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2010年12月31日 (金)

ドラッカーに始まり、ドラッカーに終わる

4478014892 P.F.ドラッカー(上田 惇生 編訳)「 [英和対訳]決定版 ドラッカー名言集」、ダイヤモンド社(2010)お奨め度:★★★★★

待望のドラッカーの対訳集。上田惇生先生が選んだ120本。ドラッカーファンであれば見逃せない1冊だ。目標管理、民営化、などマネジメントにおいてドラッカーの提唱した概念は多い。その正しいニュアンスを知るには、この本は非常に役立つ。その意味で、すべてのマネジャーに目を通して欲しい本。

 


今年はあまり、ブログに時間がとれなかった。とりあえず、読んだ本のタイトル紹介はTWitterで行うようにしたこともあって、このブログを始めて以来、最小エントリーではないかと思う。

そんな状況であるが、終わりだけでもしめようと思ってこの本を紹介することにした。今年の最初(1月2日)に書いた記事は、

岩崎 夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、ダイヤモンド社(2009)


だった。もう今更説明の必要もないかもしれないが、今年のベストセラーで、200万部以上売れた本である。

つい先日、来年3月にはNHKがアニメ化するという話がニュースになっていたと思ったら、なんと今度はAKB48の前田敦子さんの主演で映画化もされるとのこと。もちろん、プロデュースは秋元康さん。

なぜ、ドラッカーかというのも多くの人が論じている。混乱した世の中だから、ドラッカーだという意見もあれば、大前研一氏のように単なるノスタルジーだという意見もあるようだ。

大前 研一、柳井 正「この国を出よ」、小学館(2010)

この意見は両方とも正しいように思える。敢えて言えば、今更ドラッカーでなんとかなるようには思わない。ドラッカーが見ていた現実よりは遥かに複雑になった現実があるからだ。

もし、ドラッカーが今、全盛期だとしても、おそらく一人であれだけ多くの思索や、著作をできたとは思えない。その意味で、大前氏のいう一人のリーダーがリードする時代では無いという指摘は正しいように思える。

ただ、一方で、その複雑さへの対処を支える基盤になるものが揺らぎ始めているのも事実だ。一例を挙げるなら、目標管理だ。目標管理はドラッカーの考案によるもので、もともと、Management by Objectives and Self Control でしたが、いつの間にか前半だけになり、MBOとなってしまいました。そこで、Self Controlを取り戻す必要が出てきた。

このような基盤を再構築するためにドラッカーに戻る必要は大いにある。その意味で、大前氏のいうように、ノスタルジーではないとも言えよう。

前置きが長くなったが、今年の最初の記事がトラッカーだったので、最後もドラッカーにしたいと思う。上田先生の編著は数多いが、ついに待望の対訳版が出た。ドラッカーの著作の中から、120本のメッセージを選び、対訳で紹介されている。選ばれたメッセージが含まれている著作は

現代の経営
マネジメント
マネジメント・エッセンシャル版
創造する経営者
ネクスト・ソサエティ
イノベーションと企業家精神
明日を支配するもの
未来企業
未来への決断
P.F.ドラッカー経営論集
新しい現実
日本 成功の代償
断絶の時代
・ポスト資本主義社会
マネジメント・フロンティア
乱気流時代の経営
経営者の条件
非営利企業の経営
すでに起こった未来
テクノロジストの条件
企業とは何か
産業人の未来
「経済人」の終わり

であり、

1.顧客の創造
2.イノベーションと企業家精神
3.利益と責任
4.組織と人
5.成果をあげる
6.人としての成長
7.ものの見方

の7つの視座から紹介している。

あとがきに、上田先生は非常の意味深なことを書かれている。

本書収載のドラッカー明言120本も、あくまでの2010年末のものであることにご留意いただきたい。ドラッカーの色々な顔のうち、もっとも古典的な「経営の神様」の側面が強く出たもの、閉塞状態でもがく今日の社会経済を反映してのものである。あるいは、明日の飛躍のために、役に立つことは何でも手に入れておこうの姿勢を反映してのものだと思う。

そのような編著ができるというのはすごいことだとつくづく思う。

ということで、ドラッカーに始まり、ドラッカーに終わった1年でした。

 


 

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