感謝:戴いた書籍 Feed

2006年9月11日 (月)

PMBOKの原点を知る

487268567901  188041030301プロジェクトマネジメント協会(PMI東京支部訳)「プロジェクトマネジメント プリンシプル - 変革の時代を生き抜くための人と組織の挑戦」、アイテック(2006)

お奨め度:★★★1/2

10年前に米国PMIが纏めたPMの名著
The Principles of Project Management

をついにPMI東京の有志の方が翻訳し、日本でも出版された。一説によると、PMBOKガイドを意識して、PMBOKガイドのプアな部分を重点的に書かれたという本。

PMBOKの功罪はさまざまで、トータルすると圧倒的に功が大きい。その中で、罪の部分で最も大きいのは、プロジェクトマネジメントを矮小化している点だ。これはPMBOK自体の問題というよりも、PMBOKガイドの書き方による部分も大きいが、本来、プロジェクトマネジメントはプロジェクトだけの活動ではなく、組織全体の活動である。

それがプロジェクトチームを中心にした説明をしているので、すべてがプロジェクトマネジャーやプロジェクトマネジメントチームのタスクだと誤解されている傾向が強い。

決してそんなことはなく、プロジェクトマネジメントを有効に実施するためにはこの整理から始める必要がある。その原点を整理するには最高の本である。まさに原理である。

僕がこの本の原書を読んだのは6~7年前だが、当時感じたことと較べて感じたことが2つある。

一つは、当時、目からウロコのなんと素晴らしい本だと思ったが、今はこのレベルの本は何冊かある(残念ながら、和書ではないが)。もう一つは、経営学(マネジメント論)で議論されるようになってきたことが相当多いことだ。

いずれも、プロジェクトマネジメントが世の中に普及し、進歩してきたことによるものと思われるが、これらはこの本の価値を損なうものではない。

ただし、一つだけ苦言がある。この内容の本を日本で3500円で出されると高い。この点が★一つ減。値段が気にならない人には、この本は★★★★1/2 である。

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2006年8月 5日 (土)

プロジェクトマネジメント危機脱出マニュアル

447837521601 デイビッド・ニクソン、スージー・シドンズ(中嶋秀隆訳)「プロジェクト・マネジメント 危機からの脱出マニュアル―失敗ケースで学ぶ」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

さっと読んでみて、いよいよ、こんな本が出てくるようになったかという思いを持った一冊。さすが、PMに対する独自の視点と見識をもたれる中嶋秀隆さんが選んで翻訳された本という感じ。

プロジェクトの失敗をきちんと体系的に整理し、問題領域を特定し、問題領域に対してソリューションを提供している。同じ狙いで書かれた本に、伊藤健太郎さんのベストセラー

伊藤健太郎:「プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵

https://mat.lekumo.biz/books/2005/01/it.html

がある。この本は今でも一番売れたPM本らしい。

伊藤さんの本はプロジェクトマネジャー向けに書かれているのに対して、この本は、組織マネジャー、あるいはプログラムマネジャー向けに書かれた本である。プロジェクトマネジャーに役に立たないという意味ではないが、ソリューションがプロジェクトマネジャー一人では実行できないようなものがかなり入っているし、問題分析の視点も組織からの視点である。また、人事制度とのプロジェクト失敗の関係、PR(パブリックリレーション)との関係にまで言及されており、広範な内容をコンパクトに纏めた非常に参考になる本である。

特にプログラムマネジャーにお奨めしたい本だ。ただし、2つ注意がある。マニュアルと書かれているが、コンパクトに纏めるためか、記述の抽象度が高い。原書を読んでないのでなんともいえないが、訳は読みやすいと思うので、原書の書き方の問題だと思う。2つめは、これにもつながるが、相当、マネジメントに関する基本的な知識を持たないと読みこなせない本である。これはプロジェクトマネジャーより組織マネジャーを対象にした本だからだと思う。

久しぶりに★5つをつけようと思いとどまった。理由はエンパワーメントとガバナンスに関する踏み込んだ議論がないことだ。これらの問題に触れてないわけではなく、いろいろな側面から触れている。また、このような構成になる理由も分かる。しかし、これだけ工夫された本であるので、もう少し頑張って欲しかったなと思う。そこだけが、若干、不満であるが、それ以外、文句なし。

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2006年4月 1日 (土)

3+2=5世代のテクノロジーマネジメント

450238200001lzzzzzzz 古田健二「第5世代のテクノロジーマネジメント―企業価値を高める市場ニーズと技術シーズの融合」、中央経済社(2006)

お奨め度:★★★★

日本では、MOT(マネジメントオブテクノロジー)は理科系(研究開発部門や、エンジニアリングマネジメント)の人材のスキルだと考えられている節があるが、経営との融合が低い。米国では、MBAコースの中でかなりの時間をとっているため、よい書籍が多い。ところが日本では、少なくとも、組織マネジャーが読むことができて、なおかつ、自身のマネジメント活動の参考になる本はほとんどなかった。3年くらい前から、MOTの本は恐ろしく増えているが、そのような本を書いている著者自身が視点の違いに気がついていないのではないかと思う。つまり、技術という視点からものごとを見ているため、事業視点があまりくっきりと浮かんでこないのだ。

「ほとんど」と書いたのは、そうは言いながらも過去にもよい本があったからで、その中の1冊が、この本の著者でもある古田さんが5年前に書かれた

450235960209lzzzzzzz 古田健二「テクノロジーマネジメントの考え方・すすめ方」、中央経済社(2001)

である。今回の本は、この本の発展版である。

さて、なぜ、第5世代かという話をしておく必要がある。1991年に米国で、「Third Generation R&D」という本が出版されて話題になった。第3世代の研究開発である。第3世代というのは、テーマの発想の方法にある。それまでは「技術シーズ」によるテーマ発想をしていたのに対して、第3世代では、「市場ニーズ」を基にしたテーマをしようというものである。この違いは米国では研究開発に大きなインパクトを与えた。この本は日本でも翻訳出版されている。

4478370745フィリップ・ラッセル、タマーラ・エリクソン、カマル・サード(田中靖夫訳)「第三世代のR&D―研究開発と企業・事業戦略の統合」、ダイヤモンド社(1992)

ただし、日本ではあまり大きな話題にはならなかった。

古田氏によると、第5世代というのは、2+3の5であり、第2世代と第3世代の考え方を統合したものであるとのこと。

実は上に述べたこと、つまり、理科系の人だけではなく、文系の人も役立つ理論というのは第3世代の理論であり、古田さんの前著も基本的には第3世代のテクノロジーマネジメントをベースにして書かれている。

が、この何年か、第2世代と第3世代のバランスの重要性が盛んに言われるようになってきており、そのあたりの流れを受けて、新たな本を書かれたのではないかと想像する。

内容であるが、両世代の理論が網羅的に書かれている。事例にもふんだんに触れており、大変に分かりやすい本である。ただ、価格が高いので、購入にはそれなりに覚悟がいる。だた、読んでみて損はない。特に、製造業の企業の組織マネジャーには、ぜひ、覚悟を決めて読んで頂きたい。

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2005年10月29日 (土)

思考と行動のエッセンス

31608250 井上明人「30歳からの進化論―仕事の仕方を成長させる29の知的ノウハウ」、文芸社(2005)

著者の井上明人さんがキャリアの中で培われてきた仕事のノウハウを1冊の本としてまとめられている。面白いのは、思考ノウハウと、行動ノウハウにきちんと分けてあること。こういう本を読んでコンピテンシーを高める上で、この区別をきちんと認識して読んでいくことは極めて大切で、それを表示してあるのはすばらしい。

内容は、キャリア(ビジネスマン人生)、問題解決力、コミュニケーション力、メンタル力という4つの視点で整理されており、数はそんなに多くないが、凝縮されたものが多い。

例えば、問題解決力の思考ノウハウの最初に

鳥のように上空から大きく全体を眺めて方向性を絞り、対象を見つけたらそこへ一気にズームアップして具体策の仕上げを行う

というのがある。大局観であるが、大局観をこのような凝縮された言葉で表現できるというのは並大抵のことではない。このような凝縮したノウハウが29個(行動7、思考22)、並んで、事例も提示しながら、解説されている。

1冊読めば、コンピテンシーは間違いなくあがるだろう。

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「理系ビジネスマン」になろう!

488759360009lzzzzzzz 泉通博「理系ビジネスマンが書いた ― 人生をプロジェクトマネジメントしよう!」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2005)

お奨め度:★★★1/2

著者の泉さんは電子機器メーカーでPMの仕事をされている方である。その泉さんが、よい仕事ができれば幸せな人生を送れるという前提で書かれた広い意味でのキャリア本。

タイトルの人生のプロジェクトマネジメントというのはちょっとしたお遊びだが、実は、この本の特徴をより現している言葉は「理系ビジネスマン」という言葉。技術者でも、エンジニアでも、理系サラリーマンでもなく、「理系ビジネスマン」。「理系ビジネスマン」とは何かという定義をした本でもある。

内容は、エンジニアらしく、論理的に構成されており

「思考の基本鉄則」⇒「行動の基本鉄則」⇒「実生活の応用鉄則」

という順序で考えていけるようになっている。書かれていることにも説得力があるし、納得できる。何よりも、著者の真摯な面がひしひしと伝わってくる。日本の強みを作っている現場を垣間見るような本である。

僕もエンジニアというのはこういう人生を送ってほしいなと思うし、エンジニアの方にはぜひ手にとって読んでみてほしい本である。

実際に、僕のクライアントにはメーカが多い。現場でエンジニアリングを担当している人には泉さんのようなタイプの人が多い。僕も技術者だった時分にはこういう考え方をしていた。

同時に、メーカの中心になるエンジニアがこのようなキャリア観を持っていることが、青色発行ダイオードの中村修二さんのようなトラブルを起こす企業風土を作っている一面も生み出している。

その辺りで、これからのエンジニアの人には十分なダイバーシティを持ってほしいなと思う。この泉さんの本は、その点のヒントも隠されているように思う。

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2005年7月11日 (月)

なぜ、スターバックスに行くと気持ちよいのか

4785502703 毛利英昭「勝ち組の人材マネジメント―スターバックス急成長を支える自律型組織に学ぶ」、商業界(2005)

お奨め度:★★★★

スターバックスの人材マネジメントについて、非常に詳細に説明すると同時に、そのような人材マネジメントが、戦略実行の中で果たしている役割を説明している。

読んでいるとなぜ、こんなことができるのだろういう疑問を持つが、現実にスターバックの店舗に言ってみると、確かに、スタッフは人材システムが望むような行動をしていることが分かる。つまり、空絵ごとではなく、現実にできているのだ。

キーワードはコミットメントにあるようだ。ぜひ、一度、読んでみてほしい。

2005年1月13日 (木)

プロジェクトマネージャー・コンピテンシー開発体系―PMI標準

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プロジェクトマネジメント協会:「プロジェクトマネージャー・コンピテンシー開発体系―PMI標準」、テクノ

お奨め度:★★★

Project Management Competency Development Framework(PMCDF)の翻訳。好川も監修者の一人として参加しました。

内容的には、プロジェクトマネージャーの知識(ナレッジコンピテンス)、スキル(パフォーマンスコンピテンス)、行動特性(パーソナルコンピテンス)の3つに分けて、コンピテンシーの記述とアセスメントの方法が書かれています。

で、内容ですが、PMBOKの知識とスキルのアセスメントには見るべきものがありますが、これだけでPMコンピテンシーは表現できないだろうという感じです。もっとも、PMBOKを対象にした体系ですので、PMBOKに基づくマネジメントを成功させるコンピテンシーはこんなものかもしれないと思わないでもありませんが、、、

PMBOKガイドと同じく、常に持っていて、参照しながら使うと有効だと思いますが、そういう使い方をするには5000円は高いですね。

よくわかるPMP認定試験の合格対策

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野村隆昌:「よくわかるPMP認定試験の合格対策」、技術評論社(2004)

お奨め度:★★★★

野村さんから献本戴きました。ありがとうございました。

この本、PMP試験対策本の体裁をとっているが、PMBOKの解説書である。PMBOKの解説書というのはありそうで、意外とない。例えば、JPMFの副会長の佐藤義男さんの

改訂 PMBOKによるITプロジェクトマネジメント実践法―PMBOKガイド2000年版対応

のように適用について書いた良書はあるが、PMBOKというのがどのようなマネジメントをすることをイメージしているのかを詳細に記述した本がない。米国では、知識エリアごとに、そのような本があるところまで進んでいることを見ると、さびしい限りである。

その意味で、この書籍がPMBOKの解説が世の中にでてくるきっかけになればよいと願っている。

内容だが、少し、掘り起こし方が浅いように思う。これは書き手の問題ではなく、本の作り方の問題だろう。

プロジェクト成功への決め手―構想・企画から商談・契約まで

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井野弘:「プロジェクト成功への決め手―構想・企画から商談・契約まで」、英治出版(2004)

お奨め度:★★★1/2

井野弘さんから献本をいただきました。ありがとうございました。

ありそうで、なかった受発注というスコープまで扱った本である。書き方は、受注サイドの視点を、発注サイドの視点の両方から書かれているので、読みやすく、意欲的なオピニオン発信をする意欲作である。特に、受注側の視点をかなり具体的に、詳細に書いてあるのは特筆に値する。

好川の感想だが、問題提起は共感できるが、提案されている解決方法は情報化のテクニカルスキルへの依存はもう少し小さくし、マネジメントに依存した方が現実的ではないかと思った。

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