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2006年6月

2006年6月27日 (火)

経営や組織からみたプロジェクトマネジメント

49602634 林伸二「組織が活力を取りもどす―プロジェクトの立案から監査まで」、同友館(1997)

お奨め度:★★★★

林先生は組織論の研究者である。この本はプロジェクトマネジメントを組織の視点から捉え、どのように実行されているか、また、どのような仕組みが作られているかを事例研究した書籍である。

プロジェクトマネジメントが普及してきたことは望ましいことだが、あまりにもテクニカルな側面が強調されすぎ、オペレーションマネジメントのような認識がだんだん強くなってきた。

プロジェクトのオペレーションをする分にはそれでもかまわないが、プロジェクトの成否の評価をするためには、組織的な位置づけの議論は欠かせないだろう。

この本では、そのような視点からプロジェクトマネジメントを捉えるとともに、プロジェクトマネジメントは「マネジメント」として何をすべきかを強調したプロジェクトマネジメント論である。

同じような視点から書かれた本に、ポール・C・ディンスモアのエンタープライズプロジェクトマネジメントがある。

447847058809 ポール・C・ディンスモア「エンタープライズ・プロジェクトマネジメント ― プロジェクト型組織による全社経営」、ダイヤモンド社(2002)

この本もよい本である。内容的には

1.エンタープライズ・プロジェクトマネジメントとは何か(すべてはプロジェクトに通じる―機能別組織からプロジェクト志向型組織へ
・プロジェクトマネジメントを全社経営に生かす―エンタープライズ・プロジェクトマネジメントの実際
・企業戦略とプロジェクトのベクトルを一致させる―構想立案段階からのプロジェクトマネジメント
・エンタープライズ・プロジェクトマネジメントを普及する―経営システム変革までの段階的アクション ほか)

2.エンタープライズ・プロジェクトマネジメントの実践(経営トップは質問の技術を磨け―経営者生き残りへのアドバイス
・プロジェクトマネジメントの基本を学ぶ―必要となるマネジメント要素と管理項目
・トレーニングプログラムを準備する―プロジェクトマネジメントの専門教育
・能力評価基準を確立する―プロジェクトマネジメントのコンピタンス ほか)

といった内容で、マネジメントにプロジェクトマネジメントを導入していく際に必要なことが一通り書かれている。この本は林氏の本よりもう一段踏み込み、複数のプロジェクトを如何に管理するかについてまで議論されている。プログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントなどの導入の下地の作り方を解説した本であり、その意味で今後のために読んでおく必要のある一冊である。

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2006年6月26日 (月)

プロジェクトファシリテーションのノウハウ

479811081701 中西真人「実務で役立つ プロジェクトファシリテーション」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★

ついに、プロジェクトファシリテーションの本が出版されたかというのと、同時に、こういう形で出たかというのが正直な一冊。

プロジェクトファシリテーションというと、アジャイル開発やアジャイルプロジェクトマネジメントを中心に概念形成がなされてきたイメージが強い。しかし、この本はどちらかというと、一般論である。ファシリテーションの本質である会議の進め方を、プロジェクトミーティングに適用するにはどうすればよいかを書いた本である。

その意味で、いろいろなプロジェクトでミーティングを中心にして使える手法を紹介した本になっているが、反面、アジャイル開発で言われてきたプロジェクトファシリテーションより、範囲が狭い。その意味で、少し物足らない部分があるのは事実である。

そうはいいながらも、「プロジェクトのファシリテーション」についてまとめた初めての本であるので、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーは読んでおいて損のない一冊である。

プロジェクトファシリテーションの全体像を知りたければ、平鍋健二さんが雑誌やブログに書かれているプロジェクトファシリテーションの記事などと併せて読むのがいいだろう。

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2006年6月23日 (金)

新しい変革マネジメントAI

456965438x01 デビッド・L.クーパーライダー「AI「最高の瞬間」を引きだす組織開発―未来志向の“問いかけ”が会社を救う」、PHPエディターズ・グループ(2006)

お奨め度:★★★★

アクリティアティブ・インクエリー(AI)は大きな変革を目指したプロセス管理の新しい方法である。AIには「4Dサイクル」と呼ばれるサイクルがあり、それがプロセス管理の中心になっている。4Dサイクルは

・ディスカバリー(潜在力発見)

・ドリーム(理想像構築)

・デザイン(変革設計)

・デスティニー(変革実現)

の4つのプロセスからなるサイクルである。ディスカバリーは、何が組織の潜在力を活性化させるのかを評価する。ドリームでは、組織はどういう姿になるべきかを明確にする。デザインは理想の未来像を明確にする。そして、最後にデスティニーは権限委譲、学習、適応の方法を考える。

組織変革のマネジメントにおいて、問題解決型ではなく、ビジョン駆動型により潜在力を活かしていくという新しいスタイルを提唱した本。

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2006年6月20日 (火)

ザ・ファシリテータ

447836071509 森時彦「ザ・ファシリテーター~人を伸ばし、組織を変える」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★

非常に分かりにくいファシリテーションの概念を小説スタイルで解説した本。ファシリテーションの難しい理由は、流れがあることだ。その流れが製品開発センターの改革物語を通じて、誰にでもコンセプトが理解できるようになっている。

ファシリテーションを知りたい人にはお奨めしたい一冊だが、なかなか、こんなにできるものではない。人物描写が理想的過ぎ、あまりリアリティがないのは残念である。

それが、ファシリテーションにとって本質なのかどうか、ここが問題である。

そんなことを思わせるのだが、とりあえず、その点はおいても面白い一冊である。

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こんなPM本がほしかった!

074944555601 Jason Westland「The Project Management Life Cycle: A Complete Step-By-Step Methodology For Initiating, Planning, Executing & Closing A Project Successfully」、Kogan Page Ltd(2006)

お奨め度:★★★★1/2

プロジェクトマネジメントの中でもっとも分かりにくく、また、重要な議論は、計画の詳細的段階化の話である。言い換えると、プロジェクトマネジメントライフサイクルの議論だ。実際のところ、PMBOKを読んでも書いてないわけではないが、読んでも分からない。段階的詳細化の議論を、理論的にしても何も分からない。ツールを使って具体的にどのように詳細化をしていくかを解説する必要がある。

この本は150以上のテンプレート、チェックリスト、テーブルを提示し、それらを使ってプロジェクトマネジメントライフサイクルをどのようにまわしていくかを解説している。英語の本なので、ツールをそのまま使うというわけには行かないだろうが、コンサルタントとして、多くの企業で、多くのツールを見てきたが、こんなにすばらしいツールにはお目にかかったことがないくらいすばらしい。

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プロジェクトメトリクスのサンプル集

156726166301 Parviz F. Rad「Metrics for Project Management: Formalized Approaches」、Management Concepts Inc(2005)

お奨め度:★★★★1/2

プロジェクトマネジメント品質のメトリクスについて体系的にまとめている。PMBOKがベースに、一通りのメソドロジーの構成要素に対して、評価のためのチェックリスト、定性的評価の方法を示しているので、英語である点を除くと、すぐにでも使える実用書である。

メトリクスの内容は計測することに対してよく配慮されており、具体的で、評価しやすいものをうまく設定している。

例えば、WBSの評価を一つとっても、30項目にもわたる非常に細かくチェックリスト(グレイディングつき)が示されている。

プロジェクトマネジメントの改善を目指すPMOの人には、ぜひとも読んでほしい一冊である。

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ソフトウエアメトリクスを学ぼう

482228242201 ローレンス・H・パトナム「初めて学ぶソフトウエアメトリクス~プロジェクト見積もりのためのデータの導き方」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★

ソフトウエアメトリクスの入門書。しかし、本格的。

「プログラム規模」「時間」「工数」「信頼性」「生産性」の5つのメトリクスに注目し、その相関関係を分析している。そして、メトリクスをソフトウエア開発プロジェクトの見積にどのように使うかを議論している。難易度はそんなに高くないので、ソフトウエアエンジニアリングの知識がなくても読める。

一方で、6300件のプロジェクトのデータを分析しており、実践的である。これからメトリクスの勉強をする人にはお奨めの一冊である。

ソフトウエアメトリクスに関しては古くから、米国で名著が多い。古典的な名著といえば、なんといっても、

432009722x09 ケーパー・ジョーンズ「ソフトウェア開発の定量化手法」、構造計画研究所(1998)

である。初版が1993年に出版され、始めて、ファンクションポイント(FP)法を解説した本として注目を浴びたが、FPだけではなくソフトウエアメトリクス全般に非常に示唆にとんだ本である。その後、1998年に改版されている。このバージョンの翻訳がこの本。

この分野では、2000年以降、CMMIの普及やWeb環境の普及など、従来のメインフレーム系、オープン系とは事情が変わってきたが、今、読んでもいろいろな示唆がある。

ISO/IEC15939とCMMIを前提にしたメトリクスをまとめた本としては、

432009741609 John McGarry「実践的ソフトウェア測定」、構造計画研究所(2004)

がある。この本は、ISO/IEC15939ソフトウェア測定プロセス規格の制定に直接関わってきた実務レベルの業界リーダ達が書き下ろしたソフトウェアの測定とプロセスおよびプロダクト改善の実践ガイドブックである。メトリクス本では、これが最もお奨めである。

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2006年6月14日 (水)

デスマーチ

4901280376 エドワード・ヨードン(松原友夫、山浦恒央)「デスマーチ──なぜソフトウエア・プロジェクトは混乱するのか」、シイエム・シイ(2001)

お奨め度:★★★★1/2

ソフトウエアプロジェクトがなぜ、失敗するのかを、プロジェクトをシステムとして捉えて、悪循環の構造について分析した名著。デスマーチという言葉は非常にインパクトがあり、流行語にもなった。

この本ではデスマーチプロジェクトとして、

 ・与えられた期間が、常識的な期間の半分以下である
 ・エンジニアが通常必要な半分以下である
 ・予算やその他のリソースが必要分に対して半分である
 ・機能や性能などの要求が倍以上である

といったことがあげられており、そのようなプロジェクトへの対処方法が述べられている。心当たりがある人は、とりあえず、読んでみよう!

なお、2006年に第2版が同じ著者、同じ訳者で、日経BP社から出版されている。ただ、第2版であるが、違う本ではないかと思うくらい違う。僕は第1版の方が価値があるのではないかと思う。

482228271601

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか」、日経BP社(2006)

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2006年6月13日 (火)

ハーバード流コミュニケーション作法

447849047301 Harvard Management Update編集部「対話力」(ハーバード・ビジネススキル講座)、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★1/2

ハーバード・マネジメント・アップデートが作ったフェースツーフェースコミュニケーションに関するノウハウ本。論文というよりも、雑誌記事に近く、非常に分かりやすくコミュニケーションのノウハウを解説した記事を集めている。

ただし、視点の斬新さはさすがと思わせるものがあり、

1)話し言葉の使い方

2)非言語コミュニケーションの使い方

3)相手のシグナルを読む

4)プレッシャー下のコミュニケーション

など、かなり、高等なコミュニケーションスキルが並んでいる。多くの記事は読んですぐに実行するのは少し難しいように思う。しかし、頭に入れておくと、後で役に立つと思うようなものが多い。

ヒューマンスキルというよりも、ヒューマンスキル、思考スキル、ソフトマネジメントスキルなどの総合力としての対話力を探求しているような一冊である。

なお、同じシリーズでもう一冊、出版された。

447849048101

Harvard Management Update編集部「提案力」(ハーバード・ビジネススキル講座)、ダイヤモンド社(2006)

こちらは、プレゼンテーションに関して、同じテーストでまとめられている。

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2006年6月 9日 (金)

究極のリスクマネジメント

475730375001 坂井優基「パイロットが空から学んだ危機管理術」、インデックスコミュニケーションズ(2006)

お奨め度:★★★★

パイロットの経験から得たリスクマネジメントを、現場編、中間管理職編、トップマネジメント編と分けてルールとして整理して、解説している。

一つ一つの内容は極めて濃い。以前、軍艦のリスクマネジメントの記事を雑誌で読んだが、軍隊に負けず、飛行機もすばらしいリスクマネジメントがされていることがよく分かる。

そして、その中から、ビジネスの現場に適用できるルールを選択している。

現場だと

 だろうで行動してはならない

 都合のよい解釈をしてはならない

 データ=現実ではない

など21件。

中間管理職だと

 主目的を変質させてはいけない

 人間の変質に対処しなくてはいけない

 対策には期限を明示する

など22件。ここまで部分はプロジェクトリスクマネジメントに非常に参考になる。究極のリスクマネジメントノウハウ集といった感じ。

トップマネジメントだと

 安全なくして売り上げはありません

 問題はシステムで解決しよう

など17件。

座右の書にしたいと思わせる一冊。

著者の坂井優基は国際線のパイロット。前作の「パイロットが空から学んだ一番大切なこと」では、パイロットの経験から得たチームマネジメントのノウハウ、コツについて述べている。こちらもお奨め!

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