マネジメント Feed

2008年3月20日 (木)

マネジメントの奥儀

4492556001 リアズ・カデム、ロバート・ローバー(小林薫訳)「1ページ・マネジャー」、東洋経済新報社(2008)4492556001

お薦め度:★★★★1/2

ケン・ブランチャードの「1分間マネジャー」は多くの人は一度は読んだことがある本だと思う。

4478350094ケン・ブランチャード、スペンサー・ジョンソン(小林薫訳)「1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか! 」、ダイヤモンド社(1983) この本に実践編があることを知っている人はどのくらいいるだろうか?

4478350132 ケン・ブランチャード、ロバート・ローバー(小林薫訳)「1分間マネジャー実践法―人を活かし成果を上げる現場学」、ダイヤモンド社(1984)実践法はタイトルの通り、1分間マネジャーの実践法について書いている。この本は、1分間マネジメントの実践として、目標設定、称賛、叱責を体系的に行うという方法を紹介したものであり、

部下を生かすABC法:目標、実践、事後方策
部下を伸ばすPRICE方式:目標を明確にする、実践行動を記録する、部下を参画させる、部下を教育指導する、評価する

の2つのメソッドが中心になっている。

この方法を実践するために、著者の一人であるロバート・ローバーが、

・説明責任
・データ収集
・フォードバック
・認識
・訓練

の5つのシステム作りが重要であるという主張の本を出版した。ロバート・ローバーは1分間マネジャーのコンセプトに矛盾しないようにこれを1枚(1ページ)の書類でやるという考えとしてまとめたのが、本書。

本としては1分間シリーズと同じくストーリー形式で、苦境に陥ったエックス社の組織復活のストーリーとして書かれている。

読んでいて興味深かったのは、普通、業績が悪くなると、人は「過剰管理」に走る。これは企業でも、事業でも、プロジェクトでも同じだ。それは決してよい結果を招かないのは皆さんもご承知の通りだが、このような状況で1ページというコンセプトは非常に理にかなっているということだ。

マネジメントの本質が書かれているといってもよいだろう。

なお、この本とは関係ないが、

0470052376 Clark A. Campbell「The One-page Project Manager: Communicate and Manage Any Porject With a Single Sheet of Paper」、John Wiley & Sons Inc(2006)0470052376

という本がある。PMBOKをどのように適用しようかというときに大変、役立つ本である。書名のみ、ご紹介しておく。

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2008年2月20日 (水)

ドラッカーを実践する

4478003343 ピーター・ドラッカー (著)、ジョゼフ・マチャレロ(上田惇生訳)「プロフェッショナルの原点」、ダイヤモンド社(2008)

紙版><Kindle版

お薦め度:★★★★★

原題:The Effective Exective in Action

ドラッカーの最大の理解者であり、ドラッカーの教えを30年に渡り、教えてきたジョゼフ・マチャレロ教授がドラッカーの言葉を原題のテーマで、95のアドバイスに再構成した本。

この本を理解するためには、この本で最初の項目に取り上げられているドラッカーの言葉を知っておくとよい。

「経営者の条件」に書かれている言葉で

今日の組織では、自らの知識あるいは地位ゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである

という一節である。エグゼクティブという言葉は、通常、組織上の役職を示す言葉として使われるが、ドラッカーは上の抜粋の通り、別の意味で使っており、そこにこの本全体を貫くスタンスがある。このような前提で読むべき本である。

さて、本書は成果を上げる人のバイブルとしてまとめられたもので、

(1)時間をマネジメントする
(2)貢献に焦点を合わせる
(3)強みを生かす
(4)重要なことに集中する
(5)効果的な意思決定を行う

という5つの習慣を身につけるために書かれている。ゆえにこれまで、何冊かある、ドラッカー語録のような本とは多少違った趣がある。

それは上の5つについていくつかのポイントが示されている中で

 ・とるべき行動
 ・身につけるべき姿勢

の2つの視点から、コンピテンシーの強化についての記述があり、これを意識することによって習慣化できるようなつくりになっている点だ。これこそ、マチャレロ教授がドラッカー学を教えてきたノウハウだといえよう。

ひとつ例をあげておく。上にのべたようにこの本の第1章の1項目目は

「なされるべきことをなす」

というエグゼクティブであれというアドバイスなのだが、ここでの行動と姿勢は

【とるべき行動】
 自らの組織においてなされるべきことは何か?自らがなすべきことは何か?
【身につけるべき姿勢】
 常になされるべきことから考えることを癖にする。手本となる人はいるか?

といったもの。

ドラッカーの膨大な著作は秀逸なものばかりだが、実践ということでいえば、この一冊に勝る本はないだろう。購入し、擦り切れるまで使いこんでほしい!

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2008年1月26日 (土)

スターバックスの44のベストプラクティス

4887595743 ジョン・ムーア(花塚恵訳)「マジマネSPECIAL スターバックスに学べ」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お薦め度:★★★★

2年半前に、このブログでスターバックスの人材育成について書いた本を紹介した。

当時は、スターバックスの事業展開については数冊の書籍があったが、マネジメントについて書かれた書籍が少なかったのだが、この1年くらいの間は、結構、本屋で新刊書を目にするようになった。

その中で、お勧めなのが本ブログでも何冊か紹介した「マジマネ」シリーズのスペシャルとして出されたこの1冊。

スターバックスの中で語り継がれている独自の成功のノウハウ(ベストプラクティス)を44個、公開している。ベストプラクティスは

・ブランディングとマーケティング
・サービスマネジメント
・人材育成

の3つに分けて整理している。ブランディングとマーケティングでは、
【ノウハウ1】事業を築く過程からブランドは生まれる
【ノウハウ4】真摯な姿勢が人々から信頼を生む
【ノウハウ14】言葉よりも行動!
など15個。サービスマネジメントでは、
【ノウハウ16】注目に値することが注目される
【ノウハウ18】顧客が笑顔になるサービスを心掛ける
【ノウハウ25】旅行者は土産を持ち帰り、探検家は土産話を持ち帰る
など14個。人材育成では
【ノウハウ30】強い企業は、従業員との間に信頼がある
【ノウハウ35】ブランドは人の情熱によってつくられる
【ノウハウ36】リスクをとり、謙虚さを忘れず、新しいことに挑戦する
など13個。これ以外にプラスアルファとして
【ノウハウ43】利益は副産物である
【ノウハウ44】高い志と情熱を持つことが、競争社会で勝ち抜く唯一の方法
の2つで全部で44だ。
読んでいて、ひとつひとつの項目から、スターバックでの店頭での対応やメニューが目に浮かぶ。つまり、実行されているのだ。なんと素晴らしいことだろう!

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2008年1月17日 (木)

「変人力」が改革の決め手

4478000832_2 樋口泰行「変人力~人と組織を動かす次世代型リーダーの条件」、ダイヤモンド社(2007)

お薦め度:★★★1/2

ダイエーの再建のリーダーとして乞われた樋口泰行氏が1年半にわたる活動から得られた変革型リーダーの在り方をまとめた本。エピソードを中心につづられており、リアリティのある話で、物語としても面白く読める。

ダイエーがどのような状況だったかを示すエピソードがある。ダイエーはかつて、野菜に強かったが、いろいろな問題で、その強みをなくしていた。ヒューレットパッカード社の社長だった樋口氏は、HP社の送別会で、いろいろな店で買ってきた野菜を並べ、どれがダイエーのものかを当てるというゲームをやらされる。もっとも鮮度が悪いのがダイエーのものだった。それが原因でもないのだと思うが、まずは、野菜改革に取り組み、一定の成果を出す。これを契機にして、風土改革を行い、ダイエーをなんとか再建のめどがつくところまでひっぱていく。

その際に、樋口氏が再建(変革)プロジェクトのリーダーとして必要だと思った力が

・現場力
・戦略力
・変人力

だという。現場力とは、「現場の創意を最大限に引き出す力」である。戦略とは「人や組織をただしい方向に導く力」である。そして、この本のタイトルでもある変人力とは「変革を猛烈な勢いでドライブする力」である。

これらの定義はこの本のそれぞれの章の副題として書かれているものなのだが、僕自身は本文中にもっと強烈なインパクトのあるフレーズがあった。特に変人力では、本文中にその定義として

エモーション
周囲が何を言おうとも自分の信念を貫きとおす力
底知れない執念で変革をやり遂げようとする力

といった表現があるが、エモーションとか、信念とか、執念といったキーワードの方がぴったりとする。

この本を読んでいると、タイトルにあるとおり、やっぱりキーになっているのが変人力である。もちろん、方向が間違っていたり、現場がしらけていたりしたのでは話にならないが、逆にいえば、このあたりはそれなりにできる人が多い。特に、樋口氏の、松下電器、ボスコン、HPというキャリアをみれば不思議ではない。

ダイエーでこの時期に樋口氏が果たした役割に対して、本当の意味での評価がされるのはもっと後だと思うが、丸紅という会社の支援を受けることができるようになったのは大きな成果だ。その意味で、成功したプロジェクトだと言えると思うが、樋口氏でなくてはできなかったとすれば、エモーショナルに動くことができたことではないかと思う。本として見れば、現場力に最も力が注がれていて、変人力のあたりが薄いのは多少物足りないなと思った(ただ、主役は現場なので、書いているうちにそのようになったのだろうというのは容易に推測できる)。その点で★を3つ半とした。内容的にはもうひとつ★を増やしてもよい本だ。

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2008年1月 3日 (木)

専門家はコンピュータに勝てるのか?

4163697705 イアン・エアーズ(山形浩生訳)「その数学が戦略を決める」、文藝春秋社(2007)

お薦め度:★★★1/2

山形浩生さんの訳書を紹介するのは、これで2冊目だと思うが、実は結構読んでいる。テーマや著者で読むというよりも、山形さんが目をつけて翻訳をする本というので読んでいる。

山形さんを有名にしたのはたぶん

ポール・クルーグマン「クルーグマン教授の経済入門」、メディアワークス(1998)

ではないかと思うが、僕が山形浩生にはまったのは、これではなく、

エリック・スティーブン レイモンド 「伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト」、光芒社(1999)

である。

昨年もこの本以外に、2冊ほど読んだ。

ジョージ・エインズリー「誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか」、NTT出版(2006)

ポール・ポースト「戦争の経済学」、バジリコ(2007)

とにかくインパクトが大きい。新しいトレンドを鋭く見つける。この本もそうではないかと思う。

さて、前置きが長くなったが、この本は「絶対計算」について書かれた本である。絶対計算という言葉はあまりなじみがないが、要するに、回帰分析やニューラルネットワークによって、実績として残っているすべてのデータを分析し、それから統計的法則を導き出す「数学」である。

最初の4章程、いやというほど、絶対計算により、人間より適切な判断ができたという事例を挙げている。象徴的なものとして、ヴィンテージワインの価格予測、最高裁判事の違憲判断の予測、野球選手の実績評価など、結構、どぎつい例を挙げた上で、まずは、マーケティングの分野での実績に触れている。

・アマゾンのリコメンド
・お見合いサイトのマッチング
・カジノ

などである。次に取り上げられているのは、政策決定において、ある政策が政策目標の実現に役立つかどうかを判断するのに、絶対計算が役立ち、防犯、貧困対策などでの実績を紹介している。

さらには、医療の世界でも同じことが起こっていると紹介している。

この本が興味深いのは、この後で、なぜ、人間はうまく判断できないのかを分析した部分。結論は、主観の混入により、統計でいうところの信頼区間がうまく設定できないことが原因だという。ここで面白いクイズがある。( )を埋めるというクイズ。

1.マーチン・ルーサー・キング牧師の死亡時年齢は( )歳から( )歳
2.ナイル川は全長何キロ?( )キロ~( )キロ

といったクイズが10問ある。これにたいして、まったくわからないというのはダメ。たとえば、1.であれば、1歳から200歳とすれば必ず正解になる。これが信頼区間だ。これに対して、正答を9個以上含む範囲を挙げた人は1%。99%は判断にバイアスが乗っていることになるという。

つまり、正解があるところをはずして、そこでいろいろな分析をするので、人間はうまく判断できないのだという。絶対計算は信頼区間を広くとり、手当たりしだいに分析していくので答えを見逃さないというのだ。

ただ、どんな問題でもそのような分析を行おうとすると、無限の因子が出てきて、不可能であることが多い。そこで、その信頼区間の絞り込みは人間(専門家)が行うべきであり、それを適切にできるためには、仮説立案が重要であると結論する。

そして、人間にそのような役割をさせるための教育のあり方にまで言及している。

日本ではビジネスの中にこのような絶対計算を取り入れることに遅れているが、そろそろではないかと思う。一度、このような世界を知っておくことはどのような仕事をしていても意味のあることだろう。

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2007年12月24日 (月)

プロジェクトマネジャーの仕事

490324167x メアリー・グレース・ダフィー(大上 二三雄、松村 哲哉、上坂 伸一、エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社訳)「プロジェクトは、なぜ円滑に進まないのか (ハーバード・ポケットブック・シリーズ 1) 」、ファーストプレス(2007)

お薦め度:★★★★1/2

ビジネス書の杜ブログで、新任のマネジャーやプロジェクトマネジャーのためのマネジメントの入門書としてお薦めしているのがクイン・ミルズの「ハーバード流」シリーズ

ハーバード流リーダーシップ「入門」
ハーバード流マネジメント[入門]

ハーバード流 人的資源管理[入門]

である。

このシリーズを出版しているファーストプレスがハーバード・ポケットブック・シリーズなるシリーズを投入してきた。その第1弾が本書。このほかに

限られた時間を、上手に活用する 
コーチング術で部下と良い関係を築く

の2タイトルあるが、いずれも良い本である。

さて、この本はプロジェクトスムーズに進めるプロジェクトマネジメントのポイントを

・必要なリソースを見きわめる
・目標をはっきりと定める
・途中で必要な修正を施す

に絞り、やさしく説明し、また、実際にできるような形で解説している。シンプルであるが、プロジェクトマネジメントの教科書には書いていないようなことも結構書いている(マネジメント視点からプロジェクトマネジメントをとらえている)。

また、自己診断がついているのも、行動の助けになるだろう。

プロジェクトマネジメントの本に対する評価として、難しいという本がよくある。これは理系の人がたくさん本を書いているからではないかと思う。

理系の人は知識を増やすために読む人が多い。したがって、プロジェクトマネジメントの本も、それなりに難しいことを書いていないと満足しない人が多いようだ。実際に、長尾さんの本とか、峯本さんの本などを読んで高い満足を得ているのは、すごいことだと思う。ビジネス書の杜でも取り上げているようにこの2冊はたいへんよい本だが、この本に書いていることを実践しようとすると、たぶん、10年はかかるだろう。

一方で、文系の人は、ビジネス書は行動(実践)するために本を読む人が多い。この目的でももっともよい本は、サニー・ベーカー+キム・ベーカー+G・マイケル・キャンベルの書いた「世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント」だと思う。この本は、行動することにフォーカスしていると思う。ただ、網羅的に書いてあるので、やはり、これだけのことをできるようになろうとすれば5年はかかるなという感覚がある。残念なことに優先順位もつけられていない。

この本は、とりあえず、3つのポイントにフォーカスしている点が素晴らしい。勉強して、行動する。そして、行動できるようになれば、再び、勉強してまた行動する。このサイクルを作るための最初の一歩としてお薦めしたい本だ!

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2007年12月 7日 (金)

機能不全に陥った上司・部下関係を救う

4492532374 豊田 義博「「上司」不要論。」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★★

良い上司になるには、上司を使うには、といった「上司・部下」本は八重洲ブックセンターにいけば100冊はくだらないだろう。本屋にこの本が平積みされているのを発見したときに、東洋経済新報もついにこの種の本に出したかと、意外感を持って、手に取った。

手にとって、納得。僕は初めての著者の名前のときには、中身ではなく、奥付にある著者のプロフィールをまず見る。この本の著者の豊田義博さんは日本でも有数の人材マネジメントのシンクタンク「リクルートワークス研究所」の主任研究員なのだ。ご本人もまえがきで書かれているが、主任研究員なので、当然部下はいる。

このあたりで、俄然、興味が高まり、とりあえず、買ってホテルに戻り、一気に読んだ。

面白い!

というより、痛く共感。

リクルート ワークス研究所による職場意識調査の成果をもとに、今までの「上司・部下」本では触れられてこなかった視点から、今日の上司・部下問題を書き起こした一冊。この本に書かれていることを簡単にいえば、職業意識が変わっている中で、当然、上司と部下の心理的な関係も変わる。にも関わらず、新しい関係構築がされていない。これでは、上司と部下の関係は機能不全に陥って当たり前。この問題を解決する方法は関係のリストラクチャリング以外にない。

書き方も工夫されている。ステレオタイプの上司のキャラクタとその行動をマンガで描き、そのキャラクタを使って分析結果を説明するという書き方をしているので、内容そのものは固いのだが、結構、気軽に読める。

ただ、この本、パレートの法則でいうところの20%しか、見ていないような気がする。調査の詳細が書かれていないので、推測にすぎないが、たとえば、僕が最近、はまった本、
田北百樹子「シュガー社員が会社を溶かす」、ブックマン社(2007)4893086715

といった80%の現実に、どのように答えるのだろうか?という疑問は残った。まあ、パレートの法則だから20%に対処すればよいという気もするが、、、

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2007年12月 5日 (水)

プロジェクトXの経営学

462304873x 佐々木 利廣「チャレンジ精神の源流―プロジェクトXの経営学」、ミネルヴャ書房(2007)

お薦め度:★★★★1/2

プロジェクトXにはまっています。なぜから、こういう連載を始めたからです。

プロジェクトXにみるスポンサーシップ

プロジェクトXというと、そのネーミングからか、プロジェクトマネジメントの視点から取り上げられることが多い。しかし、プロジェクトXというのはプロジェクトマネジメントについて問われるべきものではなく、「プロジェクトのマネジメント」について問われるべきものである。つまり、経営組織がプロジェクトをどのように行っていったかをテーマにしているものは極めて多い(もちろん、純粋なプロジェクトものもあるが)。

ということで、八重洲ブックセンターにいきプロジェクトXの本を探していたら、面白い本があった。これがこれ。

まとめ方も面白く、NHKのプロジェクトXはなぜ、面白いかという視点からまとめている。まとめたのは、京都産業大学の先生たち。分析視点は
・新規事業創造
・製品開発と企業間協調
・イノベーションと産業発展
・新市場の開拓とマーケティング戦略
・経営の国際化と組織学習
・組織間の異種協働
・リーダーシップとリーダー・フォロワーの関係
の関係。この視点の設定はたいへん、面白いし、参考になった。NHKのストーリーがプロジェクトにフォーカスしているので、その背後や環境をうまく抽出する視点だからだ。

ただし、分析は、教科書のような分析なので、経営学の教科書かと突っ込みたくなるような内容。もう少し、突っ込んでほしかった(実際に教科書として使っているようなので、そのためかもしれない)。

ということで、試みは評価したいし、この本を読んでプロジェクトXを見ると、見方が変わると思う(実際にやってみたらそうだった)。その意味でも意味があると思う。本当は★3つ半くらいにしたいのだが、★1個はその点でのおまけ。

また、プロジェクトマネジャーが、自分の置かれている立場を確認するためにも読んでほしい1冊である。

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2007年11月30日 (金)

イノベーションをマネジメントする

4270002719 ジェームズ・アンドリュー、ハロルド・サーキン(重竹尚基、遠藤真美、小池仁訳)「BCG流 成長へのイノベーション戦略」、ランダムハウス講談社(2007)

お薦め度:★★★★

この本が指摘し、かつ、答えを準備している問題は非常に重要な部分である。

日本ではイノベーションはマネジメントするものではなく、言い方は悪いが、「アイディア」と「運」だと思っている人が多い。この議論でよく引き合いに出されるのが、20年前にウォークマンを作ったソニーはなぜ、iPodを作り得なかったかという話だ。実は、本書にもこの話は触れられているので、興味ある人は読んでみてほしい。

日本ではと書いたが、この傾向は欧米でも同じような傾向があった。あまりにも、説明できない(不確実な)ことが多く、体系的にマネジメントできるものではないと考えられてきた。

この傾向が変わる契機になったのが「クリステンセンのイノベーションのジレンマ」ではないかと思う。このあたりから、日本でも著名なものでも、クリステンセンの「破壊的イノベーション」、ムーアの「キャズム」、キム氏&モボルニュは「ブルーオーシャン」など、ロジャースが提示したイノベーションモデルでは説明できないような現象を説明するモデルが多くでてきた。

そのような中で、この本はボスコンの体系的なイノベーションマネジメントの手法を紹介するものである。投資マネジメントをキャッシュカーブというフレームワークで合理的に行っていくことによって、不確実性に対処し、最適なゴールを見つけ出し、到達することができるというものだ。

商品開発を担当している人にはぜひ読んでほしいと思うが、この本は単にイノベーションにとどまらず、「マネジメントの価値」を考えさせられる本である。その意味で、すべてのマネジャーにお薦めしたい1冊である。

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2007年11月16日 (金)

日本における合理的経営の追求

4492501762 西尾久美子「京都花街の経営学」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★

経営学者である著者が、5年にわたるフィールドワークを経て、京都の花街のビジネスシステムを分析し、まとめた一冊。内容は非常に面白いし、置屋のシステムを中心にして全体を分析しているのも納得できる。ただし、フィールドワークが中心で、現在のシステムについての分析が中心であるためか、置屋の話も読み物レベルで、本質がえぐりだされていないのではないかという感想を持った。

それはそうとして、花街のビジネスシステムをうまく、ベストプラクティスとして切り出しているので、ベストプラクティスとしては参考になる点が多い。置屋というと日本的なものだと思われているかもしれないが、実態は違う。最も大きな違いはリスクマネジメントである。

高いレベルの顧客満足を実現しようとした場合に、いろいろな面でリスクを取る必要がある。取引もそうだし、人材育成もそうである。花街のビジネスシステムは、リスクを取ることを前提にして、リスク管理を徹底する点に特徴がある。これは、欧米のマネジメントの考え方に近い。

それを日本の人間関係の中でいかに行うかに置屋システムの秘密があることまでは、よくわかる本である。

シニアマネジャー、経営者、プロジェクトスポンサーなどのお薦めしたい一冊である。

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