リーダーシップ Feed

2007年5月23日 (水)

極めろ上司道!

4887595379 リチャード・テンプラー(米谷敬一訳)「極めろ上司道1 グレイトな上司」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★

マネジメントの基本を100のルールとして体系的に示している。非常に軽い口調で、抵抗なく受け入れられると思う。新任のマネジャーの座右の書にしてほしい一冊。

Part1はグレイトなチームをつくれ(チーム管理編)。

利益を語るな、貢献を語れ

自分を語るな チームを語らせろ

非現実的な目標から部下を守れ

成功はすべてチームのおかげと主張せよ

など、かなり本質的なことが、並んでいる。いわゆるチームマネジメントの本に書いてある常識とは少し異なる点が興味深い。

Part2はグレイトな上司であり続けろ(自己管理編)

懸命に働け

部下が憧れる手本となれ

仕事を楽しめ

家族を大事に 早く家に帰れ

など、こちらもやはり、一風変わったルールが並んでいる。

ちなみに、このシリーズには3部あるらしいが、すでに第2弾は出ている。

4887595433
ケン・マレル、ミミ・メレディス(ディスカバリー・クリエイティブ訳)「極めろ上司道2 ブライトな上司」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

著者は異なるが、同じようなテーストで、こちらはスポンサーとしての上司がテーマになっている。

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2007年5月19日 (土)

リーダーシップからスポンサーシップへ

4532313260 柴田昌治「なぜ社員はやる気をなくしているのか~働きがいを生むスポンサーシップ」、日本経済新聞社(2007)柴田昌治

お奨め度:★★★★1/2

スコラ・コンサルティング代表の柴田さんが、自らの組織変革のコンサルティングの経験から、経営のスポンサーシップのあり方について述べた一冊。スポンサーシップは分かりにくい概念であるが、この本で提唱されているものは非常に合理的で、また、的を得ていると思う。

この本では(強い)リーダーシップの弊害について指摘し、それに変わるチームをまとめる概念としてスポンサーシップを定義している。最初、読んだときにピンとこなかったが、よく考えてみるとその通りだと思った。この本ではスポンサーシップを

リーダーシップの一種。ただ、引っ張っていくリーダーシップではなく、部下が主役になりうる機会を演出することで「質の高いチームワーク」をつくり出して行くリーダーシップ

と定義している。要するにどうだということはいえないような微妙な話である。捉え方によってはファシリテーションリーダーシップやサーバントリーダーシップと似た概念であるが、似て非なるものである。やはりスポンサーシップである。

具体的なスポンサーシップの機能としては

(1)個人のセーフティネット作り

(2)対話でビジョンを描き、共有する

(3)対話力で一緒に答えを作る

(4)当事者としての姿勢と自己革新

を一緒にあげている。

柴田さんは以前から、プロセス変革、組織変革の中で、スポンサーシップの重要性を説かれていた。

4532192048 柴田昌治「なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ」、日本経済新聞社(2003)

この本はここが中心になっている。この本だけ読むと、スポンサーシップで会社が変わるというように読めなくもないが、そういうことではないと思う。ただ、本当にこの部分にフォーカスしないと会社が変わらないということを事例などを通じて切実に伝えてくれる本である。

組織変革に関わっている人はもちろんだが、プロジェクトスポンサーシップを発揮しなくてはならない人はぜひ読んで欲しい。具体的に何をすればよいかが分かるだろう。

2007年5月11日 (金)

できるマネジャーを目指す人に!

4887595468 ローレン・ベルカー、ゲイリー・トプチック(ディスカバー・クリエイティブ編)「マジマネ1 できるマネジャーになる! 」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★1/2

新任マネジャー向けのマネジメント入門書。できるマネジャーになるための心構えと行動指針、マネジメントの仕事のポイントについて整理されている。

部下のやる気と強みを育てるという副題があるように、

どうやって部下をやる気にさせるか
プロフェッショナルな部下を育てるにはどうするか
褒め方や注意の仕方で気をつけるべき点は何なのか

といった部下との接し方を中心にした現場マネジメントのノウハウ以外にも、ユーモアとか、身だしなみといったマネジャーとしての振舞い方についても書かれているのが特徴。

このブログでも類書はいろいろと紹介しているが、何か、一冊本を読んで、マネジャーとしてのスタートを切りたいと思っている人にはお奨めしたい一冊である。

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2007年5月 9日 (水)

コミットメントを熟知しよう

4478000999 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編集「コミットメント 熱意とモラールの経営」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューの中から、コミットメント経営に関する論文をまとめた論文集。コミットメントというのは日本語でいえば、公約である。

日本では公約というのがそうであるように、コミットメントというのがどうも、かなり精神的な約束として理解されている気配がある。このため、人によっては、コミットメントを忠誠といった訳しかたをする人もいる。コミットメントとロイヤリティは強い関係があるが、別の概念である(この議論はこの本の8章でも出てくる)。

例えば、プロジェクトマネジメントの分野でコミットメントは計画に基づいて行われる。つまり、定量的な目標に対して、その達成を約束するのがコミットメントの管理である。

ある意味でわかりにくい概念であるが、この本は8つの論文をうまく集めて、コミットメントマネジメントを実行するために必要な要素をつまくつむいでいる。チームマネジメントの中核にコミットメントマネジメントをおきたい人にはお奨めした一冊である。

ハーバードビジネスレビューの論文集なので、決して読みやすい本ではないが、苦労して読めば、それなりの対価は得られるだろう。

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2007年5月 2日 (水)

プロジェクトを成功させるリーダーシップ

4062134543 ジョン・サルカ、バレット・ネヴィル(道幸武久監修、甲斐理恵子訳)「人を動かす 火事場の鉄則」、講談社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

2004年に9・11テロの際にニューヨーク消防局のリーダーであったジョン・サルカが1冊の本を出して話題になった。日本でも、ビジネス誌で紹介されているのを見たことがある。

1591840252 John Salka、Barret Neville「First In, Last Out: Leadership Lessons from the New York Fire Department」、Portfolio(2004)

という本である。文字通り、最初に飛び込んで最後まで残るという行動規範(プロデュースした道幸氏の言葉では率先垂範)に基づくリーダーシップについて述べた本だ。

この本、読みたかったのだが、思わぬ形で翻訳が出た。翻訳というのは正しくないかもしれない。今、話題の新進気鋭のビジネスプロデューサ 道幸 武久氏が、単なる翻訳としてではなく、自らとのコラボレーション本としてプロデュースしたのだ。

消防士のように極限で、迅速な判断を要求される業務では、一人ひとりがリーダーシップを持たなくてはならない。リーダーや、マネジャーだけがリーダーシップを持っていても、全体は回っていかない。ジョン・サルカ氏のリーダーシップ論は、そのようなリーダーシップ論であり、そのような伝統的なリーダーシップがニューヨーク消防局にはあったので、多くの人を死なさずに助けることができた。

このようなリーダーシップこそ、プロジェクトを成功させるリーダーシップである。

このリーダーシップ論に共感する道幸 武久氏も、負けずと持論を展開し、全体として非常によくまとまった本になっている。この本の構成はオリジナルの本に章単位で道幸氏の章が混じっているような構成になっている。実は、最初、余計なものが入っている(失礼!)と思って、オリジナルの部分だけを選って読んだ。そのあとで、全部を通して読んだが、全部読んだ方がよい本だということがわかった。道幸氏の企画力はさすがである。

この本はいわゆるリーダーに読んで欲しい本なのだが、それ以上に、メンバーの立場で仕事をしている人と、管理職の立場で仕事をしている人にぜひ、読んで欲しい一冊である。

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2007年4月27日 (金)

企業から人に

4862761003_01__sclzzzzzzz_v23803313 ジェリー・ポラス、スチュワート・エメリー、マーク・トンプソン(宮本喜一訳)「ビジョナリー・ピープル」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

10年前にたいへん多くの人に読まれた

4822740315_09__sclzzzzzzz_v44479440 ジェームズ・コリンズ、ジェリー ・ポラス(山岡洋一訳)「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」、日経BP出版センター(1995)

の著者の一人、ジェリー ・ポラスが、ビジョナリーカンパニーを支える人を描いた本。ジェリー ・ポラスとは

自分の道を追求しつづける人たちがいる。
ひたむきに、真っ直ぐに、生きていく人たちがいる。
自らのビジョンに向かって突き進み、
彼らは新しい時代を切り拓く。
彼らは、世界に変革を巻き起こす。

人々をビジョナリーピープルと呼んでいる。この本では多くの人を、ビジョナリーピープルの例にとりながら、

意義

行動スタイル

思考スタイル

について整理している。読むと元気になる本だ。

ビジョナリーピープルの基本的な発想は

長期間にわたって続く成功と密接な因果関係があるのは、個人にとって重要な何かを発見することであって、企業にとっての最高のアイデア、組織構造、ビジネスモデルではない、という原則だ。というのも、思考と感情が互いに情報を交換し合い、創造性が生まれ、いつまでも続く組織が生まれ出る潜在的な可能性があるのは、まさにこの個人的なレベルだからだ。

という発想にある。この発想は、最近、注目されている「クリエイティブ・クラス」に近いものである。併せて読んでみよう。

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2007年4月13日 (金)

人をあきらめない組織

4820717030_01__aa240_sclzzzzzzz_v2488359_1 HRインスティテュート(野口吉昭編)「人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方」、日本能率協会(2007)

お奨め度:★★★★1/2

如何に人を育てるかという切り口で、あるべき人を育てる組織になる方法を説いた一冊。

非常に力強いメッセージ「人をあきらめない組織」を作るには、

 プリンシプル(絶対的な人づくりへの理念と意志)
 ウェイ・マネジメント(人づくり遺伝子の仕組み化)
 モチベーション・エンジン(やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化)

という3つの要素が必要であり、それぞれについて以下のような要素が必要であると説いている。

プリンシプルには

・トップマネジメントの行動・意志

・人に対する信念の存在

・周囲の意識・行動から見える浸透

などが必要である。ウェイマネジメントには

・尊敬できるリーダーシップがあるか

・人材育成・開発の仕組み

・習慣・口ぐせ

が必要である。三番目のモチベーションエンジンには

・オープンコミュニティ

・自己主張・提案できる環境

・チーム意識を醸成する環境

が必要である。

この本では、それぞれの要素について、診断を踏まえて、どのような取り組みをすればよいかをフレームワークとして提示しているので、実践的に使える一冊だ。

2007年3月30日 (金)

プロジェクトチーム崩壊を防ぐ極意

4822283135_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254531 伊藤健太郎「プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

PM書籍のベストセラー「プロジェクトはなぜ失敗するのか」の伊藤健太郎さんの待望の新作。

本の内容とは直接関係のない話題から入る。前作でも感じたのだが、伊藤さんの本はこの日経BPのシリーズが本当によく似合う。このシリーズには

デマルコの一連のシリーズ https://mat.lekumo.biz/books/2005/07/post_0be1.html

ジム・ハイスミスのアジャイルPM https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_8e2b.html

ヨードンのデスマーチ https://mat.lekumo.biz/books/2006/06/post_7e70.html

など、日本のプロジェクトマネジメントに影響を与えた本がずらっと並ぶ。伊藤さんの本も間違いなく、その一冊だ。このシリーズの特徴は、深いことを、簡潔・平易に書いてあり、非常に考えさせることだ。

さて、今回のテーマは、チームマネジメント、リーダーシップ、ヒューマンスキルという伊藤健太郎さんの得意分野である。結構、深い持論がやさしく簡潔に書かれていて、納得しながら読める。かなり、ポイントが絞られているので、セミナーを受講しているような感じで、すっと頭に入ってきて、かつ、残る。

同時期に峯本さんもプロジェクトマネジャーのプロフェッショナル責任に関する書籍「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」を出版されたが、伊藤さんの本もまず、「責任」から話が始まる。非常に現実的で、現場ベースでの責任論が展開されている。納得。

次にチームマネジメントの話が続く。ベースは行動規範と動機付けの話だが、両者の関係の説明が薄いので、なにがいいたいのか、少し、わかりにくい部分がある。でも、個々に書いてあることは納得性が高い

そのあと、組織のサポートのあり方の章があり、最後にプロジェクトマネジャー像が述べられている。硬い話だけではなく、問題形式で説明されているので、楽しく読める。

この本、ぜひ、PMPの人に読んでほしい。PMBOKの形式的な知識に魂が入るだろ。

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2007年3月26日 (月)

評価、教育、動機づけ

4478000409_01__aa240_sclzzzzzzz_v4228607 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部「人材育成の戦略―評価、教育、動機づけのサイクルを回す」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された人材育成に対する優秀な論文を選定して一冊の本にまとめている。内容は目次を見ていただきたい。

過去に読んだもの、読んでいないものの両方があったがどちらもよみごたえがあった。15本の中から3本だけ上げるとすれば、1本目は「行動するマネジャーの心得」。ケースに基づき、

・自分の仕事は自分で管理する(マッキンゼー:ジェシカ・スパンジン) 
・必要な資源はみずから調達してくる(ルフトハンザ航空:トーマス・サッテルバーガー) 
・代替案の存在を認識・活用する(コノコフィリップス:ダン・アンダーソン)

が重要だと述べられてる。

二番目は「リーダーシップR&D」。

常人には不可解な優れたリーダーの意思決定
複雑系の科学こそマネジメント研究の新たな方向性
「認識科学」と「設計科学」の融合
リーダーシップR&Dの「R」
リーダーシップR&Dの「D」
知識教育ではリーダーシップを開発できない

といった項目について述べられている。

三番目は「リーダーシップ開発は一人ひとり異なる」。

リーダー教育の多くが個性を無視していることを主張した上で、マネジャーの四つのタイプにわけ、それぞれに適したリーダー能力の開発方法について述べてる。

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2007年2月27日 (火)

リーダーシップの旅

433403389x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4457439_1 野田 智義、金井 壽宏「リーダーシップの旅 見えないものを見る」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ILSというNPOを立上げ、次世代のリーダーの輩出に取り組んでいらっしゃる野田智義先生と、日本のリーダーシップ論の第一人者である神戸大学の金井先生のコラボレーションによるリーダーシップ論。

野田先生のリーダーシップ観はサーバントリーダーシップの色合いが濃いが、そこに金井先生もいろいろな視点から意見を述べ、全体としては非常にダイバシティーの強いリーダーシップ論の本になっている。

この本の評価というか、サーバントリーダーシップへの評価は分かれると思う。ちょっと気になってアマゾンの書評を見たが、期待を裏切らず、全面否定派と全面肯定派が登場していた。僕はもちろん、全面肯定派である。

リーダーシップの獲得過程を「旅」というメタファーにしているのは、非常に興味深い。リーダーシップ研修などいろいろなリーダーシップ開発の方法はある。効果も出ている。しかし、この本で野田先生と金井先生が訴えているリーダーシップは、誰かに教わるものではなく、自分自身が選択をし、生きていく中で初めて身につくものだ。そのプロセスを旅に例えているが、まさに、旅であり、この本は旅のガイド本でもある。この本の最終章は「返礼の旅」と名づけられている。この中に野田先生の印象的なコメントがあるので、抜粋しておく。

心からの熱い思いがあり、何かを実現したいと夢や志を真剣に語る人に、周囲の人は喜んで手助けをしてくれる。リーダーシップの旅を歩む私たちは、人に助けられ、支えられる中で、自分が人を活かしているのではなく、人に自分が活かされている、そしてそのことによって、自分はさらに行動できるのだという意識を持つ。
利己と他利が渾然一体とはり、「自分のため」が「人のため」、「人のため」が「自分のため」と同一化する中、リーダーは自分の夢をみんなの夢に昇華させる。

何度読んで素敵な言葉である。さらに、こう続く。

リーダーはリーダーシップの旅の中で、大いなる力というギフトを授かる。旅を続けられること、それ自体がギフトでもある。私たちはもらったギフトを他人と社会に返す責務を負う。(中略)。ギフトを社会に返す中で、私たちはさらに真の意味での社会のリーダーへと成長する。

この本を読むときには、野田先生の訳されたスマトラ・ゴシャールの名著

意志力革命

を併せて読まれることをお奨めしたい。

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