オペレーションマネジメント Feed

2006年11月16日 (木)

トヨタ方式の真髄を知る一冊

4492555722_01__aa240_sclzzzzzzz_v3602165_1 若松 義人「トヨタ式ならこう解決する!―思考から仕事を変えるケースブック」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

トヨタ方式を40ケース以上の他社の問題解決に適用した事例を、コンパクトにまとめた一冊である。

僕は若松さんの著作は好きなので、だいたい読んでいる。このブログでも何冊か紹介している。

言い方は悪いが、若松氏の著作を読んでいても、トヨタだからという思いが拭い去れない部分があった(エピソード的に他社適用の話が入っている本も少なくないが、、)。実際のところ、これはトヨタだからできるというのは少なくないと思っていた。

しかし、この一冊を読んで、むしろ、他社事例により、トヨタ方式の本質が分かったような気がした。特に、書き方が、自社に適用してみて、なぜトヨタ方式がよいかを分析するといった書き方になっているので、腑に落ちる。

同じ感触を持った本にトヨタウエイがあるが、トヨタウエイよりはこの本の方が腑に落ちる。その意味で貴重な本である。

【このブログで紹介している若松氏の他の本】

若松義人「最強トヨタの7つの習慣―なぜ「すごい工夫」が「普通」にできるのか

【トヨタウエイ】

ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編

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2006年10月27日 (金)

イノベーションマネジメントの全てが分かる一冊

456965546701 大浦勇三「イノベーション・ノート―会社が劇的に変わる! 」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

イノベーションマネジメントのポイント(論点)が実に要領よくまとめられた1冊。以下の6つの視点にまとめられている。

・事業戦略は適切か

・実現に向けた仕組み/プロセスは明確か

・必要なコンテンツ(情報・知識・知恵)は十分か

・推進体制は必要か

・人材教育/人材育成は万全か

・外部連携に死角はないか

それぞれの項目につき、さらに5つの中項目にブレークダウンし、それぞれの中項目に対して、5項目の小項目を、1項目1ページで、図表を駆使して視覚的に理解できるように実にうまくまとめられている。また、各項目とも8行ほどの解説があるが、この解説も分かりやすい。

この本を読んで、まず、最初に思いついた用途は、自社のイノベーション能力のチェックである。政府が政策目標にイノベーションを掲げ、担当大臣を置いた。また、経団連でも「イノベート日本」というキャッチフレーズを掲げた。

イノベーションへの関心の高まりは否が応でも増してくるだろう。そんなときに、とりあえず、何か一冊本を読んで、マネジメントとして何をすればよいかを把握したいときに、絶好の一冊だ。

ただ、中は、いわゆる図解的な入門書ではない。図解であるが、内容はかなり本格的なイノベーションマネジメントの解説書であるので、それなりの覚悟をして読む必要があると思うし、自分の関心の持てた項目については、他に参考書を探して深堀する必要があると思う。

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2006年10月 1日 (日)

超現場主義で商売繁盛

4774507601 上野和夫「人事のプロが書いた商売繁盛学 ”超現場主義”のすすめ」、現代書林(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上野氏は西武百貨店人事部で30年のキャリアを積まれた方で、その上野氏が小売業の「儲かるサービス現場」にこだわって書き上げた一冊である。事例などは小売業を事例に書いてあるが、顧客接点のあるビジネスを展開している企業においては、非常に学ぶところの多い本である。

この本では顧客接点で高い付加価値を生み出す人材をたくさん育成し、顧客から「ありがとう」といわれるプロのサービスを提供する企業をサービスカンパニーと定義し、サービスカンパニーを目指すために必要な人材育成、人事制度について提案されている。

第1章ではサービスカンパニーを作るための超現場主義10か条が提案されている。これが非常に興味深い

1)体制作りの目的は顧客価値創造の一点に向けられている

2)そのためにもっとも効果的で効率的な仕事の仕組みをくつくること

3)顧客価値創造に直接関係しない仕事は徹底的にそぎ落とすこと

4)個々人の能力を最大限発揮させるための仕組みをつくりあげること

5)個人には自己責任の原則が確立していること

(あと、5つあります)

第2章では、プロフェッショナルについて論じられている。西武、プロフェッショナルというと常に出てくるのが、伝説のシューフィッター久保田美智子さんであるが、彼女のプロフェッショナル論が社内研修の内容をベースにして紹介されている。今まで雑誌などで何度が読んだが、よく分からなかった部分が良くわかった。

小売業のプロフェッショナル論というのはITなどの専門性の高いプロフェッショナル論とは異なる部分が多いと思っていたが、この本を読んでそうではないことが明確になり、この本の主張そのものが、どんな分野でも通用するものだという認識に至った。

実は、この本を読む2週間くらいまえに、ある大手IT企業の事業部長さんと話をする機会があり、顧客からの要件がうまく聞きだせない、どうすればよいだろうかという相談を受けた。その際に、小難しい話(要件定義の方法論)はそれはそれで必要だが、もっと根本的に、人間同士が話をするのだから、その場でどういう態度を取るかは極めて重要で、この部分にサービス業や小売業からもっとベタなベストプラクティスを引っ張ってきたほうがいいのではないかという持論を展開したところ、露骨にいやな顔をされた。この部長さんにぜひ、お奨めしたい一冊である。

後半は人事制度について議論されている。前半の主張に整合する形の人事制度の提案であり、なるほどと納得できる内容である。

2005年12月11日 (日)

現場力のエッセンス

477710278509lzzzzzzz 遠藤功「図解 現場力―「強い企業」には「強い現場」が存在する」、ゴマブックス(2005)

お奨め度:★★★1/2

今年のキーワードの一つは「現場力」であろう。この分野で、古くから独自の視点で体系的な提唱をされてきたのが遠藤功さんである。この分野は欧米では、オペレーションマネジメントという言い方をされているが、日本では、「現場」と呼ばれている。

遠藤功さんのオペレーションマネジメントの本はとても読みやすく、斬新な視点でマネジメントについて書かれているものが多い。

このブログでも何冊か紹介している。

 見える化 https://mat.lekumo.biz/books/2005/10/post_7830.html

 現場力を鍛える https://mat.lekumo.biz/books/2005/04/post_f7bd.html

などである。これらの本は、オペレーションマネジメントについて体系的に独自の視点でかかれている類のない本なので、ぜひ、読んでほしい本である。

が、とりあえず、遠藤功さんの本を何か一冊読んでみようという向きには、この本がお奨め。遠藤さんのエッセンスの部分が図解で読みやすく書かれている。

現場力の本質

453403989109lzzzzzzz 酒見和行「「段違い品質」を実現する現場力」、日本実業出版社(2005)

お奨め度:★★★1/2

著者のホンダでの35年間の経験をまとまた本。

本質の理解、ものの見方・考え方、こころがまえ、改善推進の基本、人の育て方等々、の基本セオリーと、それを現実化する実践ノウハウなどを述べている。

書かれていることは本質的にはトヨタウェイと同じであるが、トヨタはシステムが出来上がっているので、それに隠れで本質がぼやけてしまっている点が多い。多くのトヨタOBがその部分を抉り出すような本を書いているが、あまりすっきりしない。

その点、この本に書かれていることは、すっきりしており、品質やコストの作りこみの本質がよくわかる。

現場改革は難しい

447845048x09lzzzzzzz 黒瀬邦夫(野中郁次郎監修)「富士通の知的「現場」改革」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★

野中先生の提唱されるナレッジマネジメントは、現場の改革が必要である。最近、「現場力」というのが経営のキーワードになっている節がある。背景には、「組織学習」があるようだが、現場を変えるには気の遠くなるような時間が必要である。

米国でCMMレベル5に認定されているIT企業の役員が、CMMレベル5に認定されたが、まだ、現場が変わったとは思っていないといっていた。トヨタのような現場を作るには、まだまだ、継続的な取り組みが必要だとしみじみといっていた。そのくらい、現場を変えるには時間と根気に対するトップマネジメントのコミットメントが必要である。

この本は富士通が10年近く取り組んでいるナレッジマネジメントによる現場変革の活動を紹介した本である。トップが十分に野中流のナレッジマネジメントを理解し、根気よく取り組んでいる様子がよくわかる。

ただ、読み進むうちに、これだけの時間をかけて、ここまでしか到達しないのかという思いが強くなった。富士通の取り組みがまずいということではなく、これが上に述べた難しさであろう。自分の中堅企業のコンサルタントとしての経験に照らし合わせると、これだけの大きな企業が10年でこれだけ変わったと見るべきかもしれないという感もある。

現場改革の難しさを知る上では、非常に参考になる1冊である。ただし、かなり、広報的な書き方をし、生々しさを除いてあるので、その辺りは想像しながら読む必要がある。

2005年4月24日 (日)

現場力を鍛える

4492531718 遠藤功「現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件」、東洋経済新報社(2004)

お奨め度:★★★1/2

遠藤氏は「現場」を体系的に語れる貴重な存在である。この本も期待にたがわない。

この本の中で、現場力について

企業のオペレーションを担う現場が持つ組織能力のこと。具体的には、現場自らが問題を発見し、解決する能力を指す。この組織能力には企業間格差があり、現場力の高い企業は持続力のある競争力を確保している

という定義をされている。この能力が弱くなってきているというのがこの本の背景であり、現場力を強くするための7つの条件が説明されている。

現場力を鍛えた先に待っているものは、オペレーションエクセレンスである。遠藤氏はオペレーションエクセレンスについて

 MBAオペレーション戦略

の中でかなり突っ込んだ議論をしているので、こちらも併せて読んでみるとよいだろう。

オペレーションエクセレンスと現場力は、矛盾している部分もある。そのあたりをきちんと整理しながら読んでいく必要がある。

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