【ビジネス書の杜の地図】問題解決から課題設定へ
問題解決は今ではビジネスマンだけではなく、あらゆる人が関心を持つテーマになっています。
問題解決の普及は3つくらいのステップがあったように思います。最初は、管理職や専門家の中での普及です。このエポックメイキングをしたのが、佐藤 允一さんの本です。
佐藤允一「問題構造学入門―知恵の方法を考える」、ダイヤモンド社(1984)
※この本は2003年にビジネス書風に書き直したものがでています。
佐藤 允一 「新版 図解・問題解決入門―問題の見つけ方と手の打ち方、新版版」、ダイヤモンド社(2003)
次の段階は、戦略思考の重要性が認識され始めた時期で、戦略思考に不可欠な要素として、ビジネスマンまで普及しました。このきっかけになったのが、いうまでもなく、齋藤嘉則さんの問題解決プロフェッショナルです。
齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」 」、ダイヤモンド社(1997)
問題解決プロフェショナルほど有名ではありませんが、この本には姉妹編として、
齋藤嘉則「問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」 」、ダイヤモンド社(2001)
があります。
そして、第3ステップは、ビジネスマン以外への普及で、きっかけになったのは、渡辺健介さんの
渡辺 健介「世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく」、ダイヤモンド社(2007)
です。
こうやって振り返ってみると、3冊ともダイヤモンド社だというのはすごいことですね。
このように問題解決はビジネスマンには読み書きそろばんレベルまで普及してきたのですが、その一方で、これから広まっていくことが求められているスキルが、「課題(問題)設定」です。日本人ははっきり言って苦手な分野だと思います。
問題解決がどうすればよいかを「考える」ことであるのに対して、課題設定は、何をすべきかを「決める」スキルです。問題解決はリアクティブな行動スキルであり、課題設定はプロアクティブな行動スキルだといってもよいでしょう。
課題設定の重要性を提起したのは、問題解決プロフェッショナルの齋藤嘉則さんの問題発見プロフェショナルです。ただ、この本はコンサルタントなど、10年前に課題設定のスキルを必要としていた人たち向けに書かれているような感じがあり、僕も何度か研修のテキストに使わせていただきましたが、レベルが高すぎるという反応が多かったように思います。
そのあと、問題解決の本はたくさん出ましたが、課題設定の本はあまり見かけませんでした。ところが、昨年、清水久三子さんが「プロの課題設定力」という本を出されました。この本は、課題設定の分野で、齋藤嘉則さんの問題解決プロフェッショナルのような位置づけの本になるのではないかと思います。
清水久三子「プロの課題設定力」、東洋経済新報社(2009)
また、最近、内田和成さんがボスコン流の課題設定法を紹介した本
内田 和成「論点思考」、東洋経済新報社(2010)
を出されています。こちらは、コンサルタント向けの本ですが、齋藤さんの問題発見プロフェッショナルよりは、手法的に書かれていますので、社内でコンサルティング的な業務を行っている人なら使える内容です。
問題解決の重視は、ビジネスマンの行動をよくも悪くも変えたような気がしています。問題を与えられるのを待って、与えられたら熱心に解決していくという行動を助長しているように思うのです。よくプリント学習の弊害というのを言いますが、問題解決法は社会におけるプリント学習に対処するスキルになっているように思います。
一方で、どのような分野でも現場の専門性の細分化が進んでいますので、現場職ではある程度このような傾向が出てくることは仕方ないと思います。しかし、課長職や、マネジャー職になると、問題解決力だけでは役に立ちません。課題設定ができてこそ、マネジャーだといえます。
ところが、この議論はそんなにやさしいものではありません。齋藤嘉則さんの問題解決プロフェッショナルと同時期に出た本で、ビジネスマンにきわめて大きな影響を与えた本があります。
照屋 華子、岡田 恵子「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」、東洋経済新報社(2001)
です。
問題解決というのはロジカルなものですので、トレーニングすれば誰でも一定のレベルまで達成します。この本はマッキンゼーの手法を紹介したものですが、戦略系のコンサルティングファームは、フレームワークとロジカルシンキングで大量生産の仕組みづくりをしているわけです。
ところが、誰でもが本物のコンサルタントになっていくわけではありません。課題設定、ボスコンだと論点設定といっているようですが、これができて、初めて本物のコンサルタントになることができます。これは、ロジカルシンキングだけではできません。プラスアルファが必要です。
そして、プラスアルファを体系化したのが、クリティカルシンキングであったり、ラテラルシンキングであったりします。この分野の思考技術はこれからどんどん重要になっていきます。入門書としては、こんなものがありますので、読んで見られるとよいでしょう。
小川 進、平井 孝志「3分でわかる クリティカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2009)
山下 貴史「3分でわかるラテラル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2008)
課題解決を問題解決の両方をすることによって、ビジネスの目的を実現できるようになりたいものです。
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