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2006年2月

2006年2月26日 (日)

MOTならこれ

482224500401lzzzzzzz 技術経営コンソーシアム監修、三菱総合研究所編集「標準MOTガイド」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★

この数年間に本がたくさん出版されている分野がプロジェクトマネジメントと、MOTである。MOTの本はたぶん、3~40冊あると思うが、この本は非常に出来のよい本。

目次を見てもらえば分かるが、基本的な事項からトピックス的なところまで300ページ強の中にうまく収められているので、いろいろな目的で読めるし、また、内容的にも読みやすい本だ。たぶん、経営学部などで、MOTの科目に使うような狙いで作られている本だと思うが、一冊読めば、さしあたり、最低限必要な知識は身に付くだろう。

残念なことは、プロジェクトマネジメントというテーマがあまり、扱われていないことだ。組織マネジメントとしてプロジェクトにどのように取り組んでいくかについては、延岡先生の書かれた部分があるが、それ以外はあまりない。

この点は、日本と欧米の大きな差なのではないかと思う。

だが、逆に、プロジェクトマネジャーが必要とするMOTの知識はこれ一冊で十分ではないかと思う。

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2006年2月24日 (金)

第1感を大切に

433496188609lzzzzzzz マルコム・グラッドウェル(沢田博、阿部尚美訳)「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」、光文社(2006)

ジョナサン・スクーラーという心理学者は「言語による書き換え」という研究をしている。例えば、レストランに入って、接客してくれたウェイトレスを、警察で面通ししてくれといわれれば、ほとんどの人はできるだろう。しかし、レストランに入る前に、ウェイトレスの特徴を紙に書き留めて欲しいと言われていると、顔立ちとか、服とか、特徴に注目する。結果として、今度は警察で面通ししても識別できないことが多いという実験がある。このような現象を「言語による書き換え」とよび、精力的に研究している学者である。

彼の研究によると、論理的な思考が問題解決に大きな影響を与えることがあるそうだ。こんななぞなぞを考えてみて欲しい。

ある男性と彼の息子がひどい交通事故に巻き込まれ、男性は死んだ。息子は病院の緊急治療室に運ばれた。緊急治療室に入ってきた医者がその子を見て叫んだ。「うちの子だ」。さて、この医者は誰か?

有名ななぞなぞであるので、ご存知の方はご存知だと思う。医者=男という思い込みを捨てたらすぐに分かる。このような問題は論理性を問う問題ではないが、ここに紙と鉛筆を持ってきていろいろ考え出すと解けなくなる。これが「言語による書き換え」の弊害だ。

このように理屈だけでは解決できない問題が多いということを指摘した本である。このような例は、我々の仕事の中でも数多くある。特に、最近、MBAとか、PMとかで論理的思考が重視されるようになってきて、目立つようになってきた。

心理学的にいえば、「適応性無意識」というそうなのだが、そのような事例をたくさん書いてあるので、それを読むだけでも楽しい本だ。

2006年2月19日 (日)

プロジェクト品質マネジメント

4820117645 ティモシー・J. クロッペンボルグ、ジョーゼフ・A. ペトリック(三浦重郎訳)「プロジェクト品質マネジメント―全体最適を実現する4つの柱」、生産性出版(2003)

お奨め度:★★★1/2

PMBOKに準拠したプロジェクトマネジメントにおいて、プロジェクト品質を向上させるための視点、その視点からの品質管理を実行するためのツール、手法をまとめた本。プロジェクトが計画通りに行かなくて悩んでいるプロジェクトマネジャー必読書!

読むには、PMBOKの知識が必要なのだが、逆に、PMPの受験勉強をしてPMBOKを覚えた人が読んでみるとPMBOKの理解を深めるのに非常に有効である。プロジェクト品質、つまり、いかにプロジェクトを計画通りに行うかという視点から見ると、PMBOKの新しい側面が見えてくるだろう。

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2006年2月18日 (土)

プロジェクトレビュー

479811031009lzzzzzzz 菊島靖弘「実務で役立つ プロジェクト・レビュー」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★1/2

ソフトウエア品質管理を体系的にまとめた本。著者の実績に基づいて書かれているので、迫力があるし、また、ツールの紹介が豊富にあり、実用的でもある。

ただし、プロジェクトマネジメント(開発マネジメント)の全体像がよくわからないため、品質管理については流れが分かるが、品質管理も含めたプロジェクトマネジメントについては断片的知識となる可能性があるので、読む際にはその点を意識しながら読みたい。

その意味で上級者向きであるが、PMOのスタッフにはぜひ、読んで欲しい一冊。

最後に、PMマガジンからの単行本は2冊目だと思うが、一冊目のWBSもよかったし、今後も期待したい。

実務で役立つWBS入門

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これからの働き手のマネジメントをどうするか

482224488109lzzzzzzz
大久保幸夫、リクルートワークス研究所「正社員時代の終焉-多様な働き手のマネジメント手法を求めて」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★1/2

リクルートワークス研究所らしい切り口の研究の結果をまとめた本。多くの人がもやもやと感じていることを、体系的に整理しているので、現場のマネジャーが読んでも、人事マネジャーが読んでも、多くの気づきのある1冊だ。

基本的な問題意識は、社員、契約社員、パート、派遣、業務委託など、働く目的も、働き方も異なるこの“混成集団”を、どう管理していけばいいのか?という点にある。これに大して、組織側の視点から、正社員に任せるべき仕事はなにか、非正社員に任せる仕事はなにかという議論がベースになっている。

面白いのだが、ある種の非現実感が伴うのも確かだ。変化が起こるという意味で、現在の組織を基準にした場合に何が起こり、どう対処していけばよいのかという議論になることは間違いないのだが、新しい組織の姿というのがもうひとつ説得力に欠けるように感じた。

一つの提案ではあるが、もう少し、社員も含めた個々人の組織へのコミットメントの変化が起こってきて、例えば、プロジェクトのような新しい組織形態が発生していくのではないかと思える。

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ビジネス人間学

453231265501lzzzzzzz ハーヴィ・マッケイ(栗原百代)「ビジネス人間学―「超」のつく成功者になる94の法則」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

サブタイトルの方をみて、最近、多い成功本かと思って手にとってみたら、深い。ビジネスにおける人間関係の構築や維持に非常に役に立つTips集である。全世界で400万部売れているというのも納得の一冊だ。

キャッチテーマは帯にあるように

 人生の大草原をサメに食われずに泳ぎ切れ!

である。ビジネスにおける人間(相手)をサメだと比喩しているのはやはりすごい知見である。どんなビジネスにおいても、人間は一つ間違えれば危険極まりない存在になる。それをうまく乗り切っていくのは、確かに成功者の条件である。

第1章は「今夜の試合のチケット、一万5000枚ください」と風変わりなタイトルになっているが、この本の言いたいことはここに集約されているというか、このような状況を乗り切るためのTipsが書かれている。

この本はすばらしいと思うが、反面、この分野というのはカーネギーという古典に尽きるという442210051309lzzzzzzz 気がしないでもない。

デール・カーネギー「人を動かす 新装版」、創元社(1999)

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キャリアとリーダーシップ開発の具体的方法

456964863001lzzzzzzz 野口吉昭編、HRインスティテュート著「リーダーシップのノウハウ・ドゥハウ」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★1/2

野口さんとHRインスティチュートのノウハウ・ドゥハウのシリーズは結構すきなのだが、この本は正直びっくりした。リーダーシップでこういう本が書けるのかという感じの一冊。

アマゾンでリーダーシップで和書を検索すると1670件出てきた。この中の1冊なのだが、類書がないのではないかと思う。

リーダーシップ本というと、

(1)理論的な解説を中心にした本

(2)エクセレントなリーダーを取り上げ、リーダーシップの解説をした

(3)特定のタイプのリーダーシップを取り上げ、リーダーの行動レベルに落とし込み、リーダーのとるべき行動を解説した本(いわゆるリーダーシップ本)

の3つの大別される。点数として圧倒的に多いのは、(3)と(2)であるが、どうしても、つまみ食い的になる感があるのは否めない。(1)は難しい。ちなみに(1)だと、金井先生が日経文庫に書かれた

リーダーシップ入門

がよい。

さて、この本だが、この3つのいずれにも当てはまらない。

金井先生が言われているように、リーダーシップの話はキャリアとの関連性が強い。これはもともとは、金井先生のお師匠さんである、MITのエド・シャインが言い出したことだが、例えば、金井先生が訳された本で、

決定的瞬間の思考法

などを読んでみると、そのよくイメージがわかる。

最近、リーダーシップをヒューマンスキルだと捉える傾向が強くなってきているが、リーダーシップはヒューマンスキルだけでは収まらないことは、例えば、GEの偉大なリーダーであるジャックウェルチの本を一冊読んで見ただけですぐに分かる。

447836087109lzzzzzzz ジェフリー・クレイムズ「ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件

野口さんの本は、キャリアとリーダーシップに対して、ノウハウ・ドゥハウらしい、具体的な方法論・ツールを提案している。どこまで方法論として成熟しているかは微妙であるが、結構、画期的な試みではないかと思う。

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2006年2月15日 (水)

リーダーの悪習慣

489346944409lzzzzzzz 山中英嗣「なぜか思考停止するリーダー―MBAホルダーに見るリーダーの落とし穴」、総合法令出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

リーダーの陥りやすい落とし穴を

・場当たり

・想像力ゼロ

・お山の大将

・うすっぺら人間型

・暴走機関車型

の5つに分類し、それぞれに対して以下のような気づきを示している。

・言っていることと逆のことをやっていないかをチェック(場当たり)

・定義の違いを理解できていないのではないかチェック(想像力ゼロ)

・器が小さく、謙虚不在になっていないかチェック(お山の大将)

・仕事はできるが信頼ゼロになっていないかチェック(薄っぺら人間)

・相手のニーズを認識不能に陥っていないかチェック(暴走機関車)

なかなか、よくまとまっている。リーダーシップというのは具体的なイメージがつかめないと思っている人はこのような本を読んで、いわゆる悪習慣を知って、それを反面教師にしながら、自分の行動規範を作っていくのもよいだろう。

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2006年2月12日 (日)

ビジネス・プロフェッショナル

Businessprofesshonal 大久保幸夫「ビジネス・プロフェッショナル―「プロ」として生きるための10話」、ビジネス社(2006)

お奨め度:★★★★

リクルートワークス研究所の大久保所長の新著。ワークス研究所ではここ何年か、プロフェッショナルを共通研究テーマにしている。個別のテーマの成果は都度「Works」で発表されているが、その集大成のような本。

新しい概念として、「ビジネス・プロフェッショナル」という概念を提案している。プロフェッショナルという言葉の最も狭い定義は、職業独占をしている資格を持つ人だと思う。例えば、建築士のような資格である。

これに対して、一番広い定義は、「その道のプロ」といった言い方がされるような人を指す言葉で、何か、課題を自己責任において、相手が満足できるようなレベルで達成できる人のことだろう。ビジネス・プロフェッショナルという概念はどちらかというとこれに近い。例えば、プロのサラリーマンという言い方があるが、そのような感じだ。

さて、この本だが、冒頭に述べたようなワークス研究所の研究の集大成のような位置づけになっているので、プロフェッショナルを目指す個人に向けた話と、プロフェッショナルな組織を作る人事系の人に向けた話がごちゃ混ぜになっているような感じがある。

個別には、どちらの側面からも非常によくまとまっており、説得力があるので、どちらの分野の人にもぜひ読んで欲しいのだが、その点をきちんと整理して読んでいく必要がある。

特にお奨めしたいのが、個人の方には第3話~第8話。これは、大久保所長が2年暗い前に書かれた

482224409109lzzzzzzz仕事のための12の基礎力~「キャリア」と「能力」の育て方~」、日経BP社(2004)

を視点を変えて、補強したような内容になっている。分かりやすさという点では、こちらの本を併せて読まれた方がよいかもしれない。

人事系の人へお奨めしたいのは、第1話と第9話である。

プロフェッショナリズムというのは本来組織が雇用者に対して求めるものではない。利用すべきものであり、そのための仕組みがプロフェッショナル制度である。その当たりをもう一度、考えながら読んでみて欲しい。

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2006年2月 5日 (日)

ケースで鍛えるリーダーシップ

447836088x09lzzzzzzz 保田健治「ケースで鍛える 人間力リーダーシップ」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★

リーダーシップを中心に、他人に影響を与えるヒューマンスキルを29のケースで学べるようになっている、ありそうでなかった本。

扱われているケースは

ケース1「リーダーは俺だ! 俺についてこい!」
ケース2「教えるより、自分でやったほうが早いよ」
ケース3「『いつでも相談に来い』と言ったって・・・」
ケース4「メンバーが未熟で、何も任せることができない!」
ケース6「チームリーダーとして一所懸命やっているのに……」
ケース7「現状維持だけを続けても将来はない」
ケース8「本当に、言ったとおりにやらないんだからな!」
ケース9「悪い報告こそ、早く報告してほしいのに……」
ケース10「あいつ、携帯電話にも出ないよ!」
ケース11「マニュアルどおりでも問題は解決しない」
ケース12「リーダーの指示に年上のメンバーが従わない」
ケース13「すべてに消極的な年上のメンバーをどう扱う?」
ケース14「チーム活動に非協力的なメンバーを、いかに協力させる?」
ケース15「どうすればメンバーのコミットメントを引き出せるのか?」
ケース16「そうして改革が必要なのか」
ケース17「業績が悪いのはビジネス環境の変化のせい?」
ケース18「やるべきことはやっている。でも・・・」
ケース19「部門間の不協和音はなぜ起こるか」
ケース20「だれがチェックを怠ったのか?」
ケース21「メンバーにノウハウを開示するのは損ですか?」
ケース22「急がば回れは、組織のパワーを高める」
ケース23「形だけのチームミーティングに意味はあるか」
ケース24「一方通行のミーティングでは人はついてこない」
ケース25「そんなことをしても、僕の成績にならないし……」
ケース26「リーダーに求められているのは実行なのに」
ケース27「顧客重視の姿勢と現実対応は相容れないのか」
ケース28「どの部門も自部門の最適しか考えないのだろうか?」
ケース29「現場の反発で立ち消えになった会社の方針」
ケース30「部門間の連携がうまく行かない最大の理由」

の30である。ひとつでも、あなたのかかえている問題に該当するものがあれば、読んでみる価値はあるだろう。これらのケースはアンケートに基づいて作られているようで、そこから、チームビルディングに対する理論構築を行っている。もう少し、具体性がほしいような気がするが、まあ、その辺りはケースでカバーしてくれということだろう。

多くのケースはきわめてよくできている。

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