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2010年2月 9日 (火)

「間違った問題」に「正しい答え」を出しても意味はありません

4492556559 内田 和成「論点思考」、東洋経済新報社 (2010/1/29)

お奨め度:★★★★1/2

3年前に出版された問題解決法の名著

4492555552 内田 和成「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法」、東洋経済新報社(2006)

の実践編。BCGのコンサルタントが行っている、正しい論点の設定(問題設定)に焦点を当てた問題解決方法を具体的に解説している。仮説思考をどのように使うかもはっきりと分かる。コンサルタントはもちろんだが、経営企画やPMOなど、社内でコンサルティングの業務をしている人は必読の一冊。

問題解決の本は膨大にある。セミナーや研修も多い。当然、ニーズもある。ビジネスは問題だらけだ。そんなことで、すべてのビジネスマンにとって問題解決は10年くらい前と比べると、比べものにならないくらい身近なものになっている。

だが、解決できなく、企業やプロジェクトに大きな損失を与えている問題はそんなに減っていないように思う。なぜか?問題を正しく設定できていないからだ。もう少し、正確にいえば、現象と問題を混乱しているからだ。

この本では、「会社に泥棒が入った」という例を使ってこの例を説明している。これは問題ではない。現象、あるいは観察事実である。では、問題(論点)は何か?いくつか考えられる。

(論点1)防犯体制の不備
(論点2)損害を受けたこと、あるいは今後受けるリスクがある
(論点3)報告体制の不備
(論点4)盗難が報道され、企業のイメージがダウンした

重要なことは、いずれの論点について考えるかで、打ち手が違うことだ。本書では以下のようになっている。

(打ち手1)防犯体制作り、防犯設備の導入
(打ち手2)損害額の算出と保険の有無、損益への影響調査
(打ち手3)損害を受けたこと、あるいは今後受けるリスクがある
(打ち手4)盗難が報道され、企業のイメージがダウンした

ここで、すべての論点から問題を解決しようとするのは、間違いで、4つの論点のうちのどれを選ぶかを絞り込み、決めることが大切である。

ただし、話はそう簡単ではない。「論点」というのは人によって違うし、「動く」こともあるからだ。本書では

・論点は人によって異なる
・論点は環境とともに変化する
・論点は進化する

の3つの理由により、論点が動くと指摘している。

その中で、論点を絞り込む際にまず、ポイントが2つある

(1)あたりをつける
(2)筋の善し悪しを見極める

の2つだ。(1)については
・白黒のはっきりするところからアプローチする
・依頼者の関心の低いところに注目する
・なぜを5回繰り返す
といった方法がよい。

(2)については「解決できることにこだわる」ことが重要である。こんなエピソードが紹介されている。ジュリアーニ前ニューヨーク市長が就任して、治安強化に取り組んだ。さまざまな犯罪が渦巻く中で、「路上での強請の問題」だった。理由は、橋やトンネルといったニューヨークに来たり、去っていく人が最初や最後に通過する場所で犯罪が横行していたからだ。これは大義名分で、問題解決としては「交通規則を無視した道路の横断を取り締まる」ことを思いついたからだ。つまり、強請の現行犯ではなく、交通違反で捕まえ、その段階で逮捕状の確認を行うことができるからだ。この施策で1ヶ月もしないうちに、強請は激減したそうだ。これを糸口として、治安は劇的に回復した。

このように本質的な問題、より重要な問題が見えていたとしても、まず、解決でき、全体に影響がある論点に絞り込むことの重要性を示している。

論点を設定していく過程で、論点の仮説を立てるためには、以下の3つの方法がある。

・質問して相手の話を聞く
・仮説をぶつけて反応を見る
・現場をみる

そして、拾い出した論点を構造化し、最終的に論点を確定させる。論点の構造化というと、すぐにイシューツリーやMECEを思い出すが、これがすべてはない。実際に、BCGのコンサルタントに尋ねてみてもこれらの方法は使っておらず、独自に方法を持っているそうだ。

たとえば、ロングリストを作り、ショートリストに落とし込んで行く、論点のひもづけを行う、上位の論点を考えるなど、さまざまである。大論点、中論点、小論点と構造化していく中で、実行性の観点から、大論点ではなく、中論点から着手することが少なくない。この階層性をうまくコントロールしていくことが重要である。

論点思考力を高めるためには、

・問題意識を持って仕事をする
・視座、視点、視野を切り替える
・複数の論点を変える
・アナロジーに使える引き出しを増やす

の4つが重要である。

この本であまり明確に指摘されていなかったことだが、マネジメントやビジネスにおいて、「正解は一つではない」という考え方が浸透している。これは真理であるが、この真理に隠れて、問題の適切さが議論されない傾向があるように思う。この点はよく考えてみる必要があるだろう。

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