2005年3月 1日 (火)

2005年2月ベストセラー

ビジネス書の杜 はじめての月間ベストセラーの発表です。

今月は、PMBOK第3版の日本語版が登場して、あっという間にトップになりました。このところ、しばらく、頑張っていた好川の本は、2位に後退。もう、トップに返り咲くことはないでしょう(笑)。

そろそろ、次の本かなと思っています。「こんな本を読みたい!」あれば、コメントに書き込んでくださ~い!

【2005年2月ベスト5】

第1位 A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation (36)

第2位 プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル (10)

第3位 先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか (6)

第4位 いかに「プロジェクト」を成功させるか

第5位 空想プロジェクトマネジメント読本

2005年2月28日 (月)

イノベーションのジレンマ

4798100234.09.LZZZZZZZクレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ 増補改訂版」、翔泳社(2001)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

 イノベーションマネジメントの分野では歴史的名著になった感のある本である.本書を読むと,イノベーションというのが,単に技術開発だけでは成り立たないことを容易に理解することができる.

 本書では,新しい技術の誕生により,優良企業の中で戦略的なジレンマが起こり,優良であるがゆえに小さな市場においそれと出て行くことができず,気が付いたらその市場が大きくなっており自社製品の市場を侵食しているという現象を,事例に基づき,そのメカニズムを徹底的に分析している.このような現象を引き起こす技術を著者は破壊的技術と呼んでいる.本書の中で中心的に取り上げられている破壊的技術はハードディスク技術,,掘削技術の2つである.この2つの事例については非常に詳細に書かれており,読み物としても面白い.例えば,ハードディスクでは,8インチから5.25インチ,そして3.5インチへの推移と,そのハードディスクを主に使うメインフレーム,ミニコンピュータ,パーソナルコンピュータの推移を関係付けて,ハードディスクメーカがそれぞれの時期にどのように振舞ったかを分析してある.主張自体,非常に明快で,かつ示唆に富んでいる.

 技術イノベーションを中心にして,経営革新を図ろうとしている企業の経営者,ベンチャー企業の経営者,これらの支援をするコンサルタントの方にはぜひお奨めしたい一冊である.

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2005年2月15日 (火)

PMBOK3 日本語版

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Project Management Instytute "A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.3.30)

お奨め度:★★★

PMBOK第3版の日本語版です。手元に一冊持っておきましょう!

日本語版は、2000年版に続き、また、紺をベースにしたような色調になっていますね。

ちなみにこれだけあります。なかなか、壮観です。

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フランス語はフレンチブルー、中国は赤、韓国はアクア、イタリアはオリーブ、ロシアはシルバー、、、となかなか、いろを見ているだけでも楽しいかも。。。

国のイメージカラーで一番支配的なのは、たぶん、サッカーのユニフォームだと思うけど、それとは微妙に違いますね。

こうなってくる文化ですなあ。。。

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プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか

4478300593.09.LZZZZZZZ P.F.ドラッカー「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか」、ダイヤモンド社(2000)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

ドラッカーの小論文を 自己実現という観点からまとめた1冊である。

横串のテーマで見ると改めてドラッカーの知見の深さに感動するし、また、体験談をベースに書かれている部分は、ドラッカーの生き方そのものに感動を覚える。

しかし、本としてみれば少し物足りない気がする。 その物足りなさは、一つ一つの論文が深いにもかかわらず、前後に並んでいる論文との関連性が薄いという編集上の問題である。また、少し全体的に散漫な気もした。すでにドラッカーの本を何冊か読んでいる人にとって、ドラッカーの価値を高める一冊にはなりにくいだろう。

ただし、タイトルにあるように「はじめて読むドラッカー」というコンセプトなので、このコンセプトであればまあ、納得できるレベルである。

プロフェッショナル・シンキング

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児玉 光雄 「プロフェッショナル・シンキング―松井秀喜・イチローに学ぶ」、二見書房(2004)

お奨め度:★★★1/3

好川塾プロフェッショナルコース「第2期」テキスト。

ビジネス論とスポーツ論は共通点が多い。特に、組織、リーダーシップといった部分では、かなり参考になる部分が多い。この本は、児玉 光雄氏がプロフェッショナリズムについてマリナーズのイチローとヤンキースの松井を取り上げていろいろな視点から分析している。

驚くことにイチローや松井の行動は、ドラッカーが知識労働者を念頭において展開しているプロフェッショナルのイメージに極めて近い。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか
ドラッカーの著作は抽象度が高く、それが人気のひとつらしいが、ドラッカーの主張を手軽に知るのであれば、この本はお奨めである。

もちろん、ドラッカーとは無関係に、この本で展開されているプロフェッショナル論は秀逸であり、非常に読み応えがある。

2005年2月10日 (木)

リーダシップの価値

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特集:リーダーシップ・バリューの創造

詳細目次はこちら(アマゾンではありません。ダイヤモンド社のサイトですので、ご注意ください)

好川の参考になった記事ベスト3

(1)髙木晴夫、渡邊有貴「リーダーシップR&D」

リーダーの育成方法として「リーダーシップのR&D活動」というチャレンジを提唱する。優れたリーダーは、マネジメントの教科書が教える理論や知識では理解できない非合理的な意思決定を下す能力はいかなるものなのかを科学し、この優れた能力を学習する方法を見出す。

(2)マイケル・マコビー「転移の力:フォロワーシップの心理学」

フロイトが発見した「転移」により、自分のリーダーシップがかえって部下の反発を招いている。部下たちは、上司やリーダーを父親もしくは母親、兄弟姉妹と見なすのだ。リーダーが心得ておくべき知識として、この転移のメカニズムを解説している。

(3)ティモシー・バトラー、ジェームズ・ウォルドルー「「対人関係力」のマネジメント」

延べ7000人以上の専門職社員を対象にした心理テストの結果、対人関係力として、「影響力」「チーム・リーダーシップ」「人間関係の円滑化」「対人関係面での創造性」の4つがあることが明らかになった。これらについての解説と共に、マネジメント法を論じている。

2005年2月 9日 (水)

仕事で「一皮むける」

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金井壽宏「仕事で「一皮むける」 、 光文社新書
お奨め度:★★★★

主に大企業で働くさまざまな分野のビジネスマンに、インタビューにより「一皮むけた」経験を問い、ライフヒストリー風にまとめた本である。

「豊かなキャリア形成へのメッセージ~経営幹部へのインタビュー調査を踏まえて~」という(社)関西経済連合会が実施したプロジェクトでのインタビューが元になっている本。

小泉首相ではないが、「人生、いろいろ、キャリアもいろいろ」であると改めて実感させられる本だ。読んでいて、一皮むけた経験というのは後で考えてみればというのが多いような気がする点が若干気になるが、読んでいて元気をもらえる本であることは著者の思いがうまく実現できているように思う。

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2005年2月 4日 (金)

ソフトウエア企業の競争戦略

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マイケル A.クスマノ(著)、サイコム・インターナショナル (翻訳)「ソフトウエア企業の競争戦略」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

この本については、pmsytle「塾長の眼」の方で取り上げたので、こちらをみて。訳者の方がコメントをつけてくださっています。

僕はお会いしたことがない方です。ブログをやっていて、こんなこともあるんだなと楽しくなりました。

ソフトウエア企業の競争戦略

クスマノ博士の集大成かもしれませんね。世界で最高のプロジェクトマネジメントの研究者はクスマノ博士ではないかと思う。

日本の状況についてはこれもいくつかよい本がある。

まず、ソフトウェアの開発をサービスとする業界についてはこれ。

4502378305 ソフトウェア産業研究会「ソフトウェアビジネスの競争力」、中央経済社(2005)

ソフトウエア産業研究会という研究会の報告書。ビジネスモデル、人材に対する中長期的な戦略、政府調達の役割、知的財産権の活用などの側面から、今後のあるべき方向を示している。

もう少し実務よりなのが、これ。

4757210647 前川徹「ソフトウェア最前線―日本の情報サービス産業界に革新をもたらす7つの真実」、アスペクト(2004)

特に生産性に関して相当に深い議論がされている。プロジェクトマネージャーの方は一度読んでみるとよいだろう。必ず、参考になる。

と、同時に、この本ではそのような現場を踏まえて、戦略にも言及している。

プロ論

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B-ing編集部「プロ論」、徳間書店(2004)

お奨め度:★★★1/2

ファーストインプレッション 微妙な本である。

この本は、リクルートの雑誌「B-ing」の巻頭インタビューを2000年から2004年まで集めた50編のインタビュー記事から構成されている。メンバーはというと

秋元康、安西水丸、石橋貴明、井筒和幸、糸井重里、今井彰、 おちまさと、乙武洋匡、金子勝、香山リカ、カルロス・ゴーン、北川正恭、北村龍平、木村剛、邱永漢、清宮克幸、小谷真生子、齋藤孝、櫻井よしこ、佐々淳行、佐藤可士和、笑福亭鶴瓶、重松清、白石康次郎、鈴木光司、高橋がなり、高橋源一郎、田原総一朗、堤幸彦、野口悠紀雄、中島義道、中村修二、成毛眞、野口健、日比野克彦、藤子不二雄A、藤巻幸夫、古舘伊知郎、堀紘一、三木谷浩史、宮内義彦、柳井正、横山秀夫、平尾誠二、 養老孟司、松本大、本宮ひろ志、森島寛晃、和田アキ子、和田秀樹

こんな感じになっている。微妙だといったのは、さすがにどの方も日本を代表するプロフェッショナルであり、言葉は心に突き刺さる。

が、その人の活動を知っているのと知らないのでは、面白さが違うことに気がついた。一人の割いているページは5~6ページだが、知っている人だと、本当にその人の本質をうまく抉り出したインタビューをしていると感動する。知らないと(もちろん、50名すべて名前だけなら知っている人は少なくないと思うがそのレベル)、ああ、この人、こんな子といっているんだで終わってしまう。

この本の構成は、最後に「成功の哲学」というフレーズが掲載されている。ちなみに好川の印象に残ったフレーズをいくつか上げておく。誰の言葉かは、本を読んでのお楽しみ、、、

 今を自分らしく生きない人には、次の道は開けない

 必ず自分の頭で考えてみる。それがオリジナリティを生む

 誰かの役に立つと思えたとき、その仕事は面白いものになる

 先が見えなくたってまずは一歩を踏み出してみること

 プロになる近道は好きなことを仕事にすること

 目標をしっかり定めていれば、チャンスは必ずやってくる

おまけ。最近、話題の中村修二先生は

仕事は会社のためではなく、自分のためにするものだ

2005年1月31日 (月)

企業とは何か

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P.F.ドラッカー(著), 上田 惇生 (翻訳) 「企業とは何か」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★1/2

ドラッカーが「マネジメントの発明をした」といわれる根拠になっている本である。1946年に原著が出版され、その後、1993年に復刊されている。この本は1993年版の翻訳。

内容については、触れないが、マネジメントの原型がここにある。企業やマネジメントの常識が書いてある。という言い方は正しくない。この本が下敷きになり、マネジメントや企業という概念ができたのだ。

その意味で、プロジェクトマネージャーのように、最先端のマネジメントの知識より、原理原則を知っておいた方がよい人たちにはお奨めできる。

おそらく読み手によって、そこから得られるものが違う本だろう。

さて、実はここからが言いたいこと。

ダイヤモンド社は非常によい本を取り上げ、翻訳し、日本に紹介している。その意味では敬意を表する。しかし、このような世界的名著を平気で絶版する。出版ビジネスのことはよく分からないが、読者として言えることは、その本を読む機会を永久になくすということだ。

ただ、最近はアマゾンを初めとして古本の販売体制が整ってきたので、比較的保存状態のよい本が手に入るようになった。つい先日も、
チームマネジメントの金字塔ともいえる

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ジョン・R. カッツェンバック (著), ダグラス・K. スミス 「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(1994)

をアマゾンのユーズドで購入したが、新品同様だった。ただし、2900円の本が4700円もした。

本の価値の議論はさておき、後世に読み継がれる本は、売れなくても絶版(永久品切れ)してほしくないもんだ。

2005年1月24日 (月)

PM Magazien第1号

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PM Magazine第1号、翔泳社

お奨め度:★★★

日本初のプロジェクトマネジメント専門誌。プロジェクトマネジメント時代への扉を開くことができるか。注目!

プロジェクトマネージャー養成マガジンと提携企画あり!

2005年1月13日 (木)

プロジェクトマネジメント成熟度モデル―レベル1からレベル5までの評価基準

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ハロルド カーズナー (著), 野崎 通 (翻訳), 井門 良貴 (翻訳):「プロジェクトマネジメント成熟度モデル―レベル1からレベル5までの評価基準」、生産性出版(2003)

お奨め度:★★★


今月はカーズナーのプロジェクトマネジメント成熟度モデルを取り上げてみました。成熟度モデルそのものがまだ、未成熟であり、本格的に議論されるようになるには、PMIのOPM3を待つことになると思いますが、その中で、このカーズナーの本は標準云々ではなく、非常に実践的で、PMOの導入などの際には大変参考になる1冊です。

プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ

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ポール・S. ロイヤー (著), 峯本 展夫 (翻訳):「プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ」、生産性出版(2002)

お奨め度:★★★★

リスクマネジメント月間ということで、この本を取り上げたいと思います。

プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ

この本、あまり話題になりませんが、むちゃくちゃいい本です。実践的ですし、体系的でもあります。PMBOKを導入するのであれば、必読本でしょう!

PMBOKというプラットホームの上に咲いた花のひとつでしょうね。

先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

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長尾 清一 :「先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか」、ダイヤモンド社(2003)

お奨め度:★★★★1/2

極めて実践的な本。プロジェクトマネジメント全般を扱っているが、たとえば、SIプロジェクトで言えば、2~3億のプロジェクトのマネジメントをするのであれば知っておかなくてはならないことが網羅的に書かれている。

長尾さんは米国での生活が長かったらしいが、そのせいか、極めて合理的な考え方に基づいたプロジェクトマネジメントの考え方(戦略)を、単に抽象的な方法論だけではなく、実行レベル(ツール)で何をすべきかというところまできちんと書いている。ベースはPMBOKである。

自分のプロジェクトマネジメントに問題を感じたときには、この本を読んでみれば、きっとブレークスルーが生まれるだろう。

プロジェクトを必ず成功させる『正解』は存在しない、プロジェクト現場から見て『プロジェクトをいかに失敗させないか』

という長尾さんの意見に必ずしも賛成ではないが、このコメントに対する現実的な解を提供している1冊として評価できるし、米国的なボリューム感のある書籍で満足度は極めて高い。プロジェクトマネージャーの人には座右の1冊にしてほしい。

プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵

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伊藤健太郎:「プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★1/2

この本の出来そのものは、議論のあるところだと思います。失敗談というのは、プロジェクトマネジメントの話を聞けば、必ず、一つや二つは聞けますし、この本にある話もどこかで聞いたことのある話が結構あると思われる話しが多いと思います。

が、これを書籍という形で体系化したところを評価したいです。

そして、なにより、今の段階で失敗モノを出した出版社の姿勢に敬意を表します。プロジェクトマネジメントの成熟度の議論をしていくには、この種の本が不可欠です。ちょっと評論家的な意見になりましたが、この本の類書でどんどん失敗モノが出てくることを願っています。

熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理

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トム・デマルコ (著), ティモシー・リスター (著), 伊豆原 弓:「熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理」、日経BP社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

話題には事欠かない本ですが、出版元である日経BP社のニュースに面白いエピソードが載っていました。この本は、ずっと「Risk management」という仮タイトルで進んできて、最後に「Walting with Bears」というタイトルになったそうです。

出版そのものも、このタイトルのとおり、熊とワルツを踊るようなリスクをとっているという解説がされていました。

好川の個人的な感想として、デマルコほどのビッグネームの新著ですので、このようなタイトルをつけることは、ローリスクハイリターンの戦略だと思うのですが、まあ、日本の出版社の感覚でいえば、信じられないことなのでしょうね。それはよく分かります。

なぜ、こんなにしつこくタイトル論議をしているかといいますと、この本は内容をとやかくいうより、タイトルにすべてが集約されていると思ったからです。熊に追いかけられているのではないのです。「熊とワルツを」踊るのです。これこそ、この本でデマルコが言いたいことのすべてです。

 PMBOKのリスクマネジメントを丁寧に読むと、実に、体系的なまとめ方がされています。それでいくと、「熊とワルツを」というのは積極的な受容戦略なのですが、この本は単にそのことを言っているだけではありません。

デマルコの今までの本もそうですが、彼の大家たるゆえんは、どうすればプロジェクトが成功するかの一点に絞り、理論的、行動、心理などのあらゆる要因を統合的に論じている点です。この本も例外ではありません。リスクという観点から、プロジェクトの成功法則が書かれています。リスクを楽しめることこそが、プロジェクトの成功法則になるといっており、それは、リスク戦略の妥当性を超えた議論だといえるでしょう。

とにかく、読んでみてください!

ちなみにこの本を読まれるのであれば、

ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

を一緒に読まれることを強くおすすめしたいと思います。思想的な背景を理解しておいた方が、得られるものが10倍、100倍大きいと思うからです。

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チームが絶対うまくいく法

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デイヴィッド・ストラウス (著), 斎藤 聖美 (翻訳):「チームが絶対うまくいく法~コラボレーション、リーダーシップ、意思決定のコツ」、日本経済新聞社(2004)

お奨め度:★★★★

 日本語で読めるチームマネジメントの本では一番よいと思います。

 プロジェクトマネージャーの知識のある人がチームマネジメントの本を読むと、最初のところで、そんなこと知っているで終わることが多いようです。これは当たり前の話で、組織論で議論されているチームマネジメントの初歩的なこと、特に、チームマネジメント計画に相当する部分はほとんどプロジェクトマネジメントにはメソドロジーとして組み込まれれているからです。PM手法が弱いのは運用ですが、そこに多くを割いている本はあまり多くありません。逆にいえば、プロジェクトマネジメント手法がきちんとしていることの証だともいえます。

 この本は計画より、運用(コントロール)に重点が置かれています。その意味で、間違いなく、多くのところで役に立ちます。

 また、意識して書かれているわけではないと思いますが、PMBOKのチームマネジメントとの対応が比較的はっきり分かります。その点でも、PMBOK派の人にはお勧めできます。

デッドラインを守れ!組織の絶対絶命を救う、究極の時間戦術

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ダン・キャリソン (著), 野津 智子 (翻訳):「デッドラインを守れ!組織の絶対絶命を救う、究極の時間戦術」、ダイヤモンド社

お奨め度:★★★★

タイムマネジメントを(プロジェクト)組織の問題だと捉え、誘拐、火星探査、航空機納品といった非常に時間的制約の厳しいな問題に対してどのように対処をしていったかを事例分析から描き出している。

この本の著者のダン・キャサリンは

アメリカ海兵隊式最強の組織

という本の著者でもあるが、この本も主に、組織的なメカニズムに焦点を当てている。

オビにアメリカ版プロジェクトXだと書いているが、NHKで取り上げているプロジェクトXとはずいぶん質が違う。ミッションクリティカルなテーマが多い。

ただし、プロジェクトXがやはり、プロジェクトXでしかないように、ここに描かれていることもかなり特殊な世界であることは間違いない。その中でも、日常的なプロジェクトでも考えさせられるようなレッスンズラーンドはちりばめられているのは、やはり、著者の力量だろう。

実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断

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岡村 正司 (著), 日経コンピュータ編集 (編集):「実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断」、日経BP社(2004)

お奨め度:★★★1/2

日本のIT業界では、プロジェクトマネジメントのイメージというのはあまりよくない。「権限」が与えられない割には、現場の全「責任」をとらされて苦労が大きい。ひところで言えば、こんなところだろう。

この本を読んでみれば、この構図は本質的な問題ではないことがよく分かる。著者の岡村さんは、IBMでワールドワイドで5本の指に入るプロジェクトマネージャーだと言われている。それゆえにできるのか、だからできるのかという点は気になるところだが、いずれにしてに、如何に、プロジェクトマネージャーの決断が重いものであるが、よく分かるだろう。

また、もう一つ、プロジェクトマネージャーが現場で苦労しているのは、「決断しようとしない」ことに起因していることもよく分かる。決断をすることが引き起こすと、決断することにより発生する責任。このはざまでさまよっているのが日本のプロジェクトマネージャーではなかろうか。

非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

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非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

お奨め度:★★★1/2

先月紹介した岡村さんの

 「実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断

はいろいろな人からコメントを戴いた。なかでも、危機のときにプロジェクトマネージャー(リーダー)は何をできるかということに結構関心を持っている人が多かった。この興味はある意味で、現実的であるとも思う。

好川はプロジェクトマネージャーは平時のリーダーシップと、危機のリーダーシップで、エンジンを切り替えることができなくてはならないと思っている。このようなリーダーシップエンジンの切り替えを行うためには、何よりも重要なことは危機の認識である。

危機というのは識別できなかったリスク事象が発生した状況のことを言うのが一般的だと思う(これはパラドックスであって、プロジェクトマネジメント的にはリスクではないのだが)。つまり、計画にまったくないことが起こったときのこと。これは、そもそも、発生を識別するのが難しい。マイケル・ムーアの「華氏911」の代表シーンに、911テロの状況を告げられたブッシュが7分間まったくアクションを起こさず、小学生の授業を見ているというシーンがある。実際に、ある種のコンテクストがないとこれをクライシスだとは識別できない。一台目が突っ込んだときには単なる事故だと考えてもおかしくない。かれが大統領であるという事実を除くと、これは結果論だといっても間違いではないと思う。

が、彼が大統領であるとすれば、明からリーダーシップの欠如だ。

こんなときに、どのようなリーダーシップを発揮できればよいかということのヒントになる本である。

日常的に危機に直面すると思っているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひ、読んでみてください!

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