エンジニアリングマネジメント Feed

2006年10月27日 (金)

イノベーションマネジメントの全てが分かる一冊

456965546701 大浦勇三「イノベーション・ノート―会社が劇的に変わる! 」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

イノベーションマネジメントのポイント(論点)が実に要領よくまとめられた1冊。以下の6つの視点にまとめられている。

・事業戦略は適切か

・実現に向けた仕組み/プロセスは明確か

・必要なコンテンツ(情報・知識・知恵)は十分か

・推進体制は必要か

・人材教育/人材育成は万全か

・外部連携に死角はないか

それぞれの項目につき、さらに5つの中項目にブレークダウンし、それぞれの中項目に対して、5項目の小項目を、1項目1ページで、図表を駆使して視覚的に理解できるように実にうまくまとめられている。また、各項目とも8行ほどの解説があるが、この解説も分かりやすい。

この本を読んで、まず、最初に思いついた用途は、自社のイノベーション能力のチェックである。政府が政策目標にイノベーションを掲げ、担当大臣を置いた。また、経団連でも「イノベート日本」というキャッチフレーズを掲げた。

イノベーションへの関心の高まりは否が応でも増してくるだろう。そんなときに、とりあえず、何か一冊本を読んで、マネジメントとして何をすればよいかを把握したいときに、絶好の一冊だ。

ただ、中は、いわゆる図解的な入門書ではない。図解であるが、内容はかなり本格的なイノベーションマネジメントの解説書であるので、それなりの覚悟をして読む必要があると思うし、自分の関心の持てた項目については、他に参考書を探して深堀する必要があると思う。

続きを読む »

2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

続きを読む »

2006年9月12日 (火)

ストレッチした目標を達成するための超実践的方法論

452605689801 近江堅一、寺田哲郎「製造業の高レベル目標管理法―トヨタに学びたければトヨタを忘れろ」、日刊工業新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

著者らが実践してきた「O式」と呼ぶパフォーマンスマネジメントの実践活動について述べた本。

「O式」とは、挑戦目標設定・必達法の略で、

 マネジャーが高い目標を設定し、ユニークな施策で目標を必達させる実践活動

である。

著者たちの指摘は極めてユニーク。経営改善の目標に、一般社員が日常管理で行うような低いレベルの目標しか設定していないのは損失だという問題意識で、どのようにそれを実現するかを示している。

「O式」の構成要素は

・管理者の自覚

・挑戦目標

・挑戦目標を達成するためのユニークな施策の出し方

・時間創出法

・基礎資料の作成

・実施計画の作成

で、それぞれに、著者たちのユニークな発想が詰まっている。それをすべて解説した一冊。

続きを読む »

2006年5月12日 (金)

プロダクトストラテジー

4822244423マイケル・E・マクグラス(菅正雄, 伊藤武志 訳)「プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスがよく取れたプロダクトマネジメントの本。米国のビジネススクールの定番テキスト。

マイクロソフト、IBM、デル、インテル、シスコ、アップル、ゼロックスなどグローバルなハイテク企業は、どうやって競争力のある製品を生み、育てたのかという切り口で、ベストプラクティスとなる戦略パターンを提示している。

製品戦略に留まらず、タイミング、計画立案、コンティンジェンシープラン、マーケティングや資金面での検討事項、などといった製品戦略に付随する様々なプロセスについても言及されているので、非常に実践的な内容になっている。

テキストとして書かれているので、それなりに知識がある人が読むと、説明が冗長であり、まどろっこしい部分があるが、初心者が最初に読み、なおかつ、それなりに深い知識を得るには絶好の本である。

特に、戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスについて適切な知識が得られると思うので、プロダクトマネジャーになる人にお奨めしたい本である。

続きを読む »

2006年2月26日 (日)

MOTならこれ

482224500401lzzzzzzz 技術経営コンソーシアム監修、三菱総合研究所編集「標準MOTガイド」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★

この数年間に本がたくさん出版されている分野がプロジェクトマネジメントと、MOTである。MOTの本はたぶん、3~40冊あると思うが、この本は非常に出来のよい本。

目次を見てもらえば分かるが、基本的な事項からトピックス的なところまで300ページ強の中にうまく収められているので、いろいろな目的で読めるし、また、内容的にも読みやすい本だ。たぶん、経営学部などで、MOTの科目に使うような狙いで作られている本だと思うが、一冊読めば、さしあたり、最低限必要な知識は身に付くだろう。

残念なことは、プロジェクトマネジメントというテーマがあまり、扱われていないことだ。組織マネジメントとしてプロジェクトにどのように取り組んでいくかについては、延岡先生の書かれた部分があるが、それ以外はあまりない。

この点は、日本と欧米の大きな差なのではないかと思う。

だが、逆に、プロジェクトマネジャーが必要とするMOTの知識はこれ一冊で十分ではないかと思う。

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック!

続きを読む »

2005年11月19日 (土)

トヨタウェイの実践

482224477609lzzzzzzz ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (上)」、日経BP社(2005)

ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (下) 」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★

ジェフリー・K・ライカー教授の「ザ・トヨタウェイ」の実践編。トヨタウェイを実践するために必要なツール、手法、ノウハウについて詳細に解説されている。特に、暗黙知の部分が分析的に解説されており、大変、参考になる本である。

482224415609lzzzzzzzザ・トヨタウェイ」では、アメリカの製造業に「リーン生産方式」として多大な影響を与えたトヨタ生産方式をその事業哲学にまで遡って分析したしている。

この本ではトヨタ方式を導入しようとする場合にどのような問題が発生するかを、さまざまな視点から解説している。実際のところ、トヨタ生産方式を導入することは難しい。カンバンなどの表面的なプロセスを見ても、うまく行かないからだ。

その部分について言及している本は少なくないが、本書ほど、体系的かつ、実践的にその部分に切り込んでいる本はない。この1冊で、トヨタ生産方式が導入できるかどうかは微妙であるが、逆に、これ以上の情報は書籍の形では提供できないだろうと思われる1冊であることは間違いないだろう。

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック!

続きを読む »

2005年9月20日 (火)

イノベーションのジレンマ、いよいよ完結

427000071601クレイトン・クリステンセン、スコット・アンソニー、エリック・ロス(宮本 喜一訳)「明日は誰のも のか イノベーションの最終解」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★

イノベーションのジレンマ」の完結編。

前作のイノベーションへの解では、あまり、インパクトのある破壊的イノベーションのソリューションを提示できなかったように感じたが、あれから2年が経過し、相当しっかりした理論になったというのが第一印象。

単にプラクティスではなく、具体的なプロセスの構築などについても言及しており、「イノベーションのジレンマ」を打ち破る方法としてやっと具現性を持ってきた。特に、非マーケット要因の分析の部分はすばらしいと思う。

今回から、出版社が変わっており、Harvard business school pressの本として、ランダムハウス講談社が翻訳を手がけた。この翻訳は前作2冊の翻訳より、翻訳として堅いように思う。僕には若干読みづらかったが、エンジニアなどが読むにはよいのかもしれない。訳者の宮本さんは、同じ出版社から出版された「トム・ピーターズのマニフェスト」や「ジャック・ウェルチ わが経営」(日経ビジネス人文庫)の翻訳をしていらっしゃる方であるが、こちらと較べると、おそらく、出版社の方針だろう。

==========

banner_04人気ランキング投票! → 

続きを読む »

2005年9月13日 (火)

贅肉を取ろう!

482224317609 ジェームズ・ウォーマック、ダニエル・ジョーンズ(稲垣公夫訳)「リーン・シンキング」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★1/2

アジャイルは、製造業では「リーン」と呼ばれることが多い。ムダがないという意味である。製造業でエンジニアリングに取り組む人がアジャイルの思想を知るには、この本が一番よいと思う。

この本で説かれていることは、アジャイルの基本になっている以下のプロセスである。

まず、最初のステップで、基本に立ち返り、顧客が何に本当の価値を見出しているかを問う。

次のステップで、具体的な製品について価値を生み出す活動を行う一方で、価値を生まない活動を排除する。

次に、デザインや製品が顧客からのプルによって、スムーズかつ急速に広がる流れを作り出す。

そして最後に流れとプルが実行されると、完成度を高めるための改良のサイクルを加速させる。

これをさまざまな事例を見ながら、解説している。

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック!

続きを読む »

2005年9月 2日 (金)

クリティカル・ワーカー

4478312184赤堀広幸「クリティカル・ワーカーの仕事力―ワークスアプリケーションズ問題解決型人材の挑戦」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★

クリティカル・ワーカーという概念について、実際の事例に基づきながら、解説した本。

クリティカル・ワーカーというのは、新たな価値の創造を問題解決によるブレークスルーを中心に実行していく人たち。ソフトウエア開発会社を例にとって説明している。

興味深い点は、ソフトウエア産業の特徴かもしれないが、ボトムアップの価値創造ができる点。一般に価値創造はトップダウンのアプローチが適しているように思えるが、この本を読んでいるとそうでもないと思える。

業種やサービスは違うが、ノードストロームを思い出させる内容である。

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック!

続きを読む »

PMstyle 2024年5月~8月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google