途方もない問題に対処する思考法
細谷功「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」、東洋経済新報社(2007)
お薦め度:★★★★
「マンホールのふたはなぜ丸いのか」「鏡が上下でなく左右を逆転させるのはなぜか」「ビル・ゲイツの浴室を設計するとしたらどうするか」
これらの質問に答えられますか?これらの問題(クイズ)は
ウィリアム パウンドストーン(松浦俊輔訳)「ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?」、青土社(2003)
に掲載されているもので、マイクロソフトが入社の際の面接で実際に使っている問題だそうだ。
では、次の問題はどうだろうか?
日本全国に電柱は何本あるか?
このように途方もない問題に対して有効だとされる思考方法が「フェルミ推定」である。この本は、フェルミ推定について解説した本である。この本では、まず、この問題を例にとりながら、フェルミ推定の方法について説明している。本書で説明している方法は以下の通り。
(1)アプローチ設定
まず、この問題に対するアプローチを決定する。たとえば、
「単位面積当たりの本数を市街地と郊外に分けて総本数を算出する」
ことにする。
(2)モデル分解
対象をモデル化して単純な要素に分解する。この例ではポイントは市街地と郊外では電柱の密度が違うことである。そこで、それぞれのエリアの「単位面積当たりの本数」とそれぞれの「総面積」からそれらの積で総本数が算出するというモデルにする
(3)計算実行
実際に計算を実行する。ここで、まず、市街地を「50平方メートルに1本」、郊外を「200平方メートルに1本」としてモデル化する(この設定はセンス)。これで、もし、日本の面積が38万平方キロメートルだと知っていれば使える。もし、知らなければ、また、別のフェルミ推定を行う。そして、市街地と郊外の面積比については日本の国土の四分の三が山間部と言われているので、20%を市街地とする。
(4)現実性検証
もし、部分的にデータが取れれば、そこで検証する
本書では、フェルミ推定がうまくできるのが地頭が強いとし、フェルミ推定の「結論から考える」、「全体から考える」、「単純に考える」の3つを合わせた思考プロセスを強化する方法を述べている。
この種の思考能力が必要だという人とそうではないという人がいると思う。マイクロソフトが試験に使っていることからも分かるように、創造的な仕事、構成的な仕事をしようとすると必ず必要になってくる能力である。たとえば、コンサルタントには必ず必要な能力だとよく言われる。
ということで、必要だと思う人には大変よい本である。ぜひ、読んでみてほしい。
ちなみに、巻末には、「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」、「世界中で1日に食べられるピザは何枚か」、「琵琶湖の水は「何滴」あるか」の3つの問題について解答付きで掲載してある。同時に、10個以上の練習問題が掲載されている。クイズとしてチャレンジするのもよいかもしれないが、クイズとしての興味なら、ビル・ゲイツの面接試験の方がよいかもしれない。
目次
はじめに
第1章 「地頭力」とは何か
第2章 「フェルミ推定」とは何か
第3章 フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか
第4章 フェルミ推定をビジネスにどう応用するか
第5章 「結論から考える」仮説思考力
第6章 「全体から考える」フレームワーク思考力
第7章 「単純に考える」抽象化思考力
第8章 地頭力のベース
第9章 さらに地頭力を鍛えるために
おわりに
コメントありがとうございます。この本って、刺激的ですよね!
投稿: 家主 | 2008年2月 8日 (金) 12:33
こんにちは。
「地頭力」読みました。
電柱問題、私は9600万本になりました。
3倍近い値ですが、脳みそのどこかが
刺激された感じで、満足しました。
TBさせていただきます。
投稿: ikadoku | 2008年2月 8日 (金) 10:22