リーダーシップ Feed

2007年7月27日 (金)

フロネシス(賢慮)型リーダーシップ

4757121970 野中郁次郎、紺野登「美徳の経営」、NTT出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

卓越した企業が、美しさとしたたかさを併せ持つ。このような企業をフロネシス(賢慮)という概念を中心に、作り上げていこうと説く一冊。

美徳の経営とは

「共通善を念頭に社会共同体の知を生かす経営」

であるとこの本では述べられている。まさに、米国型の経営に対する強烈なアンチテーゼである。非常に興味深く、また、この本の説得力を増しているのは、たくさんの事例が挙げられていることだ。

英国のコオペラティブ・バンク、バングラデシュのグラミン銀行、クラレや資生堂、財閥三井はどが、賢慮に基づく経営の例として取り上げられ、さらには、それらの企業が賢慮をどのように育成しているかを紹介している。

そして、これを人間に対するイノベーションだと位置づけており、そこに、著者たちの取り組んでいる「暗黙知」や「デザイン」が位置づけられる。そして、これから卓越した企業になっていくには不可欠であることを述べている。この中で、不祥事で有名になった企業をチクリとやっているのも見逃せない。

美徳とは何かという話だが、簡単にいえば、共通善によりもたらされるもので、CSRに通じていく概念である。その点でも、米国流の経営に対するアンチテーゼとして説得力のある話である。

昨年、小泉政権が終わり、安部政権が始まったときに打ち出したメッセージは「美しい」と「イノベーション」であった。このメッセージで漠然と思い浮かべたのがこの本にあるような内容だ。

若干迷走気味であるが、ぜひ、産業施策においても、ぜひ、このような方向性を見せてほしいものだ。そのヒントになる本である。

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2007年7月20日 (金)

マネジメントチームの教科書

4393641205 デーヴィッド・A. ナドラー、ジャネット・L. スペンサー(斎藤彰悟、平野和子訳)「エグゼクティヴ・チーム」、春秋社(1999)

お奨め度:★★★★

本書が出版された頃にタイトルに興味を持ち、読んだがイマイチ、ピンとこなかった。

デルタ・コンサルティングというコンサルティング会社の提唱するマネジメントスタイルなのだが、日本で考えてみれば役員会の運営のようなイメージが残っていたのだが、最近、目的があってもう一度、読み直したところ、ひょっとすると非常によい本でないかと思い当たり、ブログで紹介することにした。

この概念の背景にはビジネス環境がかつてなく複雑化し、変化することがある。このような中で、米国の企業ではエグゼクティブ・チームを結成して、CEOはそのチームのリーダシップを発揮する形に,変化してきているというというのが本書の主張だ。

そして、そのために必要なチームのデザイン、コンフリクトマネジメント、チームワーク、チーム運用についてかなり体系的、かつ、行動論的に書かれている。

日本という国は不思議な国で、強烈なリーダーシップがないにも関わらず、チームで何かをするということも上手ではない。ひょっとすると、これは表裏一体なのかもしれないが、いずれにしても、このような環境で考えれば冒頭に述べたように、経営チームというのは役員会のイメージなのだが、日本でも日産のゴーンが注目されて以来、プロジェクト的(有期的)ではあるにしろ、このような考え方のトップマネジメントが行われるようになってきていると思う。

ただ、それは変革場面であって、日常的に行われるのはこれからだと思うが、プロジェクトマネジメントではこのようなマネジメントが日常的に行われだしている。

そのような目でこの本を読んでみると、これはトップマネジメントに限ったことではなく、プロジェクトマネジメントや組織マネジメントチームの運営に対しても適用できるスキームであることがわかった。

その意味で、ミドルマネジャーや、プログラムマネジャーの方にぜひ読んでみてほしい。

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2007年7月13日 (金)

改善を科学する

4820744372 オフィス業務改善研究会「業務改善がよくわかる本―すぐに実行できるオフィス業務の改善アイディア」、日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007)

お奨め度:★★★★1/2

オフィスワークの業務改善の視点、方法、スキルをまとめた1冊。

業務改善を以下の8つのアクションにまとめている。

1.テーマの設定する
2-1.現状把握・監察する
2-2.現状把握・取材する
2-3.現状把握・図式化する
2-4.現状把握・定量化を試みる
3.問題点をまとめる
4.問題を掘り下げ、原因を探る
5.改善方法を決める
6.改善策を決める
7.改善を実行する
8.改善レポートを作成する

そして、それぞれのついて、具体的な進め方を解説している。

その上で、36のベストプラクティスを提示して、それぞれの事例でどのような方法で改善を進めて行ったかを述べている。

いままでありそうでなかった本だ。

戦略経営の3つのイネーブラは人材とITと業務改善である。

前の2つがいろいろと体系化されているのに比較すると、改善に関する体系的なアプローチの本はなかったし、本以前に、改善はどろどろとやるものだと考えられていた。一方で、問題解決の本を読むと、結構な数の例題が改善を取り上げている。ずっと、こんな本が出ないかなと思っていたが、やっと出たという感じだ。

特に、マネジャーの方は、ひとごとだと思わず、一度、読んでみて欲しい。人材育成の方向性のヒントになるだろう。

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2007年7月11日 (水)

幻の組織構築論

4047100919 山本七平「日本人と組織」、角川書店(2007)

お奨め度:★★★★1/2

日本人論の金字塔だといわれる「日本人とユダヤ人」などの著書で多くの読者を持つばかりでなく、日本型組織論、日本型経営など、多くの分野での研究に多大な影響を与えている日本研究者山本七平先生の幻の組織論といわれる原稿がついに書籍化された。

この本は70年代にかかれたものである。従って、書かれていることについてはある程度、結論が出ていることも多い。その中にはもちろん、現実となっていない論考もあるが、重要なところでは恐ろしく当たっている。

組織のコミットメントに宗教(神)の議論を持ち込み、日本人の組織観の特殊性を説明したのが山本先生である。この本に書かれている大枠の話は他の研究者や評論家によって引用されることが多く、有名なものが多いのだが、この本を読むと、その背景の考え方が非常によくわかる。

この10年くらい、日本の企業も山本先生の描かれた日本型組織から徐々に外れつつあるが、そこに大きな軋みが生じつつある。なぜ、軋みが生じるか、どのように改革すればよいのかを明確に示されている本書は、このような時代であるからこそ、一読の価値があるといえよう。

マネジメントに関わるすべての人に一読することをお奨めしたい。

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2007年7月 9日 (月)

プロフェッショナルを育てる、プロフェッショナルに成長する

4495375814 松尾睦「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

人はいかに経験から学び、プロフェッショナルへと成長するのかという命題に対して、経験に焦点を当てて、学習メカニズムを明確にしようとした本。

本書は、人材育成の7割は経験によるものだとし、その経験をどのように成長に結び付けていくかが人材育成のポイントになると説いている。結び付けの視座として、組織活動、マーケティング活動など、現実の経営活動の中で学習が機能するかを説いている。その意味で、研究書ではあるが、かなり実践的であり、実務に役立つインプリケーションがたくさん盛り込まれている。

また、ケースもふんだんに盛り込まれているので、書かれていることの理解も容易にできる。さらに、心理学的な視点も踏まえているので、自分自身の成長を考えるに際しても参考になる一冊である。

プロジェクトマネジャーに代表されるプロフェッショナル人材を育てることを課題とする人材育成担当者にぜひお奨めしたい一冊である。

また、マネジャーは、この本と「最強組織の法則」など、組織学習の本と併せて読むと、個人の成長(自己マスタリング)と組織の学習の関連性も想像でき、面白いだろう。

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2007年7月 2日 (月)

経営を見る眼

4492501746 伊丹敬之「経営を見る眼 日々の仕事の意味を知るための経営入門」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

経営というのは多面性があり、説明するのは非常に難しい。それを

・人はなぜ働くか
・仕事の場で何が起きているか
・雇用関係を断つとき
・企業は何をしている存在か
・株主はなぜカネを出すのか
・利益とは何か
・企業は誰のものか
・人を動かす
・リーダーの条件
・リーダーの仕事上司をマネジする-逆向きのリーダーシップ
・経営をマクロに考える
・戦略とは何か
・競争優位の戦略
・ビジネスシステムの戦略
・企業戦略と資源・能力
・組織構造
・管理システム
・場のマネジメント
・キーワードで考える
・経営の論理と方程式で考える

の21の視点から見事にきっている。

まさに、伊丹先生の知見のすべてを書ききった素晴らしい本である。会社に所属している人はぜひ一度読んでおきた本だ。

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2007年6月22日 (金)

変革を定着させる

4862760074 佐藤文弘「チェンジマネジメント―組織と人材を変える企業変革プログラム」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

企業変革の本というと、話は分かるが具体的にどうするの?という本が多い。その中で、定着に重点を置き、具体的な施策を述べている貴重な一冊。

この本では、

プラニング

  ⇒コミュニケーション

    ⇒教育

      ⇒サポート

というステップで進めていくとし、各ステップで使う手法やツールについて解説している。

前提として、

 ・人はルールを守らない

 ・組織は戦略に従わない

といった現実的な(問題のある)前提で展開されているので、現実的である。このあたりも、よくある、それなら変革はいらないだろうという前提の変革本とは一線を画している。

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2007年6月15日 (金)

31の考察課題と103の演習課題で身につくリーダーシップ

4492532277 大中忠夫「リーダーシップ強化ノート―変革ビジョンの設計と実行のための演習帳」、東洋経済新報社(2007)

大中氏は、グロービスのMBAシリーズで「リーダーシップ」という本を書かれている。このブログでも取り上げている。

行動に注目したリーダーシップ

https://mat.lekumo.biz/books/2006/04/post_e936.html

このブログでも書いたが、この本はリーダーシップ本の中で、特筆すべきものだと思う。これまでリーダーシップ本というと理論本とハウツーものしかなかったが、この本は理論をベースにした行動の方法を解説した本である。

今回の「リーダーシップ強化ノート」は、この流れで、演習として具体的な課題をあて、考えさせることによって、リーダーシップを強化を図ろうという画期的な書籍である。

この本は、31の考察課題と103の演習課題に60時間程度をかけて取り組みながら、リーダーシップ4領域行動、EQリーダーシップ、期待理論、マズローの5段階欲求、の4つの理論モデルを日常行動に適用し、リーダーシップ能力を体系的に「考える」ような構成になっている。

考察課題は、論述的なものだけではなく、実際に自分の行動をセルフチェックしてその結果を見ながら考察するようなものもある。

リーダーシップのセミナーは数多いが、本気で身に付けたいのであれば、セミナーにいくよりもこの本を繰り返し、読んだ方が効果的だ。と書くと、極論かもしれないが、そんな可能性を感じさせてくれる本であることは間違いない。

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2007年6月 8日 (金)

ビジョンマッピング

4569655505 吉田 典生「ビジョンマッピング やる気を創る技術」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

吉田典生さんというと、斬新な視点からの人材育成論が印象的である。たぶん、最も多くの人が読んでいるのは

吉田典生「なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか? 」、日本実業出版社(2005)

4534040032

4534040741吉田典生「 「できる人」で終わる人、「伸ばす人」に変わる人」、日本実業出版社(2006)

の2冊ではないかと思うが、この本は、これらの本の本質が何かを明確に教えてくれる一冊である。

展開の中で、いまもっとも大切な「ビジョンマッピング」へ落とし込む。その具体的な手法と意義をつかみ、自分に応用できることを目的に書かれている。

ある自動車販売代理店で生じた危機からの再生物語をネタにして

危機―会社が消える

出発―何のための仕事なのか

火種―生命力の源

接続―意味づける力

連携―協働する場

促進―ギャップを埋める

共創―一枚の絵を全員で描く

管理―変わらない姿勢で変え続ける

の流れの中で、「思い」がいかに凄い力を持つかを説こうとしている。ストーリー仕立てで、かつ、簡潔に書かれているので、ポイントが手に取るように分かる。

「仕事が面白くない」、「部下にやる気がない」、「組織力をもっと高めたい」といった悩みを持つマネジャーにお奨め。

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2007年5月25日 (金)

ネガティブと戦う

447800109x BJ・ギャラガー、スティーブ・ベンチュラ(梅森 浩一)「ノーの中からイエス!を探せ」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

「ネガティブと戦う」をテーマにした一冊。

自分も含めて、自分が関わっている人には、ネガティブな人がたくさんいる。このような人の攻略法をストーリーと、解説の二本立てで伝えようとする本。

第1部のストーリーは、「ノーの国」の物語。いろいろなネガティブキャラが登場し、ノーを繰り広げていく。この物語によって、ノーということがどういうことか、ノーという人がどういう思考をするかに気づくようになっている。

その上で、第2部では、ノーをイエスに変える方法を提案している。

このようなスタンスを取れば、きっと自分も、周囲もポジティブになれる。そんなことを感じさせてくれる一冊である。

参考にもなるが、ノーの国で元気をなくしているあなたに元気を与えてくれる。そんなニーズをお持ちの方、読んでみよう!

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