リスクマネジメント Feed

2006年6月14日 (水)

デスマーチ

4901280376 エドワード・ヨードン(松原友夫、山浦恒央)「デスマーチ──なぜソフトウエア・プロジェクトは混乱するのか」、シイエム・シイ(2001)

お奨め度:★★★★1/2

ソフトウエアプロジェクトがなぜ、失敗するのかを、プロジェクトをシステムとして捉えて、悪循環の構造について分析した名著。デスマーチという言葉は非常にインパクトがあり、流行語にもなった。

この本ではデスマーチプロジェクトとして、

 ・与えられた期間が、常識的な期間の半分以下である
 ・エンジニアが通常必要な半分以下である
 ・予算やその他のリソースが必要分に対して半分である
 ・機能や性能などの要求が倍以上である

といったことがあげられており、そのようなプロジェクトへの対処方法が述べられている。心当たりがある人は、とりあえず、読んでみよう!

なお、2006年に第2版が同じ著者、同じ訳者で、日経BP社から出版されている。ただ、第2版であるが、違う本ではないかと思うくらい違う。僕は第1版の方が価値があるのではないかと思う。

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デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか」、日経BP社(2006)

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2006年6月 9日 (金)

究極のリスクマネジメント

475730375001 坂井優基「パイロットが空から学んだ危機管理術」、インデックスコミュニケーションズ(2006)

お奨め度:★★★★

パイロットの経験から得たリスクマネジメントを、現場編、中間管理職編、トップマネジメント編と分けてルールとして整理して、解説している。

一つ一つの内容は極めて濃い。以前、軍艦のリスクマネジメントの記事を雑誌で読んだが、軍隊に負けず、飛行機もすばらしいリスクマネジメントがされていることがよく分かる。

そして、その中から、ビジネスの現場に適用できるルールを選択している。

現場だと

 だろうで行動してはならない

 都合のよい解釈をしてはならない

 データ=現実ではない

など21件。

中間管理職だと

 主目的を変質させてはいけない

 人間の変質に対処しなくてはいけない

 対策には期限を明示する

など22件。ここまで部分はプロジェクトリスクマネジメントに非常に参考になる。究極のリスクマネジメントノウハウ集といった感じ。

トップマネジメントだと

 安全なくして売り上げはありません

 問題はシステムで解決しよう

など17件。

座右の書にしたいと思わせる一冊。

著者の坂井優基は国際線のパイロット。前作の「パイロットが空から学んだ一番大切なこと」では、パイロットの経験から得たチームマネジメントのノウハウ、コツについて述べている。こちらもお奨め!

2006年5月30日 (火)

組織の競争力を強化するリスクマネジメント

432009747501 John McManus(富野壽監訳)「ソフトウェア開発プロジェクトのリスク管理」、構造計画研究所(2006)

お奨め度:★★★★

やっと実践的なリスクの本が出た。といっても訳本。構造研究計画所のソフトウエアエンジニアリングの訳本の質の高さをご存知の方であれば、期待を裏切らない一冊。

この本がすばらしいのは、「狼が来た」本ではないところ。ソフトウェアプロジェクトのリスクとは何かをきちんと説明し、リスク対処を機会管理と捉え、経営における能動的な価値だと考えている点である。コンサルタントとしてプロジェクトリスクマネジメントの問題に当たる際になかなか理解してもらえない点である。いろいろな人に勧めたい本。

この本で指摘されているソフトウェアプロジェクトのリスクは3つある。最初は「開発当初に要求仕様を必ずしも確定できない」、あるいは「開発途上,競合や市場への対応から止むを得ない仕様の変更が起きることが多い」などのリスクで、この本ではこれをビジネスリスクだと捉えている。二番目はビジネスリスクに関連して生じるプロジェクト規模や工数の見積り技術の不備、新技術や新しい開発プラクティスの利用からくる不確実性、技術者能力の不足などのリスクでこれを技術リスクとして捉えている。第三は,プロバイダ市場や環境の変化、ソフトウェア訴訟などのプロジェクトの外部要因によるリスクである。このリスクの区分も非常に適切である。

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2005年8月26日 (金)

リスクの本質を知る

4621047868Nick W. Hurst(花井荘輔訳)「リスクアセスメント―ヒューマンエラーはなぜ起こるか、どう防ぐか」、丸善(2000)

お奨め度:★★★1/2

ちょっと難しい本だが、読めば、リスクマネジメントが、なぜ、プロジェクトや、あるいは組織で、なかなかうまく行かないかがよく分かるので、そのような問題を抱える人には一読の価値がある本である。

ひとことでいえば、リスクとは何かをきちんと考えずに、見よう見まねでうわべだけのリスクマネジメントを導入しようというところに問題があるというところだ。

特に、3章で

“リスク-工学”
“リスク-人間”
“リスクとシステムおよび文化”

の三つの視点について、リスクをどう定量化しているかを議論しているが、この部分はきちんと読んでみたい。

このような思想をきちんと理解しておくと、今、プロジェクトマネジメントの一貫として行われているプロジェクトリスクマネジメントが効果を発揮しない理由、どうすればよいかという方向性のようなものが見えてくる。

リスクマネジメント、特にPMOのような形でアセスメントに関わる人には読んでほしい1冊である。

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2005年4月28日 (木)

実践・リスクマネジメント

482011767X プレストン・G.スミス、ガイ・M.メリット(澤田美樹子訳)「実践・リスクマネジメント―製品開発の不確実性をコントロールする5つのステップ」、生産性出版(2003)

お奨め度:★★★★1/2

PMIのアワードを受賞し、リスクマネジメントの定番になるかもしれない本。内容は難しい。しかし、それはリスクマネジメントというのはそんなに簡単なことではないと思うことができる1冊。何だこれと思うような概念がたくさんある。しかし、よく考えてみると理にかなっている。この繰り返し。

読み通すには時間がかかるが、この本を一冊読めば、製品開発におけるリスクマネジメントは格段に進歩するだろう。

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2005年3月13日 (日)

Project Risk Management Guidelines

0470022817.01.LZZZZZZZDale F. Cooper, Stephen Grey , Geoffrey Raymond, Phil Walker "Project Risk Management Guidelines: Managing Risk In Large Projects And Complex Procurements", John Wiley & Sons Inc(2004)

★★★★1/2

リスクマネジメントに本気で取り組むなら、この本をお奨めしたい。

もう、15年以上前から改定を重ねられている本で、その分、レッスンズラーンドが蓄積されてきている。

PMBOKのリスクマネジメントプロセスに「近い」プロセスを前提にして、具体的な手法、指標などが満載である。

読みこなすには結構骨が折れるが、組織でリスクマネジメントプロセスの構築を行う際に、この本をみんなで読み、自社の現状に適用していくような進め方が可能である。ぜひ、そのような使い方をお奨めする。

また、特に指標は非常に示唆に富んでおり、読むだけでもあなたのリスクマインドは影響を受けるだろう。同じ意味で、プロジェクトでメンバーにリスクマインドを受け付けるために読んでみてもよいだろう。

なお、英語は難しくないが、単語が結構、リスクマネジメントの独特のものがある。

2005年1月13日 (木)

プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ

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ポール・S. ロイヤー (著), 峯本 展夫 (翻訳):「プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ」、生産性出版(2002)

お奨め度:★★★★

リスクマネジメント月間ということで、この本を取り上げたいと思います。

プロジェクト・リスクマネジメント―リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ

この本、あまり話題になりませんが、むちゃくちゃいい本です。実践的ですし、体系的でもあります。PMBOKを導入するのであれば、必読本でしょう!

PMBOKというプラットホームの上に咲いた花のひとつでしょうね。

熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理

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トム・デマルコ (著), ティモシー・リスター (著), 伊豆原 弓:「熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理」、日経BP社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

話題には事欠かない本ですが、出版元である日経BP社のニュースに面白いエピソードが載っていました。この本は、ずっと「Risk management」という仮タイトルで進んできて、最後に「Walting with Bears」というタイトルになったそうです。

出版そのものも、このタイトルのとおり、熊とワルツを踊るようなリスクをとっているという解説がされていました。

好川の個人的な感想として、デマルコほどのビッグネームの新著ですので、このようなタイトルをつけることは、ローリスクハイリターンの戦略だと思うのですが、まあ、日本の出版社の感覚でいえば、信じられないことなのでしょうね。それはよく分かります。

なぜ、こんなにしつこくタイトル論議をしているかといいますと、この本は内容をとやかくいうより、タイトルにすべてが集約されていると思ったからです。熊に追いかけられているのではないのです。「熊とワルツを」踊るのです。これこそ、この本でデマルコが言いたいことのすべてです。

 PMBOKのリスクマネジメントを丁寧に読むと、実に、体系的なまとめ方がされています。それでいくと、「熊とワルツを」というのは積極的な受容戦略なのですが、この本は単にそのことを言っているだけではありません。

デマルコの今までの本もそうですが、彼の大家たるゆえんは、どうすればプロジェクトが成功するかの一点に絞り、理論的、行動、心理などのあらゆる要因を統合的に論じている点です。この本も例外ではありません。リスクという観点から、プロジェクトの成功法則が書かれています。リスクを楽しめることこそが、プロジェクトの成功法則になるといっており、それは、リスク戦略の妥当性を超えた議論だといえるでしょう。

とにかく、読んでみてください!

ちなみにこの本を読まれるのであれば、

ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

を一緒に読まれることを強くおすすめしたいと思います。思想的な背景を理解しておいた方が、得られるものが10倍、100倍大きいと思うからです。

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非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

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非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

お奨め度:★★★1/2

先月紹介した岡村さんの

 「実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断

はいろいろな人からコメントを戴いた。なかでも、危機のときにプロジェクトマネージャー(リーダー)は何をできるかということに結構関心を持っている人が多かった。この興味はある意味で、現実的であるとも思う。

好川はプロジェクトマネージャーは平時のリーダーシップと、危機のリーダーシップで、エンジンを切り替えることができなくてはならないと思っている。このようなリーダーシップエンジンの切り替えを行うためには、何よりも重要なことは危機の認識である。

危機というのは識別できなかったリスク事象が発生した状況のことを言うのが一般的だと思う(これはパラドックスであって、プロジェクトマネジメント的にはリスクではないのだが)。つまり、計画にまったくないことが起こったときのこと。これは、そもそも、発生を識別するのが難しい。マイケル・ムーアの「華氏911」の代表シーンに、911テロの状況を告げられたブッシュが7分間まったくアクションを起こさず、小学生の授業を見ているというシーンがある。実際に、ある種のコンテクストがないとこれをクライシスだとは識別できない。一台目が突っ込んだときには単なる事故だと考えてもおかしくない。かれが大統領であるという事実を除くと、これは結果論だといっても間違いではないと思う。

が、彼が大統領であるとすれば、明からリーダーシップの欠如だ。

こんなときに、どのようなリーダーシップを発揮できればよいかということのヒントになる本である。

日常的に危機に直面すると思っているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひ、読んでみてください!

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