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2006年5月

2006年5月30日 (火)

製品開発力と事業構想力

447838046501 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部「製品開発力と事業構想力」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★

製品開発力と事業構想力という日本の企業に今欠けている2大要素を取り上げた論文集。

このシリーズはハーバードビジネスレビューの論文をテーマ別に編集したものであるが、このテーマでは記憶に新しいところでも破壊的イノベーション、オープンマーケットイノベーション、イノベーションファクトリなど、さまざまなインパクトを与えるコンセプト論文を掲載しているだけあり、非常によいできである。この分野で活動している人であれば、一冊持っておいて損はない本だ(もちろん、どの論文も読めば参考になる)。

個人的には、この本に採録されている中では、第6章のステファン・トムクとエリック・フォン・ヒッペルの「R&Dを顧客に転嫁する事業モデル」が一番好みである。

ただ、製品開発力と事業構想力といいながら、事業構想力の方に比重がかかっている。それだけ、この分野のクオリティペーパが多いということなのだろうが、ちょっと寂しい部分もある。

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OODAサイクルを作る!

449253210201 中村好寿「ビジネスに活かす!最新・米軍式意思決定の技術」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

プロジェクトのイメージに最も近い活動はおそらく、軍隊(戦闘活動)である。

プロジェクトの行動はPDCAサイクルだといわれる(計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act))。PDCAサイクルの発案は、品質管理の父といわれるデミングで、もともと、生産プロセス(業務プロセス)の中で改良や改善を必要とする部分を特定・変更できるようプロセスを測定・分析し、それを継続的に行うために改善プロセスが連続的なフィードバックループとなるように提案したものである。

これが現在、品質概念を拡張し、さまざまなマネジメントの場面で使われている。

この方法をプロジェクトマネジメントに導入したときに、違和感があるのは、「観察」が明示的に行われていないこと、「仮説」が明示的に扱われていないことである。この違和感を解消できるのが、この本で紹介されているOODA(観察(Observe)、状況判断(Orient)、決定(Decide)、行動(Act))ループを基本とする米軍が使っている軍事意思決定モデルである。

この本は、この意思決定をビジネスにどのように応用するかという視点から、意思決定手法の体系的な説明をしており、この本を読めば、このような意思決定を行うだけの知識は入手できるだろう。

先が見えないプロジェクト、頻繁に環境が変わって行くプロジェクトのマネジャー必読!

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組織の競争力を強化するリスクマネジメント

432009747501 John McManus(富野壽監訳)「ソフトウェア開発プロジェクトのリスク管理」、構造計画研究所(2006)

お奨め度:★★★★

やっと実践的なリスクの本が出た。といっても訳本。構造研究計画所のソフトウエアエンジニアリングの訳本の質の高さをご存知の方であれば、期待を裏切らない一冊。

この本がすばらしいのは、「狼が来た」本ではないところ。ソフトウェアプロジェクトのリスクとは何かをきちんと説明し、リスク対処を機会管理と捉え、経営における能動的な価値だと考えている点である。コンサルタントとしてプロジェクトリスクマネジメントの問題に当たる際になかなか理解してもらえない点である。いろいろな人に勧めたい本。

この本で指摘されているソフトウェアプロジェクトのリスクは3つある。最初は「開発当初に要求仕様を必ずしも確定できない」、あるいは「開発途上,競合や市場への対応から止むを得ない仕様の変更が起きることが多い」などのリスクで、この本ではこれをビジネスリスクだと捉えている。二番目はビジネスリスクに関連して生じるプロジェクト規模や工数の見積り技術の不備、新技術や新しい開発プラクティスの利用からくる不確実性、技術者能力の不足などのリスクでこれを技術リスクとして捉えている。第三は,プロバイダ市場や環境の変化、ソフトウェア訴訟などのプロジェクトの外部要因によるリスクである。このリスクの区分も非常に適切である。

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サントリー版プロジェクトX

488399444901 峰如之介「なぜ、伊右衛門は売れたのか。」、すばる舎(2006)

お奨め度:★★★★

マーケティングを念頭において書かれた本だと思う。メーカ(サントリー)の独自性(ブランド、企業規模)を背景にしたマーケティング戦略を点kないし、それがあたった商品である。マーケティング戦略はこう作れという意味では参考になる本である。ただ、戦略そのものは、あまり、適用できる企業はないだろう。

むしろ、この本は商品開発マネジメントの本としてすばらしい本である。特に参考になる点は

・困難に直面するたびに、プロジェクトの目的に立ち返り、次の行動を決めている

・リスクをうまくマネジメントしている(リスクをうまくとっている)

の2点。プロジェクトXを見てもそうだが、開発モノとして胸を打つためには、この2つの要素は必須である。やはり、読み終えて感動を覚える本である。

もう一つ、すばらしいと思うのは、サントリーという会社のプロダクトマネジメントの姿勢である。この本ではあまり出てこないが、商品開発開発プロジェクトがこのような活動をするためには、相当しっかりとしたプロダクトマネジメントをやっていると思われる。その辺りの仕組みを想像しながら読んでいくのも一興である。

2006年5月14日 (日)

西遊記に学ぶチームマネジメント

482071672701lzzzzzzz_1 成君憶、呉常春(泉京鹿訳)「水煮西遊記    中国ビジネス思想の源流を知る」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

西遊記は概略は誰でも知っている話だが、チームマネジメントの話をするときに引き合いに出すと分かりやすい。単純な話だと、桃太郎伝説のイヌ、キジ、サルがあるが、この組み合わせは典型的な機能組織のイメージである。これに較べると、西遊記の組織はもう少し複雑さがあって、まさにプロジェクトチームの妙味があり、三蔵法師の行動もチームマネジメントとして興味深い。そんなことを以前から思っていたが、この本はまさに、ヒット!

また、キャリアという視点からのチームマネジメントについてもいろいろな考察があるので、キャリアデザインを好書である。

これをいろいろな視点から分析した本である。興味深いのは、中国のビジネス習慣を前提にした解説になっている点。この本を読めば、中国の考え方が分かるかも!?

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2006年5月12日 (金)

プロダクトストラテジー

4822244423マイケル・E・マクグラス(菅正雄, 伊藤武志 訳)「プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスがよく取れたプロダクトマネジメントの本。米国のビジネススクールの定番テキスト。

マイクロソフト、IBM、デル、インテル、シスコ、アップル、ゼロックスなどグローバルなハイテク企業は、どうやって競争力のある製品を生み、育てたのかという切り口で、ベストプラクティスとなる戦略パターンを提示している。

製品戦略に留まらず、タイミング、計画立案、コンティンジェンシープラン、マーケティングや資金面での検討事項、などといった製品戦略に付随する様々なプロセスについても言及されているので、非常に実践的な内容になっている。

テキストとして書かれているので、それなりに知識がある人が読むと、説明が冗長であり、まどろっこしい部分があるが、初心者が最初に読み、なおかつ、それなりに深い知識を得るには絶好の本である。

特に、戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスについて適切な知識が得られると思うので、プロダクトマネジャーになる人にお奨めしたい本である。

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2006年5月11日 (木)

信長のイノベーション

482224327309lzzzzzzz 童門冬二「信長―破壊と創造」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★1/2

小泉首相の在任期間5年番組で紹介していたので、読んでみたら、当たり。信長は稀代のビジョナリストだとして、

・物理的な壁

・制度的な壁

・意識的な壁

を破壊したということをエピソードを引きながら紹介し、議論している。議論そのものは、どうかなと思うものも少なくないが、この中で意識的な壁を壊す部分は結構参考になる。

その中心は「一生懸命の思想」なるものだが、確かに、この変革プロセスは卓越したものだなと思う。

歴史読み物としてはあまり面白くないので、ビジネス書として読むこと。

3つの自問

483795666101lzzzzzzz ダニエル・ピンク(大前研一訳)「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」、三笠書房(2006)

お奨め度:★★★★★

ダニエル・ピンクの最新作。3つの「自問」で大変な話題になった本の邦訳。大前研一が翻訳し、自ら、解説を書いている。

3つの自問とは、これからの成功者と脱落者を分ける自問と名づけられ、

1)この仕事は他の国ならもっと安くやれるだろうか

2)この仕事はコンピュータならもっと速くやれるだろうか

3)自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

の3つである。

実は、ダニエル・ピンクがこのような価値観を主張したのは、この本ではなく、フリーエージェント社会である。

447819044509lzzzzzzz ダニエル・ピンク(池村千秋、玄田有史訳)「フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか」、ダイヤモンド社(2002)

個人的にはこちらの本の方が含蓄があり、面白いと思うが、ハイコンセプトでは、その価値観を具体的な6つのセンスとして表現している分、イメージが分かりやすい。6つのセンスとは

・機能だけでなくデザイン

・論理ではなく共感

・議論よりは物語

・まじめだけでなく遊び心

・個別よりも全体の調和

・ものよりも生きがい

いよいよ、日本人の文化、生き方、価値観を見直す時代がきたのではないだろうか。

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ナレッジワーカーのマネジメント

4270001224 トーマス・ダベンポート(藤堂圭太訳)「ナレッジワーカー」、ランダムハウス講談社(2006)

お奨め度:★★★1/2

トーマス・ダベンポートが書いたナレッジワーカーのマネジメント本。

ナレッジワーカーが高いパフォーマンスを上げるにはどのような環境が必要かについてさまざまな視点から論じている。この分野のグルの一人であるダベンポートだけあって、内容は充実しているし、説得力も十分だ。

特に9章のナレッジワーカーのマネジメントは非常に有益である。

・知識労働をしながらナレッジワーカーを管理する

・知識労働のコミュニティを作る

・ナレッジワーカーをリテンションする

・知識スキルを教え、広める

・知識フレンドリーな文化を醸成する

・官僚主義の排除

ダペンポートは5~6年前に

482011697509lzzzzzzzワーキング・ナレッジ―「知」を活かす経営」、生産性出版(2000)

という本を書いている。ダペンポートの主張は、ドラッカーのいう知識労働と微妙に違うので、もし、知識労働に対するイメージがない人はこちらの本を併せて読んでみてほしい。

2006年5月 4日 (木)

組織内一人親方

4818525111 関島康雄「組織内一人親方のすすめ―プロ人材に自分で育つ方法」、日本経団連出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

関島康雄さんは日立グループで40年仕事をされてこられた方である。その関島さんが、2年前に、日立での経験をベースにして、非常に独自性があり、また、日本の組織に適していると思われるプロフェショナル人材育成論を上梓された。

481852402609lzzzzzzz関島 康雄「Aクラス人材の育成戦略―教育力競争時代をどう乗り越えるか」、日本経団連出版(2004)

これを読んで非常に感銘を受けたので、ぜひ、個人の視点から見たキャリア形成論を読みたいと思っていたが、やっぱり出た。それがこの本。

「一人親方」というプロフェッショナルのメタファはたいへんイメージしやすく、大変、分かりやすい。親方は自力で仕事を進めていかなくてはならないし、一方で経営もしなくてはならない。場合によっては、弟子を食わせ、育てていかなくてはならない。おおよそ、マネジメントのありとあらゆる活動を一人でできないと成り立たない。プロフェッショナル(自律的個人)のイメージそのものである。

うちのクライアントで組織内個人事業主制度という制度を実施している企業がある。50名ほどの小さなソフトウエアビジネスをやる会社であるが、もう10年くらい前に、この制度を作った。制度の発足当時は20名ほどの会社でその後、30名くらい増えたことになるが、いまだに制度の活用者は一桁にとどまっているそうである。

この事実は、この5年くらいみんなが口をそろえて重要だと言っているプロフェッショナル人材育成、プロフェッショナル組織化が如何に難しいかという点を如実に物語っているように思う。なぜ、難しいか。この本を読んでもらえばよく分かる。

プロフェッショナルの議論はややもそればべき論で、読んでいると気持ちよいが、実際にできる組織に属したままでできるはずがないことを、組織文化の議論を抜きにして平気で論じている本が多い。

この本は、そんな本とは一風違っていて、組織内一人親方になるには、どのような行動をすべきかという視点から書いてある。僕はこのプロフェッショナル化のポイントはリーダーシップだと思っているが、リーダーシップ開発についても5章で実践的な行動論として論じられている。

プロ人材を目指す人はぜひ読んでみよう。特に、プロフェッショナル論議にうんざりしている人にはぜひ、お奨め。

また、プロフェッショナル人材を育成しなくてはならない立場にある人は前作の方がお奨めである。

ただし、僕はファーストキャリアが三菱重工業という会社であった。関島さんは日立でキャリアを歩んでいる。僕がこの本をすばらしいと思うのは、この点が決して無関係ではないことだけお断りしておく。

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