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2006年7月

2006年7月31日 (月)

なぜ、ウィスパーに羽根がはえたのか

492511277501 和田浩子「すべては、消費者のために。―P&Gのマーケティングで学んだこと。」、トランスワールドジャパン(2006)

お奨め度:★★★★

和田さんはおそらく、日本のビジネスウーマンで最も有名な方の一人だろう。P&Gのマーケティング部門で活躍。「ウィスパー」に羽根をはやしたブランド戦略の実行で一躍有名になった。ミス・ウィスパーと呼ばれていたとか。その後、2004年のフォーチューンで世界で一番パワフルなビジネスウーマン50傑に選ばれ、世界中で有名になった。

誰にでも等しくチャンスがあることを伝えるために乗っているというまっ白なポルシェでも有名。

という和田浩子さんの自伝的な書籍。マーケティングを中心に、ブランドマネジメントのノウハウをP&Gの経験を時間を追って書かれている。

P&Gは言わずと知れた高品質の経営をしている企業であるが、この本を読んでいると、製品力がブランドを作るという王道を歩んでいることが分かる。その意味で、ブランドマネジメントでありながら、製品マネジメントの色合いが濃い。また、科学的にマネジメントされている点も印象的である。

同じ日用雑貨のビジネスでも、日本のメーカとはテーストの異なるところがあり、その辺りも興味深い部分である。

マネジメントに突拍子もないものもあまりない。その意味で、1冊そのまま、ブランドマネジメントやあるいはもう少し広くマーケティングの教科書になるような本でもある。

2006年7月29日 (土)

ゲリラ流仕事術

489451234301 ジェイ・C・レビンソン 「ゲリラ流 最強の仕事術~「収入」と「時間」が増える技術と習慣」、フォレスト出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

488497066709全世界で1400万部売れたというゲリラシリーズはあまりピンとこなかったが、この本はフィットした。

「目標の立て方」「時間の使い方」「仕事の選び方」、「情報の使い方」「お金の考え方」、「人の使い方」、「ビジネスの組み立て方」「顧客との付き合い方」、「人との付き合い方」、「人脈の作り方」、「「人間心理」、「マーケティング」、「ストレスへの対処法」などにおけるゲリラ流が述べられている。

そのようなゲリラ流を貫こうとすると、ゲリラ流のマーケティングが必要になってくるという関係になっているが、確かに、こういうロジックでこられるとゲリラ流マーケティング、ゲリラ流起業というのは一理あるかもしれない。

もう一度読んでみようか。

実践的ゲリラマーケティング―小企業のための成功する広告戦術

トリックスター

449265385601 『週刊東洋経済』村上ファンド特別取材班「トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★

東洋経済新報はインサイダー事件以前から、ずっと村上ファンドを追いかけて、時々、面白い記事を出していたが、その集大成。

例の逮捕前の会見から始まり、そのあと、人脈の分析がある。その後、時間を追った村上の活動の紹介、あるいは、評価をしている。

報道では分からないことがたくさんでてきるので、読む価値のある本だが、ひとつ、オリックス宮内の話が報道されている程度にしかでてこない。これはがっかり。

今まであまり興味がなかったが、非常に興味深い人物だ。どのような判決ができるかわからないが、彼のやったことの評価が社会的に定着するのは、もう10年くらいはかかるのではないかと思う。

トヨタ流「秘書」

456964984x01 石井住枝「トヨタ流 プロの仕事術」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

石井さんといえば、

石井住枝「トヨタの役員秘書が見た トヨタのできる人の仕事ぶり」、中経出版(2005)

がベストセラーになり、注目をされているコーチだが、この本、あまり、面白いと思わなか480612205x09 ったので紹介したことがない。秘書という立場からみたときに、トヨタ流の源泉である人のコンピテンシーを解説した本である。

コンサルがクライアント企業のよいところを書いたような感じの本で、どこか他人事を感じさせる雰囲気があり、内容的に説得力がないように思えた。ただし、石井さんは秘書だけではなく、秘書の仕事を極めるために技術員に転身したというキャリアの持ち主であり、必ずしも傍から見ていただけではないのだが、本のつくりの問題だろう。

で、今回の本。この本はよい。トヨタの秘書が何をすればよいかを自分の経験に基づき、明確に書いている。何でもよいが、トヨタ流の本を読んだことのある人は、表にでていないことがあることを感じたことがあるのではないだろうか?

特に、コミュニケーションの部分。現場だけを考えれば、コミュニケーションのルールが決まっていて、それを大切にする文化があれば、ある程度の自律的なコミュニケーションは可能であるが、組織がある限り、そんなに単純なものではない。

普通の組織であれば、コミュニケーションの中に、経営とのコミュニケーションや、スタッフとのコミュニケーションなどが入ってこないとトヨタ方式は成立しないはず。

この本を読んで非常によく分かった。秘書をはじめとして、スタッフがコミュニケータの役割を果たしている。

その他、さまざまな問題で、トヨタ方式の潤滑油になっている秘書の機能を彼女なりの体系にまとめている本で、非常に参考になる。石井さんは、「秘書力」でカリスマになりつつあるらしいが、この本、秘書の方より、現業のスタッフ、つまり、生産技術とか、PMOとかの方にぜひ読んで戴きたい本だ。

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超トヨタ式

4876885540 村上豊「現場はもっと強くなる 超トヨタ式・チーム力最大化の技術」、幸福の科学出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

デンソーの元工場長が書いたチーム力を引き出す技術の解説。見える化、5回のなぜ、現地現物、5Sなど、トヨタ方式を構成する有名な手法のデンソーでの実践方法の解説をかなり詳しく書いてある。

ビジネスの形態が変わり、トヨタに現場が少なくなり、本当のトヨタ方式がより有効に活用されているのはサプライヤーだという説がある。その中でも、「トヨタよりトヨタらしい」といわれているデンソーで、元工場長をしていた著者が書いた本だけに、知りたいところが随所に書いてある。「超・トヨタ」とタイトルされているが、確かに、そうかもしれないと思わせる部分も多い。

ちょっと話は変わるが、トヨタ方式を体系的にまとめた本としては、

ザ・トヨタウェイ

が著名である。残念ながら日本人が書いたトヨタ本で、科学し、体系化していると感じられるものは皆無だった。この本は、珍しく科学されている。

構成はチーム力最大化のポイントということで16ポイントを上げ、それぞれ、何をしていたかを説明しているが、例えば、このひとつに

成長サイクルと成果サイクルを同時に回せ

ということで、その方法を書いている。トヨタ方式の基本は成長と成果の両立ということだが、その具体的なサイクルを明確にしたのは初めてだと思う。

そのような書き方であるので、非常に使いやすい書き方の本である。

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仕事を成し遂げる技術

489361333209 デビッド・アレン(森平慶司訳)「仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法」、はまの出版(2001)

お奨め度:★★★★1/2

デビッド・アレンはベテランの経営コンサルタントである。そのデビッド・アレンが書いた知識労働者の仕事の仕方のバイブルともいえるような本である。

プロジェクト管理、時間管理、日常のスケジュール管理などについて鉄則を、その考え方とともに、習慣化の方法まで説いた本である。この本がすばらしいのは、習慣化を目的にしていることもあって、いろいろな切り口から繰り返し、説いていることと、「シンプル」であることだ。

説いていることはそんなに難しいことではない。目的意識を持ち、リラックスすることによって、集中し、生産性が高まり、最後までやり遂げることができるという主張。しかし、333ページにわたって書かれている内容は、本当に細かく、具体的である。

本当にこの本に書かれている通りにやると生産性があがるかどうかはやってないので分からないが、納得はできる部分が多い。

プロジェクトマネジャーをやるときには、全てのメンバーに読ませたくなるような本である。

2006年7月27日 (木)

マネジャーの正しい育て方

482224516001 ヘンリー・ミンツバーグ(池村千秋訳)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ご存知、ポーターなどと並ぶマネジメントのグルであるミンツバーグのマネジャー育成論。ミンツバーグは単なる机上の理論を振りかざすタイプの学者ではなく、論理的な言論の一方で、「マネジャーの仕事」という一級のエスノグラフィーを書いているくらい、現場に精通している。そのミンツバーグのマネジャー育成論なので、非常に期待して読んだが、期待に反しなかった。

現在のMBA方式によるマネジャーについて客観的な評価をし、マネジャー育成のあるべき姿を模索している。マネジメントに必要な要素を

 ・アート

 ・サイエンス

 ・クラフト

という三角形で表し、この3つが補完することがマネジメントの成功要素だとした上で、現在のMBAの教育をクラフトが完全に抜け落ち、かつ、アートに関しては重要を認識するものの教育プログラムとして何もできていないという評価をしている。

この評価をベースにしてマネジャー育成理論を展開しているが、その中で、面白い問題提起が2つある。

一つは、マネジャーの育成のためには行動が必要なのか、行動を省察する機会が必要なのかという問題提起。ミンツバーグの答えは後者である。マネジャー育成の目的を「行動させる」ことではなく、「行動の質を高めること」だとしている。

この問題提起は面白い。MITのピーターセンゲの組織学習論以来、マネジャーの育成にはアクションラーニングが不可欠なものだと考えられるようになってきている。アクションとラーニングという2つの極めて重要な課題をこなすのは難しく、行動と学習の混同をやめにすべきかも知れないと述べている。

もう一つの注目すべき指摘は、マネジャー育成の対象者である。マネジャー育成のための教育は現役のマネジャーに限定すべきであると述べている。理由は理解レベルと、意欲なのだが、ちょっと驚くべき見解である。

そのようなことも踏まえて、新しいマネジャー教育に対して5つの定石を示している。

定石1:マネジメント教育の対象は現役マネジャーに限定すべきである

定石2:教室ではマネジャーの経験を活用すべきである

定石3:優れた理論はマネジャーが自分の経験を理解するのに役立つ

定石4:理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす

定石5:コンピテンシーの共有はマネジャーの仕事への意識を高める

定石6:教室での省察だけではなく、組織に対する影響からも学ぶべきである

定石7:以上のすべての経験に基づく省察のプロセスを折り込むべきである

定石8:カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える

そして、この本ではこの定石に基づき、よくできた育成プログラムの紹介と、具体的な教育の概念設計を示している。

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2006年7月26日 (水)

意思決定はプロセスである

490123494301 マイケル・A・ロベルト(スカイライトコンサルティング訳)「決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント」、英治出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

英治出版のウォートンビジネススクールのシリーズ。このシリーズ、たぶん、5タイトルくらいは出ていると思う。出版されたものには、だいたい目を通しているが、一冊だけいい本だなあと思ってこのブログで紹介したことがある。

□デビッド・シロタ(スカイライトコンサルティング訳)「熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素

この本より、本書の方がよりすぐれものだとと思う。

メインテーマは「意思決定の成否はどんな結論を出したかではなく、どんなプロセスで結論に至ったかで決まる」ということ。このテーマを中心に、では、どのようにプロセスをくみ上げていくか、また、そのプロセスを前提にした場合にリーダーシップはどうあるべきかという感じで、体系的にまとめられている。

本書で掲げているテーマは、仮説に過ぎないと思う。ケネディ大統領の失敗やスペースシャトルの事故、エベレスト登山隊の遭難、ノルマンディー上陸作戦などを取り上げて、仮説の妥当性を主張しているが、逆にこれらの仮説を否定する事例もたくさんあると思う。

しかし、それが仮説かどうかはどうでもよくて、この本に書かれているような意思決定プロセスを構成していくことはビジネスの中では極めて重要なことだと思う。プロセス構成の考え方にも、納得できる部分が多い。

特に8章の実行につながる決断の章は、今までの意思決定論ではあまり省みられることのなかった視点で、ここだけでも読む価値がある。

とにかく、よい本であるので、マネジャーの方は、ぜひ、手に取ってみてほしいと思う。

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製品マネジメントを見直そう

479732560709 吉本敦「開発力革命―技術立国から開発立国へ」、ソフトバンクパブリッシング(2004)

お奨め度:★★★★1/2

製品開発マネジメントは実証研究を中心にアカデミックな本は多いが、意外と実務家が読める本は少なく、いきなり実用書、ノウハウ本になる。

そんな中で、自社の開発した手法に基づき、しっかりとした論理と、実践的な手法をまとめた製品開発マネジメントの好書である。本としても適度に具体性があり、分かりやすいのがよい。

この本で提案されている手法は、プロセスマネジメントである。プロセスを評価し、改善することによって、製品開発力を挙げていくというプロセスであるが、評価の視点が、従来のような局所的なものではなく、全体最適の視点からの評価になっている。

著者によると、この全体最適な製品開発プロセスの欠如が日本の製品開発マネジメントの弱点であるとのことだが、この辺りは、本来、ナレッジマネジメントでカバーしてきた部分だ。そのプロセスを形式化することの是非はもう少し議論の余地があるように思うが、おおむね、この本に書いてあることには賛同できる。

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ベンチマーキングしよう

482011830701 高梨智弘「ベンチマーキング入門(新版ベンチマーキングとは何か)―ベストプラクティスの追求とナレッジマネジメントの実現」、生産性出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

日本では非常に珍しいベンチマーキングについて、ナレッジマネジメントの大家である高梨氏が解説した本。1995年に「ベンチマーキングとは何か」という本としてかかれたものを大幅に改定し、作られた本である。

内容的には高梨氏の提案するベンチマーキングのプロセスと、ベンチマーキングの活用方法について詳細に解説された本である。また、ベンチマーキング実施のノウハウについてもかなり突っ込んで書かれている。

高梨氏の提案するベンチーマーキングプロセスは

 S(Strategy)

 P(Plan)

 D(Do)

 L(Learning)

 I(Innovation)

というサイクルで、15のステップからなるプロセスである。

また、最後に1章を割いて、ケーススタディをしている。ケーススタディは、ゼロックス、ソレクトロン、リッツカールトン、アームストロング、サウスウエスト、トーラスなど。

日本ではベンチマーキングというマネジメント手法はあまりなじまない手法である。徹底的に隠す多くの企業と、あけっぴろげな少数企業といった感じだ。少なくとも20年前まではプロセスという概念がなかったのだから、このようになるのはある意味で当たり前である。

ただ、次第に状況が変わってきた。プロセスという考え方が確立され、競争するプロセスと、競争のインフラとなるプロセスで、インフラプロセスでは積極的にベンチマーキングが行われるようになってきた。

実際に経営品質などの考え方にはベンチマークに応じられることが重要な要件になっている。

そんな状況を受けて、10年ぶりに改定された本書は10年前とは比べ物にならなくくらい、価値のある本になっている(内容も充実している)。プロセスマネジメントや、経営企画に関わる人はぜひ読んでおきたい一冊だ。

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