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2006年10月

2006年10月 3日 (火)

ファシリテーションによる組織変革

449253218801 堀公俊「組織変革ファシリテーター―「ファシリテーション能力」実践講座」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

ファシリテーションの日本の第一人者堀公俊さんの書かれた、ファシリテーションによる組織変革方法論。

これまで、あまり、フォーカスされていなかった分野にファシリテーションの技術を適用している。大変実践的で、まさに、待望の一冊。

3章構成になっており、まず、第1章では、ファシリテーションの考え方を組織変革にどのように生かしていくかを解説している。

第2章では、組織を変えるために有効はファシリテーションの技術として、コミュニティビルディング、ビジョンメイキング、プロセスチェンジの3つについて、ファシリテーション技術を使ったアプローチを解説している。

第3章では、具体的な組織変革の進め方を説明している。

この本に書かれているような話は、断片的にはどこかで聞いたことがある内容が多いが、体系的に使って初めてインパクトがあることが分かる。その意味で、一度読んでおいて損のない本だ。

なお、堀さんは同じシリーズから

4492531580問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座」(2003)

という本を出されている。ファシリテーションの書籍の中では文句なしのNo1だと思う。関連性が深い内容なので、本書と併せて読まれることをお奨めしたい。

【堀公俊さんの書籍のほかの記事】

支援型リーダーシップを身につける

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2006年10月 2日 (月)

MOTの定番テキスト

453213321101 延岡健太郎「MOT“技術経営”入門」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

日本経済新聞社が展開している Management text シリーズにMOTが登場した。著者は、神戸大学の延岡先生。この2点だけでも買いの一冊だ。

MOTの体系というのは難しい。多くの本はあるが、非常に癖がある本が多く、必要以上に技術戦略にフォーカスしたり、経済効果にフォーカスしたりといったものが多い。事情を鑑みると、やはり、従来のマネジメント論と差別化したいという想いが強いのだと思われる。

しかし、MOTといえども、目的は利益を上げることであり、事業成長をさせることであるので、従来のマネジメント論と変わらない。従って、従来のマネジメント論に、技術的ポイントを満遍なくばら撒いたような本が必要で、戦略経営でそのような本を書けるのは、延岡先生や神戸大学の技術経営の先生だけではないかと思っていた。

その期待に裏切らない一冊である。本書は、MOTへの視座を明確にした上で、戦略、事業構造、組織構造、プラットホーム、組織マネジメント、プロジェクトマネジメント、顧客価値創造、企業間連携など、非常にオーソドックスな流れで、MOT論を展開している。

453213247909 いずれ、「ゼミナール経営学」のようなマネジメントの基本テキスト的存在になっていくことが期待される。

ぜひ、一冊購入し、じっくりと読んでほしい。

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2006年10月 1日 (日)

心地よい格差社会

482224542x01 小林由美「超・格差社会アメリカの真実」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★

この1年くらい、政争の具に使われている「格差問題」。この議論を聞いていて、なんとなく釈然としない部分がある。それは、格差があることが良いことか悪いことか、それとも、そういう次元の議論ではないのかである。

僕自身の考えをはっきりいえば、格差があるところで、すべての人が幸福感を感じることができるのが政治ではないかと思う。そのように考えたときに、格差を是正すると言う言葉で表現しようとしているものが、富の再配分を意味しているのか、格差を前提として平等な社会を作ろうとしているのかすら明確にならないままで、格差という言葉が独り歩きしているような印象が強い。

この本では、超金持ちと、仕事のプロと、貧乏人と、社会的落ちこぼれしかいないといわれる米国社会の実態をデータに基づいて描き出してるととにも、社会に格差が定着していく一連の流れの中で政治のスタンスを分かりやすく分析している。

さらに、それでもなぜ、アメリカという国は心地よいのかという分析と行っている。この章がたいへん、興味を引いた。

この分析のポイントはスピード感である。自民党総裁選でしばしば話題になった再チャレンジを見ているといかにも日本的でうんざりしてくる。それはスピード感がないことだ。例えば、30歳でトップ手段を走っていた人が何らかの挫折をした人が40歳までの10年間頑張り、再び、トップ集団に並ぶところまできた。日本人的にはよく頑張ったということになるだろう。実際に今まであまり見られなかったことだし、再チャレンジということになるのだろう。このようなプロセスを支援するというのは、いわゆる勝ち組が単に優越感を持って負け組みを支援しているだけだ。

再チャレンジが可能な社会というのはこういうことではないと思う。失敗した人が、自身の才覚で成功した人を抜きさる。これが再チャレンジが可能な社会だと思う。例えば、ベンチャー企業を起こして失敗した。経営者の資質に疑いがなければ、負の資産を持たないままで、再び、再起の機会を与えられることが再チャレンジだろう。

これは日本人の国民性からは許しがたい部分がある。まずは負の資産をきれいにするところから始めるべきだと思うとなる。この部分がある限り、米国のようになることは難しいなということを痛感した一冊だった。

ただし、この本には第8章に面白い問題提起がある。米国のモデルがグローバリゼーションに耐えられるかという問題だ。ぜひ、本書を読んで確認してみてほしい。

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超現場主義で商売繁盛

4774507601 上野和夫「人事のプロが書いた商売繁盛学 ”超現場主義”のすすめ」、現代書林(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上野氏は西武百貨店人事部で30年のキャリアを積まれた方で、その上野氏が小売業の「儲かるサービス現場」にこだわって書き上げた一冊である。事例などは小売業を事例に書いてあるが、顧客接点のあるビジネスを展開している企業においては、非常に学ぶところの多い本である。

この本では顧客接点で高い付加価値を生み出す人材をたくさん育成し、顧客から「ありがとう」といわれるプロのサービスを提供する企業をサービスカンパニーと定義し、サービスカンパニーを目指すために必要な人材育成、人事制度について提案されている。

第1章ではサービスカンパニーを作るための超現場主義10か条が提案されている。これが非常に興味深い

1)体制作りの目的は顧客価値創造の一点に向けられている

2)そのためにもっとも効果的で効率的な仕事の仕組みをくつくること

3)顧客価値創造に直接関係しない仕事は徹底的にそぎ落とすこと

4)個々人の能力を最大限発揮させるための仕組みをつくりあげること

5)個人には自己責任の原則が確立していること

(あと、5つあります)

第2章では、プロフェッショナルについて論じられている。西武、プロフェッショナルというと常に出てくるのが、伝説のシューフィッター久保田美智子さんであるが、彼女のプロフェッショナル論が社内研修の内容をベースにして紹介されている。今まで雑誌などで何度が読んだが、よく分からなかった部分が良くわかった。

小売業のプロフェッショナル論というのはITなどの専門性の高いプロフェッショナル論とは異なる部分が多いと思っていたが、この本を読んでそうではないことが明確になり、この本の主張そのものが、どんな分野でも通用するものだという認識に至った。

実は、この本を読む2週間くらいまえに、ある大手IT企業の事業部長さんと話をする機会があり、顧客からの要件がうまく聞きだせない、どうすればよいだろうかという相談を受けた。その際に、小難しい話(要件定義の方法論)はそれはそれで必要だが、もっと根本的に、人間同士が話をするのだから、その場でどういう態度を取るかは極めて重要で、この部分にサービス業や小売業からもっとベタなベストプラクティスを引っ張ってきたほうがいいのではないかという持論を展開したところ、露骨にいやな顔をされた。この部長さんにぜひ、お奨めしたい一冊である。

後半は人事制度について議論されている。前半の主張に整合する形の人事制度の提案であり、なるほどと納得できる内容である。

好川の読書法とブログ

このブログの読者の方から時々、「どのようにして本を選んでいるのか」と聞かれる。よく本を読んでいますねとも言われる。

だいたい、週に1~2回、本屋に行く。出張が多いのだが、出張先でもできるだけ同じ本屋にいく。なぜかというと、新しい本だけをチェックするのに同じ本屋が便利だからだ。

そして、だいたい、平均して、1回に4~5冊は買っていると思う。なので、月にすると、20~30冊の本を購入していることになると思う。

基本的に全て目を通す。一冊の本はできるだけ60分で目を通すようにしている。この中から、面白そうなものにはメモを取ったり、ラインマークしたりしながら読み直す。こちらは本の内容や分量に依存するが、他の人に較べると早い方だと思う。これは月に4~5冊といったところだ。

ブログに書く本の選定は、最初の目を通した時点で行う。もう詳しくは読まないものは、だいたい、その時点で記事を書く。もう一度、読み直すことにしたものは、精読の後にブログ記事を書くようにしている。

発売日近くで書いたものはだいたい、精読していない本が多い。時期を置いて出てくるものは精読しているものが多い。

僕は良い本を2種類に分けている。人に読んでほしい本と、自分が役に立つ本だ。このように書くともうお分かりだろう。速読で終わるものは人に勧めるだけの本。精読しなおす本は、自分が何かを得ようとする本だ。

ちなみに点数(★)は、比較的客観的な基準でつけている。文字通り、お奨めレベルだ。

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