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2009年6月

2009年6月 6日 (土)

水と油が混ざると何ができるんだろう【ほぼ日読書日記 2009年6月5日】

某社でのワークアウトセッションを終えて、新幹線で京都に戻る。この2~3週間、金曜日でも空席が目立っていたが、今日は、かなり、混んでいた。新型インフルエンザ騒動も一段楽といったところか。

このくらいの方が本を読むには集中してよい。そのせいかどうかは分からないが、3冊ほど、読破。

一冊目の本。なんと、小川先生とコンサルタントの方の共著の「ビジネス書」。

小川 進、平井 孝志「3分でわかる クリティカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2009)

学者と実務家が本を一緒に書いた例は少なくないが、難しいなあと思う。だいたい、理論とプラクティスを集めたムックのように印象の本が多い。最近だと、プロジェクトマネジメントの分野で金井先生と岸良さんが「過剰管理の処方箋」という本を書かれたのが記憶に新しいが、やっぱり、油と水的な雰囲気の仕上りになっている。まあ、この本の場合には、著者がお二人ともキャラ立ちしているので、それが味になっているとは思うが、、、

その点、この小川先生と平井氏の本は、どんな分野でもインフラになる思考術というテーマ性はあるにせよ、よくまとまっていると思う。MIT時代に家族ぐるみのつきあいをされていたということ、平井氏は存知あげないが、小川先生の頭の柔らかさもあるのだろう。

ちょっといい感じ。紹介記事、書きたい。

これで勢いづいて2冊目。

ダン・ローム(小川 敏子訳)「描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング」、講談社(2009)

新幹線で読むにはちょっともったいなかった本。パワーポイントが気にいらないのは、本質がわからなく成るから。といっても、それで商売をしているので、あまり大きな声ではいえないが、、、

この本で推奨されている方法には全面的に共感。PMstyleで「ファシリテーショングラフィック」というセミナーをやっている。こちらはファシリテーションなので、あくまでも構造化にポイントがあるのだが、演習をみていると、ビジュアルに表現するところで苦労している人が多い。

イラストの拙攻は埋まらないかもしれないが、思考を図示するというのは後天的な能力だと思うので、この本を読めばかなり、改善するのではないかと思う。

この本も紹介したい。このカテゴリーの本で、加藤昌治さんの書かれた「考具」がいいと思うが、ダン・ロームの本も負けずに良い本。ビジュアルシンキングだけでいえば、こちらの方がよいのではないかと思う。

最後、

チャールズ・クーンラット、リー・ネル(東本 貢司訳)「仕事はゲームだ」、PHP研究所(2009)

こういう本が日本でどのように受け入れられるかは興味津々。ゴールをストレッチして、楽しむためのマネジメントを、かなり技巧的に書かれている。この本も、しばらく様子を見て、紹介したい。

ということで、3冊とも、結構、よい本でした。

2009年6月 3日 (水)

マネジメントチームという選択【ほぼ日読書日記 2009年6月2日】

新幹線の中で、何冊か、本に目を通す。まずはこれ。

ルース・ワーグマン、ジェイムズ・バラス、リチャード・ハックマン、デボラ・ニューンズ(ヘイグループ訳)「成功する経営リーダーチーム6つの条件」、生産性出版(2009)

これは、まさにパラダイムシフト。マネジメントチームという概念はそんなに目新しいものではないと思うが、実際にはチームではなく、一人のマネジャーに対して、補佐をするような形で形成されるワーキンググループであることが多い。

経営意志決定の質を高めるためには、こういう考え方が必要だ。どれだけ現実的かはともかく、非常に示唆にとんだ本。

つぎ、話のネタにと思い読んだが、思考実験としては結構おもしろいと思った。

渋谷 往男「戦略的農業経営―衰退脱却へのビジネスモデル改革」、日本経済新聞出版社(2009)

マネジメントの手法を適用してみるというのは一つのアイディアであるが、リードタイムの議論と価格のダイナミックスの議論が抜けているのではないかと思った。いずれも、時間軸絡みの話だが、実は、ビジネスと農業の最大の違いは時間軸ではないだろうか?

2009年6月 2日 (火)

リーダーはパラダイムシフトに如何に対応すべきか

482274020x ジョエル・バーカー(仁平 和夫訳)「パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法」、日経BP出版センター(1995)

お奨め度:★★★★★

トーマス・クーンの提唱したパラダイムをビジネスに定着させたきっかけになった書籍。パラダイムが如何に重要かを多くのパラダイムシフトの例を上げて説明し、リーダーはパラダイムに如何に対応すべきかを述べている。

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経験からモチベーションは生まれない【ほぼ日読書日記 2009年6月1日】

金井先生の短い解説と、野田先生との対談で構成されたモチベーション論。

この本に限らず、金井先生の書かれるモチベーション論を読んでいると、前提が変わっていることを感じることが多い。この本は特にそれを感じた。もうやる気は、個々人がコントロールすることが「当たり前」の時代になっている。上司がどうにかできるというのは幻想かもしれない。

金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ(2009)

テキサス大学の清水先生たちが、おもしろい研究をしていて、理論でどれだけ、実際の経営活動を説明できるかというもの。厳密には違うのだろうけど、単純にいえば、理論がどれだけ役立つか?30%程度だそうだ。

このような議論になってくると、客観性とはそもそも何かという議論になる。工学と経営学の決定的な違いは、適用範囲を明確にする必要があるかどうかだ。工学では、理論を立てるときに、その適用範囲を明確にしない限り、その理論は用をなさない。経営学の理論というのは、そこをはっきりさせない。極論すれば、参考になるかどうかの世界なのだ。

その意味で、金井先生のいう「持論」という発想は正しいと思う。30%に対しては理論を使えるが、70%に対しては理論が使えず、持論を持つ必要がある。

問題は、持論が何に依拠するかだ。日本人は圧倒的に経験である。いわゆる経験論。僕はきらいだ。経験からイノベーションは生まれない。経験が理論化されるからイノベーションの温床ができる。

モチベーション論はおもしろいところがあって、こういった情報発信自体が社会に何らかの影響を与える。結局、行くつくところは信じるかどうかの世界なのかなあ。

2009年6月 1日 (月)

儀式は重要【ほぼ日読書日記 2009年5月31日】

知人のブログで見て、興味本意で読んだが、たいへん、おもしろうございました。

マイケル・チウェ(安田 雪)「儀式は何の役に立つか―ゲーム理論のレッスン」、新曜社(2003)

コミュニケーションの中での儀式の役割を合理的選択理論を使って説明している。清水先生が、「経営の神は細部に宿る」という本の中で、コミュニケーションについて語っている部分で、そもそも、コミュニケーションを合理化しようというのは間違っていると書かれている。清水先生の主張は本を見る限りでは「意見」だと思うが、この本を読むと、ある程度、合理性のある意見であることが分かる。

儀式を省略したがる人が増えているが、そのことがコミュニケーション不全を招いていることが分かっただけでも読む価値のある本だった。

もう一冊、今日読んだ本。

ダン・ガードナー(田淵 健太訳)「リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理」、早川書房(2009)

リスクマネジメントの本質が何かということを事例を読みながら考えさせられる本。

先月からのインフルエンザ騒動で、日本人はメキシコ、米国より大騒ぎしたと揶揄する識者の意見も相次いだが、その理由がよく分かる。ビジネス書としても秀逸な一冊。

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