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2007年11月28日 (水)

文章を書いて考える

4798111228 ジェラルド・M・ワインバーグ(伊豆原弓訳)「ワインバーグの文章読本」、翔泳社(2007)

お薦め度:★★★★1/2

(原題:Weinberg on Writing: The Fieldstone Method)

メルマガを発行し始めて6年になる。かなりの頻度で書いているし、最近はブログも書いている。最初のうちは、移動のときとかに予め何を書こうかというあらすじを考えておき、机に座って一気にかくという方法を取っていた。ところが2~3年前から明らかにスタイルが変わってきた。予め考えておくのはテーマくらいで、書きながら考えるようになってきた。そして、最近、感じるのが、書くことによって考えることができるようになった。

普段、あまり文章を書きなれていない人はこの微妙な感覚の違いはぴんとこないかもしれないが、書くことによって考えるというのは、文章をあれこれいじることで頭の整理ができたり、発想ができたりすることができるようになってきた。

さて、前置きが長くなったが、ワインバーグに憧れる人は多いと思う。ソフトウエアサイエンスでは、マネジメントのトム・ピーターズのような存在である。ワインバーグの何がすごいかと改めて考えてみると、やはり、文章である。非常に深い思考を短い文章の中に凝縮する文章術は本当にすごいと思う。若いころからずっとあんな文章が書けないかと思っている。

そのワインバーグの文章術をまとめた本がでた。これだ。とりあえず、レッスンがあるので、やってみた。書いていることをきちんと理解できていると、びっくりするくらい、ワーンバーグみたいな文章が書ける。

ぜひ、読んで、試してみてほしい。

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2007年11月19日 (月)

プロジェクトは大義と共感

4828413510 小池百合子「小池式コンセプト・ノート―プロジェクトは「大義と共感」で決まる!」、ビジネス社(2007)

お薦め度:★★★★

小池百合子議員がクールビスプロジェクトをどのように進めていったかを、コンセプトづくり、「大義と共感」をキーワードに振り返っている。副題になっているとおり、「大義と共感」が問題だったと振り返り、小泉郵政解散の際の刺客騒動についても、同じ発想が成功をもたらしたと振り返る。

クールビスについては、膨大なプロモーション費用が問題になったが、急速に広まっていったのは事実である。仕事がら、顧客企業にいくことは多いが、最初の年は行く先々でネクタイをしたり外したりしていたが、2年目になると、ほとんどネクタイをすることはなくなった。商品のプロモーションと違い、コストをかければ成果に直結するという類の問題ではないように思うので、本当にコンセプトの勝利だといえるだろう。

そのコンセプトを作った舞台裏をかなり詳細に書いているので、興味深いし、また、参考にもなる。

ステークホルダが多く、複雑なプロジェクトの企画やマネジメントを担当している方にはぜひ、読んでほしい。

タイトルから「大義」というは政治ならではの話だと感じる人も少なくないと思う。しかし、大義というのはビジネスでも非常に効果がある。本質的にも、現実的にも、大義のないプロジェクトに協力する人もいないし、特にプロジェクトが苦境に陥ったときには大義は重要である。

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2007年11月12日 (月)

愚かな決定を回避する

4062723506 クリスチャン・モレル(横山 研二訳)「愚かな決定を回避する方法―何故リーダーの判断ミスは起きるのか」、講談社プラスアルファ新書(2005)

お薦め度:★★★★1/2

失敗学という言葉は定着してきて、多くの本が出版されている。マネジメント上の意思決定の失敗ケースを扱った本はあまり多くない。本書はリーダーが犯しやすい意思決定の失敗を取り上げ、そのような失敗を犯す原因やメカニズムを分析した本である。

この本の中に取り上げられている例で比較的、誰にでもわかる例を一つ上げよう。あるグローバル企業のシニアマネジャーがグループ企業向けに経営管理のグローバル研修を立ち上げた。研修の目的やターゲットをあまり明確にしないままで開始したので、「お経のような研修だ」というあまりよくない評価が多く、プログラムの改善をしながら進めていった。そうしているうちに、予算の関係で、グループ外の企業にも研修を提供しようということになった。そのため、研修の内容を多様化したり、カタログを作ったりしているうちに、いつの間にか、グループ内企業向けの提供は付け足しのようになり、受講の希望があっても、定員に余裕がなくて受け入れることができないということが起こるようになってきた。

この問題は組織が意思決定する際にもっとも起こりやすいやっかいな状況の典型であるが、こんな問題はマネジメントの中では山ほどある。

この本では、このような組織の「愚かな決定」を避ける方法を事例分析の形で、行動心理学、組織行動論の視点から分析し、提唱している。この本で扱っている「愚かな意思決定」はプロジェクトのように有期性の強い仕事で起こりやすいものが多いので、プロジェクトマネジャーの人に一読をお勧めしたい。

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2007年9月14日 (金)

箱から脱出できましたか?

439665040x アービンジャー・インスティチュート(門田美鈴訳)「2日で人生が変わる「箱」の法則」、祥伝社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

世界的ベストセラー「自分の小さな箱から脱出する方法」の第2弾。第1弾と4479791779 同じく物語形式で、読者に気付きを与えていく。

今回の話は、前作でカリスマ経営者として登場するルー・ハーバートの20年前にさかのぼる。20年前に「奇跡のセミナー」で家庭生活と職場を変えることができる考え方を学び、自分を変えることができれば、まわりの人も正しい方向へ導くことを実践していくという話。

前作もそうだが、この話は箱というメタファがシンプルであるがゆえに、非常にインパクトがある。箱からでるという例えであるが、このシリーズはどんどん、人間の内面に踏み込んで行き、それを開放していこうという話である。

前作を紹介したときに、実行は難しいという話を何人かの人から聞いた。その人たちに特に、何か含みがあるわけではないが、結局、開放ができるかどうかがリーダーとしての資質ということなのだろうか?また、自分は自分の本性とは違う模様の箱を持っていると言い切った人もいた。これもよくわかる。このあたりの議論になると、人間観に関わる問題であり、宗教的な問題なのかもしれない。

いずれにもても前作より、インパクトがあると思う。前作ではまった人は、必読!

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2007年9月10日 (月)

そのドキュメント、本当に必要ですか?

4839924287 石黒 由紀「ドキュメントハックス-書かない技術~ムダな文書を作り方からカイゼンする」、毎日コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★★

GTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)本として作られた本のようだが、ドキュメントを書きながら仕事を進めることに関して、常識の枠を超えた本質的な指摘が多く、たいへん、「ため」になる本。

著者が指摘しているように、ドキュメントは何が必要かという点から必要性の分析がされ、作成されている。しかし、その作成プロセスに注目すれば不要な(他のコミュニケーションで代替できる)ドキュメントは多く、そこをうまく組み立てていることにより、「ドキュメントによるコミュニケーション」として本当に必要なドキュメントだけを作成するようにできる。それによって、作成するドキュメントの質も上がるし、情報共有の質もあがるというのがこの本の主張。特に、2章で、品質を上げるためにゴール共有をするという視点から、ドキュメントの必要性を分析している部分は共感できる。

デジタル時代の特徴のひとつは間違いなく、ドキュメントの量である。バーチャル組織、多様な人間の共同作業などで、間違いなく、ドキュメントがストレスになっている。この本はそのようなスタイルの仕事をしている人の救世主ではないかと思う。

GTD本としてTips集的な書き方になっていると感じるが、ぜひ、続編としてコミュニケーション全体を睨んだ体系的な本を書いてほしい。

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2007年8月22日 (水)

アイディアを実行に移す思考法

4887595751_2 ポール・スローン(ディスカバー・クリエイティブ訳)「イノベーション・シンキング」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★1/2

著者のポール・スローンは日本では水平思考のゲーム学習書「ウミガメのスープシリーズで著名なコンサルタントだ。

4767803322 ポール・スローン、デス・マクヘール(クリストファー・ルイス訳)「ポール・スローンのウミガメのスープ―水平思考推理ゲーム」、エクスナレッジ(2004)

4767804647 ポール・スローン、デス・マクヘール(大須賀典子訳)「ウミガメのスープ(2)~腕を送る男」、エクスナレッジ(2005)

4767805112 ポール・スローン、デス・マクヘール(大須賀典子訳)「ウミガメのスープ(3)~札束を燃やす強盗」、エクスナレッジ(2006)

4767805708 ポール・スローン、デス・マクヘール(西尾 香猫訳)「ウミガメのスープ(4)~借金を踏み倒せ」、エクスナレッジ(2007)

水平思考は論理的な段階を踏むことにより、問題に対する新しい見方を発見することで、日本語でいえば、視野が広いといわれる人が身に付けているような思考方法だ。ポール・スローンのウミガメのスープはこれをドリル形式で身につけようとするシリーズで、自分に必要だと思う人はぜひ取り組んで見られるとよい。

さて、そのポール・スローンが新機軸として提唱しているのが、イノベーション・シンキングである。単純にいえば、水平思考を活用することによって、新しいアイディアを採用し、実行に移していく方法がイノベーションシンキングである。

この本では、まず、パート1で、イノベーションシンキングのために必要な水平思考のスキルを10個に整理している。以下の10個だ。そして、それぞれについて、そのようなスキルを養うためのゲームを示している。

スキル1 前提を疑う
スキル2 探り出す質問をする
スキル3 見方を変える
スキル4 奇抜な組み合わせをしてみる
スキル5 アイデアを採用し、応用し、さらに改良する
スキル6 ルールを変える
スキル7 アイデアの量を増やす
スキル8 試してみて、評価する
スキル9 失敗を歓迎する
スキル10 チームを活用する

次にパート2では、イノベーションシンキングを行うことのできるチーム構築のためにビジョンを描き、伝える方法を具体的に述べている。また、その仮定でありがちな誤ちについて指摘し、その解消方法を示している。

1冊よめば、イノベーション・シンキングのトレーニングができるような構成になっているので、イノベーションの必要性を感じている人にはお奨めした一冊だ。

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2007年8月17日 (金)

ホワイトカラーの生産性マネジメントの切り札

4382055717 坂本裕司「ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント―HPTの実践マニュアル」、産業能率大学出版部(2007)

お奨め度:★★★★

経営コンサルタントである著者が、MBA時代の経験、コンサルティングの経験、諸先輩から学んだ経験を集大成し、独自に纏め上げたマネジメント技術HPT(Human Performance Technology)を開示した一冊。

IEのホワイトカラー版というイメージだと言っているが、プロジェクトマネジメントを業務に適用するとこんな感じになるという意味で興味深い。もちろん、ツールは著者のオリジナリティにあふれるものだ。

HPTの中核概念は、PND(Performance Next Door)という概念にあるが、この概念は、現状のパフォーマンスレベルで達成可能なレベルを超える目標を掲げ、ビジョンを明確にし、目標達成のために戦略を練り、組織機能を明確にし、プロセスを改善することによりその目標を達成しようとする考え方。そのために考案されたさまざまなツールが紹介されている。

特徴的であるのは、IEを意識しているだけあり、非常にツールが現場的であること。すぐにでも使えるようなレベルのツールである。非常に体系的に整理されている。

フレームワークとしては少し複雑すぎるきらいがある。加えて本の書き方が簡潔であるため、実践のパートはIEだとか、プロジェクトマネジメントのバックグランドがない人が読むと理解に苦労する部分があるのではないかとも思う。

むしろ、本として読まずに、ツールを中心に追いかけていくとよいかもしれない。

また、HTPの実践を行うに当たってトップとメンバーの役割についても明確にし、必要なスキルを解説している。この点も含めて実践的であるので、ホワイトカラーの方にはぜひお奨めしたい一冊である。

2007年8月 6日 (月)

日本初のリカバリーマネジメント本

4822262111 長尾清一「問題プロジェクトの火消し術―究極のプロジェクト・コントロール」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

長尾清一さんの書かれた

447837449x09lzzzzzzz先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

は今でも、このブログで最も支持されているプロジェクトマネジメント本である。その長尾さんの待望の新著が出版された。リカバリーマネジメントをテーマに書かれたこの本だ。

全般的には、リカバリーマネジメントを問題解決だと捉え、単に思考するだけではなく、問題解決を実行するためにどのような行動が必要かを具体的に、かつ体系的に書かれた本で、前著に劣らず、非常によい本である。

ただ、前著もそうだったが、書かれていることを理解できたとしても、実践するのは大変に難しいと思う。本としての書き方が悪いのではない。ましてや、内容がまずいわけではない。書き方は非常に丁寧であり、これでもかと思うくらい実践的に書かれている。

難しいのだ。それでも前著は、プロジェクトマネジャーとして一定の資質を持つ人であればかなりの部分は訓練や経験をつめばできると思う。その意味でも非常によい内容だと思った。プロジェクトマネジメントは難しいのだ。安直にできるものではない。

今回の本に書かれていることは半分できればよいのではないかと思う内容だ。そのくらい、リカバリーマネジメントというのは難しい。この本を読んで、何ができればトラブルに対処できるようになるかを知り、精進をして欲しい。

2007年8月 1日 (水)

自分で考え、行動する力が身につく

4478000492 渡辺 健介「世界一やさしい問題解決の授業」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

マッキンゼーで仕事をし、ハーバードビジネススクールで学んだ渡辺健介さんが、中高生にもわかるというコンセプトで書いた問題解決の本。

マッキンゼー流の数々の問題解決フレームワークを、中学生の行動などを中心に説明している。このため、とりあえず、論理的な思考だけできれば、読める。

ただし、誰でも読めるかというとちょっと違うように思う。例えば、「仮説」だとかは、かなり、奥のあるコンセプトがあるので、やはり、内容的には中高生には難しいように思う。少なくとも、さっと読み流して何か得るものがあるような類の本ではない。

それは、そうとし、社会人が真剣に問題解決の勉強をしたいときに読む本としてはたいへん、優れた本である。コンパクトにまとめられているし、すべてがわかりやすい例で示されている。

そして、フレームについては図できちんとした形で説明されている。

問題解決法の本は分厚いものが多いが、これは理論と例題を組み合わせているからだ。この本のように理論そのものの説明を例を使って行うことでかなりコンパクトに収まるということでは、慧眼の一冊である。

2007年7月13日 (金)

改善を科学する

4820744372 オフィス業務改善研究会「業務改善がよくわかる本―すぐに実行できるオフィス業務の改善アイディア」、日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007)

お奨め度:★★★★1/2

オフィスワークの業務改善の視点、方法、スキルをまとめた1冊。

業務改善を以下の8つのアクションにまとめている。

1.テーマの設定する
2-1.現状把握・監察する
2-2.現状把握・取材する
2-3.現状把握・図式化する
2-4.現状把握・定量化を試みる
3.問題点をまとめる
4.問題を掘り下げ、原因を探る
5.改善方法を決める
6.改善策を決める
7.改善を実行する
8.改善レポートを作成する

そして、それぞれのついて、具体的な進め方を解説している。

その上で、36のベストプラクティスを提示して、それぞれの事例でどのような方法で改善を進めて行ったかを述べている。

いままでありそうでなかった本だ。

戦略経営の3つのイネーブラは人材とITと業務改善である。

前の2つがいろいろと体系化されているのに比較すると、改善に関する体系的なアプローチの本はなかったし、本以前に、改善はどろどろとやるものだと考えられていた。一方で、問題解決の本を読むと、結構な数の例題が改善を取り上げている。ずっと、こんな本が出ないかなと思っていたが、やっと出たという感じだ。

特に、マネジャーの方は、ひとごとだと思わず、一度、読んでみて欲しい。人材育成の方向性のヒントになるだろう。

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