トヨタ流「秘書」
石井住枝「トヨタ流 プロの仕事術」、PHP研究所(2006)
お奨め度:★★★★
石井さんといえば、
石井住枝「トヨタの役員秘書が見た トヨタのできる人の仕事ぶり」、中経出版(2005)
がベストセラーになり、注目をされているコーチだが、この本、あまり、面白いと思わなか ったので紹介したことがない。秘書という立場からみたときに、トヨタ流の源泉である人のコンピテンシーを解説した本である。
コンサルがクライアント企業のよいところを書いたような感じの本で、どこか他人事を感じさせる雰囲気があり、内容的に説得力がないように思えた。ただし、石井さんは秘書だけではなく、秘書の仕事を極めるために技術員に転身したというキャリアの持ち主であり、必ずしも傍から見ていただけではないのだが、本のつくりの問題だろう。
で、今回の本。この本はよい。トヨタの秘書が何をすればよいかを自分の経験に基づき、明確に書いている。何でもよいが、トヨタ流の本を読んだことのある人は、表にでていないことがあることを感じたことがあるのではないだろうか?
特に、コミュニケーションの部分。現場だけを考えれば、コミュニケーションのルールが決まっていて、それを大切にする文化があれば、ある程度の自律的なコミュニケーションは可能であるが、組織がある限り、そんなに単純なものではない。
普通の組織であれば、コミュニケーションの中に、経営とのコミュニケーションや、スタッフとのコミュニケーションなどが入ってこないとトヨタ方式は成立しないはず。
この本を読んで非常によく分かった。秘書をはじめとして、スタッフがコミュニケータの役割を果たしている。
その他、さまざまな問題で、トヨタ方式の潤滑油になっている秘書の機能を彼女なりの体系にまとめている本で、非常に参考になる。石井さんは、「秘書力」でカリスマになりつつあるらしいが、この本、秘書の方より、現業のスタッフ、つまり、生産技術とか、PMOとかの方にぜひ読んで戴きたい本だ。
第1章 気配り上手のコミュニケーターになろう―秘書的発想はプロフェッショナルへの近道
第2章 上司の心を開く、コーチ役をめざそう―スタッフと上司の新しい関係のつくり方
第3章 業務を推進するファシリテーターを務めよう―気配りとバランス感覚はできるスタッフの条件
第4章 組織を動かす、コンサルタントの視点を持とう―業務の本質をふまえた積極的な提案を
第5章 信頼を勝ち取る、ブレーンとして成長しよう―必要とされるプロになるために
秘書的発想は部下力を高め、組織を活性化する
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