マーケティング Feed

2007年1月12日 (金)

マーケティングにおけるギャップに悩む人必読

4820118455_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983141 石川昭、辻本 篤編「新製品・新事業開発の創造的マーケティング―開発情報探索のマネジメント」、生産性出版(2006)

お奨め度:★★★★

編著であるが、研究開発から製品開発、事業開発までバランスよくまとめられており、初心者が読むにも適した製品開発、事業開発のテキスト。

第2章では、戦略実行のための研究開発のあり方について解説されている。特に、マーケティングのさまざまな活動と研究開発活動をどのように関係付けていくかを丁寧に解説している。

第3章では、研究開発における意思決定について解説されている。テーマの選定および、継続中止などの評価と判断をどのように行うかを解説している。

第4章では、マーケティングにおける情報活動について解説している。

第5章では、研究開発活動における情報活動について解説している。

6章以下は、これらの解説を事例によって解説している。「からだ巡礼(TM)」、Webリコメンデーションシステム「教えて!家電」、ロボットの開発などの特徴のある事例を取り上げて解説しているので、とても面白い。

最後に9章では最近注目されている、クレームベースの製品開発について解説している。

経営戦略と研究開発、研究開発と製品開発のギャップに悩んでいる人にはとても参考になる一冊である。

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2007年1月10日 (水)

ERP、CRM、SCMと並ぶEMM

4901234919_01__aa240_sclzzzzzzz_v3496859デイブ・サットン、トム・クライン(高宮治、千葉尚志、博報堂ブランドソリューションマーケティングセンター訳)「利益を創出する統合マーケティング・マネジメント」、英治出版(2006) 

お奨め度:★★★★1/2

マーケティングという概念は分かりにくい部分があるが、それは、製品を企画し、開発し、販売するまでの一連の活動すべてであるにも関わらず、それらを体系的に取り扱う手法がないためである。

このため、ステージ間の連携においては、ヒューリスティック頼りの側面が強く、これがマーケティングはアートとサイエンスが混在しているといわれる一因になっている。

この本で提案されているEMM(エンタープライズ・マーケティング・マネジメント)は、これらの活動を統合的に扱うために考えられた手法である。統合的に使おうとするために、マーケティングのさまざまなステージにおける活動はすべて必然性と論理性が求められるようになり、これにより、マーケティングはサイエンスになる。

コトラーはこの本で紹介されているサットンとクラインの仕事を、「ERP、CRM、SCMと並ぶ効果効率の高い収益力のある事業運営のプラットホーム構成要素のひとつ」だと称している。

製品開発に関わる人は必読の一冊である。

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2006年12月29日 (金)

マーケターの日常

4820744062_01__aa240_sclzzzzzzz_v4840508 末吉孝生「マーケターの仕事術〔入門編〕」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

マーケターの書いたマーケターのコンピテンシー。 

マーケターの業務シーンを想定し、それぞれのシーンで役立つ道具を「キット」としてまとめている。うまく構造化されているので、実践的である。

キットには

「チャート」:全体図

「ノウハウ」:実務上のノウハウ(手順、詳細)

「ステップアップ」:事例とトレンド

「ブック」:関連する書籍、資料

という4つの要素から構成されている。

シーンはマーケティングプロセスに沿って25準備されている(目次参照)。

解説スタイルは基本的なことをエッジを効かせて書いてある。なので読んでいて面白い。

また、この手のコンピテンシー本にありがちな、コンピテンシーの羅列という感じがない。一つ一つの道具に存在理由があることを意識し、その理由を一言かきくわえてあるかだらと思う。

たぶん、これが、マーケター末吉孝生の流儀なのだろう。

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2006年11月17日 (金)

情けは人のためならず

4901234951_01__aa240_sclzzzzzzz_v3752032 グレン・アーバン(スカイライトコンサルティング監修、山岡隆志訳)「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」、英治出版(2006)

お奨め度:★★★★

アドボカシーというのは聞き慣れない言葉だが、辞書を引いてみるとadovocate=支持する、提唱するといった意味らしい。

要するに、むやみやたらと自社の商品を押し付けないで、顧客の立場に立ち、本当に顧客に役立つ商品を、それが仮に競合他社の商品であっても薦めていく。その中で信頼関係を構築し、長期的なスパンで収益を上げていこうという考え方のマーケティングのことである。

この本では、アドボカシーをプル・プッシュ、リレーションシップ第3のマーケティング戦略と位置づけ、企業は顧客や見込み客に対してあらゆる情報を包み隠さず提供し、顧客が最高の製品を見つけられるようにアドバイスをする関係を想定している。

このような背景にはインターネットの普及により「隠したところで顧客はいずれすべてを知り尽くす」という現実があると想定しているのだ。

ただし、このプロセスは、企業が一方的に顧客にアドバイスを与えるプロセスではなく、顧客との対話により顧客を支援していくプロセスであるとしている。言い換えると、顧客は自社の製品を買わないまでも、自社の製品を知り尽くす。そして、その情報を顧客が別の顧客に推薦してくれるという関係を構築しようという考え方である。

この本を読んでなるほどと思った。僕の会社は小さいのでこの手のことがよくあるのだ。つまり、お客様から相談を受けたときに、自社では最適解が提供できないというときには、競合でもいいので、最適解を提供できそうな企業を紹介をする。場合によっては本当に紹介の労をとることもある。そんなお客様に、弊社に適したお客様を紹介してもらうことが結構ある。

ロジックが分かっていることと、実行できることは別だというマーケティング手法の典型かもしれないが、だからこそ、実行できるところは強くなれるかもしれない。

2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

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2006年10月21日 (土)

偉大なる経営論

B000ion7te01 Harvard Business Review2006年 11月号

 【創刊30周年記念号】偉大なる経営論

お奨め度:★★★★★

ハーバードビジネスレビューの創刊30周年記念号。30年間に発表された名論文の中から30本が採録されている。下にリストがあるので見てほしい。経営学にまったく縁のない人でも4~5人くらいは知っている人が多いのではないかと思う。

ほとんどの論文が実践の中で使われるようになってきた概念を示したものだ。これはすごいことだと思う。かつ、この2~30年の間に新しく生まれたマネジメント手法はほぼ、網羅されている。

つまり、そのくらいハーバードビジネスレビューは実務家のマネジメントに貢献している学術論文誌である。

マネジャーという肩書きのある人、あるいは、将来マネジャーを目指している人、いずれも、この記念号はぜひ持っておき、通勤の行き帰りにでも読んでほしい。

最後に神戸大学の加護野先生の「マネジメントの古典に触れる」という提言がある。この提言も味がある。

ちなみに、東京で本屋を探したが、最初の3件は売り切れだった。よく売れているようだ。

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2006年10月 6日 (金)

ロングテールの法則

415208761701 クリス アンダーソン(篠森ゆりこ訳)「ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」、早川書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

80:20の法則というのがある。

最近、格差でよく話題になるが、イタリアの経済学者・社会学者、ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が、欧州各国や米国の統計データに基づいて統計的に所得配分の研究を行い、一部の人たちに大部分の所得が配分されていることを発見した。

この発見が後に、いろいろな人たちの手によって、さまざまな自然現象に当てはまることが指摘し、「不良全体の80%は、20%の原因に由来する」「売上の80%は、全商品の20%が作る」「売上の80%は、全顧客の20%によるものである」といったルールが生み出されていった。これらは、80:20の法則と呼ばれる。

ついでに、米国の品質管理のコンサルタントジョセフ・M・ジュラン(Dr. Joseph Moses Juran )は、こうした普遍的現象を品質管理に適用することを提唱し、品質管理の分野では「パレート原則」として有名である。

さて、こののテーマ、ロングテールは、ネットワーク経済の市場においては、80:20が必ずしも成り立たないことを指摘した話題の本である。著者のアンダーソンはWIREDの編集長で、もともと、WIREDに書いた記事が話題を呼び、書籍として出版されたという経緯がある。

この本は次のような事例の紹介で始まる。ジュークボックスに入っている曲1万曲の中で、3ヶ月に最低一回はかけられる曲が何%あるかという話。80:20の法則だと、20%ということになるのだが、なんと、この答えは98%だそうだ。

ここからiPodのダウンロードサービスが同じような傾向を持つことは容易に想像できる。この本では、このような現象を統計学のロングテール分布になぞらえてロングテールと呼び、今、さまざまな分野で、このような現象が起こっていることを実証している。

実際に、自分自身の消費行動を見てもこの傾向は強くなっている。日用雑貨のようなものでも、手に入るもので済ませようという考え方から、楽天を検索すればどこかで手に入る(多少、送料はかかるが)という感覚が強くなってきている。

この本は、このようなロングテール商品を起点にして、今後、ビジネスが如何に変容していくかを論じている。Web2.0などの背景にはこのような思想があり、これからのビジネス環境を理解する上では、必読の1冊だといえる。

最後の章で、ロングテールのビジネスの成功法則が書かれている。

法則1:在庫は外注かデジタル

法則2:顧客に仕事をしてもらう

法則3:流通経路を広げる

法則4:消費形態を増やす

法則5:価格を変動させる

法則6:情報を公開する

法則7:どんな商品も切り捨てない

法則8:市場を観察する

法則9:無料提供を行う

如何だろうか?成功しているネットビジネスプレイヤーでは、もはや、あまり前になっていることが並んでいる。

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2006年10月 5日 (木)

完璧な顧客と出会う

447850268401 ジャン・ストリンガー、ステーシー・ホール(牧野真監訳)「顧客は追いかけるな!―48時間で顧客が集まるシンクロニシティの法則」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

原題は Attracting Perfect Customers。自分にとってベストマッチの「完璧な顧客」を探し、その顧客に最大にコミットメントをすることにより、自分のビジネスを成功させる方法論を具体的に説いた本。

著者は「意味のある偶然の一致」をシンクロニティと呼び、シンクロニティは創り出すことができるとしている。その方法として6つの行動原則を上げている。

原則1:自分の使命に忠実になる

原則2:引き寄せたい顧客の姿を明確にする

原則3:自分のビジネスを高く評価する

原則4:競争ではなく、協力を選択する

原則5:顧客に忠実で役立つ存在になる

原則6:感謝の気持ちを分かち合う

この本では、この6つの原則を実行するための具体的な方法を教えてくれている。知りたい人は、読んでみよう。

日本の企業も遅ればせながら、右肩上がりの経営から脱却し、収益性を重んじる経営スタイルが増えてきた。そのような中で、成功している企業は要するにこういうことを既にやっているのだ。

あなたも、ぜひ!

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2006年9月 4日 (月)

顧客品質のバイブル

447837520801 クリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世(蓮見南海男訳)「J.D.パワー 顧客満足のすべて」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

J.D.パワー・アンド・アソシエイツは企業に関する膨大な知識を蓄積してきた顧客満足度調査の世界的機関である。その調査機関が満を持したという感じで出してきた本。

内容的には、顧客満足度と企業の収益性の関係、顧客満足度に影響する要因などを明らかにし、その調査に基づいて、顧客満足度の向上の方策について、極めて具体的な議論を重ねている。

特に品質を顧客が決めるという主張は重要である。

実例では、顧客満足度を高め、収益と顧客の支持、両方を獲得したさまざまな企業の例が紹介されている。

この本の興味深い点は、顧客満足度が顧客ロイヤリティに直結するわけではないことを多くの証拠に基づいて示している点。

マーケティング関係者もそうだが、品質マネジャーに読んでほしい本だ。

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2006年7月31日 (月)

なぜ、ウィスパーに羽根がはえたのか

492511277501 和田浩子「すべては、消費者のために。―P&Gのマーケティングで学んだこと。」、トランスワールドジャパン(2006)

お奨め度:★★★★

和田さんはおそらく、日本のビジネスウーマンで最も有名な方の一人だろう。P&Gのマーケティング部門で活躍。「ウィスパー」に羽根をはやしたブランド戦略の実行で一躍有名になった。ミス・ウィスパーと呼ばれていたとか。その後、2004年のフォーチューンで世界で一番パワフルなビジネスウーマン50傑に選ばれ、世界中で有名になった。

誰にでも等しくチャンスがあることを伝えるために乗っているというまっ白なポルシェでも有名。

という和田浩子さんの自伝的な書籍。マーケティングを中心に、ブランドマネジメントのノウハウをP&Gの経験を時間を追って書かれている。

P&Gは言わずと知れた高品質の経営をしている企業であるが、この本を読んでいると、製品力がブランドを作るという王道を歩んでいることが分かる。その意味で、ブランドマネジメントでありながら、製品マネジメントの色合いが濃い。また、科学的にマネジメントされている点も印象的である。

同じ日用雑貨のビジネスでも、日本のメーカとはテーストの異なるところがあり、その辺りも興味深い部分である。

マネジメントに突拍子もないものもあまりない。その意味で、1冊そのまま、ブランドマネジメントやあるいはもう少し広くマーケティングの教科書になるような本でもある。

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