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2008年5月

2008年5月26日 (月)

仕事のオキテ?!

4887596308パット・ハイム、スーザン・ゴラン(坂東智子訳)「会社のルール 男は「野球」で、女は「ままごと」で仕事のオキテを学んだ」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

お薦め度:★★★★1/2

以前、

エイドリアン・メンデル(坂野尚子訳)「女性(あなた)の知らない7つのルール―男たちのビジネス社会で賢く生きる法」、ダイヤモンド社(1997)

を紹介したが、この本よりインパクトのある本だ。

発想は同じ。まず、男性と女性は、その経験から異なったルールを持っている。ビジネスの世界は男性社会なので、女性は自分たちのルールでいくら成果を上げても、決して認められることはない。

この本が面白いのは、だから、男性に合わせるのではなく、男性のルールを観察し、熟知することによって、最低限、併せるところを決めればよいと指摘している点。それを7つのルールとしてまとめている。

7つのルールを紹介する前に、どう違うのかを紹介しておこう。男性が経験してきたのは、野球(ゲーム)で、女性が経験してきたのはままごと(遊び)だという。そのルールの違いは、以下のようなものだという。

【野球のルール】
・一番大事なのは勝つこと
・作戦をたてなければゲームには勝てない
・勝つことがすべて。だからズルも大目に見られる
・会話を通して、問題を解決する
・内心はどうあれ、とにかく強気にふるまう
・権力があれば、自分の考えを押し通すことができる

【ままごとのルール】
・究極のゴールはみんなを満足させること
・ベストを尽くせば、うまくいく
・フェアなのが一番。だからルールは守るべき
・会話を通して、友情を築く
・笑みをたやさず、感じよくふるまう
・相手を動かすには交渉が必要

この違いを克服し、ビジネスで認められるには

ルール1 トップの言うことには逆らわない
ルール2 対立を恐れない
ルール3 チームプレイに徹する
ルール4 リーダーらしくふるまう
ルール5 自分を有利に見せる
ルール6 批判されてもめげない
ルール7 ゴールをめざす

の7つのルールを守ればよいというのが、この本の主張だ。この中の、3つ~4つはエイドリアン・メンデルのルールと同じだ。

この本を読んでも、はやり、日本は女性社会だと思ってしまった。日本は女性の価値観で、子供たちにゲームを教えている。社会が女性社会なら、それを生かしていくというのが道理というものだ。つまり、グローバルな活動の中で最小限必要な考え方だけ取り入れていけばよい。そんな使い方もある本ではないかと思う。

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2008年5月25日 (日)

プログラムマネジメントのツボ

4798115274ベナム・タブリージ(新井宏征訳)「90日変革モデル 企業変革を加速させる3つのフェーズ」、翔泳社(2008)

お薦め度:★★★★

原題:Rapid Transformation:A 90-day Plan for Fast Effective Change

最初に手前ミソな話になって恐縮だが、われわれが提唱しているスキームの中で、90日間がキーワードになっているものが2つある。ひとつは、「プログラムマネジメント」のスキームであり、そして2つ目はそのプログラムマネジメントのスキームを応用したプロジェクトマネジメントの導入・定着化スキームである。いずれも、変革のマネジメントであるが、90日間に拘っているところに経験的な意味がある。それは、変革に巻き込む人のモチベーションを最初の掛け声だけで維持できる限界が90日くらいだと思われるからだ。その意味で90日で何らかの成果を出すということがきわめて重要なことだ。この成果がなくては、求心力が弱くなり、変革は絵に描いた餅になる可能性が高くなる。

さて、この本だが、この90日の間に、クロスファンクショナルチームを作り、

フェーズ1:診断(30日)
フェーズ2:未来を描く(30日)
フェーズ3:準備をする(30日)

という3つのフェーズを実行することによって、

・参加型の変革
・包括的かつ統合的な変革
・迅速な変革

を実現しようというものである。ここで述べられているフェーズは、変革の期間ではなく、そのシナリオを計画と描く期間である。その後、変革実行を6~12か月で行うとされている。

このモデルの近い事例として、3M、ベリサイン、ベイネットワーク、アップル、ACIなど56ケースの事例から、その有効性を説いている。

本書では、まず、最初に変革の準備として何をすべきかを述べた上で、変革の取り組み体制であるクロスファンクショナルチームについて、なぜ、クロスファンクショナルチームがよいのか、そして、どのようにクロスファンクショナルチームを結成して、変革に取り組んでいくかを解説している。

次に各フェーズについてその詳細を解説するとともに、上の事例で、各フェーズにおいて、何をやったかをプラクティスとして紹介している。そして、90日間で、変革の実行をするにあたって、どのような点に留意すればよいかを説明している。

訳者があとがきに書いているように、ここで展開されているモデルは、変革手法として一般的に述べらているものとそんなに大きな違いがあるわけではない。ただ、非常に評価できるのは90日間というスケジュールの設定をしている点も含めて、非常に具体的である点だ。どのような会議を開くか、その会議でどのようなアジェンダを議論するかまで含めて説明されている。その点で、非常に実践的な本である。

特に冒頭にも述べたように、90日を如何に合理的、かつ、効果的に活動するかは極めて重要であり、そこにこれだけ具体的な方法論を提供してくれる点で素晴らしい本だと思う。

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2008年5月24日 (土)

ジョン・ネスビッツは、何をみて、どう考えているか?

447876106xジョン・ネスビッツ(本田 直之監修、門田 美鈴訳)「マインドセット ものを考える力」、ダイヤモンド社(2008)

お薦め度:★★★★★

マインドセットは

経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態

という意味でつかわれる言葉である。人間の思考様式や、心理状態というのは一面的に捉えることはできず、多面的にとらえるために、「セット(集合)」として認識される。

まず、このマインドセットの言葉の意味を念頭において欲しい。

さて、本書は世界の未来像を描き、社会に大きなインパクトを与えた「メガトレンド」の著者、未来学者ジョン・ネスビッツが書いた未来を読み解くためのマインドセットを書いた本である。

序文の中で、ネスビッツは、私には未来が予測でき、多くの人には予測できない理由はマインドセットの違いにあると指摘し、このマインドセットを身につければ、ジョン・ネスビッツのごとく、未来を予測できると説く。

さて、そのマインドセットとは以下の11である。

マインドセット1 変わらないもののほうが多い
マインドセット2 未来は現在に組み込まれている
マインドセット3 ゲームのスコアに注目せよ
マインドセット4 正しくある必要はないことを理解せよ
マインドセット5 未来はジグソーパズルだ
マインドセット6 パレードの先を行きすぎるな
マインドセット7 変わるか否かは利益次第である
マインドセット8 物事は、常に予想より遅く起きる
マインドセット9 結果を得るには、問題解決よりもチャンスを生かすべし
マインドセット10 足し算は引き算の後で
マインドセット11 テクノロジーの生態を考える

社会的な問題だけではない。たとえば、自分の会社の将来の姿を見たいとき、自分の事業の先を考えてみたいとき、この11の視点から考えることによって、適切な未来像が見えてくるだろう。

第2部では、この11のマインドセットを用いて、実際にジョン・ネスビッツが未来図を描いてみせている。メガトレンドと似ているものもあるが、この本のマインドセットの解説を読んでから読んでみると、また、別の面白さがある。

ついでだが、この本、「レバレッジ・リーディング」の著者、本田直之氏の監訳で、コメントを寄せている。このメッセージを読むと、レバレッジ・リーディングってこういうことかって分かる(笑)。

最後にもう一つ、おまけ。本書に併せたわけでもないだろうが、未来のリーダーシップ論として、ピーター・センゲの「出現する未来」とともに注目されているハワード・ガードナーの「Five Minds for the future」が翻訳された。

4270003308ハワード・ガードナー(中瀬 英樹)「知的な未来をつくる「五つの心」」、ランダムハウス講談社(2008)

この本もいずれ書評しようと思うが、この本は、未来のリーダーは

・熟練した心
・統合する心
・想像する心
・尊敬する心
・倫理的な心

の5つのマインドセットが必要だと説いている。未来リーダーを目指す人は併せて読んでみてほしい。

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2008年5月23日 (金)

プロジェクトトラブル対応の教科書

4535600384志波浩太郎、克元亮「プロジェクトのリスクに勝つ! SEのためのトラブルシューティング」、日本評論社(2008)

お薦め度:★★★★

ITプロジェクトで起こるトラブルについて、予防と消火の両面から対処していく方法をPMBOKのプロジェクトマネジメント体系を意識しながらまとめた1冊。

本書で議論しているリスクは、

(1)計画リスク
(2)実行リスク
(3)技術リスク
(4)ステークホルダのリスク

の4つ。計画リスクでは、

・あいまいなプロジェクト目標
・開発範囲や見積もりのミス
・無理なスケジュール

の3つに起因するリスクを取り上げ、どのようなトラブルが発生するか、そして、どのように予防し、どのように対処すればよいかを事例をあげながら解説している。
実行リスクでは、

・進捗遅れ
・品質悪化
・コスト超過

の3つについて同様の解説をしている。また、技術リスクでは、

・ユーザ要件の把握ができない
・設計書の品質が悪い
・製品技術が未成熟

の3つについて論じている。さらに、ステークホルダのリスクでは、

・契約形態
・体制と役割
・コミュニケーションの問題

について議論している。

さらに、このような一般的な議論に加えて、大規模なプロジェクト特有の問題をはじめとするプロジェクトの属性に依存するリスクの取扱いについても解説している。

リスクマネジメントはSI業界においては最重要事項として認識されており、研究、実践とも相当進んでいる企業が多い。本書の個々の指摘事項や対処へのアドバイスはよく言われているものが多く、その意味でベテランのプロジェクトマネジャーが読んでもあまり新しい発見はないかもしれない。

しかし、この本は非常にうまくまとめている。ひとつは編集上の工夫により、読み物にもなるし、ある程度、ガイドブック的にも使えるようになっている。これからプロジェクトマネジメントをする人や、ある程度経験してきたことを整理したい人には適した一冊である。

もう一つは、リスクマネジメントということでひとくくりにせずに、予防と消火という2つの視点から対処をまとめているのは非常に有用だと思われる。ベテランマネジャーもこういうマインドセットを持つべきだと思うし、この点ではベテランのプロジェクトマネジャーにもぜひ、読んでいただきたい一冊である。

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2008年5月20日 (火)

バカな社長は何を考えているのか

4532260051山田咲道「バカ社長論」、日経プレミアム(2008)

日本経済新聞社の親書というと良書がずらっと並ぶ「日経文庫」であるが、セカンドラインの新書が登場した。日経プレミアシリーズ 。コンセプトはよく分からないが、日経文庫では専門的すぎる人を狙ったような感じか?

第1号を見てぶっ飛んだ。

4532260019小泉純一郎「音楽遍歴

である。結構、売れているようだ。小泉という人は特別かもしれないが、エスタブリッシュされた人の趣味というのは結構、深いと思うので、日経人脈でこういう企画をどんどん、やってほしい。

さて、この本はこのブログでは守備範囲外であるが、最初の配本に2冊ほど、面白いタイトルが入っていた。一冊は、また、取り上げることもあるかもしれないが、著名マーケティングコンサルタント小阪裕司さんの「ビジネス脳を鍛える」。もう一冊がこの記事で取り上げた、会計士の山田咲道さんの「バカ社長論」。

非常にわかりやすく、会社の中で新入社員でも遭遇するような身近な例で、会計、組織マネジメント、マーケティング、戦略について解説した経営の入門本である。

書き方が工夫されており、バカ社長はこうするということで、陥りがちな落とし穴を紹介したのちに、どうすれば優秀な社長になれるかという形で、マネジメント論を解説しているので、にやにやしながら一挙に読める本である。

たぶん、会社の中の仕組みがある程度分かっていれば、新入社員でも読める本だと思うが、考えながら読むとこれが意外と深い。扱っているポイント、切り口の問題だろう。結構、盲点でかつ、普遍性があるような内容が多い。

たとえば、できる人のところに仕事が集まるのはバカ社長だと言っているが、よく考えてみると基本はそのとおりだが、よく考えるとそうとはいえないというのは実際のマネジャークラスであれば、すぐに思いつくだろう。

そんなことを考えながら読んでみると入門書でありながら、意外と、マネジャーにも役立つかもしれない。

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2008年5月13日 (火)

価値観の共有を前提にしないコミュニケーション

4385363714 北川達夫、平田オリザ「ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生」、三省堂(2008)

お薦め度:★★★★★

今、世界でもっとも注目を浴びているフィンランド教育を日本に紹介したことで有名な北川達夫氏と、演出家であり、演劇での経験をベースにしたコミュニケーションの教育・研究に携わっている平田オリザ氏のコラボレーション本。

教育、コミュニティ、対話などの視点から、コミュニケーションについての「対話」により、極めて深い洞察をしている。200ページほどの中に、今、日本に必要なものが凝縮されてぎっしり詰まっている。

特に、グローバルな社会では「対話力は生きる力」だといい、欧米においては、これがないと生きていけない「キーコンピテンシー」であるという。そして、「子供たちや若い世代の人たちに必要なコミュニケーション力」とは、「論理的に考えて、論理的に相手に伝える力」だとあまり前のように考えらているがそうではなく、「もっと日常的で、お互いの価値観をすり合わせていくようなコミュニケーション能力」だという。

本の作り方もたいへん、うまく、はっとさせられるようなメッセージがどんどん出てくる。2人の対話を読んでいくと同時に、このひとつひとつのメッセージを熟考しながら読んでほしい本だ。

あとがきに、北川氏がこんなことを書いている。

「もっとよく考えろ」というのは、「自分の頭で考えろ」という場合よりも、むしろ、「まわりの考えに合わせろ」という場合の方が多いのではないか

この指摘がこの本のエッセンスだといえる。「考える力」の重要性を説く人は多い。しかし、そこに託されている思いが北川氏の指摘のようになっていることは明らかである。本書でもさんざん繰り返されているように、今の社会では価値観の共有を前提とすることはナンセンスである。だとすると、いくら考えてみたところで「まわりの考えに合わせる」ことなどできないのだ。

この本は僕にとって一言一句まで舐めるように読みたい本だが、その中でもビジネスで特に重要だと思った話が2つあるので、紹介しておく。

ひとつは、重層性の話である。かつての地域社会には重層性があったという。学校では教師と保護者の関係があっても、家に帰れば保護者が自治会長である。これが重層性だ。このような重層性があると発言にはリスクが伴う。保護者がモンスターピアレントをやると、自治会のマネジメントで苦労する。こんな関係があったのだが、重層性がなくなってきている。これは、コミュニティだけではなく、会社の中でもそうだ。たとえば、組合活動が盛んだったころは重層性を実現していたが、だんだん、なくなってきた。ビジネスマンは仕事における重層性を持たなくてはならない。

もう一つは、シンパシーではだめで、エンパシーが必要だという話。

シンパシーはその人の気持ちになって考えることであり、エンパシーは「その人だったらどう感じるか」と考えること。ビジネスに情は必要だが、シンパシーでなんとかなっていた時代は終わった。企業の中にさまざまな価値観が渦巻いているからだ。こうなるとエンパシーを持てないと乗り越えていけない。

この2点を含めて、本当によい本だ。ぜひ、読んでみてほしい!

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2008年5月11日 (日)

自分の中の自分をコントロールする

4534043805 鈴木義幸「セルフトーク・マネジメントのすすめ」、日本実業出版社(2008)

お薦め度:★★★★1/2

日本のビジネスコーチングの祖である鈴木義幸氏がセルフコントロールについてまとめた一冊。もともと、臨床心理学の専門の鈴木氏だけあって、周辺分野も含めて体系的に述べているので、説得力のある一冊になっている。

この分野に興味を持っている人なら、ティモシー・ガルウェイのインナーゲームという本をご存じの方は少なくないだろう。もう30年以上前にテニスのコーチ理論をテーマにして書かれた本で、スポーツにおける指導に衝撃を与えた本で、コーチングの原点だとも言われている本である。

4817200146 ティモシー・ガルウェイ(後藤 新弥訳)「インナーゲーム」、日刊スポーツ出版社(2003)

ティモシー・ガルウェイが示した理論は、テニスプレイヤーには、自分自身に話しかけ、叱責し、支配している自分と、その命令によってボールを打つ自分がいる。前者の口数が少なくなればなるほど、実際のプレイがよくなることを臨床的に証明した理論である。

その後、この理論をゴルフや、仕事に応用した本が出版されている。

4817202246 ティモシー・ガルウェイ(後藤 新弥訳)「インナーワーク―あなたが、仕事が、そして会社が変わる。君は仕事をエンジョイできるか! 」、日刊スポーツ出版社(2003)

さて、鈴木氏の本は、ティモシー・ガルウェイの理論を拡張し、「自分の心の中の会話(セルフトーク)」をコントロールすることによって、セルフコントロールをするセルフトークマネジメントという方法論を示したものである。

セルフトークマネジメントが何かを理解するには、本書の最初に示されている例がよい。部下が約束を守らないとどなりちらす事業部長がいる。この事業部長の心理的な動きを分析すると

(1)まず、「許せない」というささやきが自分の中で生まれる
(2)すると、目の前の部下以外は誰も見えなくなる
(3)胸の辺りが圧迫され、息が詰まる
(4)大爆発!

というフローが起こっていることがわかった。そこで、事業部長に「許せない」と思うのではなく、「何があったんだろう」とささやいてみてはどうかと相談したところ、その後、事業部長の爆発はなくなったという例が述べられている。
「許せない」、「何があったんだろう」というのがセルフトークであり、それをうまくコントロールすることにより自分の行動をコントロールするのが、セルフトークマネジメントである。

このようなセルフマネジメントが有効な理由として鈴木氏は以下のような理由を述べている。人間の反応というのは

 刺激
  →ブリーフ(価値観、アイデンティティなど)
     →セルフトーク
       →感情
         →行動

のような反応をする。行動を変えるためには、このうちのいずれかを変える必要がある。ここで、ブリーフを変える自己啓発セミナー、感情を変えるアフォーメーション、ポジティブシンキングなどは、なかなか、定着しない。また、認知行動療法は一人では難しい。そこで、セルフトークをコントロールするのが現実的な方法である。

この本では、セルフトークには感情を呼び起こし「反応」を引き起こすもの(セルフトークA)と、理性を呼び起こし、「対応」を引く出すもの(セルフトークB)がある。そして、セルフトークAにはポジティブな感情を引き出すものとネガティブな感情を引き出すものがある。

セルフトークをコントロールすためには以下のような方策がある。

セルフトークを「変える」……ネガティブな感情から脱する方法
セルフトークを「使う」……行動を強化・修正する方法
セルフトークを「減らす」……集中力を高める方法
セルフトークを「なくす」……最高の実力を発揮する方法

本書では、それぞれについて具体的な方法の述べている。それぞれ、どういう方法が有効なのかは本を読んで頂くとして、支援のない環境で取り組むには、この本で述べられている方法は極めて現実的で、試してみる価値のある本だ。

この本で書かれている手法が有効になるのは、自分自身が解放されることが前提になっていると思われる。これは言うのは簡単だが、結構、難しい。性格の問題があると思う。ここをどう克服していくかは課題である。

最後に少し、脱線したい。鈴木氏は、究極的な状況は4番目のセルフトークをなくすことだという。これはスポーツであればゾーンであり、一般的にはフローである。

フローは、最近リーダーシップの分野でシンクロニシティとの関連が議論されており、セルフトークマネジメントは、セルフマネジメントを超える可能性がある感じた。その点でも興味深い一冊である。

この点についてはこの記事を参考にしてほしい。

フロー体験は偉大である

一体感をめぐる冒険

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2008年5月 9日 (金)

「BADLUCK」を買収したいと言ったホリエモン

4870318059夢をかなえるゾウ」で一躍ミリオンセラー作家になった水野敬也氏。こういう本が100万部売れること自体驚きだ。テレビドラマ化も決まったそうだ。TVや雑誌インタビューにも登場し、一躍時の人になった水野敬也氏の話を聞いていると、なるほどと思わせる。「夢をかなえるゾウ」はよい本というより、敢えて「よくできた本」だといいたい。

さて、このコラムで書きたいのは、「夢をかなえるゾウ」のことではない。水野敬也氏のデビュー作となる「バッドラック」という本をご存じだろうか?

4757303009悪戯好きの神が平凡な会社員アレックスを不幸にしようとする。クビ、暴力、火事、そして死…。人生最悪の一日を、しかし彼はとんでもない前向きさで笑いながら過ごしていく。

というストーリーのポジティブシンキングの本だ。この本、2005年に出版された。そして、この本には、ホリエモンこと、堀江貴文氏の

 「今年一番買収したい本」

というコピーがついている。

この本のアマゾンのレビューを見ていると非常に面白いのだが、「夢をかなえるゾウ」が出版されてから、「バッドラック」の評価が下がっている。確かに、多くの人がレビューに書いているとおり、完成度が違うのだ。僕自身、この本は読んだが、ブログにも取り上げなかった。だた、ホリエモンのコピーだけが印象に残っていた。

荒削りの宝石の価値を見抜く。まさに、慧眼である。

4757301782 残念ながら、堀江貴文氏は活動を自粛しているようで、そのあとの水野氏の「夢をかなえるゾウ」のミリオンセラーをどう思っているか知る余地もないが、「バッドラック」に将来のミリオンセラー作家のにおいを感じたとすれば、それが堀江貴文という人物の本質ではないだろうか?

はやく、すっきりして新しい活動に取り組んでほしいものだ。

2008年5月 8日 (木)

オフショア開発の変革の起爆剤になるか?!

4774134430 オフショア開発PRESS編集部編集「オフショア開発 PRESS」、技術評論社(2008)

技術評論社が新しく創刊したムック。日本でオフショアで活躍している人が集結して作ったような感じの一冊。閉塞気味のオフショア開発を変革する起爆剤になることを期待!

特集1 オフショア開発を成功に導くキーファクター
特集2 オフショア開発最新現地事情―中国,ベトナム,インド
特集3 オフショア開発のためのマネジメントスキル

詳細目次はこちら(アマゾンではありません。技術評論社のサイトですので、ご注意ください)。

好川が参考になった記事ベスト3

(1)妥協しないモノ造りは妥協しないヒト造り (一般記事)
4ページだけの記事だが、中国が生き残るために何をすべきかを、きちんとしたフレームで書いているので、中国企業のコンサルティングを手掛ける僕としては非常に参考になったし、共感できる部分も多かった

(2)中国オフショア開発最新事情
中国のオフショア開発の状況が、いろいろな視点からかなり分析的に書かれており、参考になる。また、短いが時代による傾向の推移にも触れらており、これをじっくりと読んでいると面白い。

(3)多様性マネジメントを始めよう
オフショアの中でダイバーシティマネジメントが必要である問題提起をしており、ダイバーシティマネジメントの入門記事としては参考になる。

部長の仕事を再考する

4480064214 吉村典久「部長の経営学」、筑摩書房(2008)

お薦め度:★★★

3か月ほど前に出版された「課長の教科書」という本がずいぶん話題になった。「課長の教科書」のオビに、「本書こそが、今、日本で最も読まれるべき本である」というキャッチが掲載されていたが、必ず読まれるべき本というのであれば、この本ではないかと思う。

大学の先生が書いた本であるので、わかりにくいが、指摘している内容は極めて重要で、ミドルが経営(企業統治)にどのようにかかわっていけばよいかという問題の基本的な考え方を述べた本である。

日本の組織は欧米に比べると現場が強い。その源泉はミドルマネジャーである。ただ、この図式が通じなくなってきた。この本でも指摘されているとおり、従来はよいものを作れば売れた。したがって、戦略(のダイナミックス)が現場の活動に大きな影響を与えることはなかった。幸之助哲学に代表されるように、(品質の)よいものを作れば売れる。よいものを売ることによって世の中に貢献し、また、収益を上げることもできるという普遍性のある「経営戦略」があったともいえる。

このような状況では、何を作ればよいかは現場が決めることができる。

ところが、求めるものが「よいもの」から、「好きなもの」に変わってきた。こうなってくると厄介である。好きなものはどんどん変わるからだ。今日まで売れていたものが、明日も売れるという保証などないのだ。

こうなってくると、現場だけでは何を作ればよいかを決めることができない。また、売れそうなものが作れたとしても従来のようにその存在が分かれば売れるほど単純でもなくなってきた。売れそうなものを売るための仕組み作りが必要になってきた。こうなると、現場だけではどうしようもない。ここで過剰反応が起こり、トップダウンの戦略経営に一挙に舵を切った。

誤解を恐れずにいえば、ある意味で、これまではミドルは現場を見て仕事をしてきた。だから、現場が強かった。下意上達の役割をはたしてきたのだ。ところが、これからは上に述べた経営環境の変化により、本当の意味で経営と現場の結節点になってきた。結節点とは、上意下達でも、下意上達でもない。自分のポジションに情報を集めて、自身の判断で上と下を動かしていくような働きが必要である。この本はこのような役割を果たすミドルを「モノを言うミドル」と呼び、モノを言うミドルがどのようなスタンスでモノを言い、また、仕組みを作っていかなくてはならないかを経営全般について説明している。まさに、部長の仕事を書いた一冊である。課長にはちょっと荷が重いと思うが、部長になっていく課長には必読の一冊だろう。

ただし、大学の先生の本であるので、やたらと理屈っぽいし、決して読みやすい本ではない。また、ガバナンス論や現在の企業統治のやり方への批判にページを割きすぎている感もある。まあ、この辺が経営論ではなく、経営学というタイトルのゆえんだろう。

ただ、ミドルの仕事の出発点は企業統治であることを考えると、こういった本を考えながら統治について真剣に考えてみることも必要だろうと思う。その意味で、読むに値する一冊である。

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