ほぼ日 読書日記 Feed

2009年8月 8日 (土)

メタファをデザインする【ほぼ日読書日記 2009年8月7日】

森博嗣さんが自ら翻訳し、「本書は、『発想力』を育むためのドリルである」と評価している本。写真をうまく使って、発想を刺激してくれる。

ジェーン・フルトン・スーリ、IDEO(森博嗣訳)「考えなしの行動?」、太田出版(2009)

一気に読む本ではない。ドリルとして使えばよいと思う。同じページで何度でも楽しめる。夏の旅行の渋滞のお供に如何?

25年くらい前に、ドナルド・ノーマンの講演を最初聞いたときに、「誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論」にも出てくる車のドアノブのメタファの話をした後で、ホテルの部屋のバーにあったナッツの袋を持ってきて、自然な開け方とデザインが違う、人間が無意識にどのように使うかを観察し、メタファをデザインすべしという話を聞いて感動したことがある。今や、インダストリーデザインでは常識になっていることなのだが、当時はほとんど言われていなかったことだった。

もう一つ、しばらく前に読み、日記に書き忘れた本。「ミメロギア」風に、創造性、発想力についてポイントを述べている。

タイトルの鳥の目・虫の目、戦略・戦術、想像・創造、知識・知恵、、、

高橋 宣行「「鳥の目・虫の目」発想読本」、PHP研究所(2009)

高橋 宣行さんの本そのものもいいのだが、松岡正剛氏先生の「ミメロギア」というフレームワークはやっぱりすごい(ミメロギアはミメロギアミメーシス(模倣)とアナロギア(類推)という二つのギリシア語をくっつけた松岡先生の造語)。

ミメロギアが高橋 宣行さんの頭の中を引き出しているのが手に取るように分かる。

2009年8月 7日 (金)

社会起業に目覚める【ほぼ日読書日記 2009年8月6日】

なぜか、知り合いに社会起業なるものに取り組んでいる人が結構いる。その人たちが取り上げられた本を送ってきてくれたり、会うとよく話題になるので、興味も出てきて、結構、本を読んでいる。

10冊は読んでいると思うが、この本を読んでずっと疑問に思っていたこれまでの世界とのリンケージが見えたように思う。

ベン・コーエン、マル・ワーウィック(斎藤 槙、赤羽 誠訳)「ソーシャルビジネス入門 「社会起業で稼ぐ」新しい働き方のルール (The Social Venture Network Series) 」、日経BP社(2009)

ソーシャルイノベーションは価値と機会と手法のバランスが問題だと思う。バランスを欠くと、B級戦略ビジネスになってしまう。事例本は数多くあるが、このような視座を持って事例を学んだときに、納得できない部分があるというか、はっきりいうとバランスを欠いていて、ちからわざで起動に載せたようなイメージのものが多い。そのため、従来のビジネスとどのように位置づけていけばよいかが分からないままだった。

この本は、そこをかなり、分析的に書いてあるので、分かりやすく、ヒントになる点が多かった。

2009年8月 6日 (木)

問題解決のアートとサイエンス【ほぼ日読書日記 2009年8月5日】

読み出したら、面白くなって、途中で熟読モードに切り替え。一気に最後まで読んでしまった。

清水 久三子「プロの課題設定力」、東洋経済新報社(2009)

コンサルタントにとっては、課題はツールであり、思いっきりポジティブであるが、実務をやっている人にとっては課題は微妙。よいリーダーは、課題をポジティブに捉える。この代表がトヨタの改善だ。

ただ、問題解決力と課題設定力のどちらが重要だという話しではないような気がする。より大きなレベルの問題解決の中で、問題解決力と課題設定力はサイエンスとアートのような位置づけ。難しいのは間違いなく、課題設定力が難しいが、どっちも重要。

アートだからこそ、体系的なアプローチをしているこの本の価値がある。リーダー必読。

もう一冊。

僕はセミナーのタイトルを決めるときは、まずは自分で考え、そのタイトルで検索し、その後で推敲するようにしている。今回、企画したセミナーは「プロジェクトマネジャーのためのマネジメント基礎力」。

なんと、造語のつもりだったマネジメント基礎力という本があった。なんと、ユニークな切り口で本を書かれるので、おおよそ、読んでいる中西晶先生の本ではないか!

一応、アマゾンで購入してさっと目を通した。問題意識は同じ。中西先生は基本ではなく、現場マネジメントの基礎的実践力という位置づけだ。僕の企画したセミナーも、プロジェクトマネジメントの基礎となるマネジメント力。若干、視点は違うので、内容はかなり違うが、視座はほぼ同じ。心強い。

中西 晶、家田 武文「マネジメント基礎力―はじめてリーダーになる人の本」、エヌティティ出版(2009)

ちなみに、セミナーはこちら。

〓【開催概要】〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
 ◆プロジェクトマネジャーのための「マネジメント基礎力」講座
  日時:2009年9月28日(月) 10:00-18:00<7PDU>
  場所:ヴィラフォンテーヌ汐留コンファレンスセンター(東京・港区)
  講師:好川哲人(エムアンドティコンサルティング)
  詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/management_basics.htm
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2009年8月 4日 (火)

アマゾンに登録がない?!【ほぼ日読書日記 2009年8月3日】

力作だ。取り上げられている事例もおもしろいし、「アップルアウトサイド」、「インテルインサイド」というモデルも納得。

妹尾 堅一郎「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由」、ダイヤモンド社(2009)

なのだが、そもそも、この本で前提としている「技術力」とはいったい何か?標準競争や知財戦略では負けているというのだから、このあたりは入っていない。

プロセスでみれば納得するのだが、プロセスで解決する問題なのだろうか?結局、この本で書かれている問題の根底にあるのは、技術を構想できないことなのではないかと思う。

さて、先週、八重洲東京一番街の栄松堂書店で購入した本。

金子孝弘「なぜ、あたなの教え方は「伝わらない」のか」、キクロス出版(2009)
ISBN:9784862204486(4862204481)

なぜか、アマゾンにエントリーがない。この日記を書いている時点だが、奥付は6月11日になっているので、時間の問題でないだろう。どなたか見つけたら教えてください!

内容はたいへん、参考になったし、共感することも多かった。「わかる」から「できる」まで導いていくのが講師ということで、講師は

・専門分野を極める
・受講者が主役
・自分のエピソードを持つ
・計画8割、実施2割
・講座は生モノ
・目的名何かを認識する
・振り返りと研鑽

の7つを心得よとのこと。何回か、読み直してみたが、言っていることがMECEになっている。これはすごい!まさに、練り込まれた感じ。

2009年8月 3日 (月)

揺り戻し?【ほぼ日読書日記 2009年8月2日】

理論主義と経験主義、合理性とゆとりなど、ものごとがどちからに大きく振れると、必ず揺り戻しがある。人間のバランス感覚かもしれないし、あるいは、もっと大きく自然の摂理的なものなのかもしれない。

香山 リカ「しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール」、幻冬舎(2009)

香山さんを引っ張り出してきたところに価値があるように思う。勝間の対極にあるのは何か?

そういえば、日記に書き忘れていたが、先日、こういう本を読んだ。

アル・ライズ、ローラ・ライズ(黒輪 篤嗣訳)「マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?」、翔泳社(2009)

右脳と左脳の議論なのだが、マーケティングとマネジメントという対比はなかなか、おもしろいし、あまり、双方の本質が分かる。マネジメントを学びたい人にも、マーケティングを学びたい人にもお奨め。

考えてみれば、経営はマネジメントとマーケティングの揺り戻しでいろいろと変化しているような気がする。むう、深いなあ。

2009年8月 2日 (日)

右脳vs質問【ほぼ日読書日記 2009年8月1日】

ワールドカフェとか、質問会議とか、対話系の会議術の本がたくさん出ている。ほとんど、プロセスについて書いた本だ。その代表とも言える対話系の会議術は、実施するハードルは低いが、成果を出すハードルは極めて高い。

たとえば、ブレーンストーミングを考えてみればよく分かる。ブレーンストーミングをやったことのない人は少ないと思うが、ブレーンストーミングをして最初に誰も考えていなかったことにたどり着いた経験のある人はそんなに多くないと思う。

なぜだろうか?プロセスにこだわりすぎて、成果のマネジメントに注意が払われていないからだ。もし、そんな問題意識があれば、この本は役に立つと思う。

宇佐美 清「右脳会議―退屈な定例会議が「宝の山」に変わる! 」、ダイヤモンド社(2009)

そんなに難しいことが書いてあるわけではないのだが、以外と、普段の会議では気がつかないような視点がたくさん、書かれている。

もう一冊、今日、読んだ本。

ケン・ロビンソン、ルー・アロニカ(金森 重樹監修、秋岡 史訳)「才能を引き出すエレメントの法則」、祥伝社(2009)

エレメントとは、「自分のやりたいことと自分の得意なことが合致する場所」という意味。場所は必ずしも物理的な場所を意味しない。そのような場所を見つけることによって、ゾーンに入ることができる。読んでいて、チクセントミハイ博士の

M. チクセントミハイ(大森 弘訳)「フロー体験とグッドビジネス―仕事と生きがい」、世界思想社(2008)

と共通する部分があるように感じたが、この本はかなり実践的である。体系化されてはいないが、フロー(ゾーン)に入るための方法を、たくさん述べている。

2009年8月 1日 (土)

セレンディピティのその後【ほぼ日読書日記 2009年7月31日】

昨日、この本について書いた。

マーク・シルベスター、モヒ・アメッド「リビングサービス―感動を呼ぶITサービス革新が今始まる」、日経BP社(2009)

今日、別の人から別の本を貰った。

富士通(株) Qfinity推進室「職場を変える 富士通の品質改善活動(Qfinity)」、日本能率協会マネジメントセンター(2009)

重なるときはこんなものか。と思って、ぱらぱらと見ていたら、そういうことでしたか。これも、リビングサービスというわけですか。

全くの偶然なのだが、宮永先生の新刊を読んでいたら、生産財(部品)メーカのコンシューマ向けマーケティングの必要性に触れられていた。

宮永 博史「理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から」、祥伝社 (2009)

富士通という会社は以前はナレッジマネジメントをアピールしていた。なかなか、おもしろいやり方だ。

さて、宮永先生の本。宮永先生というとセレンディピティのブームの仕掛け人で、

宮永 博史「成功者の絶対法則 セレンディピティ」、祥伝社(2006)

のインパクトが強いが、今度の新刊の方がよい。理系の現場オリエンテッドな企画方法を、かなり、体系的に述べられている。もちろん、セレンディピティと同じようにインパクトのある事例満載。新書にせずに、もっと詳しく書いてほしいような本。

理系マネジャーは読んでおきたい本。

2009年7月31日 (金)

リビングサービスは普及するか【ほぼ日読書日記 2009年7月30日】

関係者の間では結構話題になっている本を頂戴した。早速、読了。

マーク・シルベスター、モヒ・アメッド「リビングサービス―感動を呼ぶITサービス革新が今始まる」、日経BP社(2009)

内容はおもしろい。新しい時代を予感させ、わくわくする。
確かに、プロデュースとITサービスを結びつける本かもしれない。ただ、こういう抽象論をインプリメントし、発展されるには、コンセプチャルスキルの低い日本企業はすぐには取り込めないだろう。

読んでいるうちに、なんとなく、この本を思い出した。

マイケル・A. クスマノ「日本のソフトウェア戦略―アメリカ式経営への挑戦」三田出版会(1993)

この本は、東芝、日立をはじめとする、日本のソフトウェアファクトリーについてのレポートで、その後、このクスマノ博士のレポートが刺激になって、マイクロソフトがOfficeの開発でソフトウェアファクトリーを構築し、進化させた。21世紀になってから、今度は方法論として開発環境の提供を始めた。それが契機になり、また、折からの組み込みソフトウェアブームと重なり、ソフトウェアファクトリーが再び進化を始めた。このような50年の動きのターニングポイントになった一冊。

リビングサービスでマイクロソフトになるのはどこだろう。。。

2009年7月30日 (木)

サカナの場作り、ネコのイノベーション【ほぼ日読書日記 2009年7月29日】

ほぼ、1日コンサル。仕事を終えた後で1冊。

もう10年前。「フィッシュ!」で独特の「場のマネジメント」理論を披露してくれたスティーヴン・ランディン博士のイノベーション論。今度はネコ。サザエさんの世界だな。

スティーヴン・ランディン(野口吉昭監修) 「キャッツ―ネコに学ぶ組織を変える「9つの教え」」、ティー・オーエンタテインメント(2009)

ネコを

・好奇心が旺盛
・自立しマイペース
・臨機応変
・賢い
・スマート
・哲学する
・客観的に見ている

といった特徴を持つネコはイノベーションを起こす可能性が高いという。

まあ、これはこれでそれなりに納得感があるし、スティーヴン・ランディンの言っていることだからそうなんだろうと思わないでもない。

が、ネコにはこういう見方もある。

「自己実現」に幻想を持たず、出世のためにあくせくせず。滅私奉公に背を向けつつも、得意分野には爪を磨く。

この本だ。

山本 直人「ネコ型社員の時代―自己実現幻想を超えて」、新潮社(2009)

犬でだめなことは共通しているが、微妙に違う。まさに、どちらに転ぶかはマネジメントにかかっている。

2009年7月29日 (水)

マネジメントはクリエイティブの触媒【ほぼ日読書日記 2009年7月28日】

また、雨で新幹線が止まりそうな気配だったので、前日の夜、移動。新幹線車中で1冊。

ハーバードビジネスレビューに掲載されたピクサーの社長エド・キャットマルのマネジメント論。書籍のページにして70ページほどの小論であるが、非常におもしろかったし、いろいろなことを想像させてくれる。

エド・キャットマル(小西未来訳)「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか」、ランダムハウス講談社(2009)

翻訳をした小西未来さんが、その後につけているレポートは、取材をした上で、経営学のフレームワークを使ってピクチャーのマネジメントを説明している。頭はすっきりしたが、まだまだ、隠れている部分があるような気がする。

日本では職人=聖域という前提の中で、卓越したもの作りが行われてきたと言われている。確かにそういう構図はあると思うが、実はこの構図はもの作りに限定されたものではなく、クリエイターと言われる人材全般に存在している構図。

ジブリの鈴木 敏夫さんの

鈴木 敏夫「仕事道楽―スタジオジブリの現場」、岩波書店(2008)

を読んだときにも感じたが、ピクチャーにしても管理はされているようには思えない。しかし、マネジメントは思いっきりしているし、マネジメントというのはクリエイティブにとって重要な要素になっていることとは間違いない。特に、アニメのような、クリエイターのコラボレーションにおいてはその傾向があるのかもしれない。

A級のクリエイターのいる組織にはマネジメントがあり、B級クリエイターしかいない組織にはマネジメントはない。そういう時代になっていることを痛感させた1冊。

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