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2011年1月

2011年1月 8日 (土)

考える方法+考える態度=考える力

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渡辺 三枝子、岸本 光永「考える力を伸ばす教科書―ダイアローグと論理で思考力を高める」、日本経済新聞出版社(2010)

 お奨め度:★★★★

「考える力」が重要だとよく言われるが、考える力とはどういう力を明確にした書籍は少ない。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のようなところがあるのだと思うが、本書は、「考える力」を定義し、ロジカルシンキングとダイアログによりその実現を提唱している。実は最初に読んだときには枯れ尾花と思ったのだが、読み直してみると、深い。人材育成のプログラム開発にたいへん参考になる一冊だ。特に、前半の考えることへの考察は類書がないような内容で、さすがその道の専門家だと思わせるようなおもしろさがある。

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2011年1月 6日 (木)

「直観的な知性」が経験を価値に換える~直観の正しい使い方

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ユージン・サドラースミス(吉田利子訳)「直観力マネジメント 第六感が利益を生む! 」、朝日新聞出版(2010)

お奨め度:★★★★★

ソニーの盛田昭夫氏、スターバックスのハワード・シュルツ氏、ヴァージンレコードのリチャード・ブランソンなど、ビジネスにはひらめきや勘が重要であると主張する経営者は少なくない。直観はアート的なものだと考えられがちだが、本書では科学的に説明がつくという立場から、実際に直観とはどのようなもので、どのように働くかについて科学的な説明を試みている。その上で、直観をビジネスやマネジメントの中での活用する方法を提案している。分析だけではビジネスに勝ちきれないと考えているマネジャーや経営者必読の一冊である。

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2010年に日経コンピュータに寄稿した書評

実は昨年から日経BP社の日経コンピュータという雑誌に、ビジネス書の杜として、書評の寄稿をさせて頂いています。

話せば長くなりますが、十年来の親交と、貸し借りのある谷島宣之さんが、一昨年日経コンピュータの編集長になり、依頼されて、ご協力のつもりで始めたのですが、その谷島さんは最初の寄稿をした号が出る前に、編集長を卒業。寄稿の方は、そのあとも続いています。

とりあえず1年経過しましたので、寄稿したリストをビジネス書の杜に掲載しておこうと思います。

ビジネス書の杜の記事もこのくらい、すっきりとまとめろという声が飛んできそうですが、これはプロの編集者の仕事ですので、僕なんかには到底、マネはできません。

実際のところ、毎回、最終原稿の倍くらいの分量のある書き殴りに近い原稿を渡し、半分くらいになってゲラがきます。文章としての原型は残っていないわけですが、意味は生きており、まあ、大したもんです。

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一階に現実、二階は夢

4093862923 池井戸 潤「下町ロケット」、小学館(2010)4093862923

「一階に現実、二階は夢。そんな人生を僕は生きたい」

そんな想いを持つ技術開発型中小企業の社長の奮闘を通して、日本を支える中小企業の技術経営の難しさと、おもしろさを描いた一冊。著者の池井戸氏は、三菱銀行の出身で、銀行や、大企業の考え方を熟知しており、リアリティのある状況設定と、それを打ち破っていく主人公の活躍に、技術経営の現実と本質を読み取ることができる。

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2011年1月 4日 (火)

プロジェティスタの作法

4492521909 紺野 登「ビジネスのためのデザイン思考」、東洋経済新報社(2010)

お奨め度:★★★★★

デザインに対する関心が高くなってきた。20世紀の工業デザインに変わり、21世紀の知識社会におけるデザインである知識デザインのあり方としてのデザイン思考について述べ、さらに、デザイン思考に必要な3つの方法論として、エスノグラフィーなどの質的研究方法論、ビジネスモデルデザイン、および、シナリオデザインについて解説した一冊。

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難局を乗り切るリーダーシップ

4820119575 ビル・ジョージ(梅津 祐良訳)「難局を乗り切るリーダーシップ―ハーバード教授が教える7つの教訓」、生産性出版(2010)

お奨め度:★★★★1/2

メドトロニック(世界最先端の医療テクノロジー企業)のCEO在任中の12年間に時価総額を11億ドルから600億ドルに高め、“Executive of the year”や“Director of the year”等に選出され、現在はハーバードビジネススクールの教授である著者が、難局におけるリーダーシップについて7つの教訓(レッスン)をまとめた一冊。一般的なリーダーシップではなく、難局におけるリーダーシップを、多くの知人やビジネススクールのケースなどを通じて得た教訓だけに気付かされることが多い。

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2011年1月 3日 (月)

「思い」を実現するマネジメント

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一條 和生、徳岡 晃一郎、野中 郁次郎「MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク」、東洋経済新報社(2010)

お奨め度:★★★★★

目標管理(MBO)を補完する新しいコンセプトのマネジメント手法MBB(Management by Belief)=「思いのマネジメント」について、概念化し、ベストプラクティスを紹介しながら解説した一冊。MBOを左脳マネジメントとし、その限界を明確にし、新たに、右脳マネジメントとしてのMBBを提案している。

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2011年1月 2日 (日)

【ビジネス書の杜】2010年売れ筋ベスト10

2010年のベスト1は、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でした。昨年最後のメッセージにも書きましたが、まあ、ドラッカーの年でしたので、妥当なところでしょう。ちなみに、エッセンシャル版も5位に入っています。

といいたいところですが、実は、ここ2年、前年のビジネス書の杜Awardに選んだ本が第1位になるという流れがありましたので、その意味ではちょっと波乱です。Award2009の「「決める」マネジメント」は、10位に留まりました。Awardセミナーは好評でしたが、ちょっと、本は難しかったのかもしれません。

2位は「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」でした。今年は、この本がきっかけになり、マイケル ・サンデル教授の

マイケル・サンデル(鬼澤 忍訳)「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」、早川書房(2010)で流れができ、後半は大学講義録本の出版の嵐になったような感じがあります。

ビジネス書の杜でも、2位のスタンフォード大学以外に、11月発売の「ハーバードの人生を変える授業」が9位に入っています。これも書籍紹介は書いておらず、Twitterの紹介のみです。

さて、第3位には、楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」が入りました。この本は戦略解説本の概念を変える、新しいスタイルの名著だと思います。日本には戦略の読本がほどんとないので、このヒットをきっかけに今後、戦略読本のような本がたくさん出てくることを期待しています。楠木先生の本を読めばすぐに分かりますが、戦略は読本が向く領域だと思います。読本をたくさん読むことによって、戦略コンピテンシー、戦略センスが向上します。

僕は楠木先生の講義やセミナーを受けたことがありませんのでよくわかりませんが、この本、ひょっとして、講義の語りをテープ起こしして本にしたのではないかと読みながら思っていました。500頁は臨場感ではないかと。ひょっとすると、これも講義録のカテゴリーかも?

実は、この3位の本、実はビジネス書の杜に紹介記事を書いていません。夏の読書お奨め本として紹介した以外はTwitterで紹介しただけです。これは年間ベストセラー史上、始めてです。1月1日にベストセラーを集計して、急きょ、紹介記事を書いた次第です。

第4位は、「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則」でした。この本もよく売れた本ですね。プレゼンテーションでは、プレゼンテーションZenも8位に入りました。

こう並べてみると、今年は珍しく、世の中の流れとビジネス書の杜があまり、かわらない感じです。おそらく、記事をあまりかけず、紹介している本自体が売れている本の比率が多かったためだと思います。今年は、一昨年までのようにビジネス書の杜だけのベストセラーというのをつくっていけるようにしたいと思っています。

なお、ビジネス書のAward2010は1月10日前後に発表の予定です。お楽しみに!

 

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語りの戦略論

4492532706 楠木 建「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」、東洋経済新報社(2010)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

戦略は要素ではなく、ストーリーとして語られなくてはならないという考えに基づき書かれた戦略読本。戦略論のテキストに見られる概念的な説明ではなく、また、戦略実践書に見られるフレームワークを中心にした説明やベストプラクティスの羅列でもない。戦略とは何か、よい戦略というのはどのように考えてつくられているかを自分の言葉で淡々と事例をふんだんに使って語っている。新しいタイプの戦略の名書である。非常に巧みな語りで、さしむき、語り部による戦略論といった趣の一冊。500ページというボリュームのある本であるが、ボリュームを感じないのは語りの巧みさだろう。

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あけましておめでとうございます

Usagi

あけましておめでとうございます。

元旦の夜に恒例の昨年度のベストセラーを集計し、初記事にしているのですが、とんでもないことに気付きました。なんと、ベスト3に入っている楠木先生の「ストーリーとしての経営戦略」の紹介記事がない!

年間ベストセラーを始めて5年になりますが、紹介記事のない記事が年間でベスト3に入ったのは初めてです。Twitterでは何度か紹介していますので、やはり、Twitterの威力でしょうか。

ということで、この記事が本年最初の記事になります。

本年も「ビジネス書の杜」をよろしくお願い致します。

 

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