変わる。にも関わらず、新しい関係構築がされていない。これでは、上司と部下の関係は機能不全に陥って当たり前。この問題を解決する方法は関係のリストラクチャリング以外にない。

書き方も工夫されている。ステレオタイプの上司のキャラクタとその行動をマンガで描き、そのキャラクタを使って分析結果を説明するという書き方をしているので、内容そのものは固いのだが、結構、気軽に読める。

ただ、この本、パレートの法則でいうところの20%しか、見ていないような気がする。調査の詳細が書かれていないので、推測にすぎないが、たとえば、僕が最近、はまった本、
田北百樹子「シュガー社員が会社を溶かす」、ブックマン社(2007)4893086715

といった80%の現実に、どのように答えるのだろうか?という疑問は残った。まあ、パレートの法則だから20%に対処すればよいという気もするが、、、

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2007年11月21日 (水)

人間力を鍛える本

4569694446 岡本呻也「 「超」人間力」、PHP(2007)

お薦め度:★★★★

人間力を認識レベル、行動レベル、自己とのかかわり、他者とのかかわりの4つに分け、それぞれについて、エピソードを示すことによって、人間力を学ぶことをコンセプトにした一冊。

エピソードは、ビジネス界のエピソードから、歴史上の著名人、フィクションの主人公など幅広く、できるだけよいエピソードを取り上げる工夫がされている。

エピソードから学ぶべきことの解説も簡潔で分かりやすく、気楽に読みながら、人間力強化に役立つのは非常によい。一冊買っておいて、繰り返し、眺めるとよいだろう。

取り上げているエピソードは以下のようなものだ。

落語「岸流島」戦わずして勝つ方法を考えよ
自動車トップセールスマンの「心をつかむワザ」
新規開業医院が狙う看板の意外な効果
四面楚歌 史上最大の心理戦
相手の懐に飛び込むアイデア営業術/ナポレオンの演説術
営業現場で起きている会社崩壊
意表をつく一言で不安を鎮めた大山巌
松下幸之助の腰の低さ
キスカ撤退作戦で5000人以上の命を救った木村少将
シャーロック・ホームズの観察眼
美人を口説く凄腕スカウトの目線
田中角栄  知より情の人心掌握術
戦闘機パイロットの「クロスチェック」
曹操「梅を望んで渇きを止む」
『米百俵』常在戦場

4408395501同じ著者のこの本もよい。同じようなテーストだが、こちらはインタビューなどを中心に人間力の抽出をしている。その意味で、「超」人間力の原点はこの本にあるのかもしれない。

岡本呻也「 「人間力」のプロになる―誰もここまで教えてくれなかった仕事ができる人の基本メソッド」、実業之日本社(2004)

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2007年11月20日 (火)

プロジェクトマネジャーの人間術

4872686721 Steven W. Flannes、Ginger Levin(PMI東京支部/吉沢 正文監訳)「プロジェクト・マネジャーの人間術」、アイテック(2007)

2005年に米国で発刊された「Essentail People Skills for Project Management」の翻訳。PMI東京支部の有志が翻訳している。

プロジェクトマネジャーの役割を
 ・リーダー
 ・マネジャー
 ・ファシリテータ
 ・メンター
の4つとし、これらの役割を果たすのに必要なピープルスキル(人間術と訳している)を
 ・対人コミュニケーション
 ・動機付け
 ・コンフリクトマネジメント
 ・ストレスマネジメント
 ・トラブル
の視点から、ツールとして解説している。また、最後にキャリアとそれに伴う人間観という視点でどういう心構えでキャリア形成していくべきかを論じている。
本書の特徴は
(1)プロジェクトマネジメントプロセスに人間術を対応させている
(2)キャリアステージを強く意識した手法を提案している
の2つだろう。書かれている内容は、簡潔ではあるが、独自性が強く、非常に本質をついているように思える。その意味で、ハウツーものというよりも、教科書としてプロジェクトマネジャーが内省のインプットとして使うとか、あるいは、組織でプロジェクトマネジャーの教育やワークショップの教材として使うといった使い方が適しているように思える。

また、明確に書かれていないが、この本に書かれていることはプロジェクトマネジメントのスキルがあることを前提にしているように見える。その点でも、初心者がハウツーものとして読む本ではないように思う。典型的な対象読者を一つ上げると、「PMPを取って、実践しようとしてもなかなかうまくいかなくて困っている人」だ。日本ではPMPホルダーのマジョリティだと言われてるが、米国でこのような本が出版されていることは興味深い。

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2007年10月12日 (金)

人材開発は愚直に!

4478312192_3 井上久男「トヨタ 愚直なる人づくり―知られざる究極の「強み」を探る」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタの競争優位源泉はひとにある。これは多くの人が認めていることだろう。実際にトヨタウェイの多くはひとの考え方、行動習慣などを示すものである。

トヨタ本は多く出版されており、ひとに何を求めるかはあるん程度、ぼんやりとした輪郭くらいは見えている。しかし、どうやってそのひとをどのように育てているかということになるとほとんど分からない。組織に文化があり、ひとはその文化に染まっていくことにより、トヨタウェイを身につけた人材が生まれていくという風に思われ勝ちであるが、そんなに単純ではない。

精神的な部分があまりにも語られるので、表に出ないが、トヨタ流を実行するためには、かなり、高いスキルレベルが必要である。心技体である。

この本は、朝日新聞の元記者が、深く組織に入り込み、50人以上の 取材により、トヨタの教育システムを克明に紹介している。この本を読んで分かるのは、ひとというのはコストをかけないと育たないということだ。タイトルに「愚直」とあるが、二兆円の利益を上げる企業グループでさえ、人材育成に王道はないということがいやというほどよく分かる。

トヨタの教育システムが他社の参考になるかは若干疑問だが、少なくとも人材開発は愚直にやらなくては効果がでない。何の信念も持たず、短期的な成果を求めるような企業では人材は育たないことはよく分かるだろう。

同時に、経営とは難しいものだなと思わせる一冊でもある。

その意味で、そのことを実感している人材開発担当者よりも、トップマネジャーに読んでほしい本だ。

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2007年10月10日 (水)

プロマネ必読の人材マネジメント論!

4334934218 長野慶太「部下は育てるな! 取り替えろ! ! Try Not to Develop Your Staff」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★

僕は成果主義の一番の問題は、若年層を飼い殺しにしてする組織が増えたことではないかと思っている。マネジャー自身が自分の目標に追われ、長期的な視点で部下を育成するような余裕がない。一方で、米国と根本的に違う点が、部下を「切り捨てででも、成果を挙げようとする」ほどの覚悟もない。

これは一見、温情のように見えるが、結果として、失敗しないようなことだけを部下にさせるというマネジメントをしているマネジャーが多い。これでは、部下はまったく成長しない。作業に熟練するだけである。

こんなことをやっているのであれば、部下を育てることを放棄した方がよい。この問題を正面から指摘した貴重な一冊。

適材適所、捨てる神あれば、拾う神あり。能動的にチャンスを与える。

そろそろ、真剣にこのような発想を持った方がよいのではないだろうか?

■態度の悪い部下はすぐに取り替えろ!
■もう職場に「協調性」なんかいらない
■「エグジット・インタビュー」で情報王になる
■「質問1000本ノック」の雨あられ
■部下がシビれる! 革命上司の「褒める技術」
■「ヘタクソな会議」を今すぐヤメさせろ!
■あなたを勝てるチームのボスにする人事戦略

など、過激な内容が並ぶこの本を読めば、背中を押されること間違いなし。

特にプロジェクトではメンバーを育てようなどを考えないこと。使えないメンバーは切り捨てる。使えると判断すれば、厳しく使う。これによってのみ、次の世代を支えていく人財が育つのではないだろうか?

まあ、非現実的だと思う部分も多々あるが、とりあえず、読んでみよう!プロジェクトマネジャー必見の人材マネジメント論!

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