思考法 Feed

2006年10月10日 (火)

人やチームの問題解決能力を向上させ、問題を解決する方法

476282521201 ブレア・ミラー、ロジャー・ファイアスティン、ジョナサン・ヴィハー(弓野 憲一、西浦 和樹、南 学、宗吉 秀樹訳)「創造的問題解決―なぜ問題が解決できないのか」、北大路書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

問題解決法は定着してきた感があるが、通常の問題解決プロセスでは解決できないような制約条件の厳しく、前例がないような問題に遭遇することは少なくない。

世の中のどこにもないようなサービスや商品や技術を開発するといったものも、もちろん、その類の問題だが、もっと身近なものが多い。

例えば、普通にやれば1ヶ月かかる仕事を2週間でやらなくてはならないとしよう。

このようなタイプの問題では、おそらく、問題解決手法を適用しても、答えは出てこない。通常の問題解決法は、定型的問題解決法だからだ。従って、まったく未知な問題に遭遇したときには意外と無力である。

どこに違いがあるのか?大きくは問題解決の目的の違いかもしれない。前者には答えがあるので、問題解決プロセスを間違えなければ問題は解決できる。後者のような問題では、人やチームに焦点を当てる必要がある。当初の人やチームの問題解決能力では対処ができないわけであるので、それを改善しながら問題解決をしていくことを考える必要があるのだ。

このようなタイプの問題解決方法はCPSと呼ばれる。Creative Problem Solving、創造的問題解決である。

あまり日本ではCPSの本は出版されていないが、やっと良い本が出てきた。この本を読めば、とりあえず、考え方などが分かるだろう。ツールも豊富に紹介されており、後は、紹介されているツールを使って実際にやってみよう。

続きを読む »

2006年8月29日 (火)

シナリオを問題解決に活かす

453231289201 高杉尚孝「問題解決のセオリー―論理的思考・分析からシナリオプランニングまで」、日本経済新聞社出版局(2006)

お奨め度:★★★★

問題発見→課題設定→解決案抽出→代替案評価→実行

の問題解決プロセスのフレームワークに、問題のタイプを分類し、各フェーズでのツールを紹介している。

問題のタイプは

原状回復型問題

潜在型問題

理想追求型問題

であり、第一部では、それそれに対して、実践的な進め方が解説されている。

第二部では、これらの問題解決の際のポイントとして、意思決定を取り上げ、シナリオによる意思決定について詳しく解説している。シナリオの作成手順、シナリオに基づいた代替案の作り方、解決策の選択手順が非常に分かりやすい解説されており、おそらく、日本語で読めるシナリオプラニングの本の中では最も読みやすいのではないかと思う。

第三部はフレームワークであるが、このパートは特に特徴はない。ただ、コンパクトにロジカルシンキングがまとめてあるので、さっと読んで理解するにはもってこいだ。

プロジェクトマネジャーなら特に第二部を中心にこの本を一冊読んでおくといろいろな局面で役立つだろう。

続きを読む »

2006年8月18日 (金)

戦略マネジャー3点セット

447849022809_1齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社(1997)

バーバラ・ミント「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」、ダイヤモンド社(1999)

447849027909_1
照屋華子、岡田 恵子「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」、東洋経済新報社(2001)

「戦略マネジャーの三種の神器」は

449253112209 ・問題解決スキル

 ・論理思考スキル

 ・ビジネスコミュニケーションスキル

である。

この3つについて、上の3冊は、おそらく日本で最初の本であるが、いまだに他の追従を許さない定番本でもある。

改めて紹介の必要もないだろう。アマゾンの書評の数と評価が全てを語っている。

まだ、読んでいない人は、ぜひ!

2006年8月 5日 (土)

仮説思考

449255555209 内田和成「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

BCGの内田和成氏が自分のコンサルタントとしてのノウハウの集大成として書かれたような感じがする本。それが仮説思考であることは、当然といえば、当然だが、なかなか、興味深い。

日本人と米国人の知的生産性の違いを指摘する声は多いが、仮説思考の稚拙にあるのではないかと思う。この本と読んでいるとBCGの仮説思考のプロセスは業務プロセスそのものであり、それを具体的にどのような作業で構成していくか、また、作業のポイントは何かということがかなり詳細に書かれている。

彼らにとっては、仮説の質が、利益に直結してくるのだから、ある意味では当たり前だろう。

そのようなプロフェッショナルな領域まで行かなくても、ある程度、仮説を作って進めて生きたいのだが、そうは問屋がおろさない企業がある。それは、組織が仮説というのを理解できないから。そのような組織には、仮説を立てて進めていくと、仮説が外れるとそこで失敗だと思うマネジャーが多い。

すると網羅的に進めざるを得ない。1ヶ月で済む仕事が、3ヶ月になるといったことになる。

そんな組織にとってどのくらい有効な思考法であるかは疑問だが、仮説思考の解説書としては非常に分かりやすいし、こつも抑えることができる一冊である。

続きを読む »

2006年8月 3日 (木)

非連続思考法

447849051101 リュック・ド・ブラバンデール(森澤篤監訳、秋葉洋子訳)「BCG流 非連続思考法 アイデアがひらめく脳の運転技術」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★1/2

思い込みで失敗することは多い。これを防ぐには論理思考が有効だといわれている。しかし、もう少し、メタに考えると論理思考も思い込みである種の思い込みであることが、この本を読むと良く分かる。

物事を変えたいときは、ものの見方を変えると有効であるが、この本では、BCG流の具体的な方法や視点設定について説明している。

非連続思考法の象徴的な例として、南アフリカ共和国でアパルトヘイト(人種隔離政策)が廃止されたときに、住民のほとんどが思いついたシナリオは

 ・恩赦を与える

 ・すべてを裁判にかける

の2つしか思いつかなかった。前者は受け入れられない。後者は現実的にできない。これに対して、指導者が第3のアイディアとして

 ・許す

という発想をしたというエピソードが書かれている。とくに、二者選択の状況では、視点が狭まり、このような発想をするのは難しいものだ。このような発想がピンチを救うことは非常に多い。

コンサルタントとして活動するとき、あるいは、マネジャーとして率いるチームが停滞しているときには、ぜひ、この非連続思考法を活用したい。

447849022809この本は非連続思考について書かれた本だが、そのベースには一通りのオーソドックスな問題解決思考法がある。その解説が若干分かりにくいので、本格的にマスターしなたいなら、併せて、例えば、

齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社(1997) 

といった本と併せて読むことをお奨めしたい。

続きを読む »

2006年7月31日 (月)

なぜ、ウィスパーに羽根がはえたのか

492511277501 和田浩子「すべては、消費者のために。―P&Gのマーケティングで学んだこと。」、トランスワールドジャパン(2006)

お奨め度:★★★★

和田さんはおそらく、日本のビジネスウーマンで最も有名な方の一人だろう。P&Gのマーケティング部門で活躍。「ウィスパー」に羽根をはやしたブランド戦略の実行で一躍有名になった。ミス・ウィスパーと呼ばれていたとか。その後、2004年のフォーチューンで世界で一番パワフルなビジネスウーマン50傑に選ばれ、世界中で有名になった。

誰にでも等しくチャンスがあることを伝えるために乗っているというまっ白なポルシェでも有名。

という和田浩子さんの自伝的な書籍。マーケティングを中心に、ブランドマネジメントのノウハウをP&Gの経験を時間を追って書かれている。

P&Gは言わずと知れた高品質の経営をしている企業であるが、この本を読んでいると、製品力がブランドを作るという王道を歩んでいることが分かる。その意味で、ブランドマネジメントでありながら、製品マネジメントの色合いが濃い。また、科学的にマネジメントされている点も印象的である。

同じ日用雑貨のビジネスでも、日本のメーカとはテーストの異なるところがあり、その辺りも興味深い部分である。

マネジメントに突拍子もないものもあまりない。その意味で、1冊そのまま、ブランドマネジメントやあるいはもう少し広くマーケティングの教科書になるような本でもある。

2006年7月25日 (火)

相手に正しく伝わらなければ問題は解決しない

490324103301 出口知史「論理思考の「壁」を破る」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★

問題が発生した場合には、正しい結論を出したからといって、相手に伝わらなければ問題は解決しない。

効果的に相手に伝えるためには、相手の理解度、それまでの議論の経緯、過去の経緯を含めて総合的に判断し、論理を構成する必要がある。これが、本書の主張である。

この本ではまず、論理思考の方法を一通り解説している。その上で、論理思考の落とし穴を指摘している。その中で、ロジックの共有の重要性を説き、それが実現されないゆえの伝わらない3パターンとして

・結論押し付け

・思考停止

・視野狭窄

の3つを挙げている。

戦略マネジメント・戦略思考の普及により、論理的思考は当然の思考法になってきた。しかし、この本のように論理思考の使い方に一歩踏み込んだ実践的な本は珍しい。経営戦略の策定をするだけであればあまりこのような発想は必要ないかもしれないが、マネジャーとして現場で戦略を実行する立場にある人は、ぜひ、読んでおきたい一冊である。

続きを読む »

2006年5月30日 (火)

OODAサイクルを作る!

449253210201 中村好寿「ビジネスに活かす!最新・米軍式意思決定の技術」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

プロジェクトのイメージに最も近い活動はおそらく、軍隊(戦闘活動)である。

プロジェクトの行動はPDCAサイクルだといわれる(計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act))。PDCAサイクルの発案は、品質管理の父といわれるデミングで、もともと、生産プロセス(業務プロセス)の中で改良や改善を必要とする部分を特定・変更できるようプロセスを測定・分析し、それを継続的に行うために改善プロセスが連続的なフィードバックループとなるように提案したものである。

これが現在、品質概念を拡張し、さまざまなマネジメントの場面で使われている。

この方法をプロジェクトマネジメントに導入したときに、違和感があるのは、「観察」が明示的に行われていないこと、「仮説」が明示的に扱われていないことである。この違和感を解消できるのが、この本で紹介されているOODA(観察(Observe)、状況判断(Orient)、決定(Decide)、行動(Act))ループを基本とする米軍が使っている軍事意思決定モデルである。

この本は、この意思決定をビジネスにどのように応用するかという視点から、意思決定手法の体系的な説明をしており、この本を読めば、このような意思決定を行うだけの知識は入手できるだろう。

先が見えないプロジェクト、頻繁に環境が変わって行くプロジェクトのマネジャー必読!

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック

続きを読む »

2006年2月24日 (金)

第1感を大切に

433496188609lzzzzzzz マルコム・グラッドウェル(沢田博、阿部尚美訳)「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」、光文社(2006)

ジョナサン・スクーラーという心理学者は「言語による書き換え」という研究をしている。例えば、レストランに入って、接客してくれたウェイトレスを、警察で面通ししてくれといわれれば、ほとんどの人はできるだろう。しかし、レストランに入る前に、ウェイトレスの特徴を紙に書き留めて欲しいと言われていると、顔立ちとか、服とか、特徴に注目する。結果として、今度は警察で面通ししても識別できないことが多いという実験がある。このような現象を「言語による書き換え」とよび、精力的に研究している学者である。

彼の研究によると、論理的な思考が問題解決に大きな影響を与えることがあるそうだ。こんななぞなぞを考えてみて欲しい。

ある男性と彼の息子がひどい交通事故に巻き込まれ、男性は死んだ。息子は病院の緊急治療室に運ばれた。緊急治療室に入ってきた医者がその子を見て叫んだ。「うちの子だ」。さて、この医者は誰か?

有名ななぞなぞであるので、ご存知の方はご存知だと思う。医者=男という思い込みを捨てたらすぐに分かる。このような問題は論理性を問う問題ではないが、ここに紙と鉛筆を持ってきていろいろ考え出すと解けなくなる。これが「言語による書き換え」の弊害だ。

このように理屈だけでは解決できない問題が多いということを指摘した本である。このような例は、我々の仕事の中でも数多くある。特に、最近、MBAとか、PMとかで論理的思考が重視されるようになってきて、目立つようになってきた。

心理学的にいえば、「適応性無意識」というそうなのだが、そのような事例をたくさん書いてあるので、それを読むだけでも楽しい本だ。

2005年12月 1日 (木)

すごい考え方

480612296301lzzzzzzz ハワード・ゴールドマン(松林博文訳)「すごい考え方」、中経出版(2005)

お奨め度:★★★★

ハワード・ゴールドマンの代表作。

言葉にこだわり、普段、何気なく使っている言葉が、思考を制限し、人生に悪い影響を与えていることを指摘し、どのように表現すれば、考え方が変わっていくかを指南してくれる本である。

例えば、「誰かが悪い、自分は正しい」といつも言っていないかを考える。すると、責任転嫁をしないという考え方が身に付く。

ある意味で行動習慣を身につけることで思考習慣が変わるという話に似ているが、言葉に注目するというのは振り返りが容易で、とてもよいと思う。

読んでみると、確かにそういう面はあるなと思わせる本である。

==========

banner_04人気ランキング投票! → クリック!

続きを読む »

PMstyle 2025年9月~12月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google