経営戦略 Feed

2007年2月 2日 (金)

ミンツバーグのエッセンス

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部)「H・ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★★

異端の経営学者ミンツバーグの

マネジャーの仕事

戦略サファリ

などの代表的な著書から、経営論として編集しなおした一冊。

ミンツバーグの素晴らしさは、無理やり答えを出さず、ありのままでのものごとを見て、考察をすることである。学者とは本来こうあるべきだろうが、やはり、結論ありきの「戦略的仕事」をする学者の方が圧倒的に多い中で、異端の存在だといえる。鬼才 トム・ピーターズはミツバーグを20世紀最高の経営思想家だと評している。

一ツ橋大学の伊丹先生は

唯一最善解はない。ミンツバーグは子どもの目を持ち、老大家の頭を持った、異能の人である。彼の論考に制激されて、読者の頭脳もさまざまな汗をかくであろう。

と称している。最近はだれもがマネジメントには正解はないという。しかし、実感を持ってこの言葉を語る人は10人に1人もいればいいところだろう。9人の人は正解を求めたがる。するとアプローチを誤り、失敗する。

ミンツバーグはその豊富なフィールドワークから、その証拠をいやというほど見せ付けてくれる。そんな一冊でもある。マネジメントに正解はないということを本当に感じたい人はぜひ、読んでみてほしい。読んだ瞬間から、世界が変わるだろう。

この本でミンツバーグに共感できたら、ぜひ、この本を読んでみてほしい。この本にミンツバーグの思想の全てがあるのではないかと思う。

4478170258_09__aa140_scmzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(北野利信訳)「人間感覚のマネジメント―行き過ぎた合理主義への抗議」、ダイヤモンド社(1991)

版元の絶版で、アマゾンではトンでもない価格がついている一冊だが、本物のマネジャーを目指す人であればこれだけのお金を出しても意味があるだろう。

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2007年1月12日 (金)

マーケティングにおけるギャップに悩む人必読

4820118455_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983141 石川昭、辻本 篤編「新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント」、生産性出版(2006)

お奨め度:★★★★

編著であるが、研究開発から製品開発、事業開発までバランスよくまとめられており、初心者が読むにも適した製品開発、事業開発のテキスト。

第2章では、戦略実行のための研究開発のあり方について解説されている。特に、マーケティングのさまざまな活動と研究開発活動をどのように関係付けていくかを丁寧に解説している。

第3章では、研究開発における意思決定について解説されている。テーマの選定および、継続中止などの評価と判断をどのように行うかを解説している。

第4章では、マーケティングにおける情報活動について解説している。

第5章では、研究開発活動における情報活動について解説している。

6章以下は、これらの解説を事例によって解説している。「からだ巡礼(TM)」、Webリコメンデーションシステム「教えて!家電」、ロボットの開発などの特徴のある事例を取り上げて解説しているので、とても面白い。

最後に9章では最近注目されている、クレームベースの製品開発について解説している。

経営戦略と研究開発、研究開発と製品開発のギャップに悩んでいる人にはとても参考になる一冊である。

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2007年1月10日 (水)

意図された混乱

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_v4801519 ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部編)「H. ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

日本でも紹介されているミンツバーグのいくつかの著作を編集した本である。

456124218x09lzzzzzzz_1 マネジャーの仕事

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック

の2冊がベースに、HBRのインタビューなどが加えられて一冊の本になっている。編集がよくて、ミンツバーグの特徴がよく現れた一冊になっている。

4492530649_09__aa240_sclzzzzzzz_このブログでもマネジャーの仕事は何度か紹介しているが、ミンツバーグは考えるネタを提供してくれる著作が特徴である。マネジメントは複雑であるという思いがあるのだそうだ。

この本の原題は、邦題より大きく書いてある「Calculated Caos」である。意図された混乱とでもいえばよいのだろうか?意図して混乱させ、考えさせる。そこにミンツバーグの著作の本質があるといえる。

この記事を書くのにアマゾンのページを見たら、take_dさんという方が、司馬遼太郎を読むような感覚で読んでみてはどうかと書かれていて、なるほどと思った。

日本人はこの手の考えさせる本は好きではない。ノウハウもの以外は本に金を払う価値はないと思っている人が多いように思う。しかし、言われてみると、時代小説は好んで読み、それをマネジメントや自分の仕事に活かすというのは好んでする人が多い。

時代小説には答えが書いてあるわけではないが、刺激がたくさんあるのだろう。確かにミンツバーグをそのような感じで読めば、非常に面白い著作が多いのは間違いない。ナイスアイディアだ。

2006年11月 7日 (火)

「実行」とは何か

453231037709_2 ラリー・ボシディ、ラム・チャラン(高遠裕子訳)「経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則」、日本経済新聞社(2003)

お奨め度:★★★★★

物事をきちんと行うための体系的なプロセスを「実行」というコンセプトのもとに、失敗例、成功例をまじえて解説した一冊。

著者のラリー・ボシディはハネウエル・インターナショナルの前会長で、GEのジャック・ウェルチなどにも大きな影響を与えた経営者である。

この本では、実行を

実行とは体系的なプロセスであり、戦略に不可欠である
実行とはリーダーの最大の仕事である
実行は企業文化の中核であるべきである

だと位置づけ、何をどうするかを厳密に議論し、質問し、絶えずフォローし、責任を求める体系的なプロセスだと定義している。非常に良く分かる。

昨今、実行ということが盛んに言われるようになってきたが、概念的に実行を唱えるだけではなく、もう少し、体系的、論理的にアプローチをしたい人にはぜひお奨めしたい一冊である。

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2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

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2006年10月21日 (土)

偉大なる経営論

B000ion7te01 Harvard Business Review2006年 11月号

 【創刊30周年記念号】偉大なる経営論

お奨め度:★★★★★

ハーバードビジネスレビューの創刊30周年記念号。30年間に発表された名論文の中から30本が採録されている。下にリストがあるので見てほしい。経営学にまったく縁のない人でも4~5人くらいは知っている人が多いのではないかと思う。

ほとんどの論文が実践の中で使われるようになってきた概念を示したものだ。これはすごいことだと思う。かつ、この2~30年の間に新しく生まれたマネジメント手法はほぼ、網羅されている。

つまり、そのくらいハーバードビジネスレビューは実務家のマネジメントに貢献している学術論文誌である。

マネジャーという肩書きのある人、あるいは、将来マネジャーを目指している人、いずれも、この記念号はぜひ持っておき、通勤の行き帰りにでも読んでほしい。

最後に神戸大学の加護野先生の「マネジメントの古典に触れる」という提言がある。この提言も味がある。

ちなみに、東京で本屋を探したが、最初の3件は売り切れだった。よく売れているようだ。

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2006年8月18日 (金)

戦略マネジャー3点セット

447849022809_1齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社(1997)

バーバラ・ミント「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」、ダイヤモンド社(1999)

447849027909_1
照屋華子、岡田 恵子「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」、東洋経済新報社(2001)

「戦略マネジャーの三種の神器」は

449253112209 ・問題解決スキル

 ・論理思考スキル

 ・ビジネスコミュニケーションスキル

である。

この3つについて、上の3冊は、おそらく日本で最初の本であるが、いまだに他の追従を許さない定番本でもある。

改めて紹介の必要もないだろう。アマゾンの書評の数と評価が全てを語っている。

まだ、読んでいない人は、ぜひ!

2005年9月20日 (火)

イノベーションのジレンマ、いよいよ完結

427000071601クレイトン・クリステンセン、スコット・アンソニー、エリック・ロス(宮本 喜一訳)「明日は誰のも のか イノベーションの最終解」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★

イノベーションのジレンマ」の完結編。

前作のイノベーションへの解では、あまり、インパクトのある破壊的イノベーションのソリューションを提示できなかったように感じたが、あれから2年が経過し、相当しっかりした理論になったというのが第一印象。

単にプラクティスではなく、具体的なプロセスの構築などについても言及しており、「イノベーションのジレンマ」を打ち破る方法としてやっと具現性を持ってきた。特に、非マーケット要因の分析の部分はすばらしいと思う。

今回から、出版社が変わっており、Harvard business school pressの本として、ランダムハウス講談社が翻訳を手がけた。この翻訳は前作2冊の翻訳より、翻訳として堅いように思う。僕には若干読みづらかったが、エンジニアなどが読むにはよいのかもしれない。訳者の宮本さんは、同じ出版社から出版された「トム・ピーターズのマニフェスト」や「ジャック・ウェルチ わが経営」(日経ビジネス人文庫)の翻訳をしていらっしゃる方であるが、こちらと較べると、おそらく、出版社の方針だろう。

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2005年8月 2日 (火)

組織は戦略に従う

4478340234 アルフレッド・チャンドラーJr.(有賀裕子)「組織は戦略に従う」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★

「組織は戦略に従う」という言葉を知らない人はいないだろう。ドラッカーと並ぶ経営学のグル、アフフレッド・チャンドラーの言葉である。本書はその出典となった本である。

GM、デュポン、スタンダード石油、シアーズといった大企業の組織形成過程を調査し、これらの企業が第二次世界大戦後の経済成長の中で多角化戦略を展開していく際に、経営の複雑性と多様性をより合理的に管理するために機能別の組織を捨て、事業部制組織というプラクティスを導入したことを発見し、それをもって、「組織は戦略に従う」という名言を残した。

日本では、40年前に出版され、今回、ダイヤモンド社から復刊された。このような経営学の金字塔ともいえる本が読める状況になったのは喜ばしいことである。

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2005年4月24日 (日)

経営の「突破力」現場の「達成力」

4889562753大工舎宏, 平山賢二「経営の「突破力」現場の「達成力」―経営と現場を結ぶ4つの実践手法」、日本プラントメンテナンス協会(2004)

お奨め度:★★★1/2

「収益構造展開」「KPIマネジメント」「目標/方策マトリクス」「スコアカード」

という4つのツールを使って、経営と現場を結ぶ実践的手法を解説している。

これらのツールにより、「勝てる目標」を設定し、それを現場で達成する方法が示されている。

現場では、経営の利益に対する考え方が分からない中で、利益に対する意思決定を求められるケースが多い。バランススコアカード系の手法は経営からアクティビティに展開するツールとしては有効だと思うが、逆方向の流れ、つまり、現場から経営へのフィードバックができにくい。

ここで提案されている手法は、その点において優れている。

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