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2006年11月

2006年11月13日 (月)

ダイバーシティーを活かしたチームマネジメント

479733587401 上村有子「ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座」、ソフトバンククリエイティブ(2006)

お奨め度:★★★★

IT系のプロジェクトで、チームリーダーに必要なリーダーシップを分析し、そのリーダーシップをつけるための方法を示した一冊。ITに特化しているところがミソ。

この本が考えている基本的なスキルはファシリテーションとコーチングのスキルである。ファシリテーションスキルをどのように活かしていくかということが基本スタンスになっているが、その際に、ハーマンモデルを使ってメンバーのダイバーシティを活かす方法を提案しているのが興味深い。

ハーマンモデルでは、脳のどの領域が強いかで人間を4つのタイプに分けて、その適正を、HRMに活かそうとするものである。

449253102509 ネッド・ハーマン(高梨智弘訳)「ハーマンモデル―個人と組織の価値創造力開発」、

東洋経済新報社(2006)

A タイプ(左大脳):エンジニア、化学者、財務、保険数理士、
B タイプ(辺縁系左):工場設備オペレータ、銀行窓口業務、記録係、経理、スーパーバイザー、
Cタイプ(辺縁系右):ソーシャルワーカー、研修、小学校の教員、看護婦、
Dタイプ(右大脳):芸術家、起業家、戦略、グラフィックデザイナー

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スピリチュアル・マネジメント

Spiritual 阪本啓一「スピリチュアル・マネジメント」(11/11/2006)
(株)JOYWOW創業記念作品 非売品

お奨め度:★★★★★

阪本さんが新しい会社を作られた記念に創業された本。創業記念パーティーでのみ配布。

JOY(楽しみ)とWOW(感動)をだれよりもまず自分が感じ、そしてお客さんに与え続ける

というい阪本流スピリチュアル・マネジメントを実現するための36法則について書かれている。

内容はかかない。気になる人は(株)JOYWOWに問い合わせてみよう!

2006年11月10日 (金)

脳を揺さぶる

448406235601 ジョエル・サルツマン(斉藤裕一訳)「シェイク・ブレイン-脳をゆさぶり、創造力をつけろ!-」阪急コミュニケーションズ(2006)

お奨め度:★★★★1/.2

久しぶりに、ガツンと来た本。創造的問題解決の本だが、その視点が極めてユニーク。心構え、行動、(アイディアの)売り込みの3部に分けて、以下のようなポイントを指摘している。

●心がまえ

1 大胆になろう!
2 心の準備をする
3 楽観的になろう!
4 まちがいの偉大さを学ぼう!
5 楽しもう!
6

自己嫌悪しないこと

行 動

7 先入観を疑おう!
8 問題設定のしかたが大事
9 「裏返し」の発想
10 絶対に「ノー」を答えにしない
11 エレガントな解決法を探そう!
12 「共感」してみよう!
13 「最悪」の解決法を考えてみよう!
14 ネガティブをポジティブに変えよう!
15 「まねはできないか?」と考えてみよう!
16 「あの人ならどうするだろうか?」と考えてみよう!
17 「見知らぬ他人」の助けを借りよう!
18 「イエス」を答えにしない
19 必ずメモしよう!
20 しばらく問題から離れてみよう!

●売り込み

21 自分自身に売り込む
22 他人に売り込む
23 形にしてみる
24 「POP」で価値を示す
25 味方をつくる
26 キャッチーな名前を付ける
27 粘り強く!
28 楽しみ続けよう!

すべて具体的な例を提示しながら説明している。その例が面白く、読んでいて、にやりと笑いたくなる。例えば、8 問題の設定の仕方が大切というところに出てくる例。

あなたはオフィスビルの管理者で、エレベータの待ち時間が長いというクレームが続出しているので、コンサルタントに相談することを決心する。何のコンサルタントに相談するかという例がある。

エレベータのコンサルタントと答えたなら、ぜひ、この本を読んでほしい!

2006年11月 9日 (木)

ビンタ本

434499557001 スクーリングパッド「ビンタ本」編集制作チーム、黒崎 輝男「ビンタ本―IID世田谷ものづくり学校スクーリング・パッドの挑戦」、幻冬舎メディアコンサルティング(2006)

お奨め度:★★★1/2

スクーリング・パッドとは、クリエイターや起業家などを目指す人々が集う新しい学校であるが、単なる学校ではなく、教える側と学ぶ側のコラボレーションを基調とした学校である。その中で、生まれてきた刺激的な多くのメッセージを採録した一冊。

仕事とは」「人生とは」「幸せとは」そんな問いへのヒントが満載されている。

「ビンタ本」というタイトルは一風変わった書名でああるが、これはスクーリングパッドのリーダーの一人である黒崎輝男氏が「ビンタをされたことのない世代に“言葉のビンタ”と“考えることの面白さ”を伝えたい」、「痛いことには意味がある、痛いことには理由がある、ビンタには意味がある」とのこと。

刺激的なメッセージのビンタを受けて、仕事や人生、そして幸せについて考えてみよう。オビの言葉もいい。

 目を覚ませ!いい仕事こそ、いい人生だ。

そういえば、同じ幻冬舎が今年刊行した雑誌にGOETHEという雑誌がある。「24時間仕事バカ」をコンセプトにした雑誌だ。この雑誌のコンセプトと通じるところがある。

B000jfz5mo01 GOETHE (ゲーテ) 2006年 12月号 [雑誌] (雑誌)

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2006年11月 8日 (水)

持論でやる気を自己調整する

475712153901 金井壽宏「働くみんなのモティベーション論」、NTT出版(2006)

お奨め度:★★★★

モチベーションに関する持論を持つことにより、やる気の自己調整をすることを提案した本。

第1章から第4章までが、モチベーションにおける持論の重要性を説き、第5章以降では、世の中のモチベーション理論をサーベイし、持論の構築に役立てるという2段構えになっている。

机上の理論ではなく、調査を積極的に行なった結果からまとめられているので、書かれていることも納得性が高い。特に、前半の持論の構築では、企業人、MBAコース、大学生などへのアンケート結果により構成されている。とても興味深い。このアンケートについては、PM養成マガジンブログに掲載しておく。

この結果、動機理論を緊張系、希望系、持論系の3つに分け、それぞれに対して次のようなキーワードがあることを発見している。

緊張系:緊張、ズレ、未達成感、不協和、圧力、ハングリー精神、できないという自覚、危機感、焦り

希望系:希望、目標、意味、夢、ロマン、なりたい姿、楽しみ、憧れ、達成感、自己表現

持論系:マイペース、自分が主人公、任されること、自分の考えと行動スタイル、自律性、やる気の自己調整ができること、自分できめたこと、言いだしっぺとして実行、自分の持論を持っていること

あなたは、どのタイプのモチベーションが高いのだろうか?

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2006年11月 7日 (火)

「実行」とは何か

453231037709_2 ラリー・ボシディ、ラム・チャラン(高遠裕子訳)「経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則」、日本経済新聞社(2003)

お奨め度:★★★★★

物事をきちんと行うための体系的なプロセスを「実行」というコンセプトのもとに、失敗例、成功例をまじえて解説した一冊。

著者のラリー・ボシディはハネウエル・インターナショナルの前会長で、GEのジャック・ウェルチなどにも大きな影響を与えた経営者である。

この本では、実行を

実行とは体系的なプロセスであり、戦略に不可欠である
実行とはリーダーの最大の仕事である
実行は企業文化の中核であるべきである

だと位置づけ、何をどうするかを厳密に議論し、質問し、絶えずフォローし、責任を求める体系的なプロセスだと定義している。非常に良く分かる。

昨今、実行ということが盛んに言われるようになってきたが、概念的に実行を唱えるだけではなく、もう少し、体系的、論理的にアプローチをしたい人にはぜひお奨めしたい一冊である。

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2006年11月 6日 (月)

ミッション

483341841x01_1 鳥谷 陽一「ミッション―新しい職場。燃える仕事。あの人を超えたい」、プレジデント社(2006)

お奨め度:★★★

大手飲料メーカに勤務する主人公・木村卓が離婚した父親の起こした小さな食品チェーンオリモフードに入社し、成長していくさまを描いたビジネス小説。

オリモフードは銀行からの追加融資に支障をきたすほど、経営状況が好ましくなかった。そこで、外資系のコンサルティングファームに立て直し策のコンサルティングを依頼する。そして、その担当コンサルタント・中井を自社にヘッドハンティングする。その担当者がつけた条件とは、社長の実子を招きいれることだった。

実子は、何とか、入社させることができたが、その後は、苦難の連続。まず、何よりも、木村に当事者としての危機意識がない。木村を変えることから始めなくてはならない。自らがロールモデルとなり、木村を成長させていく。

また、古株の社員は合理性を重んじるやり方に批判的である。あるいは、能力とポストにアンマッチが見られる。これらを合理的にして、かつ、機微を折り込んで処理していく。

このように企業変革を進めていく中で、木村が成長し、組織の新しい形も見えてきて、木村に経営を継承するところまでたどり着くという話だ。

著者はコンサルタントだが、コンサルタント臭い小説ではない。ストーリーがこなれているというのもあるが、非常に多くの視点を含んでいるからだと思われる。

 ・後継者問題

 ・中小企業と戦略経営

 ・中小企業から脱皮するための人材マネジメントと古株社員の扱い

 ・意識革命と組織学習

 ・ビジョンとミッション

 ・キャリアの問題

など非常に多く、これらの対してさらっとしているが、著者の明確な主張が見られるよい本である。

2006年11月 3日 (金)

あなたは箱の中でリーダーしていませんか?

447979177901 アービンジャー・インスティチュート(金森 重樹監訳、富永星訳「自分の小さな「箱」から脱出する方法」、大和書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

PM養成マガジンブログ関連記事:プロジェクトという箱からでよう

この本の原題は「Leadership and self-deception」。deceptionは「騙す」という意味。米国でよく読まれるリーダーシップ読本の一つの邦訳。

邦題からも分かるように、「箱」という一風変わったメタファ(比喩)の中で、寓話を使ってリーダーシップの本質と構築方法をうまく説明している。

誰よりも努力し(ていると思っている)主人公は、ザグラム社という会社でよい職を得る。しかし、それまでのやり方がザグラム社では通用しないという事態に直面する。自分を守り、他人に影響を与えるとするやり方が、ザグラム社の風土に合わなかった。ザグラム社のリーダーシップは、自己原因性(すべての原因は自分にあるという考え方)に基づいていたためだ。

そこで、主人公は上司であるエグゼクティブからの問題指摘を受けると同時に、コーチングを受け、そのことに気がつき、箱の外に出て行くというストーリー。

このストーリーで、「箱」に並ぶキーワードが自己欺瞞。「自分への裏切り」と呼ばれている。自分への裏切りというのは自分の感情に反した行動を取った場合に、自分を正当化するためにさまざまな行動に出る。これが箱に入っている状態であり、人間関係、リーダーシップにさまざまな問題を引き起こすというのがこの本の考え方。「自己原因性(Personal Causation)」の議論として、感情に注目しているのはかなり面白いと思う。

この本では、この行動パターンがある限り、業績に結びつかないとしている。確かにその通りだ。

問題は箱から抜け出すにはどうすればよいか、これが問題だ。この本の示唆で非常に役立つのは、「箱に入っているときにしても無駄なこと」を明確にしている。

(1)相手を変えようとすること

(2)相手と全力で渡り合うこと

(3)その状況から離れること

(4)コミュニケーションと取ろうとすること

(5)新しいテクニックを使おうとすること

(6)自分の行動を変えようとすること

の6つ。この指摘は鋭い。確かに、多くの人が箱に入ったまま、これらの努力やトレーニングをしようとしている。無駄だというのも最初から読み進めていくとちゃんと納得できる。

最後に、箱から出る方法というのが書かれている。

「他の人々に抵抗するのをやめたときに、箱の外に出ることができる」

本の質と同じく感心したのが、翻訳の質が非常に高いこと。米国のオフィスを舞台にしたストーリーであるが、まったく違和感なく読める。米国発のこのスタイルの本は、ストーリーそのものに違和感があって落ちないが、この本にはまったくそれがない。

それからこの本を読んでいく中で、イラストの存在が非常に役立つ。ロジックが結構複雑なので、自分で図を書きながら読んでいかないとおそらく、頭が混乱してくる。それを代わりにやってくれるイラストが入っている。なんと、寄藤文平さんの非常に味のあるイラストだ。

最後に少し違う視点からのメッセージ。10年くらい前に亡くなった安部公房という作家がいる。哲学的な作品を多く残した作家で、抽象的ながらもプラクティカルな文学性は高く評価され、欧米にも多くの作品が紹介されている。その中の一つに、「箱男」という作品がある。

4101121168 安部公房「箱男」、新潮社(1982)

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男。箱に隠れて覗きをしたり、普段はできないことをすることに快感を感じる。

そのような行動を繰り返しているうちに、やがて主人公は箱男から箱を買い取ろうとした医者の偽箱男へ、少年Dへ、露出狂の画家ショパンへとめまぐるしく移ってゆく。

そうしているうちに、誰が箱男か、箱男のエスノグラフィーを書いているのは誰なのかがわからなくなってしまう。

という話なのなのだが、「小さな箱から脱出する方法」の本質をより深く理解するためには、安部公房の「箱男」を読まれることをお奨めしたい。

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2006年11月 2日 (木)

火事場プロジェクトの法則

477412881301 山崎 敏「システム開発 火事場プロジェクトの法則―どうすればデスマーチをなくせるか? 」、技術評論社(2006)

お奨め度:★★★1/2

読み物的に読めるし、大変面白いし、多くの開発者に読んでほしい本だ。第1部では、プロジェクトへのアプローチをバードビュー、コミュニケーション、エモーション、フィードバックという視点から〇×方式でポイントをまとめて書いているが、この内容は経験に裏打ちされており、非常に濃いものである。

第2部はデスマーチをどうすればなくせるかという話で、価値という話を持ち出しており、ただ、持論としてはそれなりの説得力がある。また、デスマーチがなぜ起こるかという部分については、かなり本質を突いたよい議論をしていると思う。

ただ、解決策については、マネジメントの視点と、客観化の視点がほとんど入っていないので、読み終わって、それでもやはりデスマーチはなくならないだろうという感想を持った。そこが残念だ。

【関連書】

エドワード・ヨードン(松原友夫、山浦恒央訳)「デスマーチ」

https://mat.lekumo.biz/books/2006/06/post_7e70.html

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2006年11月 1日 (水)

日産のダイバーシティマネジメント

488759504201 西澤正昭「コーチングが組織(ダイバーシティ)を活かす」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2006)

お奨め度:★★★1/2

日産のゴーン改革の重要な一端をに担った人材育成、組織変革について、担当責任者であった西澤正昭氏がまとめた本。

取り組みの全体像も興味深いが、この本のテーマでもある、その活動の中のポイントになるところで、コーチングがうまく機能しているのが興味深い。猫も杓子もコーチングといった風潮が見られるが、組織としてコーチングを導入するときには、何に使うかが大切であることを実感させられる一冊だ。

日産改革のポイントになったのがダイバーシティマネジメント。その担い手であるリーダーにゴーンが求めたことは

(1)リーダーは戦略を立てること

(2)戦略を誰にでも分かるようにシンプルに伝えること

(3)戦略実行のための組織をつくり、そのメンバーをモチベートしながら最大のアウトプットを出すこと

の3つである(著者によると、このリーダーシップの一番の実行者はゴーン氏自身だとのことだ)

そして、このダイバーシティーリーダーシップを浸透させるためにリーダーにコーチング研修を実施し、組織内に展開していった。これが日産改革を支えたというのがこの本の筋書きであり、その具体的な取り組みが書かれている。

コーチングに関わらず、組織マネジメントに関わる人であれば興味深く読めると思う。ただし、書けないのかもしれないが、取り組みの事実の羅列的な部分があり、どのように変わったかという点がぼんやりしている。その意味で、変革ゴールのイメージを探しているような人にはあまり役に立たないかもしれない。

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