仕事術 Feed

2006年11月 9日 (木)

ビンタ本

434499557001 スクーリングパッド「ビンタ本」編集制作チーム、黒崎 輝男「ビンタ本―IID世田谷ものづくり学校スクーリング・パッドの挑戦」、幻冬舎メディアコンサルティング(2006)

お奨め度:★★★1/2

スクーリング・パッドとは、クリエイターや起業家などを目指す人々が集う新しい学校であるが、単なる学校ではなく、教える側と学ぶ側のコラボレーションを基調とした学校である。その中で、生まれてきた刺激的な多くのメッセージを採録した一冊。

仕事とは」「人生とは」「幸せとは」そんな問いへのヒントが満載されている。

「ビンタ本」というタイトルは一風変わった書名でああるが、これはスクーリングパッドのリーダーの一人である黒崎輝男氏が「ビンタをされたことのない世代に“言葉のビンタ”と“考えることの面白さ”を伝えたい」、「痛いことには意味がある、痛いことには理由がある、ビンタには意味がある」とのこと。

刺激的なメッセージのビンタを受けて、仕事や人生、そして幸せについて考えてみよう。オビの言葉もいい。

 目を覚ませ!いい仕事こそ、いい人生だ。

そういえば、同じ幻冬舎が今年刊行した雑誌にGOETHEという雑誌がある。「24時間仕事バカ」をコンセプトにした雑誌だ。この雑誌のコンセプトと通じるところがある。

B000jfz5mo01 GOETHE (ゲーテ) 2006年 12月号 [雑誌] (雑誌)

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2006年11月 3日 (金)

あなたは箱の中でリーダーしていませんか?

447979177901 アービンジャー・インスティチュート(金森 重樹監訳、富永星訳「自分の小さな「箱」から脱出する方法」、大和書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

PM養成マガジンブログ関連記事:プロジェクトという箱からでよう

この本の原題は「Leadership and self-deception」。deceptionは「騙す」という意味。米国でよく読まれるリーダーシップ読本の一つの邦訳。

邦題からも分かるように、「箱」という一風変わったメタファ(比喩)の中で、寓話を使ってリーダーシップの本質と構築方法をうまく説明している。

誰よりも努力し(ていると思っている)主人公は、ザグラム社という会社でよい職を得る。しかし、それまでのやり方がザグラム社では通用しないという事態に直面する。自分を守り、他人に影響を与えるとするやり方が、ザグラム社の風土に合わなかった。ザグラム社のリーダーシップは、自己原因性(すべての原因は自分にあるという考え方)に基づいていたためだ。

そこで、主人公は上司であるエグゼクティブからの問題指摘を受けると同時に、コーチングを受け、そのことに気がつき、箱の外に出て行くというストーリー。

このストーリーで、「箱」に並ぶキーワードが自己欺瞞。「自分への裏切り」と呼ばれている。自分への裏切りというのは自分の感情に反した行動を取った場合に、自分を正当化するためにさまざまな行動に出る。これが箱に入っている状態であり、人間関係、リーダーシップにさまざまな問題を引き起こすというのがこの本の考え方。「自己原因性(Personal Causation)」の議論として、感情に注目しているのはかなり面白いと思う。

この本では、この行動パターンがある限り、業績に結びつかないとしている。確かにその通りだ。

問題は箱から抜け出すにはどうすればよいか、これが問題だ。この本の示唆で非常に役立つのは、「箱に入っているときにしても無駄なこと」を明確にしている。

(1)相手を変えようとすること

(2)相手と全力で渡り合うこと

(3)その状況から離れること

(4)コミュニケーションと取ろうとすること

(5)新しいテクニックを使おうとすること

(6)自分の行動を変えようとすること

の6つ。この指摘は鋭い。確かに、多くの人が箱に入ったまま、これらの努力やトレーニングをしようとしている。無駄だというのも最初から読み進めていくとちゃんと納得できる。

最後に、箱から出る方法というのが書かれている。

「他の人々に抵抗するのをやめたときに、箱の外に出ることができる」

本の質と同じく感心したのが、翻訳の質が非常に高いこと。米国のオフィスを舞台にしたストーリーであるが、まったく違和感なく読める。米国発のこのスタイルの本は、ストーリーそのものに違和感があって落ちないが、この本にはまったくそれがない。

それからこの本を読んでいく中で、イラストの存在が非常に役立つ。ロジックが結構複雑なので、自分で図を書きながら読んでいかないとおそらく、頭が混乱してくる。それを代わりにやってくれるイラストが入っている。なんと、寄藤文平さんの非常に味のあるイラストだ。

最後に少し違う視点からのメッセージ。10年くらい前に亡くなった安部公房という作家がいる。哲学的な作品を多く残した作家で、抽象的ながらもプラクティカルな文学性は高く評価され、欧米にも多くの作品が紹介されている。その中の一つに、「箱男」という作品がある。

4101121168 安部公房「箱男」、新潮社(1982)

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男。箱に隠れて覗きをしたり、普段はできないことをすることに快感を感じる。

そのような行動を繰り返しているうちに、やがて主人公は箱男から箱を買い取ろうとした医者の偽箱男へ、少年Dへ、露出狂の画家ショパンへとめまぐるしく移ってゆく。

そうしているうちに、誰が箱男か、箱男のエスノグラフィーを書いているのは誰なのかがわからなくなってしまう。

という話なのなのだが、「小さな箱から脱出する方法」の本質をより深く理解するためには、安部公房の「箱男」を読まれることをお奨めしたい。

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2006年10月 1日 (日)

超現場主義で商売繁盛

4774507601 上野和夫「人事のプロが書いた商売繁盛学 ”超現場主義”のすすめ」、現代書林(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上野氏は西武百貨店人事部で30年のキャリアを積まれた方で、その上野氏が小売業の「儲かるサービス現場」にこだわって書き上げた一冊である。事例などは小売業を事例に書いてあるが、顧客接点のあるビジネスを展開している企業においては、非常に学ぶところの多い本である。

この本では顧客接点で高い付加価値を生み出す人材をたくさん育成し、顧客から「ありがとう」といわれるプロのサービスを提供する企業をサービスカンパニーと定義し、サービスカンパニーを目指すために必要な人材育成、人事制度について提案されている。

第1章ではサービスカンパニーを作るための超現場主義10か条が提案されている。これが非常に興味深い

1)体制作りの目的は顧客価値創造の一点に向けられている

2)そのためにもっとも効果的で効率的な仕事の仕組みをくつくること

3)顧客価値創造に直接関係しない仕事は徹底的にそぎ落とすこと

4)個々人の能力を最大限発揮させるための仕組みをつくりあげること

5)個人には自己責任の原則が確立していること

(あと、5つあります)

第2章では、プロフェッショナルについて論じられている。西武、プロフェッショナルというと常に出てくるのが、伝説のシューフィッター久保田美智子さんであるが、彼女のプロフェッショナル論が社内研修の内容をベースにして紹介されている。今まで雑誌などで何度が読んだが、よく分からなかった部分が良くわかった。

小売業のプロフェッショナル論というのはITなどの専門性の高いプロフェッショナル論とは異なる部分が多いと思っていたが、この本を読んでそうではないことが明確になり、この本の主張そのものが、どんな分野でも通用するものだという認識に至った。

実は、この本を読む2週間くらいまえに、ある大手IT企業の事業部長さんと話をする機会があり、顧客からの要件がうまく聞きだせない、どうすればよいだろうかという相談を受けた。その際に、小難しい話(要件定義の方法論)はそれはそれで必要だが、もっと根本的に、人間同士が話をするのだから、その場でどういう態度を取るかは極めて重要で、この部分にサービス業や小売業からもっとベタなベストプラクティスを引っ張ってきたほうがいいのではないかという持論を展開したところ、露骨にいやな顔をされた。この部長さんにぜひ、お奨めしたい一冊である。

後半は人事制度について議論されている。前半の主張に整合する形の人事制度の提案であり、なるほどと納得できる内容である。

2006年8月20日 (日)

職人をビジネスにする

482720238901

480611760909 岡野雅行「俺が、つくる!」、中経出版(2003)

お奨め度:★★★★1/2

岡野雅行「人のやらないことをやれ!―世界一の技術を誇る下町の金型プレス職人、その経営哲学と生き方指南」、ぱる出版(2006)

お奨め度:★★★★

岡野工業の岡野社長は、最も有名な中小企業経営者の1人だ。岡野工業はプレス業であるが、プレスで常識を超えた商品をどんどん作り出して一躍有名になった。

岡野工業は中小企業としてもそんなに大きな企業ではない。いわば、職人の企業である。日本でソフトウエア開発業に従事しており、米国に憧れる人のワークスタイルが岡野工業のワークスタイルにある。プレス業はソフトウエアと異なり、典型的な設備産業であることを考えると、ソフトウエアで実現するよりははるかに難しいし、職人としての腕が必要。そこが、岡野社長のすごさである。

そんな岡野さんが職人をビジネスとしてやっていくためのノウハウ本(仕事術)ともいえるような本を出版した。これが大変面白い。

441303604201_1岡野雅行「世界一の職人が教える仕事がおもしろくなる発想法―結果が出ない人はいない」、青春出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

結果を出すためには、やり方そのものも大切だが、もっと大切なのが企画であるということを岡野社長流の書き方で相当踏み込んで書かれている。

一言でいえば、誰もやらないことを何とかしてやり遂げると、人も金もついてくるという非常にシンプルだが難しいことを言っている。

問題は誰もできないことがやりたいことかどうかだ。まあ、これは価値観の問題だ。岡野社長のように、人のできないことをどうやるかを考えるのが何よりも楽しいと思えるというのが、職人がビジネスに適応していくために最も重要なコンピテンシーかもしれない。

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2006年8月18日 (金)

戦略マネジャー3点セット

447849022809_1齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社(1997)

バーバラ・ミント「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」、ダイヤモンド社(1999)

447849027909_1
照屋華子、岡田 恵子「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」、東洋経済新報社(2001)

「戦略マネジャーの三種の神器」は

449253112209 ・問題解決スキル

 ・論理思考スキル

 ・ビジネスコミュニケーションスキル

である。

この3つについて、上の3冊は、おそらく日本で最初の本であるが、いまだに他の追従を許さない定番本でもある。

改めて紹介の必要もないだろう。アマゾンの書評の数と評価が全てを語っている。

まだ、読んでいない人は、ぜひ!

2006年7月29日 (土)

ゲリラ流仕事術

489451234301 ジェイ・C・レビンソン 「ゲリラ流 最強の仕事術~「収入」と「時間」が増える技術と習慣」、フォレスト出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

488497066709全世界で1400万部売れたというゲリラシリーズはあまりピンとこなかったが、この本はフィットした。

「目標の立て方」「時間の使い方」「仕事の選び方」、「情報の使い方」「お金の考え方」、「人の使い方」、「ビジネスの組み立て方」「顧客との付き合い方」、「人との付き合い方」、「人脈の作り方」、「「人間心理」、「マーケティング」、「ストレスへの対処法」などにおけるゲリラ流が述べられている。

そのようなゲリラ流を貫こうとすると、ゲリラ流のマーケティングが必要になってくるという関係になっているが、確かに、こういうロジックでこられるとゲリラ流マーケティング、ゲリラ流起業というのは一理あるかもしれない。

もう一度読んでみようか。

実践的ゲリラマーケティング―小企業のための成功する広告戦術

トヨタ流「秘書」

456964984x01 石井住枝「トヨタ流 プロの仕事術」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

石井さんといえば、

石井住枝「トヨタの役員秘書が見た トヨタのできる人の仕事ぶり」、中経出版(2005)

がベストセラーになり、注目をされているコーチだが、この本、あまり、面白いと思わなか480612205x09 ったので紹介したことがない。秘書という立場からみたときに、トヨタ流の源泉である人のコンピテンシーを解説した本である。

コンサルがクライアント企業のよいところを書いたような感じの本で、どこか他人事を感じさせる雰囲気があり、内容的に説得力がないように思えた。ただし、石井さんは秘書だけではなく、秘書の仕事を極めるために技術員に転身したというキャリアの持ち主であり、必ずしも傍から見ていただけではないのだが、本のつくりの問題だろう。

で、今回の本。この本はよい。トヨタの秘書が何をすればよいかを自分の経験に基づき、明確に書いている。何でもよいが、トヨタ流の本を読んだことのある人は、表にでていないことがあることを感じたことがあるのではないだろうか?

特に、コミュニケーションの部分。現場だけを考えれば、コミュニケーションのルールが決まっていて、それを大切にする文化があれば、ある程度の自律的なコミュニケーションは可能であるが、組織がある限り、そんなに単純なものではない。

普通の組織であれば、コミュニケーションの中に、経営とのコミュニケーションや、スタッフとのコミュニケーションなどが入ってこないとトヨタ方式は成立しないはず。

この本を読んで非常によく分かった。秘書をはじめとして、スタッフがコミュニケータの役割を果たしている。

その他、さまざまな問題で、トヨタ方式の潤滑油になっている秘書の機能を彼女なりの体系にまとめている本で、非常に参考になる。石井さんは、「秘書力」でカリスマになりつつあるらしいが、この本、秘書の方より、現業のスタッフ、つまり、生産技術とか、PMOとかの方にぜひ読んで戴きたい本だ。

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超トヨタ式

4876885540 村上豊「現場はもっと強くなる 超トヨタ式・チーム力最大化の技術」、幸福の科学出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

デンソーの元工場長が書いたチーム力を引き出す技術の解説。見える化、5回のなぜ、現地現物、5Sなど、トヨタ方式を構成する有名な手法のデンソーでの実践方法の解説をかなり詳しく書いてある。

ビジネスの形態が変わり、トヨタに現場が少なくなり、本当のトヨタ方式がより有効に活用されているのはサプライヤーだという説がある。その中でも、「トヨタよりトヨタらしい」といわれているデンソーで、元工場長をしていた著者が書いた本だけに、知りたいところが随所に書いてある。「超・トヨタ」とタイトルされているが、確かに、そうかもしれないと思わせる部分も多い。

ちょっと話は変わるが、トヨタ方式を体系的にまとめた本としては、

ザ・トヨタウェイ

が著名である。残念ながら日本人が書いたトヨタ本で、科学し、体系化していると感じられるものは皆無だった。この本は、珍しく科学されている。

構成はチーム力最大化のポイントということで16ポイントを上げ、それぞれ、何をしていたかを説明しているが、例えば、このひとつに

成長サイクルと成果サイクルを同時に回せ

ということで、その方法を書いている。トヨタ方式の基本は成長と成果の両立ということだが、その具体的なサイクルを明確にしたのは初めてだと思う。

そのような書き方であるので、非常に使いやすい書き方の本である。

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仕事を成し遂げる技術

489361333209 デビッド・アレン(森平慶司訳)「仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法」、はまの出版(2001)

お奨め度:★★★★1/2

デビッド・アレンはベテランの経営コンサルタントである。そのデビッド・アレンが書いた知識労働者の仕事の仕方のバイブルともいえるような本である。

プロジェクト管理、時間管理、日常のスケジュール管理などについて鉄則を、その考え方とともに、習慣化の方法まで説いた本である。この本がすばらしいのは、習慣化を目的にしていることもあって、いろいろな切り口から繰り返し、説いていることと、「シンプル」であることだ。

説いていることはそんなに難しいことではない。目的意識を持ち、リラックスすることによって、集中し、生産性が高まり、最後までやり遂げることができるという主張。しかし、333ページにわたって書かれている内容は、本当に細かく、具体的である。

本当にこの本に書かれている通りにやると生産性があがるかどうかはやってないので分からないが、納得はできる部分が多い。

プロジェクトマネジャーをやるときには、全てのメンバーに読ませたくなるような本である。

2006年5月30日 (火)

OODAサイクルを作る!

449253210201 中村好寿「ビジネスに活かす!最新・米軍式意思決定の技術」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

プロジェクトのイメージに最も近い活動はおそらく、軍隊(戦闘活動)である。

プロジェクトの行動はPDCAサイクルだといわれる(計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act))。PDCAサイクルの発案は、品質管理の父といわれるデミングで、もともと、生産プロセス(業務プロセス)の中で改良や改善を必要とする部分を特定・変更できるようプロセスを測定・分析し、それを継続的に行うために改善プロセスが連続的なフィードバックループとなるように提案したものである。

これが現在、品質概念を拡張し、さまざまなマネジメントの場面で使われている。

この方法をプロジェクトマネジメントに導入したときに、違和感があるのは、「観察」が明示的に行われていないこと、「仮説」が明示的に扱われていないことである。この違和感を解消できるのが、この本で紹介されているOODA(観察(Observe)、状況判断(Orient)、決定(Decide)、行動(Act))ループを基本とする米軍が使っている軍事意思決定モデルである。

この本は、この意思決定をビジネスにどのように応用するかという視点から、意思決定手法の体系的な説明をしており、この本を読めば、このような意思決定を行うだけの知識は入手できるだろう。

先が見えないプロジェクト、頻繁に環境が変わって行くプロジェクトのマネジャー必読!

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