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2012年9月24日 (月)

顧客起点のしくみづくり

4478020981電通コンサルティング「しくみづくりイノベーション」、ダイヤモンド社(2012)

お奨め度:★★★★★

facebook記事:「顧客を起点にビジネスをデザインする

電通コンサルティングのMDBD(Marketing Driven Business Design)という戦略アプローチを解説した本。なのだが、内容はMDBDについて説明しているというよりも、このアプローチのフレームワークに沿って、いま、世の中でどういうやり方が注目されているかを非常に適切に解説しているビジネスモデルイノベーションの教科書といってよい内容の一冊。


この本はいきなり、エジソンの話から始まる。エジソンは電球をはじめとするさまざまな発明者として有名だが、あまり知られていない顔として、世界有数の電機メーカであるGEの創設者としての顔がある。つまり、エジソンは技術を発明しただけではなく、その技術を使える環境をつくったわけだ。この点をとらえて、本書ではエジソンは単なる発明者ではなく、イノベータであり、エジソンの1%のひらめきと99%の努力は

1%が発明
99%はアイデアを商品化し、売れる装置をつくり出す作業

だったのではないかという。そして、本書のMDBDの具現者としてエジソンはぴったりのイメージだという。

MDBDの背景には、持続的に成長していくためには、モノづくりのイノベーションを超えるしくみづくりのイノベーションの必要だという考え方がある。しくみづくりのイノベーションの典型的な例はアップルである。アップルはiPodを作ったが、iPod自体は同じように優れた競合商品がある商品だった。しかし、それだけではなく、音楽を1曲ずつダウンロードして購入し、ストックし、聞くことができるというしくみのイノベーションがあった。

しくみづくりイノベーションは製品のイノベーションほど目立たないが、長期的な成長を実現していくもので、いま、求められているイノベーションである。たとえば、ビジネスモデルイノベーション、デザインドリブンイノベーションなど、いろいろなイノベーションの考え方が登場している。

日本でしくみづくりイノベーションで持続的な成長を実現している企業としては、クロネコヤマトや、アスクルを上げることができる。

しくみづくりイノベーションにおいて、しくみの起点は顧客である。エジソンは、さまざまな発明を使うためのしくみを作ったことは先に述べたとおりであるが、現代でも、しくみづくりで大成功をおさめている企業はたくさんある。本書では、その中から、カーディナル・ヘルスをとりあげている。カーディナル・ヘルスは大手の薬剤流通業者だったが、川上、川下の顧客の抱える問題を解決して、1993~2000年にかけて、30%という驚異の成長を遂げた企業だ。カーディナル・ヘルスは、川下企業に対して、自社の薬剤流通の仕組みを病院へ適用した。これにより病院はコストダウンを行うことができた。さらに、自動調剤会社を買収し、流通システムの中に自動調剤装置を組み入れた。これにより、誤投薬の防止、看護師の負担軽減などを実現した。

川上に対しては、医薬メーカへの調剤、試験、包装サービスを提供し、その結果、医薬メーカはヒット商品の発見と開発に集中できるようになり、自らの収益源を拡大した。

このようにMDBDの目的は、最終顧客の理解によってイノベーションを生み出し、その上市に最適化するために事業体制を再構築し、高い収益を上げることである。

そのMDBDの枠組みは、

ステップ1:ターゲティング
ステップ2:ポジショニング
ステップ3:メイキング

というもので、TPMサイクルと呼ばれる。

まず、ターゲティングは顧客理解のステップで、従来からあるニーズ調査の方法を紹介し、その限界を指摘した上で、顧客理解におけるアブダクションの有用性を主張している。アブダクションは推論の一種であるが、以下のような推論を拡張している。

(1)驚くべき事実Cが観察される
(2)しかも、もし、Hが真であれば、Cは同然の事項であろう
(3)よって、Hを真と考える理由がある

さらに、顧客関係の新しい構築技術として、ビックデータ、エスノグラフィーを取り上げ、かなり、詳しく事例付きで説明している。非常に分かり易い。特にエスノグラフィーの説明は有用である。ビジネス戦略における活用として、外向きに潜在ニーズの発見に使う方法、ビジネス人類学における活用として、内向きに、既存アプローチの自省に使うというものである。

ステップ2のポジショニングはしくみデザインのステップである。ここでは、まず、顧客起点の仕組みの重要性を説き、中でも価値とスピードが重要であるとし、プラットホームモデル任天堂のファミコンのしくみづくりを取り上げている。

次に、異業種・異業態を組み合わせた例として、コンテンツの制作委員会などのプロジェクトファイナンスなどのしくみを取り上げている。さらには顧客参加型のしくみづくりにも言及している。ここでは、リナックスなどが例として挙げられている。

ステップ3のメイキングは、実践を通じて学習するという位置づけで、β版の重要性を説いている。それはソフトウエアに限定されるものではなく、製造業でも見られるとし、SPAや、デジタルファブリケーションなどのしくみを紹介している。また、リーンスタートアップなどにも言及している。

つぎに、しくみづくりを可能にする組織ということで、プロジェクト制の紹介をし、いろいろな応用方法を示している。また、多様性という観点からはフューチャーセンターの有用性を説いている。また、デザイン思考についても触れている。

短時間で、現在のイノベーションへの取り組みの動向を知りたい人には、お奨めの一冊である。

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