仕事術 Feed

2008年5月26日 (月)

仕事のオキテ?!

4887596308パット・ハイム、スーザン・ゴラン(坂東智子訳)「会社のルール 男は「野球」で、女は「ままごと」で仕事のオキテを学んだ」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

お薦め度:★★★★1/2

以前、

エイドリアン・メンデル(坂野尚子訳)「女性(あなた)の知らない7つのルール―男たちのビジネス社会で賢く生きる法」、ダイヤモンド社(1997)

を紹介したが、この本よりインパクトのある本だ。

発想は同じ。まず、男性と女性は、その経験から異なったルールを持っている。ビジネスの世界は男性社会なので、女性は自分たちのルールでいくら成果を上げても、決して認められることはない。

この本が面白いのは、だから、男性に合わせるのではなく、男性のルールを観察し、熟知することによって、最低限、併せるところを決めればよいと指摘している点。それを7つのルールとしてまとめている。

7つのルールを紹介する前に、どう違うのかを紹介しておこう。男性が経験してきたのは、野球(ゲーム)で、女性が経験してきたのはままごと(遊び)だという。そのルールの違いは、以下のようなものだという。

【野球のルール】
・一番大事なのは勝つこと
・作戦をたてなければゲームには勝てない
・勝つことがすべて。だからズルも大目に見られる
・会話を通して、問題を解決する
・内心はどうあれ、とにかく強気にふるまう
・権力があれば、自分の考えを押し通すことができる

【ままごとのルール】
・究極のゴールはみんなを満足させること
・ベストを尽くせば、うまくいく
・フェアなのが一番。だからルールは守るべき
・会話を通して、友情を築く
・笑みをたやさず、感じよくふるまう
・相手を動かすには交渉が必要

この違いを克服し、ビジネスで認められるには

ルール1 トップの言うことには逆らわない
ルール2 対立を恐れない
ルール3 チームプレイに徹する
ルール4 リーダーらしくふるまう
ルール5 自分を有利に見せる
ルール6 批判されてもめげない
ルール7 ゴールをめざす

の7つのルールを守ればよいというのが、この本の主張だ。この中の、3つ~4つはエイドリアン・メンデルのルールと同じだ。

この本を読んでも、はやり、日本は女性社会だと思ってしまった。日本は女性の価値観で、子供たちにゲームを教えている。社会が女性社会なら、それを生かしていくというのが道理というものだ。つまり、グローバルな活動の中で最小限必要な考え方だけ取り入れていけばよい。そんな使い方もある本ではないかと思う。

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2008年4月22日 (火)

上司とケンカしても勝てない?

4887596154_2 トム・マーカート(青木 高夫訳)「外資のオキテ どこが違って、どこが同じか」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

お薦め度:★★★★1/2

原著:You Can't Win a Fight With Your Boss(上司と戦っても勝てない)

著者はシティコープ、P&G、ACニールセンなどで経営スタッフとして活躍していたビジネスマン。いわゆる外資系の企業でビジネスピープルとして活躍する(昇進する)ための経験的にまとめたと思われる58のオキテを書いた1冊。参考までにオキテ10までは以下のようなものが並んでいる。

外資のオキテ1 ハードに、そしてスマートに働け
外資のオキテ2 結果を出さなければクビだ
外資のオキテ3 強靭な意志を持て
外資のオキテ4 時間を酷使せよ
外資のオキテ5 仕事は何としてもやり遂げよ
外資のオキテ6 誠実かつチャーミングであれ
外資のオキテ7 よい上司を見つけよ
外資のオキテ8 上司を尊敬せよ
外資のオキテ9 上司と喧嘩するな
外資のオキテ10 上司についてよく知っておけ

この本の編集者は、自社のホームページに

「これって、ほとんど日本と同じじゃないか!」と訳稿を一読して思いました。

と書いている。実は僕はこのコメントを見てびっくりした。僕はこの会社の創業者を尊敬している。直接面識があるわけではないが、メルマガなどでそれなりに影響を受けている。この本に書かれているような会社ではないと思っていた。

出版社はともかく、読んだときに、まったく同じだとは思わなかった。逆に似て非なる部分が多いなと思った。同時に、日本の多くの会社もだんだん、こういう組織文化になっているなとは思った。この本の出版社もそうなのかもしれない。

そもそも、本書の原題である「You Can't Win a Fight With Your Boss」というのは日本ではあり得ない。日本企業の良い点の一つは堂々と上司とケンカできることだ。これは、欧米(特に米国やフランス)のように白黒をはっきりさせないのでできるのだ。日本でもWin-Winという言葉が普及してしまったが、本来、日本人にはWinという考えはなかったのではないかと思う。当たり前だったのだ。

こんな違いが並んでいる。

この本が非常によいと思うのは、オキテを通じて、欧米企業の組織や文化、マネジメント、従業員の価値観というのが垣間見れること。今、マネジメントの手法はほとんど欧米発である。ところが日本ではたいていうまくいかない。日本には向かないとよく言われる。ただ、グローバル化の中で、対応せざるを得ないような手法も多い。

この議論が不毛なのは、なぜ、日本に向かないかという分析がないままで済ましていること。これがこの本を読むと、マネジメント、組織、人、などで、どのような前提にして手法が生まれているのかがよく分かる。これはたいへん、貴重なことである。

その意味で、マネジャー必読の一冊だといえる。

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2008年4月21日 (月)

段取りとはサービス精神である

4534043252 藤沢晃治「頭のいい段取りの技術」、日本実業社(2007)

お薦め度:★★★★

「段取り」をテーマに、ビジネスの中でのさまざまな活動の効率的な進め方を解説した一冊。

この本が何より素晴らしいのは、段取りを効率化の手段だと考えずに、

 「サービス精神」

だと言い切っていること。トヨタの次工程はお客様という例を引き合いに出し、段取りは周囲の人に満足を与えようとすることの結果だと述べている。この考え方は、ゴール(製品)として何が欲しいか(どうすれば最終顧客が満足するか)を明確にし、そのためには、その前工程は何が必要かを考え、その考えに基づいて、次工程にうまく渡すにはどのように作業し、どのような品質を作りだせばよいかという連鎖を作り、すべての工程の段取りをすれば、結果として、スケジュールが効率的になり、同時に適正な品質が実現されるというものだ。

この基本的な考え方に基づいて、2章以下では、いろいろな段取りについて考えている。まず最初はスケジュール。ここでは、スケジュールの問題を同期のまずさ、つまり、必要なときに必要なものがないことだと整理し、それを確保するために、各工程にバッファをつけ、余裕を持たせることを提案している。

第3章は環境・情報整理の段取りの話で、バックアップにより時間をさかのぼるバックアップ術、ワークスペースをきれいにしておく「クリアスペース」などを提案している。

第4章は企画やプレゼンなどといった知的作業の段取りを考えている。そして、第5章ではその中からコミュニケーションに的を絞り、アポイントの精度を高める、デフォルト設定によるコミュニケーションの単純化といった提案をしている。

第6章は実践編ということで、プロジェクトのような複雑な仕事に、この本で述べてきたことを適用するにはどうすればよいかを解説している。

本書で示されているうまく段取りをするための主要な視点は4つあるように思う。

ひとつ目は、段取りを周囲に対するサービスだと考えること。第2章、第4章や第5章は、このような視点を持つだけとよく理解できると思う。

二つ目は確実性の確保。ここが一番、この本で力を入れているところで、スケジュール的な確実性だけではなく、さまざまな視点から確実性を確保することが段取りにつながる。バッファ、フェイルセーフによって冗長性を持たせて、確実性につながるというもの。2章や3章はこのような視点を持つことにより可能になる。これはスケジュールだけではなく、環境や情報管理にも適用されている。

三つ目は目標(ゴール)の明確化である。ゴールを明確にすることによって、段取りができるとともに、その段取りを実行するための動機が生まれるというもの。

四つ目は、本書の中ではあまり大きく取り扱われていないが、他人の力をうまく使うことだ。この本では、段取りをサービスだと定義することと他人の力をうまく使うことの関係は直接的には触れられていないのが残念だ。

全体的に段取りという視点から、まんべんなく、洗い出されている本なので、いろいろな使い方ができると思うが、冒頭にも述べたように、段取りに対する哲学のようなものを読み取り、自分なりのやり方を考えるためには、とても良い本である。

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2008年4月17日 (木)

プロアクティブマネジメントのノウハウ満載!

4534043708 村中 剛志「 「先読み力」で人を動かす~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント」、日本実業出版社(2008)

お薦め度:★★★★

プロアクティブという概念はプロジェクトマネジメントで真っ先に出てくる概念である。にもかかわらず、説明に苦労する。日本語では、この本でつかわれている「先読み」とか、「先手必勝」とか「用意周到」とかそんな言葉を当てている人が多いが、ピンとこないという人が多い。

この本は、それを見事に、(一般的な)リーダー向けの行動レベルで書き切っている。特に、個人レベルの話もさることながら、チームマネジメントの方法を述べた第3章は非常に参考になる。プロアクティブとは何かという以前に、この本に書いてあるようにやることがプロアクティブだと言えるようなレベルまで落とし込んであるのは素晴らしい!

本書では、まず、最初にプロアクティブ(先読み)するというのはどういうことかを業務効率やコストなど、いろいろな視点から説明している。

第2章以降は、たいへん、具体的だし、著者の持つノウハウを惜しみなく出してあり、分かりやすい。第2章は個人レベルのタイムマネジメントを具体的なツールとともに、示している。基本は段取り変えを如何になくすかにある。それを著者の独特のノウハウとツールで説明するとともに、実行する際にポイントになるところを丁寧に解説している。

第3章は冒頭にも書いたチーム編である。ここでは、3週間スケジュールとTOP5というツールを使い、チームでの情報共有によって、プロアクティブな段取りのコントロールを行う方法を説明している。さらに、原理を示すだけではなく、実践編として、実際にチームとしてそのような活動に取り組んでいく際の普及ステップまで示されており、たいへん、実践的である。

4章はミーティングマネジメントを如何にプロアクティブにしていくかについて、これまた、さまざまな工夫が紹介されている。基本的にはアジェンダ管理をプロアクティブに行うような仕組みになっている。

第5章はステークホルダマネジメントをプロアクティブに行う際の留意点。内容的には相手に求められる前に対応することが基本。レポートマネジメント、事前相談などについて述べられている。こちらは2~4章と比べると若干、Tips的である。

第6章ではリーダーのこころということで、「リードする」、「援助する」、「感謝する」という3つのこころがプロアクティブな行動を可能にするという著者の信念のようなものを書いている。

最後のまとめとして、村中さんはプロアクティブとは、思考法でも、マインドでも、リスク回避でもない。考え方、心構え、スタイル、姿勢であると書いている。結局、プロアクティブとは、個別の行動や思考、思考にたいして、これはプロアクティブ、これはリアクティブという風に考えていくものなのだろう。そういう意味で、プロアクティブとは何かという根本的なもやもやは消えないかもしれないが、すっきりするのではないかと思う。

最後に一つ、よけいなことを書いておく。この本で、プロアクティブの必要性として例に使っている例え話を僕もよく使う。野球で守備位置をバッターによって変え、常に真正面で捕球する野手と、常に横っとびで派手に捕球する野手はどちらがファインプレイをしているかという話だ。セミナーなどのつかみでこの話をすると、必ず、出てくる意見は「評価されるのは後者」とおうものだ。

もちろん、おかしいのだが、プロフェッショナルでない多くの日本組織では、この話は個人とかチームだけで切り離しできる話ではないのだ。組織もプロアクティブという「価値観」を持ち、顧客もまた同じ価値観を持っていないと、ジレンマが起こりかねない。非常に実践的な本なので、すぐにやってみる人もいると思うので、あえてその点をコメントしておきたい。特にチームマネジメントの中で実践する際には要注意だ。もちろん、その覚悟を持って実践してほしいという意味である。

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2008年4月14日 (月)

創造力を生かす

4422100432 アレックス・オスボーン(豊田晃訳)「創造力を生かす」、創元社(2008)

お薦め度:★★★★★

アレックス・オズボーンの名前は一度くらい聞いたことがあるのではないだろうか?オズボーンの名前を聞いたことがなくても、ブレーンストーミングという発想法であればだれでも知っているだろう。ブレーンストーミングは、1938年、当時、広告代理店の副社長だったオズボーンが考案した発想法である。ちなみに1938年は昭和13年である。

そのオズボーンが、創造力の発揮をテーマに1948年に書いた本がある。「Your Creative Power」という本。この本は日本では、1969年に創元社から「創造力を生かせ」というタイトルで紹介された。

この本、筆者が大学の専門課程の最初の年に教科書として使ったのが出会いで、それ以来だから30年近いファンということになる。今年になって、この本の新装版が出た。今までも、この本はよく紹介していたが、よい機会なので、ブログで取り上げておきたい。実は、もう、どんな本をブログで取り上げたかはっきりとした記憶がないのだが、おそらく、この本がブログで取り上げた本の中で、もっとも古い本だと思う。

分野を問わず、行動原則についてまとめて書いた本でもっとも多くの人に読まれているのは、デール・カーネギーの「人を動かす」、比較的、新しいところでは、スティーブン・コヴィーの7つの習慣だと言われている。

4422100513 4906638015デール・カーネギー(山口 博訳)「人を動かす 新装版」、創元社(1999)

スティーブン・コヴィー、ジェームス・スキナー(川西 茂訳)「7つの習慣―成功には原則があった!」、キングベアー出版(1996)

この2冊はリーダーシップに関する行動原則について書いた本である。

オズボーンの本は、これらの匹敵するくらい多くの人に読まれている本である。これを見ると、やはり、組織にとっての2大課題がリーダーシップと創造であることを物語っているように思え、興味深いところだ。

しかし、日本でオズボーンの名前を知る人はそんなに多くないと思う。オズボーンの名前を知らなくても、ブレーンストーミングを知っているのは日本くらいではないかと思うが。

そんな本であるが、創造についてすべてが書かれている本といっても過言ではない。内容をおおまかに分けると、まず、創造力が何をもたらすか、そして、創造力とはどのようなものなのかといったあたりを中心にした概論が述べられている。具体的な構成でいえば

アラジンのランプは今も輝く
創造的努力の報いは大きい
創造力を持たぬものはない
創造力は教育や年齢には関係がない
創造力は場所を選ばない
イマジネーションの種類
創造的イマジネーションの種類
創造力のランプを満たす油

といったあたりである。

そして、次に、創造力を高めるためのさまざまな工夫や手法、テクニックについて述べられている。ここには

連想力は記憶とイマジネーションを結ぶ
創造力を推進する感情的な力
意志のあるところアイディアあり
判断力はアイディアを殺すことがある
自己の創造力をそこなわないこと
創造的な努力は賞賛を好む
創造力の訓練は楽しい
まず肚をきめること
目標を定めよう
問題を分析し事実を挿入する
試案を得る
利用法を考える
借用を翻案
一ひねり変化させてみよう
拡大しよう
縮小しよう
置き換えてみよう
配置換え・再調整をしよう
反対を考えてみよう
結合させる
心の窓をあげて精神を遊ばせよう
幸運の女神は絶えず追う者にほほえむ

のようなタイトルが並んでいる。さらには、チームや組織による創造についても言及をしている。また、社会的な扱いについても触れている。

アイディアはアイディアの上に成り立つ
「三人寄れば文殊の知恵」か?
アイディア創造のふさわしいチームの作り方
提案制度
創造的力は人生を明るくする
統制における創造力
科学における創造力
教育界への要望

ということで、よいとか、悪いとかいう次元の本ではないので、書評は避けるが、とにかく、この本をきっちり一冊読めば、上にあげた本と同じく、間違いなく、世界が変わる本であることは間違いない。

もちろん、ブレーンストーミング(この本ではブレーンストーム会議)についてもたびたび、言及されているし、ブレーンストーミングとはそもそも何なのかということを感じることができるので、そのようなニーズで読んでいるものいいだろう。

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2008年3月16日 (日)

仕組みで考える

4887596111 泉正人「最少の時間と労力で最大の成果を出す「仕組み」仕事術」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

お薦め度:★★★★1/2

作業系と考える系を区別、仕組みにより作業系の生産性を上げることにより考える時間を作り、仕事の質を上げることを推奨する一冊。

本書の前半は仕組みとはどういうものかを例をあげながら、なぜ、仕組みづくりが重要かを簡潔に述べている。

それによると、仕組みづくりは

・才能に頼らない
・意志の力に頼らない
・記憶力に頼らない

の3つを原則(黄金律)とし、仕組みによって、作業だけではなく、マネジメント(チームを動かす)こともできると指摘する。

考え方として面白いのは、失敗への対処を仕組みかする、続けることを仕組みで実現するなど、広い範囲で仕組みをとらえていること。本質はルーチンワークを仕組みにするということではなく、考えることが価値を生まない仕事はルーチンワーク化し、仕組みを作ることによって合理的に実行していくことにあるといったことだろう。

後半は自身の取り組んでいる事例で、具体的な方法を述べている。ひとつはチェックリスト。もう一つはOutlookをうまく使う方法。いずれも、ポイントは一元化にあるとしている。つまり、チェックリスト化することにより、重複を防ぐ。また、メール、仕事などの各種の情報を一元管理する。

実例だけに、説得力がある。

この本で一番印象に残ったのは、失敗を仕組みで考える(改善する)ということだ。仕組みにより考えることにより、同じ(類)の失敗を繰り返すことがなくなる。これは改善の原点でもあるが、これにより実現される効率化は大きいのはないかと思う。

最後に仕組みで考える人の7つの習慣というのが示されている。これがなかなか深い。深いから、極める価値があるのだろう。

(1)楽することにこだわる

(2)シンプルに考える

(3)記憶せずに、記録する

(4)わからないことは聞く

(5)自分の時間を時給で判断する

(6)うまくいっている人の真似をする

(7)自分を型にはめる

この本を読んで、似通った発想だと思ったのが、この本。

三田紀房「個性を捨てろ!型にはまれ! 」、大和書房(2006)

併せて読んでみよう。

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2008年3月 8日 (土)

リストフリークの作った本

4777108805 堀内浩二「リストのチカラ」、ゴマブックス(2008)

お薦め度:★★★★

なかなか、よいタイトルの本だ。確かにリストというツールには、何か特別なパワーがあるように思う。パワーではなく、チカラかもしれない。

みなさんは、リストというと何を思い浮かべるだろうか?僕が最初に覚えたリストは社是だ。みなさんも経験があると思うが、会社に入るとまず、しつこく感じるくらいに唱和させられるのが社是だろう。わたしたちのクライアントの中でも、研修の場などでも、毎朝、社是を唱和している会社がある。

僕がいた三菱重工の社是は

一、顧客第一の信念に徹し、社業を通じて社会の進歩に貢献する。
一、誠実を旨とし、和を重んじて公私の別を明らかにする。
一、世界的視野に立ち、経営の革新と技術の開発に努める。

である。

僕が三菱重工を退社して、もう20年近い時間が経つが、この3つは今でも僕の価値観になっているし、何より、まだ、唱和できる!これがリストのチカラではないかと思う。

さて前置きが長くなったが、具体的にリストが持っているのはどんなチカラだろうか?それを教えてくれる本である。

著者の堀内さんがlistfreakというサイトを作られて、活発に活動されていた。なかなか、ユニークな命名である。

そのサイトがついに本になった。拍手!

本書は、大きく2つのパートにわかれている。前半は、listfreakから堀内さんが選び抜いた50のリストが、コメントとともに5つのカテゴリに分けて紹介されている。カテゴリはコメントとともに5つのカテゴリに分けて紹介されている。カテゴリは、「まるごと覚えてしまいたいリスト」、「日々使いこなしたいリスト」、「月に一度は目を通したいリスト」、「いざというときに頼りたいリスト」、「折に触れ、じっくりと読み返したいリスト 」の5つだ。

そして後半はリストを使う方法、作る方法について述べている。僕は以前、ある会社の社是を作った経験がある。その経験に照らし合わせてみると、若干、物足りない部分があるが、なるほどと思うことの方がはるかに多い。堀内さんの「リスクフリーク」の本領発揮っていうところだろう。

この本の何より素晴らしい点は最後の2章に述べられている「リスト力」なるものだ。たとえば、ワークショップをするとかのときに、重要なものを3つあげてくれとか、結構、リストを使っている。何か意図があってやっているのだと思うが、その意味を8つのステップに分けて見事に整理している。また、編集力に通じるところで、リストをどのように編集すればよいかについても解説してくれている。

ありそうで、なかった素晴らしい本だ。

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2008年2月17日 (日)

あなたはだらしな系、それとも、きっちり系?

4163695206 エリック・エイブラハムソン、デイヴィッド・フリードマン(田村義進訳)「だらしない人ほどうまくいく」、文藝春秋(2007)

お薦め度:★★★★

著者のひとり、エリック・エイブラハムソンは名門ビジネススクール、コロンビア大学ビジネススクールの教授である。そのエイブラハムソンが、きっちり系、だらしな系を事例をあげ、対比しながらながら、「だらしない」ことのメリットを解説した一冊。ただし、だらしないのには病的なものもあり、それは除いて議論している。

本書でだらしな系のメリットの根拠となることは、コストと柔軟性である。最初に、トランプのメタファが紹介されている。2組のトランプがある。1組はよく切ってある。もう1組は絵柄ことに数字の順に並べられている。それを2人の人間に渡し、特定の4枚のカードの絵柄と数字を告げてどちらが早く見つけ出せるかを競わせる。当然、並べてある方だ。並んでいるなかから探し出すのに16秒、並んでいない方から探し出すには35秒かかった。

ここで面白い指摘をする。並んでいないトランプをトランプ愛好家に協力して並べてもらうと140秒かかるというのだ。

つまり、トランプは並んでいないという日常的な状況を前提にすると、結果が逆転するというのだ。

さらに、面白いのは、抜いた4枚のカードを並べている組の元の位置に戻すには16秒かかるという。つまり、並んだ状態を前提にしても、35秒と32秒ということで、ほとんど変わらない。

このように完全性を保つにはコストがかかり、必ず、きっちりとしている方がよいということはないというのが本書の主張。これを事例、歴史、だらしな系の組織など、いろいろな視点から体系的に250ページにもわたり書いているのだ。

本書で指摘されているだらしな系とキッチリ系の比較は以下のようなものだ(前者がだらしな系、後者がキッチリ系)

・素早く、劇的に、多様に、より少ない労力で状況に適応し、変化することができる
vs 需要の変化や予期せぬ出来事、新たな情報に対して融通がきかず、対応が遅れがちである

・異質なものを簡単に内側に取りこむことができる
vs 内に含めるものの量や種類を制限する。有益なものや、不可欠なものも排除してしまうことがある

・環境や情報や変化となじみ、そこから有益な影響を受けられる
vs 外部からの影響を遮断して、決して相容れることがない

・さまざまな要素に触れ、変化を促し、問題を顕在化させ、新たな解決策を導き出してくれる
vs 未知の存在や不測の事態を嫌い、それが現れると、即座に排除しようとする

・比較的少ない労力で目標を達成することができる。労力の一部をアウトソーシングすることができる
vs システムを維持するために常に大きな労力が必要になる。その労力はすべて自分で背負いこまなければならない

・大きく異なる要素でも内に組み込むことができるため、攻撃や妨害や模倣に対する抵抗力がある
vs 強さと弱さを併せ持ち、たやすく破壊されたり、失敗をおかしたり、混乱したり、模倣されたりする

若干、ものの言いようだという気もしなくはないが、確かにこう考えると、だらしな系が効果を発揮すビジネスやマネジメントというのは思い当たるものがあるだろう。もちろん、本書の中にも、運行スケジュールのない航空会社、POS管理しない書店、設計図なしでビルを建てる建築家など、いろいろな事例が紹介されている。

ただし、この本の結論は、だからだらしな系ということではない。バランスが重要だというある意味で当り前の結論だ。当たり前ではあるのだが、意外とこのバランスというのは考えられないことが多い。どこまでやるかという判断は難しいからだろう。その点について明確な示唆はない。この点が多少不満であるが、ビジネスマンとしてもマネジャーとしてもこのような視点を持つことは重要だろう。

エイブラハムソンも指摘しているように、整理整頓をするというのは思考停止を引き起こす。つまり、何も考えずに、きっちりした方がよいと無条件に考えがちである。この点について考えなおすきっかけになるだけでも貴重な本だ。

特に、マネジャーには一読をお勧めしたい。

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2008年2月14日 (木)

女性化しているビジネスマン

4478731209 エイドリアン・メンデル(坂野尚子訳)「女性(あなた)の知らない7つのルール―男たちのビジネス社会で賢く生きる法」、ダイヤモンド社(1997)

お薦め度:★★★★1/2

原書:How Men Think: The Seven Essential Rules for Making It in a Man's World

珍しく、10年以上前に出版された本を紹介したい。今、企画中のセミナーのために読みなおして、意外な感想をもったからだ。

内容は、ビジネスは男中心のゲームであり、女性はそれを理解しないためにずいぶんと損をしているというもの。あまり記憶が確かではないが、この本を最初に読んだのは1999年だと思うが、米国でもそうなんだと、結構、新鮮な衝撃を受けた覚えがある。

改めて何を感じたかというと、米国の状況はよくわからないが、日本ではビジネスでの女性の活躍は当り前のことになってきた。おそらく、最初にこの本を読んだ頃には、活躍する女性は目立っていた。しかし、今は目立たない。たとえば、仕事がら、大手の企業の部長クラスとお会いすることが多いが、女性は珍しくない。

そして、その人たちは女性独特の世界を作り上げているかというとそうではない。もちろん、女性ならではのものの見方、考え方はあると場面場面である思うが、大きな流れは男性が作ったビジネスのルールに従って堂々と自らの地位を築き上げている。これは、この本が啓蒙していることでもある。

この本ではビジネスというゲームには7つのルールがあるとしている。

ルール1:できるふりをする
ルール2:自分を強く見せる
ルール3:つらくても継続する
ルール4:感情的にならない
ルール5:アグレッシブになる
ルール6:戦う!
ルール7:真のプレイヤーになる

という7つだ。そして、このビジネスゲームを楽しむには、女性には3つの欠点があるというのがこの本の指摘。その3つとは

欠点1:失敗を恐れすぎる
欠点2:消極的すぎる
欠点3:優先順位をつけられない

の3つ。

さて、なぜ、この本を紹介したか。上に述べたように女性がこのビジネスゲームのルールに適応してきたのに対して、キャリアの浅い年代を中心に、ビジネスマンが女性化してきたのではないかと思う。

この本の中に男女の行動特性の違いを説明するためにこんな実験が紹介されている。

ハインズ夫人は病気で特別な薬を飲まないと死んでしまうかもしれない。しかし、その薬はとても高い。夫にハインズ氏には薬を買うお金がなく、薬屋さんも安くは売ってくれない。

この状況で「ハインズ氏は薬を盗んでもよいでしょうか?」という質問を男の子と女の子に別々にこの質問をした。

多くの男の子は「大切なものは何か」という問題に置き換え、命よりも大切なものはない以上、ハインズ氏は薬を盗んでもよいという結論を導ける人が多いそうだ。したがって、問題解決ができる。

ところが女の子は、薬を盗んだら、人との関係にどう影響するかを考える。そして、財産と命を比較するのではなく、薬を盗まずにハインズ夫人を助ける方法はないかと考え始める。当然、そんな方法はなかなか、見つからない。銀行でお金を借りてこのジレンマを解消しようとする。

つまり、男の子はものを盗んではならないというルールは受け入れた上で、ルールの抜け道を探す。この場合だと、捕まったとしても裁判官が理由をつけて無罪にする方法はないかと考える。

女の子はルールをそのまま受け止め、場合によっては使えないと判断し、ルールを無視してしまう。このケースだと銀行は返済能力のある人にのみお金を貸すというルールを無視する。

このエクスサイズを読んでいると、男女をとわず、ビジネスマンが女性かしているのではいかとつくづく思うのだ。

ルールがあるからビジネスである。男女とも、本書を読んでもう一度、原点に戻ってはどうだろうか?

ただし、ビジネスのルールそのものが変わってきたと指摘する人もいる。たとえば、週刊東洋経済2008年2月9日号では、「働きウーマン~世界は女性を中心に回りはじめた! 」という特集を組んでいる。これを読んでいると、男性の作ってきたビジネスゲームのルールが変わってきたので、それに対するしがらみのない女性が台頭してきたと感じなくもない。

その意味でこの本でメンデルが示しているルールそのものが変わってきているような気がしないでもない。あるいは、近い将来変わるような気もする。

4063289990 この特集号で表紙に使っている「働きマン」の主人公・松方弘子は思いっきり男キャラで、それに時々女性目線が入って活躍するという話なので、今、求められているのは、まさに、そんな人材なのかもしれない。

その点も含めて、ルールがあるからビジネスなのだというこの本の指摘そのものは普遍性のあるもので、ゆえにゲリラはゲリラで、ゲリラがビジネスを支配することはないだろう。そして、そのルールに対して適合できるものが生き残るという指摘も、またただしいと思う。その意味でも、読んでみる価値のある一冊だ。

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2008年2月 7日 (木)

Win-Winの関係づくりのバイブル

4426104432 鈴木有香「コンフリクト・マネジメント入門-人と協調し創造的に解決する交渉術」、自由国民社(2008)

お薦め度:★★★★★

最近、ネゴシエーションがマネジメントの一つの要素として、意見の対立があると、以下に勝つかということに関心が高まってきている。確かに、Win-Winといった概念があり、それを目指そうとするのだが、多くの人はできればそうそこに落としたい。しかし、時間がないなどの理由で一方的に相手をやっつけようとしたり、あるいは、痛み分けのような結論を求める。

特に、エンジニアというのは好戦的な人が多い。特に、仕事に熱心な人ほど、好戦的な傾向があるように思う。この本を読んでみると、そのようになる理由がわかってくる。白黒をはっきりとさせる、短期的な決着や成果を求めるという技術者魂(?)がなせる技かもしれない。

この本は最初から最後まで、独特の考えも基づいたコンフリクトマネジメントスキルが展開されている。

第1章では、まず、コンフリクトにはネガティブな面だけではなく、肯定的な面なあるというところから始まる。これが全体のコンテクストになっている。なかなか、こうは思えないものだ。

そして、コンフリクトの解消には協調的アプローチと競合的アプローチがあり、協調的なアプローチの方が将来的な好結果を生むことを指摘し、そのためのスキルについての解説に入る。

最初はコンフリクト分析のポイントで、
・ぶつかり合う立脚点
・見えていないニーズ
・絶対譲れない世界観
・双方で解決に取り組み問題を再焦点化する
・よりよい解決策をつくるための建設的提案
・破壊的提案は人間関係を終わらせる
の6つを上げ、細かく説明している。納得!

次に、協調型交渉のプロセスを具体的に説明している。さらに、次の章では、コミュニケーションの取り方と感情の関係について整理して解説されている。

これらの準備の後に、実践のためには、どのようなトレーニングをすればよいかを提案している。これも納得性が高く、また、ポイントが絞られているので個々のトレーニングは容易に、反復的に取り組むことができる。

最後に、ハードスキルとして、
・目標設定と行動計画
・フィードバック
・怒りへの対処とクレーム処理
・コーチング
・ミディエーション
の6つを取り上げ、解説している。

全般的に結構難しい話をしているようにも思うのだが、解説は平易で、わかりやすく、さらに、ふんだんにケースを使って説明されているので応用もききやすいように思う。素晴らしい本である。

Win-Winの関係づくりのバイブルといっても過言ではないだろう!

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