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2010年11月 2日 (火)

根拠のない優越感に対する処方箋

4093897298 大前 研一、柳井 正「この国を出よ」、小学館(2010)

お奨め度:★★★★

マッキンゼーでコンサルタントとして成功した大前研一氏、ユニクロで成功を収め、グローバル企業として世界展開を図っている柳井正さんの対談集。古くからの友人というだけあって、息も合い、グローバル社会で戦う経営や人材のあり方について論じている。

最近の若者は外国で働くことに興味を示さないとよくいわえる。半分以上の人が海外で働きたくないという産能大学の調査結果が示されている。この本で、柳井さんは、日本はまだ大丈夫だという過信に原因があると指摘する。確かに、不思議な面はある。

この本でも人材育成面でGEと同列に取り上げられているサムスンという会社がある。最近、スマートフォンを日本でも発売し、話題になっている。そのサムスンの人材育成について書かれた「ソニー、パナソニックが束になってもかなわない サムスンの最強マネジメント」という本がある。

この本を読んだ人事マンから、「でもやっぱり日本の企業の技術者の方が優秀のではないか」という感想を聞いてびっくりした。まさに、根拠のない優越感である。

この本は、根拠のない優越感を持つ日本人、特に若年層へのビンタ本である。復活の大きなテーマは2つある。一つは柳井氏の指摘する知識労働者としてのリテラシーを身につけることだ。知識労働者とはドラッカーの概念であり、ドラッカーを信奉する柳井氏の主張はドラッカーの影響を受けたものが多い。もう一つは大前氏の主張する語学力である。

この本、全体の中で、大前氏の語学力を身につけろという指摘が一番、印象に残った。

英語がしゃべれるといいという話ではない。英語はボキャブラリが少ないので、ニュアンス表現をよく使う言語である。特に、ビジネス英語は間接表現が多い。間接表現やニュアンスを理解するには、その言葉を使う人たちや地域、社会に対する本質的な理解が必要である。つまり、なぜそのような表現をするのかを理解しない限り、コミュニケーションは取れないし、結果としてビジネスはうまく行かない。

近年、ダイバーシティーの重要性が叫ばれるようになってきたが、ダイバーシティの障害になっているのは、やはり、相手の理解の不十分さである。

大前氏が指摘するのはこのことである。日本人の根拠無い優越感というのは、相手を知らないことからきているように思えてしかたない。

この2つのテーマを中心に、経済、政治、人材育成など、非常に広範に意見を交わしており、日本を取り巻く問題とその解決策の全体像が分かるような本になっている。大前氏の話は比較的マクロだが、柳井氏の話は実践と結びついている。柳井氏の実践は、現場からの積み上げではなく、マクロな経営的視点を持ち、それを現場に落としている。

これこそが、これからの経営者やマネジャーに必要な思考方法ではないかと思う。その意味で、自己啓発の本ということではなく、ものごとをどう見るかという点で、マネジャークラスの人にぜひ読んでみてほしい本である。

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