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2008年5月

2008年5月 5日 (月)

フィードバックを極める

4903241858 ジェイミー・ハリス(松村有晃監訳、柴田 さとみ、上坂 伸一訳)「フィードバックの技術で、職場の「気まずさ」を解消する」ファーストプレス(2008)

お薦め度:★★★★★

上司による部下の指導方法としてコーチングや対話が注目をされているが、もっと、基本的な指導方法として古くからあるのがフィードバックである。フィードバックというと、ちょっとした注意をするとかで、単純なものだと思われているが、この本は新書とはいえ、100ページ以上にわたり、フィードバックという比較的、地味なテーマについて書いた本である。著者は組織変革のコンサルタント。

著者は、フィードバックがうまくいかないのは、知識とスキルの欠如だと言い切り、それを補う一冊として位置づけている。まず、著者が指摘するのは、フォードバックの位置づけで、フィードバックと「審判」を混同し、受ける側は否定的なメッセージを遮断しようとし、与える側は健全な職場環境を壊したくないと考え、それでうまくいかないと指摘する。

フィードバックを正しく行うためには
・必ずしも否定的なものではない
・一方的な独白ではない
・取っ組み合いのけんかではない
・個人を攻撃する手段ではない
・それだけが唯一正しい意見というわけではない
を念頭におき、好ましい行動や問題解決を推奨、強化する(ポジティブフィードバック)、あるいは、望ましくない行動、問題解決を修正・改善し、新しい行動パターンへの対処を学ばせるために行うものだというのが著者の主張である。

さらに重要なのは、フィードバックは部下に対するものではなく、同僚、上司などすべての人に対して有効であることを指摘している。

この本では、このようなフォードバックを可能にするための、考え方、ポイント、ツールなどをふんだんに紹介している。また、巻末には自己診断のテストもあるので、自分の傾向をつかみ、自分に適したツールを使って、フォードバックスキルを向上させることができる素晴らしい本である。

冒頭に書いたように、フォードバックを100ページも使って説明しているというのは、逆にいえば、非常に詳しい。実践的であり、なおかつ、具体的である。また、単調なフィードバックの説明ではなく、最近、問題になっている職場の雰囲気の改善に当てているので、飽きずにさっと読めるのもよい。

本書は、パーバード・ポケットブック・シリーズの第8巻である。地味なテーマであるが8冊の中でもっともお薦めできる本だ。

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2008年5月 1日 (木)

シンプルは売れる

4492556079 ジョン・マエダ(鬼澤 忍訳)「シンプリシティの法則」、東洋経済新報社(2008)
お薦め度:★★★★★
原著:The Laws of Simplicity

世の中がだんだん複雑になっていく中で、複雑性への対処方法の本は花盛りである。ビジネス書の杜で取り上げている範囲でも、システム論、編集、データマイニング、シナリオプラニング、心理学、など、科学、人文社会にまたがって多くの手法の活用が見られる。

そんな中で、この本は一読の価値がある。この本は、複雑さを引き起こさないために、製品デザインや組織デザイン(制度デザイン)は何を考えればよいかを、「シンプル」に100ページで考察した本である。著者は、MITメディアラボ教授である、ジョン・マエダ。2006年に話題になった本だが、やっと翻訳された。

ジョン・マエダの言うシンプルの法則とは

1.削除 シンプリシティを実現する最もシンプルな方法は、考え抜かれた削除を通じて手に入る。
2.組織化 組織化は、システムを構成する多くの要素を少なく見せる。
3.時間 時間を節約することでシンプリシティを感じられる。
4.学習 知識はすべてをシンプルにする。
5.相違 シンプリシティとコンプレクシティはたがいを必要とする。
6.コンテクスト シンプリシティの周辺にあるものは、決して周辺的ではない。
7.感情 感情は乏しいより豊かなほうがいい。
8.信頼 私たちはシンプリシティを信じる。
9.失敗 決してシンプルにできないこともある。
10.1.シンプリシティは、明白なものを取り除き、有意義なものを加えることにかかわる。

の10個だ。これに合わせて、この法則によりシンプリシティ達成のための3つの鍵を提示している。

1.アウェイ:遠く引き離すだけで、多いものが少なく見える
2.オープン:オープンにすれば、コンプレクシティはシンプルになる
3.パワー:使うものは少なく、得るものは多く

このためのシンプルプロセスのコアコンセプトは、「SHE」
1.縮小(SHRINK)
2.隠蔽(HIDE)
3.具体化(EMBODY)

この本のもっとも重要なメッセージは、「シンプルは売れる」ということだろう。本ではiPodだとか、googleなどを例示しているが、この本に書かれている法則は複雑化し過ぎた世の中で真に求められている。

ぜひ、一度読んで、自分たちに求められているシンプリシティ、その実現について考えてみてほしい。薄い本であるが、議論の奥行きは極めて深い。これこそが、シンプリシティの持つパワーなのだろう。

訳はよいと思うが、この本は英語の単語のニュアンスにも奥行きがある。その意味で、英語で読んでみるのもよいのではないかと思う。

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