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2007年1月

2007年1月10日 (水)

意図された混乱

4478307040_01__aa240_sclzzzzzzz_v4801519 ヘンリー・ミンツバーグ(DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部編)「H. ミンツバーグ経営論」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

日本でも紹介されているミンツバーグのいくつかの著作を編集した本である。

456124218x09lzzzzzzz_1 マネジャーの仕事

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック

の2冊がベースに、HBRのインタビューなどが加えられて一冊の本になっている。編集がよくて、ミンツバーグの特徴がよく現れた一冊になっている。

4492530649_09__aa240_sclzzzzzzz_このブログでもマネジャーの仕事は何度か紹介しているが、ミンツバーグは考えるネタを提供してくれる著作が特徴である。マネジメントは複雑であるという思いがあるのだそうだ。

この本の原題は、邦題より大きく書いてある「Calculated Caos」である。意図された混乱とでもいえばよいのだろうか?意図して混乱させ、考えさせる。そこにミンツバーグの著作の本質があるといえる。

この記事を書くのにアマゾンのページを見たら、take_dさんという方が、司馬遼太郎を読むような感覚で読んでみてはどうかと書かれていて、なるほどと思った。

日本人はこの手の考えさせる本は好きではない。ノウハウもの以外は本に金を払う価値はないと思っている人が多いように思う。しかし、言われてみると、時代小説は好んで読み、それをマネジメントや自分の仕事に活かすというのは好んでする人が多い。

時代小説には答えが書いてあるわけではないが、刺激がたくさんあるのだろう。確かにミンツバーグをそのような感じで読めば、非常に面白い著作が多いのは間違いない。ナイスアイディアだ。

ERP、CRM、SCMと並ぶEMM

4901234919_01__aa240_sclzzzzzzz_v3496859デイブ・サットン、トム・クライン(高宮治、千葉尚志、博報堂ブランドソリューションマーケティングセンター訳)「利益を創出する統合マーケティング・マネジメント」、英治出版(2006) 

お奨め度:★★★★1/2

マーケティングという概念は分かりにくい部分があるが、それは、製品を企画し、開発し、販売するまでの一連の活動すべてであるにも関わらず、それらを体系的に取り扱う手法がないためである。

このため、ステージ間の連携においては、ヒューリスティック頼りの側面が強く、これがマーケティングはアートとサイエンスが混在しているといわれる一因になっている。

この本で提案されているEMM(エンタープライズ・マーケティング・マネジメント)は、これらの活動を統合的に扱うために考えられた手法である。統合的に使おうとするために、マーケティングのさまざまなステージにおける活動はすべて必然性と論理性が求められるようになり、これにより、マーケティングはサイエンスになる。

コトラーはこの本で紹介されているサットンとクラインの仕事を、「ERP、CRM、SCMと並ぶ効果効率の高い収益力のある事業運営のプラットホーム構成要素のひとつ」だと称している。

製品開発に関わる人は必読の一冊である。

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2007年1月 8日 (月)

検索ができるようになりました。

Googleの検索を使って、ブログ内の検索ができるようになりました。右にある検索窓にキーワードを入れて、検索範囲を指定してお使いください。

ついでに、気分転換で、デザインも変えました。如何でしょう?

2007年1月 7日 (日)

PMstyle Books開店のお知らせ

Pmstyle_color1_2 PMstyle.bizに PMstyle Booksを開店しました。サイト内で、書籍やソフトウエアの買い物をお楽しみいただけます。

プロジェクトマネジメント、プログラムマネジメント、プロダクトマネジメントについては、かなり、カバレッジが高いと思いますので、ぜひ、一度、お越しください。

また、周囲の方にもご紹介いただければ幸いです。

PMstyle Books

2007年1月 5日 (金)

イキイキ

4833418428_01__aa240_sclzzzzzzz_v3560707 人と組織の活性化研究会、加護野忠男、金井壽宏 「なぜあの人は「イキイキ」としているのか―働く仲間と考えた「モチベーション」「ストレス」の正体」、プレジデント社(2006)

お奨め度:★★★1/2

日本の経営学のグルの一人、加護野先生が学部長をやられていたときに「カゴの鳥」状態で外に出れなくて、学部長室に来てもらって開催していた研究会が、その後、成果を積み重ね、一冊の本になった。時代背景にバブルの後の落ち込みがある。

金井先生が研究会にコミットされていることの影響もあると思うが、この本は、いつも元気でいようというスタンスではない。「落ち込みOK」である。つまり、ライフサイクルの中で、元気な時期もあれば、落ち込んでいる時期もある。それを前提に元気のないときにどのように活力を取り戻すかを、研究会の参加者が実際に知っている、あるいは調査した事例に基づいて議論している。「落ち込みOK」、「実例」の2つにより、元気になりたい人にとってとても力強い本になっている。

ちなみに、研究会の議論のベースになっている、「イキイキ・サイクル・チャート」と呼ばれるライフサイクルチャートがある。年齢を時間軸にして、イキイキ度を書いていく。今、30代後半から40代前半にある人は、ぜひ、このチャートを書いてみてほしい。それだけで元気が出てくると思う。

もうひとつ、神戸大学のMBAコースの特徴である、「社会で活躍する人が自分の抱える問題を持って学校に来て、リアルタイムで解決し、トライアルできる教育環境」というのがよく現れている一冊でもある。

もうひとつ。3~4年前に金井先生にお会いしたときに、「好川さんは落ち込まないね」といわれた。この本の解説で金井先生がいつもハイなのはビョーキだと書かれている。そういう意味だったのか、、、(笑)

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2007年1月 4日 (木)

2006年「このビジネス書が凄い!」

好川哲人が選ぶ2006年のベスト1は

 スコット・バークン(村上 雅章訳)
 「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法

です。

この企画、ビジネス書の杜を始めて以来、毎年やっていますが、たぶん、プロジェクトマネジメントの本を選ぶのは初めてではないかと思います。そのくらい素晴らしいと思った本です。

書き方は抽象化されていますが、内容はマイクロソフトの「エスノグラフィー(民族誌学)」だといってもよいくらい、現実に起っている、やっていることに忠実に書かれています。

プロジェクトマネジメントの書籍も一時なりを潜めていましたが、昨年後半から、また、出版されるようになってきました。

しかし、複雑化しているプロジェクトをマネジメントする術を書くには、長尾さんの書かれた本、中嶋さんの訳された本(この2冊は出版以来、必ず、ビジネス書の杜ベスト10に入っています)のような優れた本でも、限界があるように思います。

これからは、このようなエスノグラフィー的な本をたくさん出版して、「物語」として伝えていくというものぜひ、考えていただきたいものです。プロジェクトマネジメントにはやはり、アートも必要なのです。

それから、今年は特別賞があります(何も賞品でるわけではないですが;笑)。

 Linda Gorchels(新井宏征訳)「プロダクトマネジャーの教科書

よくぞ、この本を訳してくれました!訳者の新井さんはもちろんですが、翔泳社の外山さんにも感謝です!「クロフネ」到来になるかも?!

2007年1月 3日 (水)

2006年ベストセラー

Thank_1 昨年度は、ビジネス書の杜をご愛顧いただき、ありがとうございました。本年もよろしくお願い致します。

2006年にビジネス書の杜で売れた本のベスト10は以下のようになりました。

第1位
A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation

第2位
世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント

第3位
プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル

第4位
一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方

第5位
ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法

第6位
先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

第7位
意志力革命 目的達成への行動プログラム

第8位
自分の小さな「箱」から脱出する方法

第9位
ケースで鍛える 人間力リーダーシップ

第10位
プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット

死の谷を如何に乗り越えるか

4641162530_01__aa240_sclzzzzzzz_ 榊原清則「イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析」、有斐閣(2006)

お奨め度:★★★★

R&Dにおける「死の谷」問題に着目し、実際の日本企業のサーベイを通じて、この問題への解決の方向性を提案している。提案は、クリステンセン先生の『イノベーションのジレンマ」や、東大藤本先生の『アーキテクチャの位置取り戦略』をベースの理論としており、これらに対する簡単な解説も含まれている。

理論的な解説をこの問題に絞っているので、MOT全般を扱う本にはなっていないが、簡潔に、実に的を得た実感を持てる問題分析と提案になっている。

また、この本の三分の二を占める内外のベストプラクティスを分析する形で、提言が構成されているので、納得性も高く、読んで面白い本である。

MOTのとってつけたようなケースではなく、このように本格的なケースを踏まえて、論理構成をする榊原先生のセンスには感動すら覚える。

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2007年1月 1日 (月)

抜く

476319657x 上原春男「「抜く」技術」、サンマーク出版(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上原春男先生は佐賀大学で「海洋温度差発電」という資源を必要としない発電方法の研究に一生をささげている方だ。業界では著名な方だが、その活動は、大学の研究者の域を超えており、産官学を巻き込んだ活動をアクティブに展開されている。大学のキャリアの最後は佐賀大学の学長を勤められ、退官後、「海洋温度差発電推進機構」というNPOの理事長を勤められている。

そのようなキャリアの上原先生が「海洋温度差発電」というライフワークを通じで、「抜く」技術を習得され、製品開発や企業経営の中に活用され、多くの企業やプロジェクトを指導されている。そのエッセンスをまとめた一冊である。

この本は「車のハンドルのあそび」から話が始まる。

ハンドルにあそびがないと、車は怖くて運転できない。あそびにより、人間の無理な操作を抜き、急速な動作を緩める。ここに抜きの技術がある。

その次に出てくるのが、建物の強度。マンション強度偽装が行われたのは、記憶に新しいが、このときに話が分かりにくいと思った人は少なくないだろう。構造物の安全性は、素材の硬度や強度だけでは決まらない。構造が問題になるので、分かりにくかったのだが、そこにもはやり、無理な力がかかったときに抜く技術がある。

ダンパーなどもそうだが、エンジニアリング技術にはこの抜くという技術がたくさん使われている。上原先生のいわれる抜く技術のポイントは「抜いたものを如何に有効に使えるか」だという。海洋温度差発電もまさにこの技術である。

これはビジネス全般にいえることだというのが上原先生の主張だ。最近は押し一辺倒になっており、うまく行かなくなっている。もっと抜きとしての「引く」ことをビジネスに取り入れるべきだと主張されている。

ビジネスの駆け引きを想像してみればこれはよく分かるだろう。サッカーとか、アイスホッケーでパワープレイというプレイスタイルがある。終盤でどうしても点がほしいときに、攻撃陣を厚くして、押しまくるプレイだ。最近のビジネスを見ていると、パワープレイだけでものごとを済まそうとしている。勝ち負けだけを考える。これが、日本型経営の崩壊になっているという指摘はまさにそのとおりだ。

抜く技術の一つが捨てることを考える技術だ。上原先生は、これを現場指向と結び付けている。目からウロコ。一昨年辺りから現場主義の重要性が盛んに言われだした。戦略経営に振りすぎた振り子のゆり戻しだと思うが、現場主義の本質は、確かに、無駄をしないことにある。

さらに人間関係でもこの「抜く」技術は重要であると説かれている。人間関係をフレックスにする例をいくつか上げている。

そろそろ、こういうことを考えてもいいのではないかと思う。今の米国中のパワープレイにうんざりとしている人にお奨めの一冊だ。

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