キャリアマネジメント Feed

2007年8月10日 (金)

本物のリーダーを目指す人必読

4820118684 ビル・ジョージ、ピーター・シムズ(梅津祐良訳)「リーダーへの旅路―本当の自分、キャリア、価値観の探求」、社会経済生産性本部(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ハーバード・ビジネススクール教授が125人のリーダーたちに行った詳細な面接調査をした結果から、キャリア、ライフ・ストーリーから、自分の価値観、プライオリティという視点から、リーダーシップとは何かを考えている。

リーダーシップに対しては、ステレオタイプの議論より、フィールドワークによるあぶり出しから、いろいろなことがわかることを改めて実感させてくれる。追求しているのは、本物のリーダシップとは何かという問題。そして、それをどのように探求していくかという問題。

これらの問題に対して、125人のインタービュー結果が非常に多くのことを雄弁に語ってくれる。どれを読んでも、トレーニングだけでリーダーシップが身につくという幻想を打ち破ってくれる。文字通り、リーダーシップの開発は旅であることを痛感させられる。

ちょっと高い本ですが、本物のリーダーになりたいと願う人、ぜひ、読んでください!値段以上に多くのものが得られるでしょう。

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2007年7月 9日 (月)

プロフェッショナルを育てる、プロフェッショナルに成長する

4495375814 松尾睦「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

人はいかに経験から学び、プロフェッショナルへと成長するのかという命題に対して、経験に焦点を当てて、学習メカニズムを明確にしようとした本。

本書は、人材育成の7割は経験によるものだとし、その経験をどのように成長に結び付けていくかが人材育成のポイントになると説いている。結び付けの視座として、組織活動、マーケティング活動など、現実の経営活動の中で学習が機能するかを説いている。その意味で、研究書ではあるが、かなり実践的であり、実務に役立つインプリケーションがたくさん盛り込まれている。

また、ケースもふんだんに盛り込まれているので、書かれていることの理解も容易にできる。さらに、心理学的な視点も踏まえているので、自分自身の成長を考えるに際しても参考になる一冊である。

プロジェクトマネジャーに代表されるプロフェッショナル人材を育てることを課題とする人材育成担当者にぜひお奨めしたい一冊である。

また、マネジャーは、この本と「最強組織の法則」など、組織学習の本と併せて読むと、個人の成長(自己マスタリング)と組織の学習の関連性も想像でき、面白いだろう。

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2007年6月18日 (月)

プロフェッショナルの人材開発のベールをめくる

4779500583 小池和男編「プロフェッショナルの人材開発」、ナカニシヤ出版(2006)

お奨め度:★★★★

新聞記者、研究者、革新的マネジャー、ファンドマネジャー、融資審査マンなどのプロフェッショナルがその技能をどのように開発されていくかをフィールド調査によって明確にした一冊。

小池先生の指導によるフィールドワークだけあって、どの論考もかなり深く突っ込んであり、かつ、簡潔にまとめられている。技能開発に携わる人にとってはもちろんだが、いわゆるプロフェッショナル人材を育成しなくてはならない人にはとても参考になる本である。

また、読み物としても面白いので、人材開発を仕事にする人だけではなく、プロフェッショナル自身が読んでも、自らの能力開発について気づきのある一冊である。

難点は、ここで選ばれている職業がプロフェッショナルという集団から見たときに、どの程度、一般性があるのかがよく分からない点。例えば、研究者と医者はその技能開発が異なるように思うし、販売員のようなサービス系の技能を持つプロフェッショナルも異なるように思う。

ぜひ、今後、このほかのいろいろなプロフェッショナルについてもフィールドワークをして、第2弾、第3弾を作ってほしい。

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2007年4月27日 (金)

企業から人に

4862761003_01__sclzzzzzzz_v23803313 ジェリー・ポラス、スチュワート・エメリー、マーク・トンプソン(宮本喜一訳)「ビジョナリー・ピープル」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

10年前にたいへん多くの人に読まれた

4822740315_09__sclzzzzzzz_v44479440 ジェームズ・コリンズ、ジェリー ・ポラス(山岡洋一訳)「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」、日経BP出版センター(1995)

の著者の一人、ジェリー ・ポラスが、ビジョナリーカンパニーを支える人を描いた本。ジェリー ・ポラスとは

自分の道を追求しつづける人たちがいる。
ひたむきに、真っ直ぐに、生きていく人たちがいる。
自らのビジョンに向かって突き進み、
彼らは新しい時代を切り拓く。
彼らは、世界に変革を巻き起こす。

人々をビジョナリーピープルと呼んでいる。この本では多くの人を、ビジョナリーピープルの例にとりながら、

意義

行動スタイル

思考スタイル

について整理している。読むと元気になる本だ。

ビジョナリーピープルの基本的な発想は

長期間にわたって続く成功と密接な因果関係があるのは、個人にとって重要な何かを発見することであって、企業にとっての最高のアイデア、組織構造、ビジネスモデルではない、という原則だ。というのも、思考と感情が互いに情報を交換し合い、創造性が生まれ、いつまでも続く組織が生まれ出る潜在的な可能性があるのは、まさにこの個人的なレベルだからだ。

という発想にある。この発想は、最近、注目されている「クリエイティブ・クラス」に近いものである。併せて読んでみよう。

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2007年4月13日 (金)

人をあきらめない組織

4820717030_01__aa240_sclzzzzzzz_v2488359_1 HRインスティテュート(野口吉昭編)「人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方」、日本能率協会(2007)

お奨め度:★★★★1/2

如何に人を育てるかという切り口で、あるべき人を育てる組織になる方法を説いた一冊。

非常に力強いメッセージ「人をあきらめない組織」を作るには、

 プリンシプル(絶対的な人づくりへの理念と意志)
 ウェイ・マネジメント(人づくり遺伝子の仕組み化)
 モチベーション・エンジン(やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化)

という3つの要素が必要であり、それぞれについて以下のような要素が必要であると説いている。

プリンシプルには

・トップマネジメントの行動・意志

・人に対する信念の存在

・周囲の意識・行動から見える浸透

などが必要である。ウェイマネジメントには

・尊敬できるリーダーシップがあるか

・人材育成・開発の仕組み

・習慣・口ぐせ

が必要である。三番目のモチベーションエンジンには

・オープンコミュニティ

・自己主張・提案できる環境

・チーム意識を醸成する環境

が必要である。

この本では、それぞれの要素について、診断を踏まえて、どのような取り組みをすればよいかをフレームワークとして提示しているので、実践的に使える一冊だ。

2007年3月31日 (土)

組織コミットメントの構造

4820118536_01__aa240_sclzzzzzzz_v2508852_4 鈴木 竜太「自律する組織人―組織コミットメントとキャリア論からの展望」、生産性出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

新進気鋭の組織論の研究者が、一般の人に向けて書いた組織コミットメント論。組織論の専門家でなくてもわかる言葉で、非常に研究者らしい視点からかかれており、一般的な啓蒙書に比べると考えさせられる部分が多い。

帯に以下のような質問がある。

・希望に溢れた新入社員のコミットメントが2~3年で低下し、その後、持ち直すのはなぜか

・いやな会社でも長く居れば居るほど、転職しづらく感じるのはなぜだろうか

・チームで勝利するためには、スタメンのやる気ではなく、補欠選手のモチベーションを上げるのが有効なのはなぜか

・成果主義を徹底すると、職場の生産性が落ちてしまうのはなぜだろうか?

といった興味半分で知りたいことは、深刻な問題まで解く鍵がコミットメントにあるというのがこの本で紹介されるさまざまな研究からわかる。特にキャリア論から、コミットメントについて考察している。

人事担当者だけではなく、マネジャーやプロジェクトマネジャーならぜひ、読んでおきたい一冊だ。

2007年3月25日 (日)

ITスキル標準はITエンジニアを幸せにするか?

4798111821_01__aa240_sclzzzzzzz_ 高橋秀典「ITエンジニアのための【ITSS V2】がわかる本」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★1/2

ITスキル標準について日本でもっともよく知っているスキルスタンダード研究所の高橋代表の著書。

ITスキル標準自体はその名のとおり標準であり、どのように活かすかは顧客側に任されており、さまざまな活用方法が考えられる。製品開発のグルである東京大学の藤本隆宏先生の言葉を借りると、非常に多義性の高い標準である。多義性の話に興味がある方は、ぜひ、こちらの本を読んでみてほしい。

453231139x_09__aa240_sclzzzzzzz_ 藤本隆宏「日本のもの造り哲学」、日本経済新聞社(2004)

ITスキル標準のひとつの顧客であるIT系の企業や、情報システムオーナー企業はこの多義性を背景に、自社に如何に適用するかを一生懸命考えている。相応なリソースを使って研究し、構築をしている。

ところがITスキル標準には、もうひとつの重要な顧客がある。IT業界で働くエンジニア、コンサルタント、インストラクター、営業マンなどである。こちらの顧客に対しては、派遣業などが若干、自社の事業の枠組みの中で支援をしているが、それ以外には、あまり、手当てがされていないのが現状である。

そのような状況の中で、企業にとっての活用だけではなく、個人にとっての活用方法お、本という個人にとって利用しやすい形で、非常に見識のある人が書いた本としてこの本は評価できる。どうすれば、ITスキル標準を有益に使えるかという視点から書かれた唯一の本だといってもよいだろう。

ただ、残念ながら、本書では、組織の議論と個人の議論の接点や統合があまり明確になっていない。藤本先生のいわれる多義性の解消ができない限り、個人も幸せにならないし、とくにSIのような知識労働集約型のビジネスをやっている企業の業績はよくならないだろう。

IT業界というのはCSとESがばらばらの施策として行われている企業が多く、そのため、キャリアにおける組織の利益と個人の利益の現実的な統合がなかなか、見えてこないのだと思うが、ぜひ、この点をぜひ明確にしてほしいと思う。

さらには、3番目の顧客である顧客のビジネスオーナーに対する考察もほしい。この2点が加われば、さらに意義深い本になるだろう。

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2007年2月27日 (火)

リーダーシップの旅

433403389x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4457439_1 野田 智義、金井 壽宏「リーダーシップの旅 見えないものを見る」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ILSというNPOを立上げ、次世代のリーダーの輩出に取り組んでいらっしゃる野田智義先生と、日本のリーダーシップ論の第一人者である神戸大学の金井先生のコラボレーションによるリーダーシップ論。

野田先生のリーダーシップ観はサーバントリーダーシップの色合いが濃いが、そこに金井先生もいろいろな視点から意見を述べ、全体としては非常にダイバシティーの強いリーダーシップ論の本になっている。

この本の評価というか、サーバントリーダーシップへの評価は分かれると思う。ちょっと気になってアマゾンの書評を見たが、期待を裏切らず、全面否定派と全面肯定派が登場していた。僕はもちろん、全面肯定派である。

リーダーシップの獲得過程を「旅」というメタファーにしているのは、非常に興味深い。リーダーシップ研修などいろいろなリーダーシップ開発の方法はある。効果も出ている。しかし、この本で野田先生と金井先生が訴えているリーダーシップは、誰かに教わるものではなく、自分自身が選択をし、生きていく中で初めて身につくものだ。そのプロセスを旅に例えているが、まさに、旅であり、この本は旅のガイド本でもある。この本の最終章は「返礼の旅」と名づけられている。この中に野田先生の印象的なコメントがあるので、抜粋しておく。

心からの熱い思いがあり、何かを実現したいと夢や志を真剣に語る人に、周囲の人は喜んで手助けをしてくれる。リーダーシップの旅を歩む私たちは、人に助けられ、支えられる中で、自分が人を活かしているのではなく、人に自分が活かされている、そしてそのことによって、自分はさらに行動できるのだという意識を持つ。
利己と他利が渾然一体とはり、「自分のため」が「人のため」、「人のため」が「自分のため」と同一化する中、リーダーは自分の夢をみんなの夢に昇華させる。

何度読んで素敵な言葉である。さらに、こう続く。

リーダーはリーダーシップの旅の中で、大いなる力というギフトを授かる。旅を続けられること、それ自体がギフトでもある。私たちはもらったギフトを他人と社会に返す責務を負う。(中略)。ギフトを社会に返す中で、私たちはさらに真の意味での社会のリーダーへと成長する。

この本を読むときには、野田先生の訳されたスマトラ・ゴシャールの名著

意志力革命

を併せて読まれることをお奨めしたい。

2007年2月 7日 (水)

見える化ではなく「視える化」しよう!

4479791884_01__aa240_sclzzzzzzz__1 若松義人「トヨタ流「視える化」成功ノート―「人と現場が変わる」しくみ」、大和書房(2007)

お奨め度:★★★★1/2

昨年あたりから「みえるか」が大ブームになって、たくさんの本が出版されている。その中で、トヨタイズムの伝道師のカルマン若松社長だけが、「見える」という言葉を使わず、「視える」という言葉を使われている。これもトヨタ流とのことだが、トヨタでは、「みえるか」というのは、「見つける」、「気づく」だけでは意味がなく、改善して初めて意味があるとの考えからこの言葉を使っているとのこと。

この本では、そのような視座で

 ・能力の視える化

 ・問題点の視える化

 ・ノウハウの視える化

 ・市場の声の視える化

 ・失敗の教訓の視える化

 ・現場の空気の視える化

 ・仕事の大局の視える化

の7つの視える化について、42のヒントを提供している。

ヒントの内容は極めて濃く、みえるかの「元祖」はトヨタだといわんばかりのできである。また、書籍としても、事例をふんだんに使って説明してあるので、ピンとくる。

現場のマネジャーなら、一読して損はない。若松さんの本の中でも最もよいできの本ではないかと思う。一読の価値アリ。

2007年1月19日 (金)

人生をプロジェクトマネジメントする!

4569658660_01__aa240_sclzzzzzzz_v4983093 中嶋秀隆、中西全二「25の目標」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★1/2

むかし、神戸大学の経営大学院で加護野忠男先生のマネジメント論の授業を受けた際に、非常に印象に残った言葉があった。それは、「マネジメントは生き様である」という言葉だ(もはや、講義のタイトルすら覚えていないので、この言葉はよほど印象に残ったのだと思う)。

中嶋さんと中西さんのこの著書を読んだときに思い出したのが加護野忠男先生のこの言葉だった。この本で書かれている人生をプロジェクトに見立てたプロジェクトマネジメントの考え方がまさしく、中嶋さんや中西さんの生き様なのだろうなと思ったのだ。

この本は前半は、人生の目標(25の目標)の定め方、後半は定めた目標の実行の方法について述べられている。

前半では、

・自分の人生のビジョン

をつくり、そこから、

・25の目標

に落とし込む。そして、そのうちの目標のどれかをうまく達成したら

・人生101のリスト(思い出リスト)

に書き込んでいくというスキームを提案している。そして、実際にこれらがツールとして提示されており、ワークをしながら読んでいけるような形になっている。

後半では、お二人の活動されている会社(プラネット)が提唱しているPM10のステップを使って、設定した目標を如何に達成するかが解説されている。

前半と後半をあわせて、人生をプロジェクトマネジメントするということになる。

実は、この本、著者の1人の中嶋さんから昨年の末に頂戴したのだが、このブログに書評を書くのに1ヶ月近くの時間が過ぎてしまった。とりあえず、さっと読むのはすぐにできたが、せっかくだと思い、25の目標を作り出した。作り出すと、いろいろなことが頭に浮かんできて、何度も読み直しながら、やっと先日作り終えて、こうして書評を書いている。

このような経験を通じて分かったことは、実際に目標を作ってみると、前半の目標設定の中で書かれていることが実によく分かるし、中嶋さん独特(?)のものの見方もだんだん、腑に落ちてきた。また、25が一種のマジックナンバーではないかとも思えるようになった。論より行動である。

ということで、この本を読まれる方は、実際に演習をやってみないと価値が半減する!とアドバイスしておきたい。ぜひ、25の目標を立て、その達成チャレンジを実践してみてほしい。

もうひとつ、この本は記述が極めて良質である。帯に「PMのプロ講師直伝」と書かれているのは、内容もそうだが、教える方法に対する自信の表れなのだろう。

もうひとつ読者の方へのアドバイス。前半で提案されている目標設定と達成のスキームはプログラムである。この本では、「ダイナミックに全体のバランスをとる」と書かれている。実は、このダイナミックにバランスをとる具体的な方法が後半でもあまり明確になっていない(ヒントはある)。

この本の後半に書かれている(シングル)プロジェクトマネジメントだけではなく、プログラムマネジメントの手法を習得すると、一層、25の目標がよりうまく達成できるのではあるまいか。この本を読んでプロジェクトマネジメントが一通り分かったら、次はその辺りを勉強してみてほしい。

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