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2007年2月

2007年2月27日 (火)

リーダーシップの旅

433403389x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4457439_1 野田 智義、金井 壽宏「リーダーシップの旅 見えないものを見る」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ILSというNPOを立上げ、次世代のリーダーの輩出に取り組んでいらっしゃる野田智義先生と、日本のリーダーシップ論の第一人者である神戸大学の金井先生のコラボレーションによるリーダーシップ論。

野田先生のリーダーシップ観はサーバントリーダーシップの色合いが濃いが、そこに金井先生もいろいろな視点から意見を述べ、全体としては非常にダイバシティーの強いリーダーシップ論の本になっている。

この本の評価というか、サーバントリーダーシップへの評価は分かれると思う。ちょっと気になってアマゾンの書評を見たが、期待を裏切らず、全面否定派と全面肯定派が登場していた。僕はもちろん、全面肯定派である。

リーダーシップの獲得過程を「旅」というメタファーにしているのは、非常に興味深い。リーダーシップ研修などいろいろなリーダーシップ開発の方法はある。効果も出ている。しかし、この本で野田先生と金井先生が訴えているリーダーシップは、誰かに教わるものではなく、自分自身が選択をし、生きていく中で初めて身につくものだ。そのプロセスを旅に例えているが、まさに、旅であり、この本は旅のガイド本でもある。この本の最終章は「返礼の旅」と名づけられている。この中に野田先生の印象的なコメントがあるので、抜粋しておく。

心からの熱い思いがあり、何かを実現したいと夢や志を真剣に語る人に、周囲の人は喜んで手助けをしてくれる。リーダーシップの旅を歩む私たちは、人に助けられ、支えられる中で、自分が人を活かしているのではなく、人に自分が活かされている、そしてそのことによって、自分はさらに行動できるのだという意識を持つ。
利己と他利が渾然一体とはり、「自分のため」が「人のため」、「人のため」が「自分のため」と同一化する中、リーダーは自分の夢をみんなの夢に昇華させる。

何度読んで素敵な言葉である。さらに、こう続く。

リーダーはリーダーシップの旅の中で、大いなる力というギフトを授かる。旅を続けられること、それ自体がギフトでもある。私たちはもらったギフトを他人と社会に返す責務を負う。(中略)。ギフトを社会に返す中で、私たちはさらに真の意味での社会のリーダーへと成長する。

この本を読むときには、野田先生の訳されたスマトラ・ゴシャールの名著

意志力革命

を併せて読まれることをお奨めしたい。

2007年2月26日 (月)

プロジェクトマネジメントの道具箱

4306011461_01__aa240_sclzzzzzzz_v4572111 ドラガン・ミロセビッチ(PMI東京支部訳)「プロジェクトマネジメント・ツールボックス」、鹿島出版会(2007)

お奨め度:★★★★

2004年にPMIの優良図書に選らば得た書籍の翻訳。翻訳はPMI東京の有志による。

戦略プロジェクトマネジメントという視点でPMツールを捉えなおし、ツールの紹介をするとともに、どのような特性のプロジェクトに適しているかを整理している。また、PMBOKガイドとの関係付けもされている。

ツールは非常に万遍なく取り上げられている。その数は約60。

その部、個々のツールの説明の分量が少ないように思うので、初心者がPMBOKを勉強する際に、参考図書として使うのは多少つらいような気がする。

一度、セミナーなどで勉強した人が、辞書代わりに使うには非常に便利な本である。

また、PMBOKでは取り上げられていないツールが結構取り上げられていて、これがPMBOKのプロセスでどこで使えるかが示されているのは本書の魅力である。

それから、本書の本筋とはあまり関係がないが、上に述べたようにツールの適切の説明のためにプロジェクトカテゴリーを設定しているが、このカテゴリーが非常に参考になる。このカテゴリーがあってこの本の価値が生み出されている。

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2007年2月13日 (火)

気まぐれコンセプト

4093590028_01__aa240_sclzzzzzzz__3 ホイチョイ・プロダクションズ「気まぐれコンセプト クロニクル 」、小学館(2007)

お奨め度:★★★★1/2

広告業界に生きているわけではないが、「気まぐれコンセプト」は僕の仕事術のバイブルのひとつ。25年間の集大成が本書。

「気まぐれコンセプト」を読み出した頃には、コンセプトの意味がよく分からなかったがだんだんわかってきて、仕事はこうするといった刺激を受けている。面白いことにこういう発想は、製造業行っても結構通用するんですね。

それにしても、ホイチョイ・プロダクションズは最近派手に活動しているなあ、、、

この本と連動している映画はこちら。

4043841019_01__aa240_sclzzzzzzz_v4643446 君塚良一、泡江剛「バブルへGO!!―タイムマシンはドラム式」、角川文庫(2007)

2007年2月12日 (月)

神の交渉術

4766783891_01__aa240_sclzzzzzzz_v4686911 竹内一正「スティーブ・ジョブズ神の交渉術―独裁者、裏切り者、傍若無人…と言われ、なぜ全米最強CEOになれたのか」、経済界(2007)

お奨め度:★★★★

松下、アップルなどに在籍した著者が、客観的な目でジョブスの交渉術を分析した一冊。この手の本にしてはジョブス信仰はあまりないようで、どちらかというと日本人の視点からジョブスの行動を評価しているのが非常に興味深い。

日本人は交渉について論理性を求めている。これはたぶん、農耕民族独特の発想だと思う。最初は折り合わなくても、何とかして論理性が生まれる条件の設定を行う。それでも論理性が構築できない場合には、「三方一文の損」という和を重視した裁きになる。

ところが、少なくともジョブスの交渉術は異なる。論理性など最初から求めない。ある意味で、強行的な交渉である。面白いのは、自分の立場が弱くても、そのような交渉をすることだ。例えば、中小企業が大企業を相手に自分たちの主張をすべて飲ませようとするなど、ほとんどありえないだろう(ぱっと思い浮かぶのが、岡野工業だが)。

狩猟民族の交渉とは本質的にこのようなものだと思う。問題は弱い立場で如何にそれをひっくり返す交渉を行うかだ。ここではやはり、カリスマ性とか、プレゼン力などが効いてくる。ジョブスの素晴らしさはここだろう。

いずれにしても、アップル社でビートルズを手玉にとり、ピクサー社でディズニーを手玉にとり、iTuneで大手レーベルを纏め上げた交渉術は一読に値する。

ぜひ、読んでみよう!

2007年2月 7日 (水)

見える化ではなく「視える化」しよう!

4479791884_01__aa240_sclzzzzzzz__1 若松義人「トヨタ流「視える化」成功ノート―「人と現場が変わる」しくみ」、大和書房(2007)

お奨め度:★★★★1/2

昨年あたりから「みえるか」が大ブームになって、たくさんの本が出版されている。その中で、トヨタイズムの伝道師のカルマン若松社長だけが、「見える」という言葉を使わず、「視える」という言葉を使われている。これもトヨタ流とのことだが、トヨタでは、「みえるか」というのは、「見つける」、「気づく」だけでは意味がなく、改善して初めて意味があるとの考えからこの言葉を使っているとのこと。

この本では、そのような視座で

 ・能力の視える化

 ・問題点の視える化

 ・ノウハウの視える化

 ・市場の声の視える化

 ・失敗の教訓の視える化

 ・現場の空気の視える化

 ・仕事の大局の視える化

の7つの視える化について、42のヒントを提供している。

ヒントの内容は極めて濃く、みえるかの「元祖」はトヨタだといわんばかりのできである。また、書籍としても、事例をふんだんに使って説明してあるので、ピンとくる。

現場のマネジャーなら、一読して損はない。若松さんの本の中でも最もよいできの本ではないかと思う。一読の価値アリ。

2007年2月 5日 (月)

英語でプロジェクトマネジメントを勉強しよう

0071259627_01__aa240_sclzzzzzzz_ Gary B. Heerkens「Project Management -24 LESSONS TO HELP YOU MASTER ANY PROJECT」、McGraw-Hill (2007)

お奨め度:★★★1/2

マネジメント論は英語圏の生まれのものが多い。そのため、日本語にするとニュアンスが伝わらないものが多い。要するに文化を理解し、考え方や慣行を理解しない限り、うまく使えないのが欧米のマネジメント論である。

そんな困難さに多少なりとも便宜を提供してくれるのがこのシリーズだ。非常に基本的な範囲に限られるが、英語と日本語の対訳形式で書かれている本。訳が非常によいので、丁寧に英語と日本語を読んでいけば、かなり、ニュアンスが分かる。

ということで、プロジェクトマネジメント編を待っていたのだが、やっと出た!

期待通りである。タスクとアクティビティと違いがきちんと分っている人はそんなに多くないだろう。PMBOK(TM)第3版では、ニュアンスのある言葉はほぼ例外なく、カタカナにしてしまって、分かった気になったようで分からないことがたくさん分かる。

内容的には(欧米的なクセはあるが)、半日くらいのセミナーを受講したことのある人なら、十分、知っている内容であるので、言葉に絞って、プロジェクトマネジメントの本質を考えたいと思う人にはお奨めだ。

この本を読んで英語が分かったら、次にぜひ、お奨めしたいのが、この本。

1592575986_01__aa240_sclzzzzzzz_ G. Michael Campbell、Sunny. Baker「The Complete Idiot's Guide to Project Management (Complete Idiot's Guide to) 」、Alpha Books(2007)

お奨め度:★★★★1/2

Complete Idiot's Guide(日本では「世界一分かりやすい」シリーズ)のプロジェクトマネジメントの第4版。日本では第3版をプラネットの中嶋さんたちが翻訳をされ、非常によいできの本。翻訳のできもあって、よく売れているし、プロジェクトマネジメントのコンサルタントや講師からの評価も高い一冊である。

第4版の訳本がでるとしてもしばらく時間がかかると思うので、この際、ぜひ、英語版でチャレンジしてみよう。PMBOK3版を反映し、第3版にかなり多くの項目が加わっており、一層充実している。

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2007年2月 2日 (金)

ミンツバーグのエッセンス

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部)「H・ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★★

異端の経営学者ミンツバーグの

マネジャーの仕事

戦略サファリ

などの代表的な著書から、経営論として編集しなおした一冊。

ミンツバーグの素晴らしさは、無理やり答えを出さず、ありのままでのものごとを見て、考察をすることである。学者とは本来こうあるべきだろうが、やはり、結論ありきの「戦略的仕事」をする学者の方が圧倒的に多い中で、異端の存在だといえる。鬼才 トム・ピーターズはミツバーグを20世紀最高の経営思想家だと評している。

一ツ橋大学の伊丹先生は

唯一最善解はない。ミンツバーグは子どもの目を持ち、老大家の頭を持った、異能の人である。彼の論考に制激されて、読者の頭脳もさまざまな汗をかくであろう。

と称している。最近はだれもがマネジメントには正解はないという。しかし、実感を持ってこの言葉を語る人は10人に1人もいればいいところだろう。9人の人は正解を求めたがる。するとアプローチを誤り、失敗する。

ミンツバーグはその豊富なフィールドワークから、その証拠をいやというほど見せ付けてくれる。そんな一冊でもある。マネジメントに正解はないということを本当に感じたい人はぜひ、読んでみてほしい。読んだ瞬間から、世界が変わるだろう。

この本でミンツバーグに共感できたら、ぜひ、この本を読んでみてほしい。この本にミンツバーグの思想の全てがあるのではないかと思う。

4478170258_09__aa140_scmzzzzzzz_ ヘンリー・ミンツバーグ(北野利信訳)「人間感覚のマネジメント―行き過ぎた合理主義への抗議」、ダイヤモンド社(1991)

版元の絶版で、アマゾンではトンでもない価格がついている一冊だが、本物のマネジャーを目指す人であればこれだけのお金を出しても意味があるだろう。

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