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2008年2月

2008年2月29日 (金)

プロジェクトを救済する体系的方法

4320097505 E.M.Bennatan(富野壽、荒木貞雄)「ソフトウェアプロジェクトの救済入門―危機的状況に陥ったプロジェクトを救う実践的アプローチ」、共立出版(2008)

お薦め度:★★★★1/2

ソフトウエアプロジェクトのレスキューについて、そのプロセスとポイントをまとめた一冊。本書で紹介しているプロセスは

段階1:プロジェクトの中断
段階2:評価者の人選
段階3:プロジェクトの評価
段階4:チームの評価
段階5:最小ゴールの定義
段階6:最小ゴールは達成可能か?
段階7:チーム再構築
段階8:リスク分析
段階9:計画の改訂
段階10:早期警告システム
の10段階からなるプロセス。

ポイントは早期警告システム(EWS)と呼んでいるシステムにある。このシステムのツールは
「開発データの収集」
「定期的なプロジェクトステータスのレビュー」
「警告の発動」
「是正行動の開始」
「フォローアップ活動」
で、これらのツールより、早期のプロジェクトトラブルの発見、迅速な対応、および、再発防止が可能になるというストーリーである。そして、これらのツールを使って、以下の段階を踏んだ体系的なアプローチによりレスキューを実行することがプロジェクトの確実な救済につながっていくというのが本書の趣旨だ。

リカバリーやレスキューというのはややもすると特効薬があるように思いがちだが、どんな本を読んでも特効薬はないと書かれている。唯一できることは、トラブルにおいて、体系的に丁寧に対応をすることで、それによってのみ、レスキューが可能になると言ってもよいだろう。そのための体系的アプローチとして極めてわかりやすく、実践的な体系が示されているので、実務的に非常に役立つ本だといえる。

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2008年2月25日 (月)

職場の機嫌を直そう!

4062879263 河合 太介、高橋 克徳、永田 稔「不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか」、講談社新書(2008)

お薦め度:★★★★1/2

・直接対話しようとしない
・関心を持てくれない、協力してくれない
・調整がうまくできない、連携できない
・かかわってくれない、放任されているだけ
・仲間になれない、仲間にしてもらえない

といったことが職場で頻繁に起こるようになり、職場がおかしくなり、人が壊れつつある。
そんな問題意識から「協力関係」を考えるフレームを定義し、職場が不機嫌になった理由を説明している。

この本で提案している協力のフレームワークとは

・役割構造
・インセンティブ
・評判情報

の3つであり、職場が不機嫌になった理由をこのフレームワークを使って

・組織のタコツボ化
・評判情報の流通と情報共有の低下
・インセンティブ構造の変化

を上げ、それらを解消する工夫をすることによって、協力関係の構築ができるとしている。さらに協力をうまくやっている組織として、、グーグル、サイバーエージェントやヨリタ歯科クリニックという3つの事例を使って、協力関係の構築がいかに業績に寄与しているかを説明するとともに、工夫のベストプラクティスの抽出をしている。

今、本当に多くの人が困っている問題に対して、シンプルなフレームワークを示すとともに、事例により対応方法のプラクティスを教えてくれる大変よい書籍である。最近、多く見られるEES(従業員満足)をあつかった書籍の中でもよい本である。

ただ、プラクティスはいずれもカリスマ的な経営者が存在する企業であり、一般的な企業で適用できるプラクティスかどうかは若干気になるところだ。この点は割り引いて読んだ方がよいかもしれないが、

・一方的な指示を出してきて、こちらの対応が遅いとキレる。
・隣の席にいる人とも、やりとりはメールのみ。
・「おはよう」等の挨拶がない。
・派遣社員、パート社員を名前で呼ばない。
・誰もきちんと対応してくれない。

こんなことの起っている職場のリーダーは一読をお勧めする。

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2008年2月20日 (水)

ドラッカーを実践する

4478003343 ピーター・ドラッカー (著)、ジョゼフ・マチャレロ(上田惇生訳)「プロフェッショナルの原点」、ダイヤモンド社(2008)

紙版><Kindle版

お薦め度:★★★★★

原題:The Effective Exective in Action

ドラッカーの最大の理解者であり、ドラッカーの教えを30年に渡り、教えてきたジョゼフ・マチャレロ教授がドラッカーの言葉を原題のテーマで、95のアドバイスに再構成した本。

この本を理解するためには、この本で最初の項目に取り上げられているドラッカーの言葉を知っておくとよい。

「経営者の条件」に書かれている言葉で

今日の組織では、自らの知識あるいは地位ゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである

という一節である。エグゼクティブという言葉は、通常、組織上の役職を示す言葉として使われるが、ドラッカーは上の抜粋の通り、別の意味で使っており、そこにこの本全体を貫くスタンスがある。このような前提で読むべき本である。

さて、本書は成果を上げる人のバイブルとしてまとめられたもので、

(1)時間をマネジメントする
(2)貢献に焦点を合わせる
(3)強みを生かす
(4)重要なことに集中する
(5)効果的な意思決定を行う

という5つの習慣を身につけるために書かれている。ゆえにこれまで、何冊かある、ドラッカー語録のような本とは多少違った趣がある。

それは上の5つについていくつかのポイントが示されている中で

 ・とるべき行動
 ・身につけるべき姿勢

の2つの視点から、コンピテンシーの強化についての記述があり、これを意識することによって習慣化できるようなつくりになっている点だ。これこそ、マチャレロ教授がドラッカー学を教えてきたノウハウだといえよう。

ひとつ例をあげておく。上にのべたようにこの本の第1章の1項目目は

「なされるべきことをなす」

というエグゼクティブであれというアドバイスなのだが、ここでの行動と姿勢は

【とるべき行動】
 自らの組織においてなされるべきことは何か?自らがなすべきことは何か?
【身につけるべき姿勢】
 常になされるべきことから考えることを癖にする。手本となる人はいるか?

といったもの。

ドラッカーの膨大な著作は秀逸なものばかりだが、実践ということでいえば、この一冊に勝る本はないだろう。購入し、擦り切れるまで使いこんでほしい!

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2008年2月17日 (日)

あなたはだらしな系、それとも、きっちり系?

4163695206 エリック・エイブラハムソン、デイヴィッド・フリードマン(田村義進訳)「だらしない人ほどうまくいく」、文藝春秋(2007)

お薦め度:★★★★

著者のひとり、エリック・エイブラハムソンは名門ビジネススクール、コロンビア大学ビジネススクールの教授である。そのエイブラハムソンが、きっちり系、だらしな系を事例をあげ、対比しながらながら、「だらしない」ことのメリットを解説した一冊。ただし、だらしないのには病的なものもあり、それは除いて議論している。

本書でだらしな系のメリットの根拠となることは、コストと柔軟性である。最初に、トランプのメタファが紹介されている。2組のトランプがある。1組はよく切ってある。もう1組は絵柄ことに数字の順に並べられている。それを2人の人間に渡し、特定の4枚のカードの絵柄と数字を告げてどちらが早く見つけ出せるかを競わせる。当然、並べてある方だ。並んでいるなかから探し出すのに16秒、並んでいない方から探し出すには35秒かかった。

ここで面白い指摘をする。並んでいないトランプをトランプ愛好家に協力して並べてもらうと140秒かかるというのだ。

つまり、トランプは並んでいないという日常的な状況を前提にすると、結果が逆転するというのだ。

さらに、面白いのは、抜いた4枚のカードを並べている組の元の位置に戻すには16秒かかるという。つまり、並んだ状態を前提にしても、35秒と32秒ということで、ほとんど変わらない。

このように完全性を保つにはコストがかかり、必ず、きっちりとしている方がよいということはないというのが本書の主張。これを事例、歴史、だらしな系の組織など、いろいろな視点から体系的に250ページにもわたり書いているのだ。

本書で指摘されているだらしな系とキッチリ系の比較は以下のようなものだ(前者がだらしな系、後者がキッチリ系)

・素早く、劇的に、多様に、より少ない労力で状況に適応し、変化することができる
vs 需要の変化や予期せぬ出来事、新たな情報に対して融通がきかず、対応が遅れがちである

・異質なものを簡単に内側に取りこむことができる
vs 内に含めるものの量や種類を制限する。有益なものや、不可欠なものも排除してしまうことがある

・環境や情報や変化となじみ、そこから有益な影響を受けられる
vs 外部からの影響を遮断して、決して相容れることがない

・さまざまな要素に触れ、変化を促し、問題を顕在化させ、新たな解決策を導き出してくれる
vs 未知の存在や不測の事態を嫌い、それが現れると、即座に排除しようとする

・比較的少ない労力で目標を達成することができる。労力の一部をアウトソーシングすることができる
vs システムを維持するために常に大きな労力が必要になる。その労力はすべて自分で背負いこまなければならない

・大きく異なる要素でも内に組み込むことができるため、攻撃や妨害や模倣に対する抵抗力がある
vs 強さと弱さを併せ持ち、たやすく破壊されたり、失敗をおかしたり、混乱したり、模倣されたりする

若干、ものの言いようだという気もしなくはないが、確かにこう考えると、だらしな系が効果を発揮すビジネスやマネジメントというのは思い当たるものがあるだろう。もちろん、本書の中にも、運行スケジュールのない航空会社、POS管理しない書店、設計図なしでビルを建てる建築家など、いろいろな事例が紹介されている。

ただし、この本の結論は、だからだらしな系ということではない。バランスが重要だというある意味で当り前の結論だ。当たり前ではあるのだが、意外とこのバランスというのは考えられないことが多い。どこまでやるかという判断は難しいからだろう。その点について明確な示唆はない。この点が多少不満であるが、ビジネスマンとしてもマネジャーとしてもこのような視点を持つことは重要だろう。

エイブラハムソンも指摘しているように、整理整頓をするというのは思考停止を引き起こす。つまり、何も考えずに、きっちりした方がよいと無条件に考えがちである。この点について考えなおすきっかけになるだけでも貴重な本だ。

特に、マネジャーには一読をお勧めしたい。

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2008年2月14日 (木)

女性化しているビジネスマン

4478731209 エイドリアン・メンデル(坂野尚子訳)「女性(あなた)の知らない7つのルール―男たちのビジネス社会で賢く生きる法」、ダイヤモンド社(1997)

お薦め度:★★★★1/2

原書:How Men Think: The Seven Essential Rules for Making It in a Man's World

珍しく、10年以上前に出版された本を紹介したい。今、企画中のセミナーのために読みなおして、意外な感想をもったからだ。

内容は、ビジネスは男中心のゲームであり、女性はそれを理解しないためにずいぶんと損をしているというもの。あまり記憶が確かではないが、この本を最初に読んだのは1999年だと思うが、米国でもそうなんだと、結構、新鮮な衝撃を受けた覚えがある。

改めて何を感じたかというと、米国の状況はよくわからないが、日本ではビジネスでの女性の活躍は当り前のことになってきた。おそらく、最初にこの本を読んだ頃には、活躍する女性は目立っていた。しかし、今は目立たない。たとえば、仕事がら、大手の企業の部長クラスとお会いすることが多いが、女性は珍しくない。

そして、その人たちは女性独特の世界を作り上げているかというとそうではない。もちろん、女性ならではのものの見方、考え方はあると場面場面である思うが、大きな流れは男性が作ったビジネスのルールに従って堂々と自らの地位を築き上げている。これは、この本が啓蒙していることでもある。

この本ではビジネスというゲームには7つのルールがあるとしている。

ルール1:できるふりをする
ルール2:自分を強く見せる
ルール3:つらくても継続する
ルール4:感情的にならない
ルール5:アグレッシブになる
ルール6:戦う!
ルール7:真のプレイヤーになる

という7つだ。そして、このビジネスゲームを楽しむには、女性には3つの欠点があるというのがこの本の指摘。その3つとは

欠点1:失敗を恐れすぎる
欠点2:消極的すぎる
欠点3:優先順位をつけられない

の3つ。

さて、なぜ、この本を紹介したか。上に述べたように女性がこのビジネスゲームのルールに適応してきたのに対して、キャリアの浅い年代を中心に、ビジネスマンが女性化してきたのではないかと思う。

この本の中に男女の行動特性の違いを説明するためにこんな実験が紹介されている。

ハインズ夫人は病気で特別な薬を飲まないと死んでしまうかもしれない。しかし、その薬はとても高い。夫にハインズ氏には薬を買うお金がなく、薬屋さんも安くは売ってくれない。

この状況で「ハインズ氏は薬を盗んでもよいでしょうか?」という質問を男の子と女の子に別々にこの質問をした。

多くの男の子は「大切なものは何か」という問題に置き換え、命よりも大切なものはない以上、ハインズ氏は薬を盗んでもよいという結論を導ける人が多いそうだ。したがって、問題解決ができる。

ところが女の子は、薬を盗んだら、人との関係にどう影響するかを考える。そして、財産と命を比較するのではなく、薬を盗まずにハインズ夫人を助ける方法はないかと考え始める。当然、そんな方法はなかなか、見つからない。銀行でお金を借りてこのジレンマを解消しようとする。

つまり、男の子はものを盗んではならないというルールは受け入れた上で、ルールの抜け道を探す。この場合だと、捕まったとしても裁判官が理由をつけて無罪にする方法はないかと考える。

女の子はルールをそのまま受け止め、場合によっては使えないと判断し、ルールを無視してしまう。このケースだと銀行は返済能力のある人にのみお金を貸すというルールを無視する。

このエクスサイズを読んでいると、男女をとわず、ビジネスマンが女性かしているのではいかとつくづく思うのだ。

ルールがあるからビジネスである。男女とも、本書を読んでもう一度、原点に戻ってはどうだろうか?

ただし、ビジネスのルールそのものが変わってきたと指摘する人もいる。たとえば、週刊東洋経済2008年2月9日号では、「働きウーマン~世界は女性を中心に回りはじめた! 」という特集を組んでいる。これを読んでいると、男性の作ってきたビジネスゲームのルールが変わってきたので、それに対するしがらみのない女性が台頭してきたと感じなくもない。

その意味でこの本でメンデルが示しているルールそのものが変わってきているような気がしないでもない。あるいは、近い将来変わるような気もする。

4063289990 この特集号で表紙に使っている「働きマン」の主人公・松方弘子は思いっきり男キャラで、それに時々女性目線が入って活躍するという話なので、今、求められているのは、まさに、そんな人材なのかもしれない。

その点も含めて、ルールがあるからビジネスなのだというこの本の指摘そのものは普遍性のあるもので、ゆえにゲリラはゲリラで、ゲリラがビジネスを支配することはないだろう。そして、そのルールに対して適合できるものが生き残るという指摘も、またただしいと思う。その意味でも、読んでみる価値のある一冊だ。

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2008年2月11日 (月)

メンタルヘルスと経営学の統合

4478003378 佐藤隆(グロービス経営研究所監修)「ビジネススクールで教える メンタルヘルスマネジメント入門―適応アプローチで個人と組織の活力を引き出す」、ダイヤモンド社(2007)

お薦め度:★★★★

メンタルヘルスマネジメントは検定試験もでき、社会的に関心が高まってきている。書籍出版も増えてきたが、この本はちょっと変わっている。

まず、構成が
・基礎編
・状況把握編
・ソリューション編
の3つにわかれている。

基礎編では、メンタルヘルスの基礎知識ということで、今、世の中で起こっていること、メンタルヘルスとはどのようなものか、この本のスタンスである適応アプローチとは何かといったことが解説されている。また、ストレスとは何かということについても説明されている。どんな本にも書かれているような内容だが、マネジャーやリーダーが何をすべきか、何を知っておくべきかという点にも言及されており、ちょっと一味違っている。

次は状況把握編で、自己のストレス特性や状況の把握、組織のストレス状況の把握方法について説明されている。

この本のメインは次のソリューション編である。この本のスタンスは上に書いたように適応型アプローチで、これは、世の中の変化についていけずストレスが発生している状態を、変化に適応するように変えてやるというアプローチだ。

この変化への適応に関して、

・セルフケア
・リーダーシップ
・人的資源管理

の3つの視点から、マネジメントとしてどのようなことができるか、どのようなことをすべきかについて体系的に述べられている。また、そのための施策についてもオリエンタルランドやTISなどの事例を紹介している。

最初はもっとプロアクティブなアプローチが書かれていると期待しながら読んだのだが、結局は組織による定期的なチェック、および、その結果からの全体的な傾向の把握、そして、個人も組織もコーピング(ストレス対処行動)というところを中心に対処をしていくという受け身のマネジメントという印象がぬぐえない。問題の性格上仕方ないかもしれないが、マネジメントとしては、まだまだ、大きな課題があるようにも思う。

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2008年2月 7日 (木)

Win-Winの関係づくりのバイブル

4426104432 鈴木有香「コンフリクト・マネジメント入門-人と協調し創造的に解決する交渉術」、自由国民社(2008)

お薦め度:★★★★★

最近、ネゴシエーションがマネジメントの一つの要素として、意見の対立があると、以下に勝つかということに関心が高まってきている。確かに、Win-Winといった概念があり、それを目指そうとするのだが、多くの人はできればそうそこに落としたい。しかし、時間がないなどの理由で一方的に相手をやっつけようとしたり、あるいは、痛み分けのような結論を求める。

特に、エンジニアというのは好戦的な人が多い。特に、仕事に熱心な人ほど、好戦的な傾向があるように思う。この本を読んでみると、そのようになる理由がわかってくる。白黒をはっきりとさせる、短期的な決着や成果を求めるという技術者魂(?)がなせる技かもしれない。

この本は最初から最後まで、独特の考えも基づいたコンフリクトマネジメントスキルが展開されている。

第1章では、まず、コンフリクトにはネガティブな面だけではなく、肯定的な面なあるというところから始まる。これが全体のコンテクストになっている。なかなか、こうは思えないものだ。

そして、コンフリクトの解消には協調的アプローチと競合的アプローチがあり、協調的なアプローチの方が将来的な好結果を生むことを指摘し、そのためのスキルについての解説に入る。

最初はコンフリクト分析のポイントで、
・ぶつかり合う立脚点
・見えていないニーズ
・絶対譲れない世界観
・双方で解決に取り組み問題を再焦点化する
・よりよい解決策をつくるための建設的提案
・破壊的提案は人間関係を終わらせる
の6つを上げ、細かく説明している。納得!

次に、協調型交渉のプロセスを具体的に説明している。さらに、次の章では、コミュニケーションの取り方と感情の関係について整理して解説されている。

これらの準備の後に、実践のためには、どのようなトレーニングをすればよいかを提案している。これも納得性が高く、また、ポイントが絞られているので個々のトレーニングは容易に、反復的に取り組むことができる。

最後に、ハードスキルとして、
・目標設定と行動計画
・フィードバック
・怒りへの対処とクレーム処理
・コーチング
・ミディエーション
の6つを取り上げ、解説している。

全般的に結構難しい話をしているようにも思うのだが、解説は平易で、わかりやすく、さらに、ふんだんにケースを使って説明されているので応用もききやすいように思う。素晴らしい本である。

Win-Winの関係づくりのバイブルといっても過言ではないだろう!

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2008年2月 4日 (月)

シンプルだから強い

北欧が注目されている。

ビジネス誌でも特集が組まれ、いろいろな点で注目されているようだ。昨年、出版された本で、北欧出身でライフバランスのコンサルティングをやっている著者が書いた

4072568341 ランディ・ノイス(椿正晴訳)「北欧流スローライフ・コーチング」、主婦の友社(2007)

を読んでみて、なぜかわかった。一言でいえば、生活も仕事も質が高いのだ。一昨年くらいからデザイン・マーケティング業界で「ひとつ上」というのが流行語になったが、まさにひとつ上のなのだろう。

北欧企業というとノキア(フィンランド)、IKEA(スウェーデン)、ボルボ(スウェーデン)、ABB(スイス)などが頭に浮かんでくる。これらの企業は、

4860290690 オッレ・ヘドクヴィスト、可兒 鈴一郎「ノルディック・サプライズ―北欧企業に学ぶ生き残り術」、清流出版(2004)

で取り上げられているので、興味があれば読んでみるとよいだろう。

いずれも、グローバルな大企業であるが、特徴はレバレッジの効いた経営にある。ゆえにシンプル、機能美、・・・といった言葉が思い浮かぶ。北欧の一つの面は、大きな政府だが、シンプルで効率的な考え方ができるからこそ、大きな政府が可能になるのだと思う。

北欧は、アメリカ信奉のアンチテーゼだという人もいるが、やはり、何か、生活や文化に根ざした独特の思考法なりがあるのではないかと思う。いろいろと本を探していると、こんな本があった。

4478760969 フレドリック・ヘレーン(中妻美奈子監訳、鍋野和美訳)「スウェーデン式 アイデア・ブック」、ダイヤモンド社(2005)

たとえば、こんな話が載っている。アインシュタインが、「博士と私たちのようなその他大勢の違いはなんでしょうか?」と聞かれてこう答えた。

たとえば、干し草の山から針を探さなくてはならないとします。あなた方はたぶん、針が1本見つかるまで探すでしょう。私は針が全部、見つかるまで探し続けると思います」

こんな話がエッセイとして30書かれた本だ。この本を1冊読み終わると、ノキアやIKEAの企業イメージが頭に浮かんでくるので不思議だ。きっと、何かDNA的なものがあるのだと思う。

1 針を探す
2 はてなタクシー
3 世界初の創造性テスト
4 メタファーで表現する
5 エジソンのアイデア・ノルマ
6 組み合わせの妙
7 いつものやり方
8 アイデアは潰されやすい
9 満腹病
10 メキシコ・オリンピック
11 バグを探す
12 囚人用ベビーフード
13 混ざらないものを混ぜる
14 失敗するほどいい
15 裸の王様
16 「絶対」はない
17 「もし・…・・」と考える
18 アイデアメーション
19 「メトロ」の裏話
20 考える人、考えない人
21 青いライトと赤い車
22 創造性の4B
23 発想のもと
24 それ、捨てるんですか?
25 暗黙の掟
26 チャレンジャーになる
27 テレポーテーション
28 「イエス」より「ノー!」
29 将来のシナリオ
30 素晴らしき未来

この本が訴えているのは、リラックスがアイディアを生むということだ。これが、スローライフにフィットしているのかもしれない。とりあえず、このあたりから北欧を感じてみよう。

2008年2月 3日 (日)

「打たれ強さスイッチ」を入れる!

4413009371 岡本正善「打たれ強さの法則―心のスイッチを入れる実践トレーニンク」、青春出版社(2008)

お薦め度:★★★1/2

著者の岡本正善氏はプロゴルファー、プロ野球選手などの能力を引き出しているメンタルトレーナー。原理は自分の弱さを認めることによって、本当の強さを見つけることにある。応用範囲は広く、ビジネスの中でも

・肝心なところで力を出したい
・目標をもって仕事をしたい
・上司や部下との人間関係をよくしたい

といった応用範囲について述べられている。この弱い自分を否定しないという考え方はトレーニングに対して強い動機づけになるだろう。

この本は、以前出版された

4413017986「逆境を生き抜く「打たれ強さ」の秘密―タフな心をつくるメンタル・トレーニング」、青春出版(2000)

のトレーニングを強化したような内容になっている。本書の出版の影響か、あるは、何かを耐えなくてはならない世の中だということなのか、8年前のこの本が今、たいへん、売れているそうだ。ちなみに、この記事を書いた時点で、アマゾンでは、450位だった。

さて、本書で紹介されているトレーニングはシンプルである。ベーシックとアドバンスに分かれ、ベーシック編では

・強くなる呼吸法(メンタルリズムを作る)
・思ったことを次々に実現するイメージ力

の2つのテーマでいくつものトレーニング法が紹介されており、また、ツールも紹介されている。また、アドバンス編では

・動じない心をつくる自分のリズム
・よろ自分らしく生きる目標の作り方

の2つのテーマで、同じくトレーニングとツールが紹介されている。トレーニングはシンプルであり、日常的に取り組むことができるだろう。たとえば、イメージ力を鍛えるトレーニングで、五感を鍛えるトレーニングでは、「いちばん敏感な感覚」を考えさせる、「風呂で一つ一つの感覚をトレーニングする」などだ。

さらに、この本の特徴は「スイッチ」というメタファを使って、打たれづよいスイッチを入れるという方法を推奨している。これが一番のみそ。つまり、トレーニングで潜在能力を開発し、スイッチメタファでその潜在能力を引き出す。こんなロジックだ。

個人的な感覚だが、スイッチメタファは打たれ強さということに対して、非常に強力な方法ではないかと思う。ぜひ、本を読み、気にいったら試してみてほしい。

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