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2006年7月

2006年7月25日 (火)

相手に正しく伝わらなければ問題は解決しない

490324103301 出口知史「論理思考の「壁」を破る」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★

問題が発生した場合には、正しい結論を出したからといって、相手に伝わらなければ問題は解決しない。

効果的に相手に伝えるためには、相手の理解度、それまでの議論の経緯、過去の経緯を含めて総合的に判断し、論理を構成する必要がある。これが、本書の主張である。

この本ではまず、論理思考の方法を一通り解説している。その上で、論理思考の落とし穴を指摘している。その中で、ロジックの共有の重要性を説き、それが実現されないゆえの伝わらない3パターンとして

・結論押し付け

・思考停止

・視野狭窄

の3つを挙げている。

戦略マネジメント・戦略思考の普及により、論理的思考は当然の思考法になってきた。しかし、この本のように論理思考の使い方に一歩踏み込んだ実践的な本は珍しい。経営戦略の策定をするだけであればあまりこのような発想は必要ないかもしれないが、マネジャーとして現場で戦略を実行する立場にある人は、ぜひ、読んでおきたい一冊である。

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2006年7月23日 (日)

マネジメントに直感を活かす

Tensaibookmid 児玉光雄「天才社員の育て方」、日本経営合理化協会出版局(2006)

お奨め度:★★★★1/2

1万5千円とちょっと高い本だが、ひょっとすると、それだけの価値があるかもしれない。著者の児玉光雄氏はトッププロスポーツ選手から指導依頼が殺到するスポーツ心理学の第一人者。その児玉氏が20年以上の研究を経て開発した独自の 「右脳開発メソッド」を、ビジネスリーダー向けに体系化した本。

このメソッドは、ガンガン“自分から働く人材”になる、「持続力」「没頭力」「創造・ 発想力」「人間力」…の4大能力を、無理なく、自然と習得させることができるそうだ。

この本では、さらに、天才育成を社内に「仕組み化」するために、社長としてどう 手を打つかの「戦略記入シート」も各タスク毎に収録されており、これらのシートを使うことによって、すぐに取り組むことができる。

「右脳開発メソッド」自体はもう少し、購入しやすい本がある。

489451230001_1 児玉光雄「直感力 「上手に決断できる人」になる脳力トレーニング」、フォレスト出版(2006)

この本では、直観力をアップするための方法として右脳開発メソッドを説明している。

マネジメントの理論の中では、意思決定の際に、合理的(論理的)な意思決定と直感をうまく統合することがポイントだといわれることが多いが、では、実際に、それをどのように統合するかは難しい。そのヒントというより、方法そのものを示してくれるこの本の1万5千円は高いか、安いか?

価値観の問題だろう。

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メンタルケアのあり方を考える

416320900x09奥田英朗「イン・ザ・プール」、文藝春秋(2002)

416322870509 奥田英朗「空中ブランコ」、文藝春秋(2004)

416324780701奥田英朗「町長選挙」、文藝春秋(2006)

お奨め度:★★★★

でっぷり体型、患者おちょくりアホ発言連発、笑えば歯茎丸出しの注射フェチの精神科医伊良部一郎が、くわえタバコで、斜にかまえ、ミニミニ白衣の胸の谷間で患者を惑わす相棒の看護師のマユミちゃんと軽度の精神病患者を次々と癒していく短編。

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最初のインザプールが仰天ものだったが、映画化までされた。

そして、第2作の空中ブランコは直木賞受賞。とにかく面白い。何よりも設定がありそうなナンセンスで興味深い。24時間勃起しっぱなしという病に冒された営業マン、家のガス、電気、鍵をしめたか気になって、何度も確認のために帰宅してしまう強迫神経症のルポライターなどがやってくるが、意図的な、無意識か、興味本位でいい加減な対応がどんどん、患者の問題を解決していく。

そして、第3作になる「町長選挙」では少し作風が変わった作品がある。明らかに、実在のモデルをデフォルメして描いている作品がいくつかある。ホリエモン、ナベツネなど。

メンタルヘルスはマネジメントの中でも重要性が高まってきている。カウンセラーや専門家に任せて、マネジメントとしてたタッチしないというのが一般的であるが、それでは問題は解決しないのではないかと思う。仕事の問題は、仕事の中でしか解決しない。それを解決するためには、同じ目線で行動レベルで入り込んで解決していくしかないだろう。

そんなことを思わせる伊良部の奮戦記である。

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2006年7月21日 (金)

マネジャーは何を行うのか

490324122x01 D・クイン・ミルズ(アークコミュニケーションズ監修、スコフィールド・素子訳)「ハーバード流マネジメント「入門」 」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★1/2

以前、ミルズの「ハーバード流リーダーシップ「入門」」を紹介したが、同じ著者のマネジメントの原理をかいた本。

この本では、経営学などのマネジメントの体系にとらわれず、マネジメントの原理を追及しようとしている。この本でマネジャーの役割としているのは

 組織の方針を定める

 計画を立て、予算を作成する

 戦略を立てる

 部下の業務を編成する

 採用と人事配置を行い、インセンティブを与える

 トレーニングと能力開発を行う

 懲戒と解雇を行う

 方針を定め、さまざまなプログラムを管理する

 計画通りに予測可能な結果を出すように努力する

 部下のモチベーションを高めて事業目標と達成する

 予算を管理する

 問題を解決する

といったことである。これらの項目に対して、事例やケースを交えながら、分かりやすく解説した本だ。非常に読みやすいし、役に立つ。

新任のマネジャー、プロジェクトマネジャーなどの専門職マネジャーなどには最適のマネジメント入門書である。

この本と一緒に読んでみたい

ヘンリー・ミンツバーグ(奥村哲史、須貝栄訳)「マネジャーの仕事

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2006年7月18日 (火)

プロジェクトマネージャ育成法

481719186401 佐藤達男、伊藤英雄「プロジェクトマネージャ育成法―ITプロジェクトを成功させる人材育成」、日科技連出版社(2006)

お奨め度:★★★★

非常によく考えて書かれた本であるし、読み易く、また、自動車教習所のメタファも主張したいことを分かりやすくしている。

闇雲にプロジェクトマネジャーの育成をするのではなく、自社に必要なプロジェクトマネジャー像を明確にして、戦略的に育成していく必要性をといている。その中で、壁を

・組織の壁

・育成手法に関する壁

に分けて、整理している。その上で、これらの壁を破って育成するために必要なものを

・環境

・資質

・仕事

の3つに分けて議論している。

プロジェクトマネジャーの育成に携わる人、必読の一冊である。ただし、書かれていることを実行するのは難しい。そこに踏み込むのは読者の責任である。

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2006年7月13日 (木)

2006年上半期ランキング

2006年上半期売り上げランキングです。

1位がPMBOKはいいとして、ベスト5までは、プロジェクトマネジメント関係のよい本が売れているという感じです。

その中で、第3位にランキングされているスマントラ・ゴシャールの「意志力革命」は本当によい本です。シニアマネジャー、プログラムマネジャー、プロダクトマネジャーは必読ですね!

今まで100人くらいのシニアマネジャーに直接紹介をしましたが、多くの人から「熱い!」メッセージを戴いています!

あとは、リーダーシップ系の本が目立ちますね。6位、7位、10位と3件入っています。

【1位】
A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation

【2位】
世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント

【3位】
プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル

【4位】
意志力革命~目的達成への行動プログラム

【5位】
先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

【6位】
ケースで鍛える 人間力リーダーシップ

【7位】
実践リーダーシップ「リーダーは君だ!」―リーダーシップ実践のための12ステップ

【8位】
プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット

【9位】
使う力

【10位】
最強トヨタの7つの習慣―なぜ「すごい工夫」が「普通」にできるのか

統率力。

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2006年7月11日 (火)

規律と自由

026597870000 是本信義「組織のネジを締め直す鉄壁の「報・連・相」」、技術評論社(2006)

お奨め度:★★★1/2

軍隊の運用をマネジメントの参考にした本は少なくないが、この本は、コミュニケーションに的を絞って論じている。

この本の主張によると、報・連・相は軍隊の動脈であり、

 ・作戦思想の統一

 ・意思決定と命令

 ・作戦のフォロー

 ・参加部隊の協働連携

の4つの役割を持つとしている。この4つについて各論を展開している。まさに、これはプロジェクトにおけるコミュニケーションの機能であり、その運用はコミュニケーションマネジメントである。

コミュニケーションの重要性は口々に言われる。しかし、突き詰めて考えていくと、なぜ、コミュニケーションが必要かということを実感として感じられる人は多くないように思う。これがコミュニケーションが重要だとされながら、うまく行かない原因になっていることが多い。

この問題を解決するために、軍隊の仕組みを例に引くことは分かりやすい。コミュニケーションがうまくできないと、それは敗北につながり、死につながる。本書ではさらっと書いているが、そのように考えながら読んでみるとよいのではないかと思う本である。

この本を読んで、痛感したことがある。それは情報共有、組織のフラット化、意思決定の迅速さの名の下に、あまりよく考えられていない情報開示が行われているということである。このような現象が生じている原因は責任の回避であるが、混乱を引き起こし、アジリティを失う結果になっているケースが少なくない。この本のタイトルどおり、もう一度、ネジを締め直す必要がある。

その視点を得るために、すばらしい本である。

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2006年7月 4日 (火)

プロジェクトマネジメント向き問題対処法

430924368109 青木安輝「解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント」、河出書房新社(2006)

お奨め度:★★★★

カウンセリングでは、「問題にとらわれないで、如何に解決に向かうかに焦点を当てる」アプローチは基本の一つである。

最近ではマネジャーを対象にしたビジネスコーチングでも注目されるようになってきた。これは問題解決の対極にあるともいえるアプローチで、どうなりたいか、何を手に入れたいかといった未来のイメージを作るプロセスを先行させ、そこから、具体的な行動を変化させていくアプローチである。

このアプローチをマネジメントに取り入れようというのがこの本の主張である。

ソリューションフォーカスアプローチには3つの哲学がある。

・壊れていないものを直そうとしない

・うまく行っていることを見つけ、それを増やす

・うまく行っていないなら違うことをやる

問題解決志向のアプローチからすれば、ある意味で現実逃避のアプローチにも見えるので批判をする人も多い。しかし、確実にこのようなアプローチが有効な分野がある。それはプロジェクトマネジメントである。プロジェクトマネジメントで問題解決というのはずいぶん重視されている。確かに、次のプロジェクトでの再発を防ぐということを考えた場合には問題解決志向のアプローチは重要だ。しかし、プロジェクトの成功だけを考えるのであれば、問題分析に時間をかけるよりは、ソリューションフォーカスでいろいろと試行錯誤を繰り返していく方がはるかに現実的である。

その意味で、ソリューションフォーカスはプロジェクトマネジャーの必須スキルの一つだろう。

この本では基本的進め方の解説、事例を使ったイメージ作りなどを徹底的に行っているので、必ず、自分のやり方を見つけることができるのではないかと思う。

プロジェクトマネジャーの方、ぜひ、読んでみてほしい。

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2006年7月 2日 (日)

Chakra Suite

B00005omhn09 Steven Halpern「Chakra Suite」、Steven Halpern's (2001)

B000003ivb09 Steven Halpern「Gifts of the Angels」、Steven Halpern's Inner Peace Musi (1994)

B0000ainkr01Steven Halpern「Ocean Suite」、Steven Halpern's Inner Peace Musi (2001)

B00006cte001 Steven Halpern「Inner Peace」、Steven Halpern's Inner Peace Musi (2002)

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Presence

406282019601 ピーター・センゲ、オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティ・フラワーズ(野中郁次郎, 高遠 裕子訳)「出現する未来」、講談社(2006)

お奨め度:★★★★★

人格の成長を前提とした問題解決を行うU理論を中心にして、個人や企業の在り方を問う一冊。

久しぶりの5つ星。「The Fifth Discipline」(邦訳「最強組織の法則」)を書いた組織学習のグル ピーター・センゲの新著。15年前に「The Fifth Discipline」を最初に読んだときには、何かよく分からなかった。学習する組織には

システム思考(systems thinking)
自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)

の5つのディシプリンが必要だという理論を目の前にして、一つ一つの要素の意味と、組織学習の関係はなんとなく分かるが、この5つといわれたときに、ピンとこなかったのをよく覚えている。その後、何度か読み直して、本当に分かったのは、守部信之氏による翻訳本を読んだときだった。これは一つには言葉の壁があった。例えば、masteryという言葉があるがこの言葉は日本語にはないと思う(ちなみに、この本のフィールドブックの翻訳者であるスコラコンサルティングの柴田氏は「自己実現」と訳されている)。しかし、今回の本は、日本語で読んでも難しい点がたくさんある。

この本の原著のタイトルは「Presence」である。たぶん、この言葉に適切に対応する日本語はないのではないかと思う。著者の野中先生と高遠さんは「出現する未来」という訳をつけられている。この訳はよく分かる。

今回の本は、「U理論」なる理論を提唱する本である。一言でいえば、自らが唱えているアクションラーニングについて書いた本であるが、この本の視座としては、学習には人間の生き方があるというものである。

U理論は仏教に基づく考え方で、二元論的な判断を中止し、全体を内省することによって、より正しい行動が直感的に生まれ、結果として自然に、素早くできるようになるという考え方。

具体的には、以下の3つのステップで構成される。

第1ステップ(Sensing):見るということを知る。
1.保留 - 習慣的な思考の流れから自分自身を切り離す
2.転換 - 生成過程に目を向ける
3.心の目でみる - 我執などを捨てること。これは presensing にもかかわる
第2ステップ(Presensing):プレゼンス
1.手放す - sensingにもかかる。
2.受容
3.結晶化 - 気づき(Mindfullness)が明確に現れること。これはrealizingにも関わる
第3ステップ(Realizing): 自然の力になる
1.目的の結晶化
2.プロトタイピング
3.システム化

前著もそうだが、この本はもっと深く考えないと理解できない。いよいよこの領域に入ってきたかという感じの一冊である。

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