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2008年5月24日 (土)

ジョン・ネスビッツは、何をみて、どう考えているか?

447876106xジョン・ネスビッツ(本田 直之監修、門田 美鈴訳)「マインドセット ものを考える力」、ダイヤモンド社(2008)

お薦め度:★★★★★

マインドセットは

経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態

という意味でつかわれる言葉である。人間の思考様式や、心理状態というのは一面的に捉えることはできず、多面的にとらえるために、「セット(集合)」として認識される。

まず、このマインドセットの言葉の意味を念頭において欲しい。

さて、本書は世界の未来像を描き、社会に大きなインパクトを与えた「メガトレンド」の著者、未来学者ジョン・ネスビッツが書いた未来を読み解くためのマインドセットを書いた本である。

序文の中で、ネスビッツは、私には未来が予測でき、多くの人には予測できない理由はマインドセットの違いにあると指摘し、このマインドセットを身につければ、ジョン・ネスビッツのごとく、未来を予測できると説く。

さて、そのマインドセットとは以下の11である。

マインドセット1 変わらないもののほうが多い
マインドセット2 未来は現在に組み込まれている
マインドセット3 ゲームのスコアに注目せよ
マインドセット4 正しくある必要はないことを理解せよ
マインドセット5 未来はジグソーパズルだ
マインドセット6 パレードの先を行きすぎるな
マインドセット7 変わるか否かは利益次第である
マインドセット8 物事は、常に予想より遅く起きる
マインドセット9 結果を得るには、問題解決よりもチャンスを生かすべし
マインドセット10 足し算は引き算の後で
マインドセット11 テクノロジーの生態を考える

社会的な問題だけではない。たとえば、自分の会社の将来の姿を見たいとき、自分の事業の先を考えてみたいとき、この11の視点から考えることによって、適切な未来像が見えてくるだろう。

第2部では、この11のマインドセットを用いて、実際にジョン・ネスビッツが未来図を描いてみせている。メガトレンドと似ているものもあるが、この本のマインドセットの解説を読んでから読んでみると、また、別の面白さがある。

ついでだが、この本、「レバレッジ・リーディング」の著者、本田直之氏の監訳で、コメントを寄せている。このメッセージを読むと、レバレッジ・リーディングってこういうことかって分かる(笑)。

最後にもう一つ、おまけ。本書に併せたわけでもないだろうが、未来のリーダーシップ論として、ピーター・センゲの「出現する未来」とともに注目されているハワード・ガードナーの「Five Minds for the future」が翻訳された。

4270003308ハワード・ガードナー(中瀬 英樹)「知的な未来をつくる「五つの心」」、ランダムハウス講談社(2008)

この本もいずれ書評しようと思うが、この本は、未来のリーダーは

・熟練した心
・統合する心
・想像する心
・尊敬する心
・倫理的な心

の5つのマインドセットが必要だと説いている。未来リーダーを目指す人は併せて読んでみてほしい。

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2008年5月13日 (火)

価値観の共有を前提にしないコミュニケーション

4385363714 北川達夫、平田オリザ「ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生」、三省堂(2008)

お薦め度:★★★★★

今、世界でもっとも注目を浴びているフィンランド教育を日本に紹介したことで有名な北川達夫氏と、演出家であり、演劇での経験をベースにしたコミュニケーションの教育・研究に携わっている平田オリザ氏のコラボレーション本。

教育、コミュニティ、対話などの視点から、コミュニケーションについての「対話」により、極めて深い洞察をしている。200ページほどの中に、今、日本に必要なものが凝縮されてぎっしり詰まっている。

特に、グローバルな社会では「対話力は生きる力」だといい、欧米においては、これがないと生きていけない「キーコンピテンシー」であるという。そして、「子供たちや若い世代の人たちに必要なコミュニケーション力」とは、「論理的に考えて、論理的に相手に伝える力」だとあまり前のように考えらているがそうではなく、「もっと日常的で、お互いの価値観をすり合わせていくようなコミュニケーション能力」だという。

本の作り方もたいへん、うまく、はっとさせられるようなメッセージがどんどん出てくる。2人の対話を読んでいくと同時に、このひとつひとつのメッセージを熟考しながら読んでほしい本だ。

あとがきに、北川氏がこんなことを書いている。

「もっとよく考えろ」というのは、「自分の頭で考えろ」という場合よりも、むしろ、「まわりの考えに合わせろ」という場合の方が多いのではないか

この指摘がこの本のエッセンスだといえる。「考える力」の重要性を説く人は多い。しかし、そこに託されている思いが北川氏の指摘のようになっていることは明らかである。本書でもさんざん繰り返されているように、今の社会では価値観の共有を前提とすることはナンセンスである。だとすると、いくら考えてみたところで「まわりの考えに合わせる」ことなどできないのだ。

この本は僕にとって一言一句まで舐めるように読みたい本だが、その中でもビジネスで特に重要だと思った話が2つあるので、紹介しておく。

ひとつは、重層性の話である。かつての地域社会には重層性があったという。学校では教師と保護者の関係があっても、家に帰れば保護者が自治会長である。これが重層性だ。このような重層性があると発言にはリスクが伴う。保護者がモンスターピアレントをやると、自治会のマネジメントで苦労する。こんな関係があったのだが、重層性がなくなってきている。これは、コミュニティだけではなく、会社の中でもそうだ。たとえば、組合活動が盛んだったころは重層性を実現していたが、だんだん、なくなってきた。ビジネスマンは仕事における重層性を持たなくてはならない。

もう一つは、シンパシーではだめで、エンパシーが必要だという話。

シンパシーはその人の気持ちになって考えることであり、エンパシーは「その人だったらどう感じるか」と考えること。ビジネスに情は必要だが、シンパシーでなんとかなっていた時代は終わった。企業の中にさまざまな価値観が渦巻いているからだ。こうなるとエンパシーを持てないと乗り越えていけない。

この2点を含めて、本当によい本だ。ぜひ、読んでみてほしい!

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2008年5月 5日 (月)

フィードバックを極める

4903241858 ジェイミー・ハリス(松村有晃監訳、柴田 さとみ、上坂 伸一訳)「フィードバックの技術で、職場の「気まずさ」を解消する」ファーストプレス(2008)

お薦め度:★★★★★

上司による部下の指導方法としてコーチングや対話が注目をされているが、もっと、基本的な指導方法として古くからあるのがフィードバックである。フィードバックというと、ちょっとした注意をするとかで、単純なものだと思われているが、この本は新書とはいえ、100ページ以上にわたり、フィードバックという比較的、地味なテーマについて書いた本である。著者は組織変革のコンサルタント。

著者は、フィードバックがうまくいかないのは、知識とスキルの欠如だと言い切り、それを補う一冊として位置づけている。まず、著者が指摘するのは、フォードバックの位置づけで、フィードバックと「審判」を混同し、受ける側は否定的なメッセージを遮断しようとし、与える側は健全な職場環境を壊したくないと考え、それでうまくいかないと指摘する。

フィードバックを正しく行うためには
・必ずしも否定的なものではない
・一方的な独白ではない
・取っ組み合いのけんかではない
・個人を攻撃する手段ではない
・それだけが唯一正しい意見というわけではない
を念頭におき、好ましい行動や問題解決を推奨、強化する(ポジティブフィードバック)、あるいは、望ましくない行動、問題解決を修正・改善し、新しい行動パターンへの対処を学ばせるために行うものだというのが著者の主張である。

さらに重要なのは、フィードバックは部下に対するものではなく、同僚、上司などすべての人に対して有効であることを指摘している。

この本では、このようなフォードバックを可能にするための、考え方、ポイント、ツールなどをふんだんに紹介している。また、巻末には自己診断のテストもあるので、自分の傾向をつかみ、自分に適したツールを使って、フォードバックスキルを向上させることができる素晴らしい本である。

冒頭に書いたように、フォードバックを100ページも使って説明しているというのは、逆にいえば、非常に詳しい。実践的であり、なおかつ、具体的である。また、単調なフィードバックの説明ではなく、最近、問題になっている職場の雰囲気の改善に当てているので、飽きずにさっと読めるのもよい。

本書は、パーバード・ポケットブック・シリーズの第8巻である。地味なテーマであるが8冊の中でもっともお薦めできる本だ。

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2008年5月 1日 (木)

シンプルは売れる

4492556079 ジョン・マエダ(鬼澤 忍訳)「シンプリシティの法則」、東洋経済新報社(2008)
お薦め度:★★★★★
原著:The Laws of Simplicity

世の中がだんだん複雑になっていく中で、複雑性への対処方法の本は花盛りである。ビジネス書の杜で取り上げている範囲でも、システム論、編集、データマイニング、シナリオプラニング、心理学、など、科学、人文社会にまたがって多くの手法の活用が見られる。

そんな中で、この本は一読の価値がある。この本は、複雑さを引き起こさないために、製品デザインや組織デザイン(制度デザイン)は何を考えればよいかを、「シンプル」に100ページで考察した本である。著者は、MITメディアラボ教授である、ジョン・マエダ。2006年に話題になった本だが、やっと翻訳された。

ジョン・マエダの言うシンプルの法則とは

1.削除 シンプリシティを実現する最もシンプルな方法は、考え抜かれた削除を通じて手に入る。
2.組織化 組織化は、システムを構成する多くの要素を少なく見せる。
3.時間 時間を節約することでシンプリシティを感じられる。
4.学習 知識はすべてをシンプルにする。
5.相違 シンプリシティとコンプレクシティはたがいを必要とする。
6.コンテクスト シンプリシティの周辺にあるものは、決して周辺的ではない。
7.感情 感情は乏しいより豊かなほうがいい。
8.信頼 私たちはシンプリシティを信じる。
9.失敗 決してシンプルにできないこともある。
10.1.シンプリシティは、明白なものを取り除き、有意義なものを加えることにかかわる。

の10個だ。これに合わせて、この法則によりシンプリシティ達成のための3つの鍵を提示している。

1.アウェイ:遠く引き離すだけで、多いものが少なく見える
2.オープン:オープンにすれば、コンプレクシティはシンプルになる
3.パワー:使うものは少なく、得るものは多く

このためのシンプルプロセスのコアコンセプトは、「SHE」
1.縮小(SHRINK)
2.隠蔽(HIDE)
3.具体化(EMBODY)

この本のもっとも重要なメッセージは、「シンプルは売れる」ということだろう。本ではiPodだとか、googleなどを例示しているが、この本に書かれている法則は複雑化し過ぎた世の中で真に求められている。

ぜひ、一度読んで、自分たちに求められているシンプリシティ、その実現について考えてみてほしい。薄い本であるが、議論の奥行きは極めて深い。これこそが、シンプリシティの持つパワーなのだろう。

訳はよいと思うが、この本は英語の単語のニュアンスにも奥行きがある。その意味で、英語で読んでみるのもよいのではないかと思う。

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2008年4月14日 (月)

創造力を生かす

4422100432 アレックス・オスボーン(豊田晃訳)「創造力を生かす」、創元社(2008)

お薦め度:★★★★★

アレックス・オズボーンの名前は一度くらい聞いたことがあるのではないだろうか?オズボーンの名前を聞いたことがなくても、ブレーンストーミングという発想法であればだれでも知っているだろう。ブレーンストーミングは、1938年、当時、広告代理店の副社長だったオズボーンが考案した発想法である。ちなみに1938年は昭和13年である。

そのオズボーンが、創造力の発揮をテーマに1948年に書いた本がある。「Your Creative Power」という本。この本は日本では、1969年に創元社から「創造力を生かせ」というタイトルで紹介された。

この本、筆者が大学の専門課程の最初の年に教科書として使ったのが出会いで、それ以来だから30年近いファンということになる。今年になって、この本の新装版が出た。今までも、この本はよく紹介していたが、よい機会なので、ブログで取り上げておきたい。実は、もう、どんな本をブログで取り上げたかはっきりとした記憶がないのだが、おそらく、この本がブログで取り上げた本の中で、もっとも古い本だと思う。

分野を問わず、行動原則についてまとめて書いた本でもっとも多くの人に読まれているのは、デール・カーネギーの「人を動かす」、比較的、新しいところでは、スティーブン・コヴィーの7つの習慣だと言われている。

4422100513 4906638015デール・カーネギー(山口 博訳)「人を動かす 新装版」、創元社(1999)

スティーブン・コヴィー、ジェームス・スキナー(川西 茂訳)「7つの習慣―成功には原則があった!」、キングベアー出版(1996)

この2冊はリーダーシップに関する行動原則について書いた本である。

オズボーンの本は、これらの匹敵するくらい多くの人に読まれている本である。これを見ると、やはり、組織にとっての2大課題がリーダーシップと創造であることを物語っているように思え、興味深いところだ。

しかし、日本でオズボーンの名前を知る人はそんなに多くないと思う。オズボーンの名前を知らなくても、ブレーンストーミングを知っているのは日本くらいではないかと思うが。

そんな本であるが、創造についてすべてが書かれている本といっても過言ではない。内容をおおまかに分けると、まず、創造力が何をもたらすか、そして、創造力とはどのようなものなのかといったあたりを中心にした概論が述べられている。具体的な構成でいえば

アラジンのランプは今も輝く
創造的努力の報いは大きい
創造力を持たぬものはない
創造力は教育や年齢には関係がない
創造力は場所を選ばない
イマジネーションの種類
創造的イマジネーションの種類
創造力のランプを満たす油

といったあたりである。

そして、次に、創造力を高めるためのさまざまな工夫や手法、テクニックについて述べられている。ここには

連想力は記憶とイマジネーションを結ぶ
創造力を推進する感情的な力
意志のあるところアイディアあり
判断力はアイディアを殺すことがある
自己の創造力をそこなわないこと
創造的な努力は賞賛を好む
創造力の訓練は楽しい
まず肚をきめること
目標を定めよう
問題を分析し事実を挿入する
試案を得る
利用法を考える
借用を翻案
一ひねり変化させてみよう
拡大しよう
縮小しよう
置き換えてみよう
配置換え・再調整をしよう
反対を考えてみよう
結合させる
心の窓をあげて精神を遊ばせよう
幸運の女神は絶えず追う者にほほえむ

のようなタイトルが並んでいる。さらには、チームや組織による創造についても言及をしている。また、社会的な扱いについても触れている。

アイディアはアイディアの上に成り立つ
「三人寄れば文殊の知恵」か?
アイディア創造のふさわしいチームの作り方
提案制度
創造的力は人生を明るくする
統制における創造力
科学における創造力
教育界への要望

ということで、よいとか、悪いとかいう次元の本ではないので、書評は避けるが、とにかく、この本をきっちり一冊読めば、上にあげた本と同じく、間違いなく、世界が変わる本であることは間違いない。

もちろん、ブレーンストーミング(この本ではブレーンストーム会議)についてもたびたび、言及されているし、ブレーンストーミングとはそもそも何なのかということを感じることができるので、そのようなニーズで読んでいるものいいだろう。

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2008年4月 1日 (火)

BMWができるワケ

4478082790 トーマス・アレン、グンター・ヘン(日揮株式会社監修、糀谷利雄、冨樫経廣訳)「知的創造の現場―プロジェクトハウスが組織と人を変革する」、ダイヤモンド社(2008)

お薦め度:★★★★★

なぜ、BMWはあんなに革新的で、ドライバーをわくわくさせ、美しい車を作れるのであろうか?著者もそのひとりであるが、こんな疑問を持っている人は多いと思う。

その答えがこの本の中にある。

この本は、組織内でのコミュニケーションパターンが、「組織構成」と「空間構成」の2つの相互作用によって決まるのではないかという仮説のもとに、MITスローンの教授で技術系組織のコミュニケーション手法を専門とする研究者トーマス・アレンと、ドイツの著名な建築家であるグンター・ヘンがコラボレーションした本。

この本の中心をなすのは「スパイン(背骨)」というコンセプトである。スパインは文字通り、背骨のような形をしたオープンスペースであり、ここで組織を超えたコミュニケーションが行われ、気づきが生まれ、イノベーションが起こる。

グンター・ヘンはBMWにスパインを応用したプロジェクトハウスを作った。BMWのプロジェクトハウスでは、スパインが垂直に立っているが、ここに試作車を置き、さまざまな活動の中心となり、プロジェクトにかかわる人々の流れや活動は自然とここに引き寄せられるような設計になっている。さらに、プロジェクトハウスの周辺部門からもブリッジを渡って参加でき、プロジェクトに参加できる(連絡調整、情報収集)。このようにして、他のプロジェクトや製品にかかわるメンバーとの出会いも生まれ、インスピレーションを誘発するコミュニケーションが生まれる。

この状況はトーマス・アレンが専門とするコミュニケーション手法を実現することになる。このように、建築(プロジェクトハウス)と組織構造を組み合わせることによって、高い成果が生まれることを具体的な事例を分析しながら、述べた本。

プロジェクトワークプレイスというのは重要であるという認識はあるが、せいぜい、コロケーション(同一場所でプロジェクト作業をする)くらいで、一方で、マトリクス組織のコンフリクトに悩むという図式がある。

そろそろ、こんなことを考えてみる時期に来ているのではないだろうか?BMWのような車を作りたければである。

ちなみに、京都に本社のある企業で、スパインコンセプトだと思われる研究所を作っている企業がある。組織構造やプロジェクトマネジメントがどうなっているかは知らないが、公開情報で知る限り、かなり、創造的な成果を上げているようだ。やはり、このコンセプトは一定の効果があるのだろう。

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2008年2月20日 (水)

ドラッカーを実践する

4478003343 ピーター・ドラッカー (著)、ジョゼフ・マチャレロ(上田惇生訳)「プロフェッショナルの原点」、ダイヤモンド社(2008)

紙版><Kindle版

お薦め度:★★★★★

原題:The Effective Exective in Action

ドラッカーの最大の理解者であり、ドラッカーの教えを30年に渡り、教えてきたジョゼフ・マチャレロ教授がドラッカーの言葉を原題のテーマで、95のアドバイスに再構成した本。

この本を理解するためには、この本で最初の項目に取り上げられているドラッカーの言葉を知っておくとよい。

「経営者の条件」に書かれている言葉で

今日の組織では、自らの知識あるいは地位ゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである

という一節である。エグゼクティブという言葉は、通常、組織上の役職を示す言葉として使われるが、ドラッカーは上の抜粋の通り、別の意味で使っており、そこにこの本全体を貫くスタンスがある。このような前提で読むべき本である。

さて、本書は成果を上げる人のバイブルとしてまとめられたもので、

(1)時間をマネジメントする
(2)貢献に焦点を合わせる
(3)強みを生かす
(4)重要なことに集中する
(5)効果的な意思決定を行う

という5つの習慣を身につけるために書かれている。ゆえにこれまで、何冊かある、ドラッカー語録のような本とは多少違った趣がある。

それは上の5つについていくつかのポイントが示されている中で

 ・とるべき行動
 ・身につけるべき姿勢

の2つの視点から、コンピテンシーの強化についての記述があり、これを意識することによって習慣化できるようなつくりになっている点だ。これこそ、マチャレロ教授がドラッカー学を教えてきたノウハウだといえよう。

ひとつ例をあげておく。上にのべたようにこの本の第1章の1項目目は

「なされるべきことをなす」

というエグゼクティブであれというアドバイスなのだが、ここでの行動と姿勢は

【とるべき行動】
 自らの組織においてなされるべきことは何か?自らがなすべきことは何か?
【身につけるべき姿勢】
 常になされるべきことから考えることを癖にする。手本となる人はいるか?

といったもの。

ドラッカーの膨大な著作は秀逸なものばかりだが、実践ということでいえば、この一冊に勝る本はないだろう。購入し、擦り切れるまで使いこんでほしい!

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2008年2月 7日 (木)

Win-Winの関係づくりのバイブル

4426104432 鈴木有香「コンフリクト・マネジメント入門-人と協調し創造的に解決する交渉術」、自由国民社(2008)

お薦め度:★★★★★

最近、ネゴシエーションがマネジメントの一つの要素として、意見の対立があると、以下に勝つかということに関心が高まってきている。確かに、Win-Winといった概念があり、それを目指そうとするのだが、多くの人はできればそうそこに落としたい。しかし、時間がないなどの理由で一方的に相手をやっつけようとしたり、あるいは、痛み分けのような結論を求める。

特に、エンジニアというのは好戦的な人が多い。特に、仕事に熱心な人ほど、好戦的な傾向があるように思う。この本を読んでみると、そのようになる理由がわかってくる。白黒をはっきりとさせる、短期的な決着や成果を求めるという技術者魂(?)がなせる技かもしれない。

この本は最初から最後まで、独特の考えも基づいたコンフリクトマネジメントスキルが展開されている。

第1章では、まず、コンフリクトにはネガティブな面だけではなく、肯定的な面なあるというところから始まる。これが全体のコンテクストになっている。なかなか、こうは思えないものだ。

そして、コンフリクトの解消には協調的アプローチと競合的アプローチがあり、協調的なアプローチの方が将来的な好結果を生むことを指摘し、そのためのスキルについての解説に入る。

最初はコンフリクト分析のポイントで、
・ぶつかり合う立脚点
・見えていないニーズ
・絶対譲れない世界観
・双方で解決に取り組み問題を再焦点化する
・よりよい解決策をつくるための建設的提案
・破壊的提案は人間関係を終わらせる
の6つを上げ、細かく説明している。納得!

次に、協調型交渉のプロセスを具体的に説明している。さらに、次の章では、コミュニケーションの取り方と感情の関係について整理して解説されている。

これらの準備の後に、実践のためには、どのようなトレーニングをすればよいかを提案している。これも納得性が高く、また、ポイントが絞られているので個々のトレーニングは容易に、反復的に取り組むことができる。

最後に、ハードスキルとして、
・目標設定と行動計画
・フィードバック
・怒りへの対処とクレーム処理
・コーチング
・ミディエーション
の6つを取り上げ、解説している。

全般的に結構難しい話をしているようにも思うのだが、解説は平易で、わかりやすく、さらに、ふんだんにケースを使って説明されているので応用もききやすいように思う。素晴らしい本である。

Win-Winの関係づくりのバイブルといっても過言ではないだろう!

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2008年1月29日 (火)

20+1の悪癖を修正するコーチを受けよう!

4532313562 マーシャル・ゴールドスミス、マーク・ライター(斎藤 聖美訳)「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」、日本経済新聞社(2007)

お薦め度:★★★★★

1 極度の負けず嫌い。
2 何かひとこと価値をつけ加えようとする
3 善し悪しの判断をくだす
4 人を傷つける破壊的コメントをする
5 「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
6 自分がいかに賢いかを話す
7 腹を立てているときに話す
8 否定、もしくは「うまくいくわけないよ。その理由はね」と言う
9 情報を教えない
10 きちんと他人を認めない
11 他人の手柄を横取りする
12 言い訳をする
13 過去にしがみつく
14 えこひいきする
15 すまなかったという気持ちを表さない
16 人の話を聞かない
17 感謝の気持ちを表さない
18 八つ当たりする
19 責任回避する
20 「私はこうなんだ」と言いすぎる。

これはエグゼクティブ・コーチとして全米ナンバーワンといわれ、ジャック・ウェルチのコーチもしたマーシャル・ゴールドスミスが指摘する、リーダーとしての能力を発揮できなくする対人関係に関する20の悪癖である。

さらに、ゴールドスミスは21番目の悪癖で、

21 目標に執着し過ぎる

という悪癖も指摘する。

この21のうち、ひとつでも当てはまっていれば、ぜひ、この本を読んでほしい。自らのコーチングで、これらの悪癖を修正し、リーダーとして能力を発揮するための方法を極めて具体的に書いている。

その方法とは

・フィードバック
・謝罪する
・公表する。宣伝する
・聞く
・「ありがとう」と言う
・フォローアップ
・フィードフォワードを練習する

の7つである。

これを見てよくあるコーチングの話だと思った人は、4、6、10、11はきっと該当していると思われる(笑)。確かに、コンセプト自体はコーチングでよくある話なのだが、その深さが違う。すごいものだと思った。

さらに、この本のすごさはそのあと。自分を変えるときのルールということで、コーチング効果の持続について述べている。そして、最後は、悪癖を修正した上で、部下にどのように接するかという問題で終わっている。

この本を読み、実践できた人は確実に、B級管理職から、A級マネジャーに変身できるだろう!

<独り言>
最近、5つ星を連発しているなあ、、、まだ、書評を書いていないものも1冊ある。まあ、よい本にあたっているということか、ポジティブに考えよう!

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2008年1月21日 (月)

ステークホルダマネジメントのバイブル

4760826149 星野欣生「職場の人間関係づくりトレーニング」、金子書房(2007)

お薦め度:★★★★★

以前、星野欣生先生の

人間関係づくりトレーニング

を紹介したが、続編で、職場に焦点を当てた本が出た。それがこの本。

自分探し
関係的成長
きき方とかかわり
言葉の使い方(1)
言葉の使い方(2)
フィードバックは成長の鏡
コンセンサスと人間関係づくり
リーダーシップはあなたのもの
リーダーはファシリテーター
チームワークを考える
成熟したグループづくりのために
体験学習と日常生活

といった内容。前書と同じく、最初にコンセプトを説明し、エクスサイズ、そしてエクスサイズの結果を踏まえた理論の説明という流れで楽しみながら自己啓発としてトレーニングを進めていけるような構造になっている。

言葉の使い方あたりまでの内容は、若干、前本と被るが(解説やエクスサイズは書き下ろしであるが、内容が似ている)、フィードバック以降は純粋にビジネスの場面を想定したものとなっている。前にも書いたが、この本はハウツー本ではなく、エクスサイズを通して体験学習をすることを狙った本である。合意形成、リーダーシップ、ファシリテーション、チームワームなど個々の分野ではそのような本を見かけるが、まとめてこのようなトレーニングを念頭に置いた本はないと思う。

これらの専門のテーマの本を読むと、関連が出てきて混乱したり、あるいは不自然に無視したりしているケースが多く、全体が見えにくい。その点、この本は「人間関係」という切り口で全体を見ながらトレーニングを進めていけるので、バイブルといってもよいような本である。

また、ヒューマンスキルトレーニングや新入社員研修を担当している人材開発の方にもぜひ、目を通して戴きたい。特にエクスサイズが練れていて、非常に参考になる。

余談になるが、星野先生はプロフィールを見ると80歳近い方だ。この年齢になってこの内容の本が書けるというのは本当にすばらしいと思う。

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