言葉でしか考えられない。考えられないことは実行できない
細田 高広「未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略」、ダイヤモンド社(2013)
お奨め度:★★★★★
トビラに「言葉でしか考えられない。考えられないことは実行できない」という楠木建先生の推薦の言葉がある。その通りだと思うし、言葉こそコンセプチュアルスキルの本質だとも思う。
この本ではまず
・「時代」を発明した言葉
・「組織」を発明した言葉
・「商品・サービス」を発明した言葉
というくくりで、合計30の言葉を紹介し、その言葉の意味することを解説している。抜群にうまく、面白い。
時代を発明した言葉としては、
1 10年以内に、人類を月に送り込む。(J・F・ケネディ)
2 貧困は、博物館へ。(ムハマド・ユヌス)
3 女のからだを自由にする。(ココ・シャネル)
4 世界はひとつの教室になる。(サルマン・カーン)
5 すべてのデスクと、すべての家庭にコンピューターを。(ビル・ゲイツ)
6 誰もが編集できる百科事典(ジミー・ウェルズ)
7 美容を新しいアートにする。(ヴィダル・サスーン)
8 摩天楼は低すぎる。(ル・コルビュジエ)
9 メイド・イン・ジャパンは粗悪品、というイメージを変える会社になる。(盛田昭夫)
10 世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする。(グーグル)
の10個。組織を発明した言葉としては、
11 自由闊達にして愉快なる理想工場(井深大)
12 まねされる商品をつくれ(早川徳次)
13 世の中の体温を上げる。(遠山正道)
14 GIVE A GOOD IMAGE(FCバルセロナ)
15 一台少なくつくれ(エンツォ・フェラーリ)
16 地上でいちばん幸せな場所(ウォルト・ディズニー)
17 子どもと一緒に成長する美術館(金沢21世紀美術館)
18 僕たちはエンジニアじゃなくてアーティストなんだ。(スティーブ・ジョブズ)
19 株主は、地球だ。(イヴォン・シュイナード)
20 無印良品(良品計画)
の10個。商品・サービスを発明した言葉としては
21 ポケットに入るラジオをつくれ。(「トランジスタラジオ」井深大・盛田昭夫)
22 電池のいらないラジオ(「手回し充電ラジオ」トレヴァー・ベイリス)
23 通過する駅から、集う駅へ。(「エキュート」JR東日本)
24 形態展示から、行動展示へ。(旭山動物園)
25 ATMのように手軽にクルマが使える世の中に。(「ジップカー」ロビン・チェイス)
26 1000曲をポケットに。(「iPod」アップル)
27 すべての書籍を、60秒以内に手に入るようにする。(「キンドル」アマゾン)
28 家族全員に触ってもらえるゲーム。(「wii」任天堂)
29 第三の場所(「スターバックス」ハワード・シュルツ)
30 世界旅行も、宇宙経由で。(ヴァージン・ギャラクティック)
の10個が紹介されている。
後半はこういったビジョナリーな言葉を如何に作るかを教えてくれている。まずは、ビジョナリーワードの条件。独特の表現だが、
(1)解像度
(2)目的地まで距離
(3)風景の魅力
だ そうだ。解像度は言葉の具体性で、できるだけ具体的にすべきだと述べている。二つ目の距離は、行ってみたい(実現したい)と行けそうだ(実現できそうだ) という2つのバランスがほどよいことを条件としている。3つ目は他の人もいけそうかどうか、そこにいくことによって変化することへの期待である。
つぎに、どう作っていくかを述べている。それによると
ステップ1:現状を疑う
ステップ2:未来を探る
ステップ3:言葉を作る
ステップ4:計画を作る
というものだ。各ステップには問いがある。
ステップ1:現状を疑う → 本当にそう?
ステップ2:未来を探る → もしも?
ステップ3:言葉を作る → つまり?
ステップ4:計画を作る → そのために?
だ。これらの問いに答えると、各ステップは実行できる。
さらに、言葉を作るところの5つの技法を説明している。
・呼び名を変える
・ひっくり返す
・喩える
・ずらす
・反対を組み合わせる
著者はコピーライターなので、この辺はお手の物といったところだろうが、全体的に言葉という切り口からコンセプトワークがよく分かり、コンセプチュアルスキルを高めるには必読の一冊。
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